<日記>
過去の日記(2014年5月〜8月)
未来の日記(2015年1月〜4月)


<12・28>
・「天体のメソッド」にはまりすぎた。
 今までここは一応マンガが中心と言うことで、スクエニ原作以外のアニメはあまり語ってこなかったのですが、今回はあまりにはまってしまったのでこの「天体のメソッド」を取り上げたいと思います。

 ちょっと前に「PCゲーム出身で今はアニメなどで活動するようになった人」を取り上げたような気がしますが、その時にも取り上げた作品で、かつて大人気だったゲーム「Kanon」のシナリオライターとして名を馳せた久弥直樹さんが原案・脚本をやっています。とはいえ、あまりに久しぶりの登場だったので、ほとんどの人は半ば忘れていたかもしれません。2007年にアニメにもなった「sola」の脚本も手がけていますが、それからもはるか時間が経っています。
 実は、その「Kanon」は以前わたしもプレイしたことがあるものの、その時はそれほどはまらなかったような気がします。それが、この「天体のメソッド」は、回を重ねるごとにこれ以上ないほどはまってしまった。その理由は一体何か。

 まず、かつてと同様にちょっとファンタジーが入った非常に切ないストーリーであるということ。さらに今回は、かつてよりシナリオ展開に上手さが感じられ、各キャラクターを描くエピソードもそれぞれ惹かれるものがありました。中にはかなり厳しめの話もあったのですが、それを乗り越えてからは今度は一転して楽しい話が続き、そのあたりで完全にはまってしまいました。

 さらには、キャラクターの女の子ひとりひとりがとてつもなくかわいかったのも大きい。特に主人公の前に現れる謎の少女・ノエルのかわいさが素晴らしく、もうそれだけで何度も見てしまうくらいでした。いや、彼女以外の女の子もそれぞれ個性的なかわいさがあって、はっきり言って今季のアニメの中でも最大の萌え枠だったと言って過言ではなかったと思います(笑)。主人公の乃々香が女の子であるという点もポイントで、百合アニメとしても楽しめます多分。

 北海道を舞台にした世界設定もすごく良かった。洞爺湖および札幌近辺の様々な場所がモデルとなっていて、実在の場所が出てくるたびにその土地の空気を感じられて楽しい。さわやかな北海道の空気が感じられるすがすがしい雰囲気を随所で体感することが出来ました。同じ北海道を舞台にしたジブリの劇場映画で「思い出のマーニー」も見ましたが、北海道の雰囲気ではこちらも同等かさらに上回っているような気がします。作画も劇場アニメと比べてもまったく見劣りしないほどで、とりわけ森の緑・空と湖の青が映える自然の背景描写があまりに美しい。

 作画という点では、エンディングで流れる映像が特筆ものでした。恐ろしくリアルに動くキャラクターの作画が際立っていて、立っている時の重心移動・歩く時の体の揺れ方・立ち上がるときの動作などがあまりにリアルすぎて、モーションキャプチャーでも使っているのかと思ってしまうほどでした。エンディングテーマである「星屑のインターリュード」も大変な名曲で、これがアニメのもうひとつの見所と言ってもいいくらいです。

 ストーリーの基本構成は、かつての「Kanon」を彷彿とさせるところもありますが、それを換骨奪胎してさらにレベルの高いアニメ作品となっているようで、非常に好感が持てます。最終盤の11話から12話にかけての盛り上がりも圧倒的で、最終回の13話の展開があまりに気になって楽しみで仕方がない。まさかここに来てこれほどはまるとは・・・と驚いています。今年最後になっていい思い出が出来ました。


<12・24>
・「十三世紀くらいのハローワーク(総集編)」。
 これまた紹介が遅れてしまいましたが、今回は11月のコミティアで出た同人誌の大作を取り上げます。「十三世紀くらいのハローワーク」というタイトルで、2011年頃から刊行されていた一連のシリーズの総集編が出ました。300ページ近いボリュームで全ページフルカラーという超本格的な一冊です。

 タイトルから推測されるとおり、中世ファンタジーなゲームやマンガでよく出てくるような「職業」を紹介した本となっています。しかし、あえてゲームで使われるようなメジャーな職業はあまり扱わず、むしろマイナーな職業、庶民的な職業、さらには最底辺の「賤民」とも言える職業が中心で、一方で傭兵など軍事的な職業に関する記述も詳しかったり、総じて歴史の中に埋もれた人々を掘り起こすような、非常に興味深い一冊となっています。以前なら支配者層の政治記述が中心で、歴史であまり顧みられなかった庶民たちの姿、日本で言うなら網野善彦によって掘り起こされたような興味深い記述が、この本にも満載です。

 その記述は詳細にして多岐に渡ります。その職業の持つ基本的な職務はもちろん、社会との関係、とりわけ支配者や周囲の庶民とのやり取りや評判、身にまとう衣装や使っていた小道具、生活スタイル、さらには様々な逸話や歴史の中での動きまで、それらがカラーのイラスト付きで紹介されています。まさかこれほどまでに詳しいとは思っていなかったので、歴史好きのわたしとしても知らなかった知識に感動し、むさぼるように読んでしまいました。昔評判になったライトノベルで「狼と香辛料」という作品がありましたが、これはそれを思いっきり本格的にしたような本。はっきり言って「勉強になりすぎる」と言ってよいくらいの本でした。

 中世ヨーロッパの職業が中心ですが、一部ではそれ以外の地域の記述が見られるのも興味深いところです。「伯楽(馬飼い)」の項目では、古代中国の養馬技術の驚くほどの高さがつぶさに紹介され、歴史の中での盛衰まで書かれています。また、日本で鎌倉時代から突然記述に出てくる「悪党」という階層集団、その実態が極めて分かりやすく書かれていて、これも大いに勉強になりました。この本を読めば、あの日本史の教科書に載っていた「悪党」とは何なのか、その事実が分かります。

 こうした本格的な記述の一方で、イラストはデフォルメが効いていてとてもかわいらしく、あるいはゲーム的なステータスやスキル、属性になぞらえた項目も見られ、こちらも面白い。どうも作者はあの「タクティクスオウガ」などに登場するデフォルメキャラが好きなようで、とりわけデフォルメされたミニキャラの姿はまさにそれになぞらえています。最後にはタクティクス風のマップ上に様々な職業のキャラクターが配置されているという楽しいおまけページもあります。

 総じて非常な力作であり、とりわけ歴史好き、ファンタジーゲーム好きには堪えられないものがあると思います。コミティアはこんな個人レベルを超えているかのような作品がよく出てくるから侮れません。


<12・21>
・「女子小学生はじめました」(牛乳のみお)コミックス発売。
 これも少し前の話ですが、11月にあの「女子小学生はじめました」(牛乳のみお)の商業コミックス1巻が発売されました。元々はニコニコ静画で掲載され、そのあまりにもひどい(褒め言葉)な内容から、一部の読者の間で大きな反響を呼び、静画の中でも屈指の人気作品となっていました。そのあまりな内容から商業掲載は難しいと思っていたのですが、これが白泉社のヤングアニマルでまさかの商業連載化。そのコミックス1巻がついに発売されたわけです(商業誌連載版はタイトルに「P!」がついています)。

 その内容ですが、30歳の童貞サラリーマンがある日突然魔法で女子小学生になってしまったという、なんともストレートな設定です。大人が子供になってしまうという作品は過去にもいくつもありましたが、これほど萌えとエロに特化した作品は他にないでしょう。主人公は小学生になったことを喜びまくり、まったく元に戻る気もなく、今の生活を楽しみことあるごとにエロを堪能しようとします。その自重しないバカバカしさが最高に面白く、屈指のエロコメディになっています。

 とにかくエロと下ネタとバカに満ちた毎回のエピソードが抜群に面白い。小学生の姿でいるためには「夢力」とかいう力が必要らしく、それを維持するためには女の子のパンツが必要で、それを手に入れるために友達の小学生のパンツを脱がすというとんでもない展開。さらには夢力が尽きた時に男に戻りかけた時のあらすじ「チ○コが生えた」は、これまで見た最もひどいあらすじではないかと思います。

 加えて、とにかく絵がうまい。小学生の女の子のぷにっとした柔らかさが素晴らしくよく描けていて、これだけで前のめりです(笑)。実際この作画レベルの高さは大したもので、静画掲載初期の頃から評判になっていました。雑誌掲載版は、基本的に内容は静画版とまったく同じですが、随所で描き直しがされていて、さらにきれいな絵になっています。

 作者の牛乳のみおさんは、以前別の名前で小学館の雑誌かなにかで仕事をしていたらしく、しかしそちらでは「クビになった」らしく、その後ニコニコ静画で活動を始めた経緯があります。それゆえに、最初からプロの仕事と言えるほど絵も内容も完成度が高く、その妥協しない仕事ぶりには見るべきものがあると思います。ついに商業でのコミックス発売も達成したことだし、これから要注目の作家だと思いますよ。


<12・17>
・「ラーメン大好き小泉さん」
 10月に発売されたこのコミックス、発売直後から随分と評判になっているようで、さらには作者がかつてのスクエニ作家である鳴見なるさんということで、遅れながら取り上げてみます。

 竹書房のまんがライフSTORIAで連載されているこの作品、女子高生の小泉さんがひたすらラーメンを食べるのを同級生が観察する、基本的にはこれだけのマンガです。しかし、その小泉さんの食べ方がいかにも熱がこもっていて、顔を紅潮させながら食べるその姿がエロいと評判となり(笑)、あるいはとにかくおいしそうだと言うことで、「女子高生がラーメン」という意外性もあいまって大きな話題となっているようです。

 さらには、作中で披露されるラーメンの知識がやたら詳しいことも特徴です。ラーメンの種類とその構成要素であるスープやダシの詳しい解説、家で食べる「家ラーメン」に対するもうひとつのこだわり、さらにはハワイにあるマクドナルドにはラーメンが売られているという驚きの(?)情報など、いろいろなラーメンの知識満載です。作者のラーメンに対するこだわりを存分に感じることが出来るでしょう。

 その作者の鳴見さんですが、元々はスクエニのガンガンWINGでデビューした作家で、初の連載となった「東京☆イノセント」は、妖怪+ラブコメといった楽しい作品となっていて、WING末期の数少ない良作として大きな人気を獲得していました。しかし、やがてWINGは休刊してしまい、この連載も新しく出来たガンガンONLINEへと移籍して連載を継続することになりましたが、そちらではなぜか途中で長く休載の後の再開後にようやく完結し、さらに同じ時期に創刊されたガンガンJOKERで「絶対女王政」という新連載を始めましたが、こちらはそれほどの反応を得られなかったのか、早い時期に終わってしまいました。

 この後、鳴見さんはスクエニを離れ、角川書店のヤングエースで「JA〜女子によるアグリカルチャー〜」という連載を開始します。こちらは農業をテーマにした作品になっていて、長野県の実際の村(小川村)を舞台にしてそこの公認を受けるなど、かなり本格的な作品となっていて好評だったと思います。

 終了後も同じくヤングエースで「渡くんの××が崩壊寸前」という新連載を始めるなど活動を続ける一方、少し前から竹書房でもこの「小泉さん」の連載を始め、まさか鳴見さんがこちらでも連載を始めるとはと驚きました。しかも、それが今になって一躍話題となっています。スクエニにしろ角川にしろ、これまではそれほど広く知られた作家ではなかったと思いますし、ここに来て脚光を浴びることとなって、WING時代からの読者としてはとてもうれしい。実力は確かな人だと思いますし、これからも要注目ですよ。


