<日記>
過去の日記(2017年9月〜12月)


<1・14>
・ゆっくり始まるスロウスタート。
 先週の日記では「ゆるキャン△」を取り上げたばかりですが、今季はもうひとつ重要なきららアニメがあります。「スロウスタート」です。こちらも連載開始当初から追いかけていて、アニメ化が決まった後もずっと放送を待ち侘びていました。個人的にもいろいろ思い入れが深い作品で、かつて既に何度か取り上げたことがあると思いますが、アニメ化に際してもう一度その魅力を語る必要があると思いました。

 「スロウスタート」は、2013年にまんがタイムきららで始まった4コマです。作者は篤見唯子。このところ、MAXやキャラット、フォワードからいくつもアニメ化作品が出ていますが、まんがタイムきらら(無印)からは、2016年の「三者三葉」以来やや久々のアニメ化となりました。ラインナップが他より少し薄いと言われることがあるきらら本誌からの作品という点でも、今回のアニメ化に期待するところは大きいです。

 その内容ですが、春から高校へと入学することになった新入生・花名(はな)ちゃんを主役に、彼女を中心とした楽しい学校生活を描くコメディでしょうか。高校では中学時代からの知り合いもおらず、不安に駆られていた花名ですが、幸いにも気のいい生徒に声をかけられて早速友達となり、楽しいスタートを切ることが出来ました。しかし、彼女には周囲に隠している少し深刻な秘密があったのです。

 それは、とある事情から昨年高校を受験することが出来ず、1年遅れての入学になってしまったこと。これを周囲に隠していることで、楽しい日常の中でも常にうしろめたさがつきまとう。そんな彼女の闇とも言える部分を描くことで、他の学園コメディとは少し違う切なさや寂しさも同時に描かれています。原作では、1話冒頭のかなり早い箇所でこの秘密が明かされましたが、アニメでは1話を通して楽しい日常を描き、最後にその秘密を打ち明けることで、視聴者に意外な余韻と今後への興味を抱かせる構成になっていて、これは優れたアレンジだと思いました。
 さらには、そんな彼女の秘密を、必ずしも暗いものとして描くばかりでなく、むしろそうした過去を肯定しているところが、非常に大きなテーマだと思っています。タイトルの「スロウスタート」のとおり、高校に1年遅れてもいいじゃないかという周囲からの優しい配慮。そんな優しい世界が、ひいてはそうしたゆっくりした生き方をも肯定している。そんな社会的とも言えるテーマをも内包する作品になっていると思っています。

 もうひとつ、作者である篤見唯子さんの、少し特徴的な経歴についても語っておきたいところです。篤見さんの商業誌デビューは古く、なんと「まんがタイムきらら」の2002年の創刊号(増刊時代の最初の号)に「H.P.ハッピープロジェクト」という読み切りを掲載したことがあります。さらに同年より、エンターブレインの雑誌「マジキュー」で「瓶詰妖精」という読者参加企画に携わり、そのキャラクターデザイン・コミック連載を始めました。2003年にはアニメ化もされており、今でもこのアニメで覚えている人は多いかもしれません。
 しかし、「瓶詰妖精」の企画は2005年に終了し、その後もマジキューでマンガ連載や読者参加企画に携わりましたが、掲載誌の休刊で2007年にはすべて終了。その後長い間商業誌での活動は途絶えることになります。ゆえに、長い時を経て2013年に始まった「スロウスタート」は、久々の商業誌復活となり、随分と驚きつつもうれしく思うことになったのです。

 さらには、この間の期間においては、むしろ同人活動において知られる存在になっていたことも特徴的でした。とりわけ「咲-Saki-」の同人誌の執筆を精力的に行い、いわゆる部キャプ(部長×キャプテン)のカップリングの第一人者ともなりました(笑)。こちらで知っている人も多いのではないかと思います。

 こうしたずっと以前の作品である「瓶詰妖精」や、あるいは同人誌で作者の篤見さんを知っている人にとっては、今回の「スロウスタート」のアニメ化はとても感慨深いものがあると思います。「瓶詰妖精」からは15年目にしてついに篤見さんの作品が再びのアニメ化。それゆえに特別な思いで期待してしまうのです。



<1・10>
・2018年にしてまさかの新刊「合本 異国迷路のクロワーゼ memoire」。
 先日、あの「異国迷路のクロワーゼ」のコミックス新刊である「合本 異国迷路のクロワーゼ memoire」が発売されました。2巻が2009年に出てから8年以上。まさかここに来てあの「クロワーゼ」のコミックスが出てくるとは思いませんでした。かつて2巻まで出たコミックスの内容すべてに加えて、未収録のエピソードと追加ページを加えた完全版・愛蔵版とも言える貴重な一冊。作者の急逝という衝撃のニュースから1年。一周忌に合わせて出たこのコミックスは、かつての多くのファンにとって待ち望んだ一冊ではないかと思います。