<12・14>
・牙の旅商人が連載再開。
 前回の日記でもちょっと書きましたが、ヤングガンガンで長らく休載していた「牙の旅商人」(原作:七月鏡一 作画・梟)が、今週から連載を再開しました。最後に掲載されたのが2012年の最後の号になりますから、約2年ぶりの復活になります。スクエニでも長期休載に入る作品はいくつもありましたが、その多くはそのまま立ち消えになっています。ここまで長く休載して再開するのは、かなり珍しいケースではないかと思います。

 「牙の旅商人」は、荒廃した世界で「武器商人」として旅を続ける女性と彼女に従う少年の旅を描くファンタジー作品で、厳しい設定と苛烈で残虐な描写が目立つダークファンタジーと言える作品です。ヤングガンガンは、以前から青年誌的なバイオレンスアクションものを積極的に手がけてきましたが、これはその中でもかなりいい線行っている実力派の連載だと思っていました。初期の頃からの人気連載「死がふたりを分かつまで」に匹敵する作品になると思っていたのです。

 一番の見所は、作画を手がける梟(ナイトオウル)さんの緻密極まる作画です。荒廃した世界の朽ち果てた廃墟の建物に代表される緻密な背景、迫力の表情を見せる生き生きした人物描写、そのいずれも素晴らしく、密度の高い画面を作り上げています。この作者、以前別の名前で「激流血」という現代ものバイオレンスアクションの作画も担当していて、その時もまったく同じ精密な絵を見せていたのですが、しかし肝心のマンガのストーリーがあまりに過激で陰惨極まるもので、さすがに抵抗が強すぎて大きな人気は出ずに終わってしまいました。それゆえに、今度はより幅広い層に楽しめるファンタジーマンガの作画に抜擢され、実際に連載開始時から反響もよく、今度こそ恵まれた仕事についたなと喜んだことを覚えています。

 しかし、連載開始から1年半以上が経ち、コミックスも6巻まで順調に巻を重ねていたのに、どういうわけかその梟さんの不調という形で、長期休載に入ることになってしまいました。それまではほとんど休載らしい休載もなく、ヤングガンガンの中でもとりわけ堅調に推移していたので、これはかなり意外であり、すぐに復帰するとも予想していました。しかし、思った以上に休載は長引き、再開までになんと2年。もう再開はしないと思っていた矢先でした。

 再開後のスタートは中断前の話からそのまま続いていて、何も変わることなく始まったことはうれしいです。しかし、これからは月1回のペースでの連載となるようで、まだ本調子ではないのかなとも思ってしまいました。しかし、ここは再開されたことだけでも喜ぶべきかもしれません。ヤングガンガンではこの手の作品からのアニメ化はいまだに出ていませんし、このマンガにもさらなる発展を期待したいと思います。

 「牙の旅商人」ヤンガンで連載再開!藤原カムイのピンナップもコミックナタリー


<12・10>
・ヤングガンガンが10周年。
 今月発売されたヤングガンガン2014年No.24において、この雑誌が10周年を迎えたと告知があり、ちょっとした記念企画が本誌で開かれています。中でも冒頭に織り込まれた10周年記念ピンナップは、あの藤原カムイが現在の連載作品のキャラクターすべてを集合絵で描き下ろしていて、まさか藤原カムイによる「咲-Saki-」「死がふたりを分かつまで」「WORKING!!」や「荒川アンダーザブリッジ」、果ては「プラスチック姉さん」のキャラクターが見られるとはと驚きました。創刊号から「紋章を継ぐ者達へ」を長く連載してきた作者による10周年にふさわしい企画だったと思います。

 スクエニによる青年誌の試みは古くからあり、2000年に創刊された「コミックバウンド」がその最初でした。しかし、これにはエニックスの作家がほとんどおらず、外部招聘の作家ばかりでさらには極端にアクの強すぎる連載ばかりで、まったくの不評でわずか5号で休刊してしまいます。この反省を受けて、のちに発刊された季刊誌「ガンガンYG」は、よりスクエニらしい作風の連載を中心に据え、こちらは反応が良かったのか、その後これがヤングガンガンとなって正式にスタートします。

 当初は「かつてガンガンを読んで今は大人になった読者」をひとつのターゲットに据えていたようで、実際にちょっと高年齢向けの少年マンガと言えるような作品が多く見られ、より直接的には「ロトの紋章」や「ハーメルンのバイオリン弾き」の続編の連載も始めるなど、こうした試みは実際にかつてのガンガン読者に好評だったようで、最初から好調なスタートを切った感があります。お家騒動の影響で落ち込みが続くガンガンやガンガンWINGよりも面白いと当初から評判でした。

 加えて、青年誌的なバイオレンスアクション、ナンセンスギャグ、人気作を多く生み出した美少女+バトル・スポーツものなど、青年誌的な作品をバランスよく盛り込み、最近ではアニメやライトノベルのコミカライズ作品も多くなっていますが、これらも押しなべて質がよく、総じて10年間よく健闘したと思います。

 ここから成功してアニメ化された作品も数多い。「すもももももも」「BAMBOO BLADE」「黒神」「セキレイ」「天体戦士サンレッド」「咲-Saki-」「荒川アンダー ザ ブリッジ」「はなまる幼稚園」「WORKING!!」と、これらすべてがヤングガンガンの連載からのアニメ化です。2000年代後半以降、スクエニは積極的なアニメ化を推し進めるようになりますが、その中心となったのは紛れもなくヤングガンガンでした。かつては毎季節のようにアニメ化作品が出てくるほどで、総じてアニメの評判もよく、この時期のスクエニマンガの躍進に最大の貢献をしました。中には「咲-Saki-」のようにシリーズ化されるほどの人気を得た作品もありました。

 最近はここからのオリジナルのアニメ化作品は少なくなっていて、かつてほどの勢いはやや衰えた感がありますが、それでもまだまだ読める連載、期待できる新作は多く、堅調を保っていると思います。長い休載から久々に「牙の旅商人」が今号から復活したのも好材料でしょう。これからもまだまだ健闘してほしいと思います。


<12・7>
・「職業・殺し屋。」と西川秀明。
 先日「新 職業・殺し屋。斬」の最終巻(5巻)が発売され、長く続いたこのマンガもついに終わりかとちょっと感慨に浸ってしまいました。前作「職業・殺し屋。」が始まったのは確か2002年だったと思うので、もう10年以上が経っていました。ハードすぎるエロ・グロとバイオレンスアクションを圧倒的な画力で描く、恐ろしく尖った作品で、作者の西川秀明さんの作品性が存分に出た傑作だと思います。

 西川さんは、昔のガンガン読者なら誰もが知っているであろうかつての人気作家で、元々はガンガン創刊前に開催された「エニックスファンタジーコミック大賞」で入選を受賞した作家です。その受賞作である「Z MAN」が、ほぼそのままの形でガンガンで連載され、これがガンガン初期を代表する作品のひとつとなりました。実は、これ以前から成年マンガ家として「まみやこまし」というペンネームで活動していたのですが、ガンガンでの作品はあくまで少年向けに非常に熱い少年マンガとなっていました。

 「Z MAN」は、少年マンガらしい熱すぎるエピソードと壮大なSF世界観、そしてそれを描く圧倒的な画力で、当時の読者の間で圧倒的な人気を獲得しました。その後、90年代後半から始まったゲームコミック「アークザラッド2〜炎のエルク〜」も、原作ゲームのエピソードをどこまでも重厚に描き、さらには作画もさらに緻密なものに進化しているなど、さらに完成度の高い傑作になっていました。どちらもアクション全開の作品ながら、一方で人間の心の深いところまでじっくりと描いていた点も評価したいところです。

 しかし、その「炎のエルク」連載後半から、他社でも連載を始め、そちらの仕事に押されて大幅にペースが落ち、それ以降はかなりの消化不良になってしまった感があります。それもあってか、連載終了後はもうガンガンで次回作が始まることはなく、さらにはエニックス自体もお家騒動の大混乱を経て様変わりする結果となり、西川さんが復帰することは二度とありませんでした。

 ところが、そのお家騒動が終わった後の頃になって、西川さんは白泉社でこの「職業・殺し屋。」の連載を始めるのです。しかも今度は青年誌ということで、少年誌では抑えてあったエロ・グロ・バイオレンス全開の内容。実は、「Z MAN」や「炎のエルク」の時から、アクションはかなり過激なものがありましたし、端々でエロスの片鱗のようなものも見えていました。それが全面に出た「職業・殺し屋。」は、まさに西川秀明の真骨頂というか、作者の本性がむき出しになった傑作と言っても過言ではないでしょう。それも、ただ過激なだけでなく、やはりかつての作品と同様、人間の心の闇と言えるところまでしっかりと描いているところも評価したい。やはりこれも紛れもなく西川作品であり、それも現時点では最後の傑作と言えると思います。


<12・3>
・「此花亭奇譚」の新シリーズがコミックバーズで連載開始!
 今回の日記は偶然にも前回からの続きとなるのですが・・・。前回書いた「此花亭奇譚」、それが「このはな綺譚」とちょっとタイトルを変えて、幻冬社の「コミックバーズ」で新連載として開始されることが、作者の天乃さんによって告知されました。再開されたらうれしいとは書いていましたが、まさか本当に直後に再開の告知がされるとは思わず、あまりのタイムリーさに喜ぶと同時に心の底から驚いてしまいました。

 やはり、全員サービスの小冊子の送付は、新連載に向けての動きだったようです。他社で連載が決まって、いよいよ全員サービスも片付けないといけないということだったのでしょうか。結局百合姫で再開されなかったことも含めて、一迅社のこの対応ぶりはさすがに文句のひとつも言いたいところですが、ここは何はともあれ新天地での連載が決まったことをまず喜びたいと思います。

 また、再開の告知に前後して、天乃さんの再開までの事情を記した書き込みにも注目されるものがありました。天乃さんによると、元の設定を変えずにそのままの形での連載を受け入れてくれたのがバーズだったらしく、「『人間の男の子を出してハーレム物にするなら連載できるよ』って提案は何社かあったのですが、それだけは飲めず、ここまで再開が長引いてしまいました」とも書かれていました。

 さすがにこうした提案を出す出版社はどうかと思いますし、天乃さんがそうした提案を飲まずにそのままの姿を貫いてくれたことに感謝したいと思います。ハーレムものという強固な定番のジャンルを求める気持ちはあるのだと思いますが、それは元々100%百合作品として描かれた「此花亭奇譚」とはまったく異なる作品にしろということに他なりません。また、今はハーレムもの自体読者の好みから少し外れてきていると思いますし、それにわざわざこだわるというのは、今の商業作品の傾向にも合っていないと思いました。

 というわけで、4年も前に休載されたお気に入りの作品が、今になってそのままの形で無事再開されるというのは、これ以上の喜びはありません。12月29日発売のバーズから巻頭カラー50ページで連載開始とのことで、今から楽しみです。


<11・30>
・「此花亭奇譚」の応募者全員サービス。
 ・・・が今頃になって届くという事件がありました。2010年発売のコミックスの全員サービスで、さすがに最初は何が届いたのかまったく分かりませんでした。もう応募したことすら忘れていたものを今になって届けるとか、さすが一迅社というかなんというか、いかにもこの出版社らしいと思ってしまいました。

 「此花亭奇譚」は、かつて同社の百合姫Sで連載されていた作品で、和風ファンタジーけもの娘百合マンガといった作品でした。此花亭という高級料亭で働くことになった狐の娘・柚が、優しい先輩たちと過ごす賑やかで楽しい日常を描いています。少女マンガ的で端整な作画も特徴的で、非常に美しいイメージも魅力的でした。同誌の中でも看板クラスの人気作品でしたが、どういうわけか途中で休載となり(作者の別作品での多忙が理由とか)、その後掲載誌の百合姫Sも休刊となってしまいました。

 作者は天乃咲哉さんで、元々はスクエニのステンシルやGファンタジーで活躍していた作家です。ステンシルで始まり、休刊後にGファンタジーに移籍した「現神姫」が代表作で、この当時から和風ファンタジーテイストの作風が特徴的でした。連載終了後は、数本の読み切りを残してスクエニからは離れ、芳文社のコミックエール!で「御伽楼館」というシリーズ連載を手がけ、そして富士見書房(現KADOKAWA)のドラゴンエイジでライトノベルのコミカライズである「GOSICK」の連載を開始。これが好評を得て4年に渡る長期連載となりました。これが一番知られた代表作かもしれません。「此花亭奇譚」もこれと同時期の作品となります。現在では電撃大王の方で「Doubt!」という連載を始めています。

 休刊した百合姫Sは、同じく「百合」をテーマにした雑誌・百合姫から派生した姉妹誌で、本誌よりも男性向けというか、男性にも好まれる絵柄や作風の連載を集めていました。いわゆる萌え系の百合雑誌とも言え、最近の読者の傾向にも合っていていいと思ったのですが、残念ながらそれほど売れ行きは良くなかったのか、比較的早い時期に休刊してしまいました。「此花亭奇譚」は、その中でも比較的少女マンガ的な端整な作画でもあり、本誌百合姫への移籍予定となったと聞いてそちらでも通用するかと思ったのですが、どういうわけか結局移籍されることはありませんでした。

 今でも完全に終わったわけではなく、再開の可能性もあるようで、今回の全員サービスの送付もそのきっかけになるかなとちょっと喜んでしまいました。もう休載から4年が経っていますし、今から本当にそれが実現すれば最高にうれしいのですが・・・。


<11・26>
・書店のあり方について考える。
 数年前にも一度書いたことがあるのですが、いま一度書店について、それも今の主流になっている一般の大型書店について考える機会を得たので、今一度書いてみます。

 少し前、芳文社のきららフォワードを地元の書店に買いに行ったら、どこに行ってもなくてがっかりしたことがありました。ひとつの書店だけでなく、どこに行ってもある雑誌がないというのはよくある話で、これはひとえに、ほとんどの書店が雑誌の配本(入荷)を取次(問屋)に一任しているからに他なりません。一度売れ行きが悪くて入荷がなくなった雑誌は、その後再び入荷されることはほとんどなくなるとのことで、以前もそうした目に遭ったことがあります。最近は中小の書店の経営が非常に厳しく、書店の数が減っている中で、残った数少ない書店に雑誌がないとなると、ネット通販以外で直接書店でその雑誌を手に入れるのはとても厳しいと言えます。

 さらには、店頭にない雑誌を取り寄せようとすると、到着するまでに数週間を要し、さらに店舗まで取りに行かなければならないという、非常に不便な状態も続いています。こうした流通のあり方では、ネット通販のAmazonには到底対抗できません。品揃えや発送の速度でAmazonに敵わないのはもう仕方ないとしても、もう少しなんとかならないものか。

 今の書店において大きく不満なのは、中小書店がなくなり主流となっている大型書店において、どこに行っても品揃えや本の配置がさほど変わらないことです。売れ線の本を大きくピックアップする程度で、後は新刊を平積みで陳列するくらいで、この書店ならではという特徴があまりない。おすすめの書籍を手書きのポップやポスターで推し出す書店も、最近は以前より減っているような気がします。まして雑誌においては、本当に配本された雑誌を置いているだけのところがほとんどです。

 そういう意味では、わたしがよく行くアニメイトやメロンブックスのようなオタク向け書店は、今の書店の中では相当努力している方だと思います。マニア向けだけあってそもそも品揃えが他の書店とは大きく違いますし、さらには店舗ごとにスタッフがお薦めの本を多数推し出していることが多い。特典をつけるというのもその一環だと思います。

 そして、できれば一般の書店も、これと同じくらいのことをやってほしいわけです。大型の書店ならば、扱う書籍や雑誌は多岐に渡り、品揃えで個性を出しやすいですし、お薦めの本をジャンルごとにもっと積極的にポップやポスターなどで推し出してほしい。むしろ、体力のあるはずの大型書店が、どこでも品揃えや店内の光景が変わらない、そのことにとても大きな危機感を覚えるのです。書店というのは、その地方を代表する文化だと思います。より良い本を選び出してその地方に文化を発信して行かなければならない。今の書店は、その役割を果たし切れていないと思います。


<11・23>
・「俺ガイル」アニメ2期放映とビッグガンガンコミカライズも継続。
 先日18日、「俺ガイル」こと「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」の10巻とビッグガンガンで連載中のコミカライズ「妄言録」5巻が同時発売されました。アニメ2期の放映もすでに来年春からに決まっていて、同日にはアニメの追加キャストやWEBラジオの復活、「このラノベがすごい!」での三冠達成の快挙も告知されるなど、いろいろとニュースも多い一日でした。

 中でも、コミカライズの「妄言録」は、ビッグガンガンでの連載ということもあって最初から追いかけていましたが、この5巻で文化祭の話が完結し、アニメ1期の放送分が無事終了することになりました。元々アニメ版の脚本を元にしたコミカライズということで、アニメより先の2012年9月から連載が始まり(アニメからすれば先行コミカライズということになります)、アニメが終了した後も最後まで無事描き切りました。

 コミカライズの作画を担当した佳月玲茅さんは、以前からスクエニで読み切り作品や「キミキス」「ひぐらし」のコミカライズ連載を描いてきましたが、この「俺ガイル」の連載は、それまでの作品に比べても特によい連載になっていたと思います。中でも、作画がずっと整ったものとなっていて、原作のキャラクターをうまく再現していたことが印象に残りました。アニメ(や原作小説)とは一部キャラクターの見た目が若干異なっていたのも特徴的で、主人公の八幡とヒロインの雪乃は、このコミカライズならではの端正な見た目になっていて、これはこれでひどく好感が持てました。個人的には端整な容姿に見える妄言録版の雪乃は特に気に入っています)

 ストーリーの構成や見せ方もよかった。基本的にはアニメのストーリーに準拠した構成ですが、それでも随所でコミックならではの見せ方があって、読ませる良質なコミカライズになっていたと思います。今回発売された6巻の文化祭編などは、悪い人間の一面があちこちで見られるかなりえげつないエピソードではあるのですが、その暗い部分を正面から余すことなく描き、一方で楽しい文化祭の様子やエンドセレモニー前でのライブシーンの盛り上がりでも見るべきものがありました。

 本来ならアニメ1期の内容を消化した時点で連載終了の予定だったようですが、アニメが好評で晴れて2期が決まったことで、こちらも2期の分までコミカライズが決まって連載継続することになったようです。これまでも面白いマンガだっただけに、この決定は本当にありがたい。今月のビッグガンガンから早くも始まるようで、とても楽しみです。


<11・19>
・信楽のおっさんのように生きたい。
 先日よりアニメの放送が始まっている「繰繰れ!コックリさん」。大変好評のようで何よりですが、その中でも化け狸のおっさん・信楽(しがらき)が大きな人気を獲得しているようで、原作から人気だったキャラクターがアニメでも変わらぬ人気を得てうれしく思いました。原作の方では、先日よりJOKERで「愚愚れ!信楽さん ―繰繰れ!コックリさん 信楽おじさんスピンオフ」と銘打たれたスピンオフ連載が始まっていて、早くも12月のコミックスの発売が予定されています。

 その化け狸の信楽、作中では普段からだらだらと生きて、酒・タバコ・ギャンブルで遊びまくり、働く気はまったくない、さらには過去に貧乏神としていくつも家をつぶしているという、もう徹底的なダメ人間として描かれていていっそすがすがしいくらいです(笑)。いわゆるオタクでニートなキャラクターは他の作品で見かけますが、それの一回り上を行くほど中年男のダメさがよく描かれていると思いました。

 しかし、普段は本当にごくつぶしなのですが、意外に含蓄のある言葉をよく語ったり、あるいは主人公のこひなを妖怪から体を張って守り、霊障からも遠ざけたりと、思わぬかっこいい活躍を見せることもあります。特にこひなを守る活躍をする回は、アニメでは6話で語られ、視聴者の間でも大いに好評だったようです。普段はダメでもやる時はやる、まさに定番のヒーロー的な姿も見せてくれるのです。

 個人的には、最近ではこの信楽のおっさんのように生きたいと思うようになりました。いや、別にヒーロー的な活躍までしたいというわけではないんです。それはあくまでたまに見せる姿、普段のダメ人間としての生き方だけでも、十分なほど魅力的だと思います。わたしも、まだ子供で中二病華やかな時代にはヒーローになりたいと思っていましたし、大人になってからはこの世の中を変えたいと思っていた時期もありました。しかし、今では、もうそんなことは一切どうでもよく、信楽のおっさんのように毎日を楽しく生きたい。そういう生き方こそが目標となっている自分に気づきました。

 さて、来月コミックスも発売予定の「愚愚れ!信楽さん ―繰繰れ!コックリさん 信楽おじさんスピンオフ」ですが、原作と比べるとちょっとシリアスな話で、信楽の口で語られる過去のかっこいい活躍(?)が見られます。作画は以前うみねこのコミカライズを担当していた宗一郎さんで、ギャグマンガの原作よりもちょっと深みのあるキャラクターの姿をよく描いていると思います。アニメで「繰繰れ!コックリさん」を知った方も、こちらの方の作品も是非チェックしてほしいですね。

 ガンガンJOKERおまけ ここでも「愚愚れ!信楽さん」が読めます。


<11・16>
・「プラネットガーディアン」について語ってみる。
 高坂りとさんの「プラネットガーディアン」と「たそがれのにわ」が、電子書籍で配信されることになったようです。高坂さんは、最近では「文学少女」のコミカライズをJOKERで連載していましたが、以前はガンガンとガンガンパワードでこのふたつのオリジナル作品を連載していたことがあります。どちらも良作だと思いますが、特に「プラネットガーディアン」は思い出深い作品ですね。

 「プラネットガーディアン」は、少年ガンガンで2001年9月号から始まった連載で、2003年11月号まで連載されました。コミックスは全4巻。決して長い連載ではなく、当時の注目度もそれほど高くなかったと思いますが、それでもこれは面白かったと思うのです。
 連載開始当時は、ガンガンの編集部は内輪で揉めに揉めていて、この連載の直後にあの「エニックスお家騒動」が起こっています。実に騒がしい時代でしたが、不思議とこの時期に始まった新連載は良作が多く、ソウルイーターの大久保篤の連載デビュー作「B壱」や、昭和の暗い時代を舞台にした異色伝奇「妖幻の血」など、後に語られる作品がいくつも出ています。そしてこの「プラネットガーディアン」も、注目すべき作品です。

 いわゆる「魔法少女」が主人公の魔法少女ものなのですが、主人公の魔法少女・古雪は公務員志望のガリ勉少女で(しかし成績はそれほど芳しくない)、魔法少女としての活動はひたすら嫌がります。「生活態度もひどく、性格も捻くれた少女が、やりたくもない魔法少女をやらされる」という設定で、既存の魔法少女ものをパロディ化したギャグマンガとなっているのです。冒頭1話で主人公が栄養ドリンクを飲んで出撃しようとするシーンがいきなり爆笑もので、魔法少女とはいえ普通の人間なんだよ・・・普通に疲れるんだよ・・・というリアルな現実を直視させるえげつない作風になっています。主人公の兄の「魔法少女なら愛と勇気を力に変えんか!」というツッコミも最高です。