 「異国迷路のクロワーゼ」は、2006年に「ドラゴンエイジPure」という当時富士見書房から出ていた季刊誌(のち隔月刊に移行)で始まった連載です。作者は武田日向。のちに同誌の休刊に伴って2009年より月刊ドラゴンエイジへと移籍されました。しかし、同年にコミックス2巻が出た後から休載が続くようになり、長い間まったく連載が中断した状態になっていました。作者の武田さんの体調不良が理由だったようですが、2017年になってその武田さんの急逝が告知され、これで完全に未完のままで連載が途絶える形となってしまいました。

 作者の武田さんにとっては「やえかのカルテ」に次ぐ2番目の連載で、連載当初から前作以上の非常な好評を得て、作者の代表作となりました。同じく武田さんの仕事としてこちらも大人気だったライトノベル「GOSICK -ゴシック-」の挿絵イラストと合わせて、当時は熱心なファンはとても多かったと思います。彼女の繊細で美しいイラストに魅せられた人は数知れない。

 その「クロワーゼ」の内容ですが、19世紀のフランス・パリを舞台に、日本から来た少女・湯音(ゆね)とフランスで看板店を営む青年・クロードを中心に異国での異文化交流の姿を描いた作品でしょうか。突然祖父によって日本から連れてこられた黒髪の少女の姿に驚き、異国人である彼女の習慣に戸惑い時に反発しつつも、少しずつ彼女と交流を重ねて心を通じ合っていく。その切なくも愛おしいストーリーには本気で泣かされました。

 加えて、とにかく武田さんの作画が素晴らしいの一言に尽きました。先に「GOSICK」の挿絵イラストで知られていた武田さんですが、マンガでもその美麗なイラストそのままの作画のようで驚きました。パリのアーケード街の街並みの描写や、室内の調度品に代表される細部の描き込みがあまりに素晴らしい。カラーイラストもまさに絶品で、今でもコミックスの表紙が思い出されます。
 もちろんキャラクターの描写も素晴らしくて、とりわけ黒髪和服少女・湯音のかわいさにはほんとに参りました(笑)。この武田さんの絵に影響を受けた人は本当に多いようで、とりわけ深く愛された作家だったと思います。

 当初の連載が季刊の雑誌だったこともあり、連載のペースはそれほど速くなかったのですが、それでも毎回の連載を楽しみに待っていた作品で、ようやくコミックスが出たときにはとてもうれしかったものです。しかしそれも2巻までの刊行で途絶えて連載は中断、ついに作者の逝去で未完の作品となりました。それゆえに今回の新刊は心の底からうれしい。しかも6月には武田さんの画集まで出るとのこと。2018年にしてこの展開は、やはり彼女が多くの人に愛されたひとつの証だと思います。



<1・7>
・「ゆるキャン△」ついにアニメスタート!
 数カ月前にもおすすめの記事を書いた「ゆるキャン△」。いよいよそのアニメ放送がスタートします。アニメ化が告知されたのが昨年の2月で、それからずっと長く放送を待ちわびていました。直前になってこの冬アニメでも最大の本命として期待するようになったこの作品、何度でも念を押しておすすめしておきたいと思います。

 「ゆるキャン△」は、まんがタイムきららフォワードで2015年7月号から始まった連載で、タイトルからも連想されるとおり、ゆるやかに楽しむキャンプ活動の楽しさを描いた作品となっています。また、レジャーとしてのキャンプでは通例オフシーズンとなる冬季のキャンプを描いていることが特徴的で、今回のアニメが発表から随分と遅く1月からの開始となったのも、その冬場に合わせての放送なのかな?とも思っています。

 シーズンから外れてほとんど人のいない冬のキャンプ場。少しの規則を守って活動すればあとは自由。ここはと思う場所に自由にテントを建てて薪を集め、火をおこして持ってきた食材で料理を作り、おいしい食事をゆっくりと楽しむ。あたりには広々とした美しい自然の光景が広がり、澄み切った冬の空気の中、暖かい服装でゆったりと椅子に座ってそれを堪能する。そんな冬季ならではのキャンプの楽しさが存分に描かれているのです。

 あるいは、キャンプ地の楽しみだけではありません。キャンプ地へと向かう道中の楽しさまで存分に描かれています。バイクや車を思い思いに走らせ、途中で立ち寄る食堂やレストランでもおいしい食事を堪能、時には温泉にも入ってゆったりと時間を費やす。そんなキャンプも含めた小旅行の楽しさが、たっぷりと描かれた作品になっていると思います。