 さらには、魔法少女に従うマスコットキャラも、面倒くさがりでどうしようもない性格に堕落し、平和ボケして激太りしているという有様。仲間として登場するもう一人の魔法少女は、わがままで傲慢な性格の上、最初からダーク化(いわゆる闇堕ち)している状態で、さらに加わる3人目の魔法少女は小学生の男の子で、最後には3人ともダーク化してしまうという展開まで待ち受けています。

 このように、魔法少女の定番の設定をあえて崩し、笑えるパロディギャグとなっているこの作品、メタ的なギャグも随所に見られる異色作になっています。絵はすごくかわいいのですが、その見た目からまさか中身がこんな作品だとは夢にも思いませんでした。
 こうした魔法少女の定番を崩した作品、最近では有名な作品もいろいろと見られるようになっていますが、この「プラネットガーディアン」は、2001年という非常に早い時期に連載が始まっています。まさにメタ魔法少女ものの先駆的作品ではないかと思いますし、そうした点からもっと注目されてもいい。電子書籍化を契機に未読の方は一度読んでみてはどうでしょうか。


<11・12>
・コミカライズにおいて絵は大事。
 最近ではゲームに加えてライトノベルが原作のコミカライズを盛んに行っているスクエニですが、やはりコミカライズにおいては絵柄はとても重要なのではないかと思いました。

 現在、Gファンタジーで「魔法科高校の劣等生」のコミカライズが2つ同時に行われていますが、そのうちのひとつ、後から始まった「横浜騒乱編」の絵柄にかなりの違和感があり、原作のイメージからは離れているなと思いました。コミカライズ担当の天羽銀さんは、無骨な絵柄に特徴があり、壮年の男性の姿やあるいはアクションシーンには見るべきものがあるのですが、反面主人公や周囲の生徒たちの絵柄まで無骨なものとなっていて、原作の端麗なキャラクターのイメージからはかなり外れていると思ってしまったのです。もう一方の、入学編や九校戦編のコミカライズを手がけているきたうみつなさんの絵柄が、極めて良く原作のイメージを表しているのとは対照的で、同じ原作のコミックでもちょっとイメージの違いが大きすぎると感じました。

 天羽さんは、以前は「ファイナルファンタジー12」のコミック連載も行っていて、そちらは無骨な絵柄がよくゲームのイメージに合っていて、かなりいいコミカライズになっていたと思います。やはりバッシュやウォースラのような壮齢の男性(いわゆるおっさん)の姿がとりわけよく描けていたことが印象に残っています。やはり適材適所というか、原作に合った絵柄の作家を起用することが、コミカライズにおいてとても大事だと思いました。

 また、これはずっと以前の話ですが、かつて90年代のGファンタジーで、「エクソダスギルティー」というゲームのコミカライズがあり、それを担当したのが佐伯弥四郎さんという方でした。同時期にエニックスはノベライズも出し、そちらの挿絵も佐伯さんが担当したのですが、いずれの絵も正直原作にはまるで合っておらず、また絵柄の水準もあまり高くなかったと思います。

 佐伯さんが劣った作家というわけではありません。当時は、そのギャグとシリアスがバランスよく織り込まれた独特の作風に熱心なファンが付いてましたし、Gファンの中でも実力派の作家であったことは間違いありません。実際、オリジナルの読み切りはどれも高い評価でしたが、しかしこのエクソダスギルティーのコミカライズだけは、ファンの間でもさすがに評価は高くなかったと記憶しています。やはり、コミカライズは適材適所、原作に合った作家を採用する方が、その作家の実力を真に発揮できると思います。


<11・9>
・PCゲーム(美少女ゲーム)出身のアニメ原案・脚本家を見てみる。
 今から4年以上前になりますが、ガンガンJOKERで「アカメが斬る!」の連載が始まったとき、原作担当のタカヒロの名前を見て、なぜPCゲームのシナリオライターがJOERでマンガ原作を?と驚いた記憶があります。しかし、その後連載は好調を重ね、今ではアニメ化まで達成し、そちらでも人気を博しています。
 さらには、こうしたPCのいわゆる美少女ゲームのシナリオライター出身で、今ではアニメの原案や脚本の仕事を中心とする人が、とりわけ目立つようになりました。今回は、特に今注目を集めている方を紹介してみたいと思います。

 まず、なんといっても、最も有名になったのが、「魔法少女まどか☆マギカ」のシナリオで一躍脚光を浴びた虚淵玄さんでしょう。以前はニトロプラスで「Phantom」や「吸血殲鬼ヴェドゴニア」「鬼哭街」などのハードな物語で非常に評価の高かった作家だったのですが、その後アニメのシナリオも担当するようになり、とりわけ前述の「まどか」のヒットで一躍有名になりました。その後も、「PSYCHO-PASS」「翠星のガルガンティア」「アルドノア・ゼロ」などの脚本でもさらに人気を集めていて、さらには特撮の「仮面ライダー鎧武」の脚本、また以前書いた小説「Fate/Zero」もアニメ化されており、実に多彩な活躍を見せています。

 そして、先日より有名になってきたのが、前述のタカヒロさん。大ヒットした「つよきす」などこちらも数々のゲームのシナリオを手がけ、アニメ化も達成していますが、2010年からスクエニのJOKERで「アカメが斬る!」の原作を担当し、それが人気を得てアニメも好評放送中、さらには今季からは原案を手がけたオリジナルアニメ「結城友奈は勇者である」も始まっています。

 同じく今季から始まった「天体のメソッド」の脚本を描けているのが、かつてKeyで「Kanon」などの大人気ゲームのシナリオを手がけた久弥直樹さんで、この方が今になってアニメを手がけるとはと驚きました。かつてのゲームを思わせる独特の世界観とシナリオ作りは健在で、面白いアニメになっていてうれしく思いました。また、これはかなり前の2010年の作品になりますが、同じく元Keyで著名なシナリオライターだった麻枝准さんもオリジナルアニメ「Angel Beats!」脚本を担当しており、こちらも好評を博しました。

 Keyと並んでかつての人気ゲームメーカーだったLeafで「雫」「痕」「To Heart」などのゲームを手がけた高橋龍也さんも、いまではアニメの脚本の仕事が中心になっています。「きんいろモザイク」や「ろこどる」など、自分が気に入ったアニメの脚本もいくつも手がけていて、こちらでもリアルタイムでお世話になっています。しかし、かつてLeafで有名だったシナリオライターが、今ではアニメの脚本をやっているとは、なんとも隔世の感がありますし、他にも多数PCゲーム出身の作家をアニメで見かけるたびに、時代は変わったなと思ってしまいました。


<11・5>
・「バベル式神ガール」。
 少し遅れてしまいましたが、先月10月に発売されて注目していた新刊をようやく手に入れたので、今回はそれを紹介します。コミック@バンチで連載中の「バベル式神ガール」(おみおみ)です。作者のおみおみさんは、かつてスクエニのGファンタジーやビッグガンガンで連載を行っていた作家で、他社での新作ということで連載開始当初から注目していました。

 作品のジャンルは・・・学園ファンタジーでしょうか。主人公は、高校に入ったばかりの新入生の男の子・樋田日高くん。彼は、入学式で他の人には聞こえない大きな声を聞いてしまったことがきっかけで、「部室棟未満管理部」通称「かみさま部」の部員に目をつけられ、多少強引な勧誘を受けて入部することになります。「かみさま部」とは何か。それは、学校の敷地に建つ塔のような巨大な建物「部室棟未満」を支配する巨大な女の子「かみさま」と仲良くなり、この建物を維持管理すること。

 「巨大な女の子に対する萌え」というジャンルがあるのかどうか知りませんが、このマンガに出てくる「かみさま」は、部室棟をも軽く凌駕する体長60メートルの大きさで神様ともと呼ばれる存在ながら、あんまり賢くもなくわがままで大食いで何とも子供のような天真爛漫な性格をしています。そんな彼女の愛らしい姿と、それに振り回される日高くんたち部員との賑やかな交流、それがこのマンガの最大の魅力になっています。

 加えて、この「部室棟未満」という不可思議な建物、その中に広がる雑多な空間が、またもうひとつの大きな魅力と言えます。部室棟未満とは、正規の部室棟に入れなかった小さなサークルの部員や、あるいは単に何かしたい生徒が集まっているトコロ。無数の窓が並び立つ独特の外観で、一歩中に入ればそこはまさにワンダーランド。上下左右に無数の通路や階段・梯子が伸び、サークルの所有する道具がところ狭しとそこら中に並び、その中を無数の生徒たちが活発に行き来している。どこまでも自由で明るく楽しい空間。細かいところまでモノがびっしりと描かれた、雑多なマンガの世界に魅力を感じる人には、堪えられないものがあると思います。

 作者のおみおみさんは、以前はGファンタジーで「モンデ・キント」という料理をテーマにしたシリーズ連載を行った後、「夏期限定トロピカルパフェ事件」のコミカライズを担当し、その後ビッグガンガンでこちらも料理をテーマにした「シスターハニービスケット」という連載も行っていました。しかし、これが比較的短期で終了した後、スクエニでの次回作が途絶えてしまい、どうしたのかなと思っていたところ、新潮社のコミック@バンチでまさかの新連載。その「バベル式神ガール」は、過去のスクエニでの連載と比較しても、さらに作者が描きたいものを楽しく描いている様子が感じられ、好感が持てますね。まだ1巻が出たばかりですが、これからの展開も楽しみです。


<11・2>
・実在性の拡散力がやばい。
 先日放送が始まったばかりの頃に取り上げたスクエニの珍企画「実在性ミリオンアーサー」ですが、あれから人気が一気に広まり、4話を終え5話の放送を控える今、一部のネットユーザーの間でカルト的な人気を確保した感があります。噂を聞いて面白がって動画を見始める人が一気に増加。とある記事から「UTSUWAをキメる」という言葉まで広まり、何度もUTSUWAをキメる(繰り返し動画を見る)までにはまる視聴者が多数登場することになりました。

 わたし自身も、今では最初の頃の懐疑的な見方から次第に肯定的な評価へと変わっていき、今ではすっかり楽しんで毎週の放送を待ちわびるまでになっています。なぜ、このネタに満ちてふざけているとしか思えない実写番組がここまで面白いのか。それを今回は考えてみました。

(1)バカバカしいことを制作者が本気でやって成功している。
 制作者が真面目に作っているのに失敗してネタとして笑われるコンテンツは数多くありますが、しかしこの「実在性ミリオンアーサー」は決してそんな風に笑われているわけではなく、自分からバカバカしいネタに徹したコンテンツを作り上げ、それが見事にヒットしているところに意義があります。一見してチープな学芸会レベルにしか思えない低レベルのドラマに見えて、そこかしこにふんだんにネタを散りばめて純粋に楽しめるコンテンツになっているのです。制作者たちは、以前同系の実写ドラマ「戦国鍋」を作ったスタッフらしいですが、その実力をまた見せてくれる形となりました。

(2)歌や紙芝居といった多角的なエンターテインメント。
 ドラマが面白いだけではありません。番組中に突如挿入される歌や、最後に出てくる紙芝居的なショートコメディ、オープニングとエンディングに出てくる謎のラーメン屋の一幕に至るまで、様々な娯楽要素がふんだんに盛り込まれ、しかもそのレベルがひとつひとつ高いのです。
 中でも、1話の「王のUTSUWA」で一気にブレイクした作中歌(「Britain Music」)は、歌詞も曲も押しなべてよく出来ていて、さらにはボーカルを担当する役者たちの歌唱力にも見るべきものがあります。確かにネタに満ちた歌詞が最大の売りではありますが、決してそれだけではない実力を備えているのです。他のパートもすべてそうで、ひとつひとつ決して手を抜いたところはなく、本気で楽しませてくれる。この番組にエンターテインメントの原点を見た気がしました。

(3)「ニコニコ動画で4話まで無料」というサービスがよかった。
 この番組、テレビでもやっていますが、それ以上にニコニコ動画・生放送での盛り上がりに目を見張るものがあります。元々ネタに満ちた番組であるがゆえに、みんなでコメントで突っ込みながら見るニコニコでの視聴によくマッチしているのがその理由だと思いますが、それと同時に、「1話から4話までいつでも無料」で動画が見られるというサービスが、実に効果的に働いています。4話までいつでも見られることで、噂を聞いて遅れて見てみようと思った人が、いつでも気軽に見ることが出来たのです。これにより、少し放送が進んだ後でも、遅れて興味を持った視聴者がどんどん増える結果となり、一気に盛り上がったのです。普通のアニメだと1話のみ無料が普通で、あとは1週間の期間限定で無料というシステムなのですが、このコンテンツは4話まで完全無料というサービスが結果的に大成功をもたらすことになりました。今後こうしたコンテンツ配信のあり方も増えるのかもしれません。


<10・29>
・ガンガンJOKER連載「賭ケグルイ」。
 先日ゲームの話題を取り上げたので、それに関連して今回はギャンブルのマンガを紹介したいと思います。ガンガンJOKERの連載で、先日コミックス1巻が発売された「賭ケグルイ」(原作:河本ほむら・作画:尚村透)。ガンガンJOKERには、アニメ化された作品だけでも「妖怪×僕SS」「一週間フレンズ。」「アカメが斬る!」など様々な作品がありますが、ここで殺伐とした(笑)ギャンブルマンガを持ってくるとは思いませんでした。

 ゲームの舞台となるのは、富裕な子供たちが通う高校ですが、学内ではギャンブルの強さで地位が決まるという掟があり、大金をかけたギャンブルに負けて弱いとされた生徒は蔑まれ虐待されるという恐ろしい慣習がまかりとおる学園となっています。そんな学園に入ってきた蛇喰夢子という少女は、そんな学園の姿をむしろ喜び、大金をかけたギャンブルに次々と挑むことになります。

 こうしたギャンブルやゲームを扱ったマンガは、過去にもいくつも例があり、これもまた定番の作品のひとつかもしれません(学校を舞台としているという点では「ギャンブルフィッシュ」が一番近いかな?)。ただ、このマンガがいかにもJOKER、もしくはスクエニらしいのは、主人公がかわいい女の子であり、対戦する生徒達もその多くが女の子であるということ。つまりは萌え、もしくはかなり扇情的なエロ表現まで含む作品となっていて、それが大いに注目されているようです。さすが「咲-Saki-」を生み出したスクエニのやることは一味違う。

 キャラクター達も非常に魅力的ですが、登場するギャンブルの中身もかなりいい線行っていると思います。連載序盤の1巻では、出てくるギャンブルはすべて作者の考えたオリジナルとなっていて、そのルールを見極めつつさらにはイカサマまで見破り凶悪な対戦相手を打ち破る爽快感がなんとも面白い。オリジナルのゲームと言う点では「ライアー・ゲーム」や「カイジ」などの先行する名作を思い出しますが、これらの作品がひとつのゲームを終えるまでがかなりの長期戦なのに対して、こちらは今のところ1話か2話の短期で終わるものがほとんど。さくさくとゲームの結末を楽しめるギャンブルものとして読者をひきつけるものがあると思います。

 また、主人公の夢子は、金や何か大きな目的のためにギャンブルをやっているわけではなく、純粋にギャンブルの快楽のためにのめりこんでいるという設定も面白い。これがタイトルの「賭ケグルイ」の由来にもなっていて、普段はかわいい女の子がギャンブルの際に見せる狂気とも言える表情がなんとも印象的なマンガになっています。

 原作者の河本さんは、JOKER新人賞の出身のようですが、それよりも同じくギャンブルを題材にしたウェブコミックで有名な方のようです。一方で作画を担当する尚村さんは、JOKER初期に「失楽園」という連載をすでに行っていて、そこでも繊細ながら残虐なシーンも躊躇なく描く作画が印象的でした。今回もさらに作画は進歩しているようで、適度に柔らかさが加わって色気のある絵を見せてくれます。実力のあるウェブコミック作家と作画担当者が強力なタッグを組んだこの作品、編集部もかなり推しているようで、2巻の発売もわずか2ヵ月後の12月に予定されています。このところアニメ化作品が相次いでいて好調を推移しているJOKERですが、ここでまたひとつ注目の作品が出てきましたよ。


<10・26>
・「R-Rivals」というカードゲーム。
 一迅社の雑誌「Febri」のレビューコーナーで「R-Rivals」というカードゲームが紹介されていました。コンピューターゲームのカードゲームではなく、アナログのカードゲーム。それも、MTGや遊戯王のようなTCG(トレーディングカードゲーム)ではなく、16枚という少ない枚数のカードで2人対戦を行うシンプルなカードゲームでした。「Febri」のレビューコーナー(「Febre RECOMMEND」では、アニメやマンガ、ゲーム、ライトノベル、映画や特撮など様々なコンテンツが取り上げられますが、その中でもこのカードゲームはひときわ目を引きました。

 ゲームの制作者は、カナイセイジさんといって、同じく彼が制作したカードゲーム「ラブレター」が大ヒットし、海外でも高く評価されてドイツで賞を受賞したばかりの気鋭のデザイナーです。そんな彼の新作ゲームがこの「R-Rivals」で、先月9月に発売されたばかりの最新作となっています。

 ゲームのルールはざっと以下のようなもの。ゲームに使うのは8種類×2枚の全16枚のカード。2人のプレイヤーがそれぞれ8種類のカードを1枚ずつ(計8枚)持って対戦します。具体的なカードの種類は、「0:道化 1:姫 2:密偵 3:暗殺者 4:大臣 5:魔術師 6:将軍 7:王子」となっていて、基本的に数字の大きいカードほど強いカードです。それぞれのプレイヤーが1枚ずつカードを同時に出していって、大きい数字を出した方が勝ち。それを繰り返して先に4勝した方が勝利というシンプルなルール。

 しかし、それぞれのカードに能力があって、この能力を駆使した駆け引きが楽しいゲームになっています。
 例えば、「密偵」のカードは、次のカードを出すときに相手に先にカードを出させることが出来ます。「将軍」なら、次に出すカードの強さに2をプラス出来る。「大臣」なら、その勝負で勝てば2勝分得られます。「道化」が特殊で、数字は0と最低だが誰と戦っても引き分けとなり、次のカードに勝敗が持ち越しとなります。ただ「魔術師」だけは、それらすべてのカードの能力を無効化できる。とまあそんな具合です。
 さらには、「姫」は道化以外のどのカードよりも数字の低い最弱のカードですが、 最強のカードの「王子」にだけは勝つことができ、さらにはその時点で無条件にゲームに勝利となるという特殊ルールも盛り込まれています。

 全体的に、カイジに登場した「Eカード」を彷彿とさせるようなルールですが、ただEカードのルールはあまりに単純すぎて実際にゲームとして遊ぶには物足りないのに対して、これはカードの種類と能力が増え、適度にルールが複雑になって、繰り返し遊べる良質なゲームに仕上がっているように感じました。

 最近では、コンピュータを使わないアナログゲームも人気を集めており、中でもプレイヤー人口の多いTCG(トレーディングカードゲーム)と、ネットのリプレイで近年盛り上がりを見せているテーブルトークRPGの人気が、特に高いようです。しかし、この「R-Rivals」のような(TCGでない)伝統的なカードゲームやボードゲームも、根強い人気を集めているジャンルとなっているようです。もっとこうしたゲームも注目され、プレイヤーが増えると楽しいなと思いました。


<10・22>
・地方発のアニメも見逃せない。
 このところ、地方限定でそこのテレビでしか放送されないアニメが、いくつも企画され放送されるようになり、さらにはそれがネット配信で全国でも見られるようになったことで、次第に話題になってきた感があります。

 中でも最も有名になったのが、北海道限定アニメ「フランチェスカ」です。元々は北海道発のご当地アイドルキャラクターで、のちにテレビアニメ化されることとなり、この7月から放送が始まっています。「歌って踊れるアンデッド系アイドル」フランチェスカを主人公に、「ゾンビとして現代によみがえった石川啄木と新選組が北海道侵略を企て、それを阻止するためクラーク博士らが最終兵器のフランチェスカと共に立ち上がる」というかなりぶっとんだ設定とストーリーのギャグアニメになっています。

 当初は、1話約10分という短い時間で、ぶっとんだギャグと設定もいまいち他のアニメと比べて見劣りがし、さらには冒頭でなぜか実写パートが入るなど(4話まで)、どうも地方発の企画特有の低予算で垢抜けないものになってしまっていると思いました。しかし、その後2クール目に入るまでに回を重ねるうちに、次第に話し作りがこなれてきて素直に面白いと思えるようになってきました。スタッフが制作に慣れてきたとも感じられ、今では普通のアニメとして十分楽しめるものになっているようです。北海道各所の名所が毎回ふんだんに登場するのも魅力で、一種の観光推進アニメとしても面白いと思います。

 一方、沖縄限定のアニメとして2012年に放送されたのが、「はいたい七葉」という番組。かわいい女の子3姉妹とキジムナーの精霊たちとの交流を描くコメディとなっています。こちらは、1話5分枠とさらに短いアニメですが、しかし当初から十分な面白さがあり、かわいいキャラクターと過ごす楽しい日常がよく描かれていると思います。正直1話わずか3分程度で終わるのがもったいないくらいで、好評を受けて翌2013年に第2期も制作、放送されています。

 さらには、四国限定のアニメ(?)として、「おへんろ。」という番組も、この5月から放送されています。アニメと言うよりは実写で四国八十八箇所や周辺のスポットを紹介する旅番組で、作中でアニメで描かれたキャラクターが登場して各所を紹介するという作りになっています。元はアニメ制作会社・ufotableの企画による新聞コラム記事やコミックで、テレビ番組のアニメ部分も本格的に作られています。また、ufotableは、四国徳島で開催されるイベント「マチ★アソビ」の企画運営も行っており、積極的に地方発の企画を推進しているようで、こうした動きが出てきたことも評価されると思います。

 これらの地方限定アニメ、どれも予想以上に面白い作品となっていて、地方で企画・制作されるアニメも侮れない、見逃せないものがあると思いました。個人的にも、こうしたアニメの出来を見て、地方でも十分やれることはあると勇気付けられた気がします。


<10・19>
・テラフォーマーズのアニメは1巻からやるべきだった。
 先日よりあの大人気マンガ「テラフォーマーズ」のアニメが始まりましたが、視聴者の反応はまだいまひとつのようです。わたしも、原作のマンガが好きなのでかなり期待して待っていたのですが、実際に見てみるとちょっとこれは期待したほどではなかったかな・・・と思ってしまいました。原作が人気でもアニメはそれほどでもないといったことは珍しくないですが、しかしこれはかなりはっきりと残念な点が目立ちます。