 そしてもうひとつ特徴的なのは、そんなキャンプへたった1人で赴く「ソロキャンプ」の楽しさが描かれていることです。登場キャラクターの1人のリン(志摩リン)は、普段から1人での行動を好み、ごく一部のエピソードを除いては、毎回ほぼ1人でキャンプ地に赴いて活動しています。ひとりでの遠征であるがゆえにすべての行動は自由。途中でどこに立ち寄ってもいいしどれだけ時間を使ってもいい(あまりゆっくりすると到着時間が遅れてピンチになったりしますが)。キャンプ地でものんびりと自分のペースで設営して何より食事もひとりで堪能できる。そんな「孤独のキャンプ」とも言うべき単独行での楽しさが存分に描かれているのです。

 さらには、単独行ではあってもまったく人とのつながりがないわけではない。仲間とはスマートフォンやタブレットで見るSNSで繋がっていて、常時連絡を取り合ったり時には撮影した見事な景色をシェアして楽しむ。予定より到着が遅れてピンチに陥った時にも、仲間からの思わぬ情報で助けられるという一幕もありました。そんな離れていてもネットのSNSで繋がる、今の時代ならではの交流の楽しさもまたよく描かれています。

 こうした楽しさがアニメでも再現されることに期待したいところですが、アニメではもうひとつ、舞台探訪(聖地巡礼)が盛り上がりそうな作品という点でも期待しています。アウトドア活動を描いた作品で、しかも各地に実在するキャンプ地や観光地が頻繁に登場。作中でキャラクターが住んでいるのは山梨県と静岡県の境あたりらしいですが(具体的には山梨県身延町とその周辺)、その山梨県と静岡県、さらには長野県の実在の場所をいくつも訪れています。アニメを契機にこうした場所の探訪、あるいはキャンプ体験まで盛り上がりそうで、それもまた楽しみなところです。



<1・3>
 あけましておめでとうございます。今年も当分日記のみですが(もうサイトの本記事更新は復活しないかも?)よろしくお願いします。今年最初の日記ですが、まずは昨年末に最後に購入したコミックスからこれはというものをひとつ。


・「熱帯魚は雪に焦がれる」
 このところ電撃系からこれはという作品が多いのですが、今度は電撃マオウの連載から注目の新作をひとつ。昨年6月より始まった「熱帯魚は雪に焦がれる」(萩埜まこと)です。先日待望のコミックス1巻が発売されました。

 このところ、水族館が大人の娯楽スポットとして定着したからか、水族館もののマンガも増えているようですが、この作品もそのひとつでしょうか。しかし、水族館という施設を舞台にした作品ではなく、学校の部活である「水族館部」の活動を描くというコンセプトが、とても新鮮な一作になっています。

 水族館部とは何か? これは、愛媛県の高校(長浜高校)に実在する部活で、その名のとおり学校で水族館を運営しようという課外活動。その活動は思った以上に本格的で、校内の一角に多数の水槽を並べ、魚類など水中生物を150種2000匹以上を飼育、定期的に一般公開もしているそうです。このマンガも、実際に高校に取材を行ったうえで、かなり忠実に実際の「水族館部」の活動を描写しており、その活動ぶりがとても興味深い作品になっています。マンガでも愛媛県の長浜がそのまま舞台となっていて、愛媛の方言が使われたり愛媛の実在の場所が登場するところも面白いですね。

 さらには、その水族館部で活動するふたりの少女の懸命な活動と交流の姿が描かれるストーリーもいい。これまでたったひとりで水族館部で活動してきた小雪と、彼女に興味を持って部活に入ることに決めた転校生・小夏。どちらも積極的な交流は苦手な不器用な性格で、孤独を抱えていたふたりがぎこちないながらも少しずつ距離を近づけていく。その姿がとても切なくもいとおしい。最初は水族館での活動に慣れなかった小夏が、小雪に教えてもらったり自分で勉強したことを思い出しながら少しずつ成長していく様子もいいですね。

 作者の萩埜まことさんは、以前は艦これを中心に同人でも活動していて、KADOKAWAのアンソロジーで執筆していたこともあります。また、この連載の始まる約1年前に、「海洋部へようこそ!」という読み切りで電撃マオウコミック新人賞を受賞していて、これが今回の連載の直接の原点にもなっているようです。その頃から柔らかい作画とストーリーが魅力的でしたが、初連載となるこの「熱帯魚は雪に焦がれる」も、その優しい作風がセンシティブな魅力に溢れた作品になっていると思いました。これもまた電撃から要注目の新作が出てきたようで、次に来るマンガではないかと期待しています。


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