 まず、真っ先に見た人の目に留まるのが、あまりにも頻繁に出てくる残虐シーンへの規制でしょう。テラフォーマーズの原作は、キャラクターたちが無残にもどんどん敵のゴキブリに殺されて死んでいくのがひとつの大きな特徴となっていますが、アニメではその残虐な死亡シーンをそのまま放送することが出来なかったのか、ほとんどのシーンで「何も見えない」と言えるほど露骨な画面カットが行われていて、何が起こっているのかすら分からないシーンが多数出てきてしまいました。これでは視聴者は興ざめでしょう。

 こうした規制は仕方ないとしても、アニメの構成自体にもさらに大きな疑問があります。このテレビアニメ、原作コミックスの2巻から始まっていて、1巻のストーリーはコミックスに付くOVAでアニメ化されるという企画になっています。
 原作の構成を簡潔に説明すると、1巻が1部・2巻以降が2部とも言える構成で、1巻のストーリーが完結して20年後のストーリーが2巻以降で描かれることになっています。2巻以降が本編で1巻がプレストーリーとも言い換えられますが、その1巻だけテレビで放映しないというのは、ちょっとというかかなり残念な決定だと思います。

 1巻のストーリーは、それだけで濃くまとまっていて十分なほど面白く、また主人公の小町小吉ら一部のキャラクターは2巻以降にも登場するので、まずそちらを読んでから2巻へと移ることで、読み応えもまったく変わってきます。また、2巻のストーリーから始まったアニメでは、まずキャラクターの紹介や掘り下げや設定の説明から始まり、肝心の火星へ行くのが2話以降ということで、つかみのインパクトも若干弱いと感じました。アニメから見始めた視聴者からも、まずは様子見といった反応が多く見られ、大人気だった原作コミックのアニメ化にしてはいまいち弱い反応だったと思います。最大の売りである火星やゴキブリを真っ先に出せば、インパクトはまるで変わったとも思うのですが・・・。

 いずれにしても、1巻の面白いストーリーをテレビアニメでやらないというのは、ちょっとまずい企画であったように思いました。これほどの評価の高い人気マンガだけに、奇をてらわずに素直にそのままアニメ化してもよかったのではないでしょうか。


<10・15>
・コミックアース・スターが休刊。デジタル版のみの刊行に。
 先日、「ヤマノススメ」「ノブナガン」「てーきゅう」などのアニメ化作品を出している雑誌「コミック アース・スター」が休刊し、デジタル版、すなわちウェブ雑誌のみの刊行になるというニュースがありました。このコミック アース・スター、創刊当時からいまひとつクオリティが安定せず、連載本数もおしなべて少なく雑誌も薄いままで、いつ休刊してもおかしくはない雑誌だとは思っていましたので、「ああついにそのときが来たか」と思ってしまいました。

 「コミック アース・スター」は、3年ほど前に「アース・スター エンターテインメント」という新興の出版社によって創刊された雑誌です。一時期の雑誌の創刊ラッシュの時代からは遅れて創刊されたこの雑誌、新しい出版社からの意欲的な試みは歓迎したかったのですが、当初から声優を表紙や特集を雑誌の中心に据えたり、創刊前からインターネットラジオを始めたり、いきなりコミケの企業ブースの出展に力を入れたり、どうもそうした企画ばかりが目立ち、肝心のマンガのラインナップ、内容が伴っていないように思われました。

 創刊後しばらく経ってもその傾向は変わっておらず、さらには当初からメディアミックスを全面に押し出す方針で、アニメ化企画を積極的に立ち上げるようになるのですが、その多くはどうも低予算で内容もぱっとせず、こちらでも「アース・スターのアニメはよくない」という評価が定番になってしまいました。

 しかし、最近では、そのアニメ化で、前述のように「てーきゅう」「ノブナガン」「ヤマノススメ」などの良作が少しずつ出てくるようになり、特に今アニメ2期が放送中の「ヤマノススメ」は、アース・スターのアニメとは思えないくらいの作画クオリティとストーリーの充実ぶりが顕著で、これは文句なく面白いと言える良作に仕上がっています。そんなアース・スターに対して、最近は評価を変えようと思っていた矢先の休刊決定でした。

 先日のコミックブレイドもそうですが、最近は不振に陥った紙の雑誌がウェブ雑誌へと移行するという流れが、定番となってきた感があります。ウェブ雑誌のみだと露出の面で不利じゃないかと思いますし、これから先さらに不振に陥るのではないかと心配ですね。


<10・12>
・実在性ミリオンアーサー。
 先日より見た人の間である意味すごい話題になっている「実在性ミリオンアーサー」。ソーシャルゲームである「拡散性ミリオンアーサー」をなんと実写でドラマ化。キャストはすべて女性という点、予告画像からして見るからにチープに思える衣装やセットを見て、「これはとんでもないネタのような企画だな」と思ってはいたのですが、実際に見ると予想をさらにはるかに超えるひどいネタの嵐でした。

 一応原作ゲームのミリオンアーサーのストーリーに沿ってはいるようですが、冒頭で一般兵士が飲みながらドラマを見ているという茶番、途中で頻繁に入る濃い画像のカットイン、あまりにもグダグダな演技とコスプレとしか思えないチープな衣装にセットと、単なる三流ドラマでなく、最初からネタドラマとして作られていることは明らかでした。

 特にひどいのが、開始5分過ぎくらいから流れるミュージカルシーン(?)です。あまりにバカバカしい歌詞を大真面目に歌うそのシーンを見て、配信しているニコニコ動画のコメントでは爆笑に次ぐ爆笑の大反響。とりわけ1話で流れる歌詞のUTSUWA(器)という部分は、器という言葉がゲシュタルト崩壊を起こすほど笑いが止まりませんでした。

 正直予想に輪をかけてあまりにもひどかったので、拡散性ミリオンアーサーを最初からやっているユーザーのわたしとしては、なんで普通にアニメ化してくれないのかとがっくりきてしまいました。しかも、この企画になんと1億円もかけているようで、スクエニというところは金があるんだなあと別の意味で感心してしまいました。

 しかし、1話のみならず2話まで見てしまって、「これはこれでありかな」と思えるようになりました。ネタとしては笑いが止まらないほど面白くて、ストーリーやキャラクターによっては意外に出来のいいコスプレなど一応見られるところもある。というか、たまにはこういうのがないと世の中面白くない(笑)。このせちがらい世の中に注ぎ込まれる一服の清涼剤として、何かしらの存在意義があるのではないかと思いました。

 実在性ミリオンアーサー公式
 実在性ミリオンアーサー ニコニコチャンネル


<10・8>
・この秋唯一のスクエニアニメ「繰繰れ!コックリさん」。
 4つも放送されて盛況だった夏のスクエニアニメから一転、この秋にはスクエニ原作のアニメは1本しかありません。ガンガンJOKER連載の「繰繰れ(ぐぐれ)!コックリさん」(遠藤ミドリ)です。

 ガンガンJOKERの連載でも異色のギャグマンガとも言えるこの作品。イケメンのコックリさん(狐の動物例)が取り憑いたおかっぱの少女・こひなは、実はカップラーメン大好きな電波系少女で、彼女の奇抜な言動に翻弄されまくることになります。さらに彼女の元には狗神(いぬがみ)の青年も登場、ストーカー的な言動でひたすらこひなを溺愛する、どうしようもない変態としてコックリさんを困らせることになります。

 連載中盤からは、さらに化け狸の信楽(しがらき)というおじさんが登場。彼も勝手にこひなの家に住み着くのですが、酒・博打・女好きで日がな一日まったく働かずに遊んでいるという、どうしようもないダメ人間(ダメ妖怪)ぶりが憎めない愛すべきおっさんとなっています。このキャラクターはとりわけ人気があったらしく、最近になって「愚愚れ! 信楽さん ―繰繰れ! コックリさん 信楽おじさんスピンオフ―」というスピンオフ連載まで始まってしまいました。

 イケメンの男性キャラクターが何人も登場するということで、女性にもかなり人気があるようですが、JOKER連載だけあって中性的な作風で、何よりギャグが面白く、誰もが楽しめるマンガになっていると思います。このあたりは、同じJOKERの連載である藤原ここあさんの「妖狐×僕SS」あたりに近い感覚もあると思います。あるいはGファンタジーのギャグマンガで先にアニメ化された「キューティクル探偵因幡」とか、そういった作品が好きならより楽しめるのではないでしょうか。

 2011年の連載開始当初からしばらくは、雑誌でそれほど大きな扱いではなかったので、昨年アニメ化が発表された時には驚きましたが、連載を重ねるうちに高い人気を獲得していたようです。アニメでその面白さがより多くの人に知られるとうれしいですね。他のスクエニアニメの例に漏れず、これもまた今季のダークホースとして人気を得られそうで期待しています。


<10・5>
・ギャグ王復刊か?と思ったが・・・。
 先日、「スクエニ『ギャグ王』期間限定で週刊配信というニュースがあり、えっあのギャグ王が期間限定で復活するの?と喜んでしまったのですが、どうやら違ったようです。ガンガンONLINEで、スクエニ発のギャグマンガを集めたこのWEBマンガ誌として、期間限定で配信を行う企画らしく、「ばらかもん」「男子高校生の日常」「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」「帰宅部活動記録」などのアニメ化された中心に、山内泰延や河添太一、敷誠一らのオリジナル作品も掲載されるようです。基本的に昔の話の再録で、その点でも新鮮味はなくがっかりしてしまいました。

 同じことを思った人は他にも多くいるようで、昔のギャグ王の読者からがっかりしたコメントが数多く寄せられ、中には昔のギャグ王のお気に入りの作品を上げる人もいました。中でも、三笠山出月の「うめぼしの謎」と坂本太郎の「最後の楽園」を挙げる人は多く、とりわけ高い人気があったことを思い出しました。

 ギャグ王(月刊少年ギャグ王)は、1994年3月にエニックスから創刊された雑誌で、エニックスの雑誌としては91年創刊のガンガン、93年創刊のGファンタジーに次ぐ3番目の雑誌となります。雑誌名どおり短めのギャグマンガ(ショートギャグや4コマ)が中心の雑誌となっていて、とりわけドラクエ4コマの作家の連載が多かったのが特徴的でした。少年ガンガンもドラクエ4コマがひとつの母体となっていましたが、ギャグ王はより直接的に「ドラクエ4コマから生まれた雑誌」と言える存在だったと思います。

 読者の対象年齢は低く、小学生をメインターゲットにした雑誌でもありましたが、しかし実際についた読者は子供たちばかりではありませんでした。むしろ、ガンガンとそれほど読者層は変わらず、ガンガンを読んでいた読者がそのままギャグ王も読む、という感じだったと思います。実際に人気が出た作品も、前述の「うめぼしの謎」「最後の楽園」や、「勇者カタストロフ!」(牧野博幸)、「幻想大陸」(夜麻みゆき)のような、上の年代の読者も楽しめる作品が多く、ガンガン同様にコアな読者がついた雑誌になりました。

 しかし、最初のうちは大人気だったこの雑誌、途中で大きく崩れてしまいます。編集部がいきなり方針転換を始め、これまで人気だった連載の多くを次々にやめさせ、代わりに露骨に低年齢向けと思われる作品を投入したのです。本来想定していた低年齢向けの雑誌にしようという思惑が強く感じられましたが、新しく始まった連載の多くは芳しくなく、それまでの読者はたくさん離れ、想定していた小学生あたりの読者にもさっぱり見向きもされませんでした。一気に部数も落ち込み、書店で置かれる数の減り方を見ても、大きく落ち込んだことは明らかでした。

 最後には立ち直ろうという兆しもあり、99年の初頭から誌面を大きくリニューアルし、表紙デザインを大きく変え、多数の新連載を始めました。しかし、これは完全に失敗したようで、リニューアル後わずか3号で休刊となってしまいました。この休刊がエニックスの読者に与えた衝撃は大きく、しばらくギャグ王の休刊を惜しむ声は後を絶ちませんでした。そして、今でもこうして話題に上るくらいで、エニックス・スクエニの雑誌の中でも記憶に残る名雑誌ではないかと思います。

 ギャグ王(期間限定10/2〜12/3まで)ガンガンONLINE
 スクエニ「ギャグ王」期間限定で週刊配信コミックナタリー


<10・1>
・男女を選ばないというスクエニ作品の強みを発揮。
 この夏のアニメもほとんど終了して、スクエニ原作の4つのアニメ「月刊少女野崎くん」「ばらかもん」「アカメが斬る!」「黒執事 Book of Circus」のうち、2クール放映される「アカメが斬る!」以外はすでに終了しています。

 この4つのアニメはどれも評判がよくて、スクエニをひいきに追いかけてきたわたしにもうれしい限りだったのですが、中でも「月刊少女野崎くん」と「ばらかもん」の人気・評価の高さは突出していました。良作が多かった夏アニメの中でもトップクラスの評価を獲得しているようで、先日発売された「月刊少女野崎くん」のBD/DVDがアニメイトで売り切れていたというニュースもありました。

 このふたつの作品に共通していることは、男性・女性問わず幅広い視聴者に楽しまれていることです。「月刊少女野崎くん」は、作者の椿いづみさんが「花とゆめ」の連載作家であり、かつ少女マンガ家をテーマにした作品ということで、どちらかと言えば女性に人気の出るアニメかなと思っていましたが、ふたを開けてみると男性にも大人気で、それが突出した人気の最大の原動力となったのではとも思いました。もともと少女マンガを読む男性読者は多いと思いますが、「野崎くん」の場合、男性でも抵抗なく楽しめるギャグやコメディの面白さ、キャラクターのかわいさが備わっていたと思うのです。

 「ばらかもん」については、さらに男女双方が楽しめる作風だったと思います。イケメンの書道作家が主人公だったり、女性受けする要素もあったとは思いますが、それ以上に五島に住む屈託のないキャラクターたちの楽しい個性が際立っていて、誰もが素直に笑って楽しめる作品になっていると思うのです。誰も子供の笑顔には勝てない。原作からしてすでに最高に面白かったのですが、アニメもその魅力を最大限に出していたと思います。これは「野崎くん」にも言えてますが、今は原作の魅力をアニメでそのまま楽しめる、本当に恵まれた時代になりました。

 こうした男女を選ばない作風は、スクエニ、あるいは昔のエニックスの最大の特徴で、最近でも「妖狐×僕SS」のような藤原ここあ作品でも顕著に感じられました。こうした作品が、アニメでも認められて高い人気を得て、読者もたくさん増える時代になったのは、本当に喜ばしいことだと思います。


<9・28>
・森田柚花さんについて今一度語ってみる。
 ゆっくりと不定期で取り上げている、かつてのブレイドで休載などで消えてしまった作家を取り上げる記事。斎藤カズサ、箱田真紀さんに続いて、今度はブレイドからの新人作家である森田柚花さんを取り上げたいと思います。

 森田さんは、ブレイドでもまだ初期にあたる2004年にデビューした作家で、「DANCE DANCE DANCE!」が初連載作品にしてこの雑誌唯一の連載となりました。これに加えて読み切り作品もいくつか掲載され、当時のブレイドでは相当期待された新人として扱われていたと思います。

 その「DANCE DANCE DANCE!」ですが、タイムトラベルファンタジーとも言える作品で、クリスタベルという美しい街に住む少女ロッタが、ある日不思議な青年に導かれ、100年前の荒廃したクリスタベルに飛ばされてしまうというもの。彼女は、そこで出会った男の子たちと協力し、美しい街を取り戻すために奔走することになります。
 絵柄といい内容といい極めて中性的な作品で、昔のガンガン系を思い出させる作風がたちまち気に入りました。とりわけ女の子の読者に好まれる作風とも言え、当時アニメイトから出ていた「マクベス」というビジュアル系コミック誌にも「NAKED BLACK」というファンタジー作品を掲載、そちらでも人気を博していました。

 ブレイドの編集部もこの作品にはとりわけ力を入れていたようで、毎回あらすじと作品紹介のページが充実していたを思い出します。また、同時期に掲載された読み切りも良作が多く、シリアスなファンタジーあり笑えるコメディありで楽しませてくれました(千葉県の地名が元ネタのキャラクターが出てくる賑やかなコメディ「みもみ」が特に印象に残っています)。

 しかし、そこまで期待されていたはずの森田さんですが、ある日突然連載が途絶え、その後二度と復活することはありませんでした。休載に関して雑誌からはまったく何も説明もなく、ブレイド編集部の姿勢にあきれ果てたことを思い出します。森田さんは、その後角川書店へと活動の場を移し、「.hack//G.U.+」や「テイルズ オブ ヴェスペリア」のコミカライズを手がけています。そちらの仕事の方がおそらく有名だと思いますが、個人的にはやはりオリジナルの良作ファンタジーである「DANCE DANCE DANCE!」が忘れられません。コミックスもわずか2巻で終わってしまい、本当に残念すぎる良作でした。


<9・24>
・コミックGOTTAを語ってみる。
 先日、コロコロコミックよりちょっと上の年齢層をターゲットにした姉妹誌「コロコロアニキ」が創刊されるとの告知がありました。コロコロコミックは、以前より同様のコンセプトの姉妹誌を何度も出しており、今回もまたかと思ってしまいました。予告を見ると、ちょっと前に流行ったホビーと今のホビーを合わせたホビーマンガを中心に、昔の作家や昔の連載の復刻も加えたオリジナルの連載がいくつかといった構成のようです。基本的には本誌コロコロと同じくホビーマンガが中心の構成ということで、これは2010年に創刊されたコロコロGとほぼ同じスタイルです。コロコロGはすぐに休刊してしまったのですが、こちらはうまくいくのでしょうか。

 個人的には、高年齢向けに本格的な連載マンガで構成された雑誌を期待していました。かつての姉妹誌でも、1999年に創刊されたハイパーコロコロとその後継誌であるコミックGOTTAは、そのようなスタイルの雑誌でした。ハイパーコロコロは2号で終了し、GOTTAも約1年半で休刊と、成功はしませんでしたが、中には面白い作品も見られたと思います。

 GOTTA創刊当初は、原哲夫・江川達也・麻宮騎亜・柴田亜美などの外部から招聘したいわゆる大物作家の連載を、鳴り物入りで看板に据えていましたが、それらの作品はどれもいまいちぱっとせず、多くが短期で終了してしまいました。むしろ、脇を固める連載陣の方に面白い作品が多かったと思います。

 中でも注目していたのは、まずは橋口たかしの「シザーズ」。のちに「焼きたて!!ジャぱん」のヒットで有名となる作家の、そのひとつ前の連載です。主人公が日本一の美容師になるために活動する美容師マンガで、王道少年マンガとして手堅い面白さがありました。橋口さんの連載では、先に連載されたストIIギャグ4コマや、のちの長期連載である「焼きたて!!ジャぱん」や「最上の命医」の方が有名で評価も高いと思いますが、これもよく出来た佳作だったと思います。

 あのマジック・ザ・ギャザリング(MTG)のコミック「MAGIC URZA & MISHRA」(小野敏洋)も興味深い作品でした。MTG(カードゲーム)のマンガではありますが、主人公たちがカードバトルをするマンガではありません。ゲームの世界を舞台にした本格ファンタジーマンガで、迫力の演出とストーリーに惹かれるものがありました。MTGの世界で有名なウルザとミシュラの兄弟の物語で、少年時代から青年時代のストーリーを、一部設定の変更はあるようですが基本的に原作の小説に忠実に描いています。最後まで続きが気になる展開だったのですが、残念ながら掲載誌の休刊により中途で終わってしまっています。原作のカードゲームでは、この後さらにさらに壮大な物語が続いていくのですが、これは「第一部完」のような形でいわば未完での終了。GOTTAの休刊で最も残念な出来事でした。


<9・21>
・「魔法使いの嫁」(ヤマザキコレ)2巻発売。
 いつの間にか話題になっていた「魔法使いの嫁」ですが、その2巻が先日発売されました。当日、たまたま大阪の日本橋の書店をあれこれ回っていたのですが、いくつかの書店で平積みで大きく扱われていて、その注目度を実感することが出来ました。

 「魔法使いの嫁」は、人外の魔法使いエリアスと、そのエリアスに買われた少女チセの物語です。親しい身寄りも泣く不幸な人生を送ってきた少女・チセが、ある日人外の紳士に買われることで、イングランドの彼の家へと連れて行かれ、彼の弟子となり様々な魔法的・妖精的な体験をするというファンタジーストーリー。発売直後から高い関心と評価が寄せられているようですが、わたしの好みにもこの作品はぴたりと当てはまりました。

 個人的に気に入った理由、それはもちろん、この作品が極めてガンガン的、あるいは創作的な作品であるからに他なりません。極めて中性的で魅力的な絵柄、「一緒に行きましょう」というべきふたりの関係、そして何より雰囲気溢れるファンタジーであること。背景までしっかり描かれた雰囲気ある作画と中性的なかわいさもしくはかっこよさを内包するキャラクター、「嫁」とは言いつつも性的あるいは恋愛的な描写は希薄で、むしろ信頼のおけるパートナーとして共に行こうというエリアスとチセの関係、そしてイギリスあたりの妖精や魔法の伝承をよく取り入れた豊かなファンタジー描写。これほどぴたりと好みにはまる商業作品は中々ありません。

 もともと、この作品はコミティアで出された同人誌の作品であり、それが会場でマッグガーデンの編集者の目に留まり、商業化するという運びになったようです。まさにコミティア的、創作同人的な作品であり、そのテイストそのままで商業化されたのは本当にうれしい。掲載誌のコミックブレイドの英断に感謝したいと思います。

 作者のヤマザキコレさんは、以前芳文社のきららフォワードで「ふたりの恋愛書架」という連載を行っていました。この「魔法使いの嫁」が評判を呼んだことで、こちらの作品も注目を集めているようです。コミックブレイドの連載の中でも、これは最大の注目作だと思いますし、このところさらに不振を極めているブレイドに、ようやくひとつ期待作が出てきたと思いました。これはどこまでも追いかけていきますよ。

 魔法使いの嫁/ヤマザキコレマッグガーデン・コミック・オンライン
 ヤマザキコレ/魔法使いの嫁A9/10発売 (EzoYamazaki00) | Twitter


<9・17>
・スクエニ(エニックス)のライトノベルについて考える。
 前回の続きで、なぜスクエニのライトノベルは成功しなかったのか、その理由を今回は考えてみます。

 まず第一に考えられる理由として、最後まで「文庫」が実現しなかったことがあります。エニックス・スクエニのライトノベルは、そのほとんどが新書での刊行で、最後まで文庫レーベルで出ることはなかったのです。
 いや、実は、最初期のほんの一時期において、文庫を出していたことがありました。それは、まだ少年ガンガンが創刊されるかされないかという時代の90年前後の話で、他のドラクエ関連書籍などと共に、オリジナルやアニメのノベライズの小説が出ていたことがあったのです。しかし、これらは91年という極めて早い時期に終了し、その後のライトノベルは一貫して新書(もしくはB6版)での刊行となっています。

 新書での刊行ということで、1冊の価格は文庫よりもおしなべて高くなり、これが売れ行きにかなり響いたのではないかと思っています。実際、安いもので500円程度でも買えるものもある文庫のライトノベルに対して、こちらは800円程度とかなり高かった。この数百円の差はあまりに大きいものがあったと思います。なぜスクエニが新書形式にこだわったのか、最後まで文庫レーベルを創刊しなかったのか、それが不思議なところです。

 そしてもうひとつ、その新書で出た小説も、毎月の刊行点数があまりに少なかったことも大きい。最初に刊行されていたEXノベルズが毎月1〜3タイトル程度、その後のスクウェア・エニックス・ノベルズに至ってはなんと年2〜3冊程度、その後のガンガンノベルズでもせいぜい多くて月数冊程度です。スクウェア・エニックス・ノベルズなどは、小説大賞受賞作のみが刊行されるという状態で、極端に消極的な出版体制だった点は否定できません。あまりにも刊行点数が少ないということで、レーベルとしての盛り上がりは最後まで見られませんでした。これは、毎月10点以上の多数の新刊を出し続け、盛り上がりを維持してきた電撃文庫やMF文庫Jなどとは、あまりにも対照的です。

 このように、購入者側から見ても、単価が高いうえに大した点数も刊行されず、買いづらく印象に乏しいレーベルだった点は否めません。これでは、スクエニがライトノベルを出していたことを知らない人も大勢いると思いますし、あるいは仮に知っていても、買いたい本はそれほど見つからなかったのではないでしょうか。ウェブ配信で反響を得たライトノベルが次々と商業化され、あるいは人気ライトノベルが次々とアニメ化されている昨今、スクエニがライトノベルで成功しなかったことで、大きな魚を逃したかなと思っています。


<9・14>
・スクエニ(エニックス)のライトノベルについて考える(1)。
 最近ではとうとう見られなくなってしまいましたが、以前からスクエニ(エニックス)出版は、ライトノベルの刊行も続けていました。コミックに比べれば刊行点数も少なく細々とした事業とも言えましたが、それでもこれまでにいろいろな経緯がありました。ここでは、そうしたエニックス・スクエニのライトノベルについてまとめて振り返ってみたいと思います。

 まず、90年代の昔においては、人気マンガの小説化(ノベライズ)を盛んに行っていました。2000年より、「EXノベルズ」と称したオリジナルの小説レーベルも刊行されるようになりますが、それよりもマンガのノベライズの方が目立っていました。ほとんどが連載マンガのノベライズで、人気マンガの展開としてドラマCDとともに小説化が行われるのが定番になっていたと思います。中には、刻の大地(夜麻みゆき作品)・ツインシグナル・まもって守護月天!など、人気を得てシリーズ化されるものもありました。この当時のガンガン系の人気もあって、こうしたノベライズにもかなりの読者がいたと記憶しています。
 しかし、こうした人気マンガのノベライズは、2000年代のお家騒動以降は次第に下火となり、「鋼の錬金術師」のような一部の人気マンガでは行われていましたが、それも今ではほとんどなくなっています。

 代わって、EXノベルズを継ぐオリジナルのライトノベルの新企画も少しずつ立つようになります。最初に小説の企画を行ったのはガンガンWINGの編集部で、2004年以降「スクウェア・エニックス小説大賞」という賞を立ち上げ、小説の投稿を募集し、受賞作の書籍化とWING誌上でのコミック化を行いました。しかし、どの作品もそれほどのヒットにはならず、コミカライズも読み切りか短期連載で終了し、こちらでも人気を得て継続した作品はほとんどありませんでした。

 しかし、小説の投稿募集はその後も続き、2008年に創刊されたガンガンONLINEに引き継がれることになり、そちらで小説の連載が見られるようになります。創刊当時から小説の連載が行われ、一定期間無料配信されたあと書籍化されるという形になりました。つまり、マンガと同じ体裁で小説も連載され、初期のガンガンONLINEのコンテンツの一部となっていたのです。ここでは、他社でも多数の人気作を手がけていた日日日の新作や、あるいは元PCゲームのシナリオライターとして一部で知られていた唐辺葉介の新作など、一部で注目作も見られましたが、しかしやはり成功した作品は少なく、結局2011年あたりを境に新作の発表も次第に少なくなり、2012年を最後に投稿の募集も行われなくなり、ついにはスクエニからライトノベルはほとんど出なくなってしまいました。

 現在(2014年現在)、スクエニからライトノベルの新作はほとんどなくなっており、実質的にライトノベル事業から撤退していると見ていいでしょう。次回は、なぜスクエニのライトノベルは成功しなかったのか、その理由を考えてみたいと思います。


<9・10>
・一迅社「Febri」こういうレビュー雑誌を待っていた。
 先日、ガンダムUCの特集で興味を持って久しぶりに買った一迅社の雑誌「Febri」。面白かったので次の号も試しに買ってみたのですが、やはり興味深い記事が多く、非常に楽しめました。この雑誌の質の高さは本物です。

 もともとは、「キャラ☆メル」という名前で創刊され、その頃は美少女キャラクター・ビジュアル情報誌と位置づけられていました。その頃のキャッチフレーズは「ゲームとアニメの美少女“おしゃべり”マガジン」。しかし、その後休刊を経てのリニューアルで「Febri」と雑誌名が改められ(初期の頃は「キャラ☆メル Febri」)、美少女ものにこだわらずさらに幅広い作品を扱うようになったようです。

 現在のキャッチフレーズは、「本音(リアル)で語るクリエイターマガジン」で、様々なアニメ・マンガ・ゲーム・ライトノベル・映画・特撮・ホビーなどの作品を広範に扱い、作品のレビューや紹介、インタビュー、対談などで構成される雑誌になっています。評論誌というほどお堅い雰囲気ではなく、ごく平易に作品の魅力を紹介する方針のようで、このスタンスはとても好感が持てました。

 中でも最も面白いと思ったのが、ページ中ほどにある「Febri RECOMMEND」という作品単体のレビューコーナーです。旬となっている様々な作品を1ページで取り上げているのですが、それぞれレビュアーの個性を出しつつも作品の見どころや過去の歴史などを楽しく語るページになっていて、どれも興味深く読めました。最新号のVol.24では、弱虫ペダル・神々の悪戯・ALL YOU NEED IS KILL・ウィクロス(カードゲームの方)・絶深海のソラリス・オーバーロード(いずれもライトノベル)・ゴジラ・トランスフォーマーなどが取り上げられています。こうした作品が好きな人はもちろん、知らない人でも素直に興味を持てる書き方になっていると思いました。

 こうしたマンガやアニメの評論、これまでは何かと社会論と結びつけて語られることが目立ち、評論界隈ではそれが主流であったようにも思えます。しかし、それらは強引に社会と結びつけるような質の低い評論も目立ち、必ずしも素直に作品を紹介するレビューにはなっていないと感じていました。それが、ここに来てようやく、作品そのものの魅力を紹介する本来の評論・レビューを押し出す雑誌が出てきたように思います。これは本当に喜ばしいことだと思いました。

 一迅社WEB | Febri


<9・7>
・「スロウスタート」(篤見唯子)
 まんがタイムきららの連載「スロウスタート」のコミックス1巻が先日発売されました。最近のきららの中でも最も気に入っている連載のひとつで、個人的にはこれからの最有力作品ではないかと思っています。コミックスの発売を長い間待ちわびていました。

 内容は、女子高生たちのゆるふわな日々を描く日常もの・・・でもあるのですが、主人公の花名(はな)がとある事情で1年遅れて高校に入っていて、そのことに対する引け目や焦り、不安の感情が随所で出ているというところが、大きな特徴となっています。楽しい日常の中にちょっとした影が差している、そこにこのマンガならではの魅力があると思います。

 まだ高校生という若い年代において、周囲の人よりも1年遅れているというのは、大きな精神的な負担となると思いますし、このマンガの花名も、そのことを周囲に言い出せずに隠したままで過ごすことになります。そして、時折その事情が見え隠れしそうになるシーンに、ちょっとした切なさ、不安、悲しさを感じてしまうのです。彼女に対して、周囲の友人たちがどこまでも屈託なく優しく接してくれるがゆえに、余計にそこに負い目を感じてしまう。そこが、一般的な日常ものに終わらない独特の魅力になっています。

 こうした他よりも遅れてしまった人に対する圧力が、特に日本では大きいと感じていますが、本来ならそれは決して悪いことでも劣っていることでもなく、周囲から温かく迎えられる環境であるべきだと思っています。このマンガを読んで、そんなことまで考えてしまいました。

 作者の篤見唯子(とくみゆいこ)さんは、ずっと以前「瓶詰妖精」という「マジキュー」で行われていた読者参加企画のキャラクターデザインを担当したことがあり、 マンガも執筆されてコミックスも出ています。また、同時期にKIDのアドベンチャーゲーム「Iris 〜イリス〜」のキャラクターデザインを担当していた記憶もあります。その頃から繊細でいい絵を描かれると思っていましたが、しかしその後長らく商業での活動は下火になり、むしろ二次創作の同人活動の方でよく知られるようになっていました。

 しかし、2013年になって、芳文社のまんがタイムきららでこの「スロウスタート」連載開始。まさかきららで4コマの連載を開始するとは思いませんでした。篤見さん久々の商業誌での作品という点でも、大いに意義があると思います。最近のきらら新作の中でも、一歩抜けた面白さと作画のかわいらしさを持っていると思いますし、今後もさらに期待できると思っています。


<9・3>
・ガンガンONLINE新連載「はじまりの夜行列車」。
 先日8月28日より、ガンガンONLINEでkirero(キレロ)さんの新連載「はじまりの夜行列車」が始まりました。1年と少し前に「終焉のカテドラル」という前後編の読み切りが同誌に掲載されて以来、次回作を待ちわびていましたが、ここでようやく来ました。今回は短期集中連載とのことで、短期で終わる予定なのは少し残念ですが、それでもkireroさんの商業初連載が読めるとは本当にうれしい。

 「終焉のカテドラル」は、壮大な西欧風の世界が舞台のファンタジーストーリーでしたが、今回は日本が舞台の和風ファンタジー。おそらく現代の日本が舞台だと思いますが、主人公の少女の姿や彼女がいる駅舎の光景に、ちょっとレトロな雰囲気を感じる作品ともなっています。

 掲載された冒頭1話のストーリーですが、主人公の少女が佇む、普段は誰も降りることのない”きさらぎ駅”という小さな駅舎に、ある日人間の青年が降りてくるところから始まります。少女は、今まで出会うことのなかった人間と出会ってひどく喜び、ひとしきり彼と会話を重ねることになります。さらに、その日から何日も続けて、誰も知らないはずのこの駅を訪れる青年。実は彼は、とても大きな秘密を抱えていたのです・・・。その青年の最後を見届けた彼女は、自分の正体を知るためについに列車に乗って旅に出ることになります。

 もともと、この作品は3年ほど前にコミティアで同人誌で出たものであるらしく、それが商業化されることになったようです。コミティアで出るような創作系のファンタジーは、わたしにとって非常に好みのジャンルでもありますし、この作品もまさにわたしにとって非常に魅力的でした。「きさらぎ駅からはじまる、切なノスタルジックファンタジー」というコピーどおりの、切なくも読ませる話になっていると思います。

 kireroさんは、普段の同人では東方の二次創作での活動が盛んなようですが、一方でこうしたオリジナルの創作でのマンガが、晴れて商業誌で読めるというのは本当にありがたい。かつてのガンガン系に近い作風も感じますし、これはONLINEで楽しみな連載がまたひとつ出てきました。

 はじまりの夜行列車ガンガンONLINE
 *KirororO*[きろろろ](kirero)
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