<「2Pギャグ頂上決戦 GGグランプリ」について(後編)>

2006・11・9

*前編はこちらです。

・有望な新人は登場しているが、全体的には成果は乏しい。
 そして、このコーナーのもうひとつの問題は、新人の発掘を主目的とした企画コーナーなのに、有望な新人が中々登場しないことです。
 もっとも、集まってくる投稿作品のレベルの低さからして、有望な新人が出てこないのは当然とも言えますが、それでももうかれこれ6年も続けているわけです。2人や3人くらい、雑誌の中核となる定番ギャグ作家が出てきてもよいと思うのですが、そこまでの成果には乏しい現状です。

 まず、初期の頃は、今にまして掲載作品のレベルが低く、ここからデビューできた新人はほとんどいませんでした。唯一、渡辺志保梨「ハルマゲどん」という作品のみが、投稿作の中で人気を集め、ようやく読み切り掲載権を獲得、のちの連載化もされます。この渡辺志保梨が、2Pギャグからの最初の新人作家と見てよいでしょう。ギャグネタが割と安定しており、それ以上に絵がきれい系でとにかく読みやすく、キャラクターもかわいらしく好感が持てるものだったのが、成功の要因でしょうか。それほどまでに、当時の投稿作品は、絵に不快感を感じるほど粗雑なものが多かったのです。
 しかし、この「ハルマゲどん」、連載版ではせいぜいそこそこの人気を集めた程度で、単行本にして2巻で終了してしまい、渡辺さんも以後のスクエニでは見られなくなります。これでは、新人として定着した作家とは言えず、発掘に成功したとは言えないでしょう。(なお、現在の渡辺さんは、芳文社の「きらら」系雑誌で、「花の湯へようこそ」という連載を持っているようです。こちらでも連載を持っているところを見ると、スクエニでももう少し手放さずに新作掲載を続けても良かったかもしれません。)


 中期以降では、ようやく連載でも定着する新人が登場します。まず、堀田きいち。この2Pギャグで毎号続けた「君と僕。」がかなりの人気を博し、その後ガンガンで幾度となく読み切りを重ね、最終的にはパワードの方で連載を開始。これがかなりの人気を得て、パワード発の新人の中でも最有力とも言えるほどの存在となります。2Pギャグからの出身者としては、最大の成功を収めたと言ってよいでしょう。彼の描く作品は、ギャグよりはむしろ日常のほのぼのまったり感全開のゆるゆるコメディが中心で、そういった作風が大いに受けました。

 もうひとり、この堀田きいちと読み切り権掲載で争った、火村正紀も、のちに「はじめての甲子園」という連載をガンガンで開始。高校の野球部を舞台に、爆笑ギャグとまじめに甲子園を目指すストーリーをバランスよく配分した作風が特徴で、まだ連載は始まって間もないもののかなり受けはよく、すでにガンガンに定着した感もあります。彼も2Pギャグからの成功者と見てよいでしょう。(ただ、火村さんは、のちにより大きなマンガ賞である「スクウェア・エニックスマンガ大賞」で準大賞を受賞しており、こちらからデビューの足がかりを掴んだとも言えるだけに、純粋に2Pギャグ出身者かと言われると少々微妙ではありますが・・・。)


 そして、おそらくはこの3作品が、この2Pギャグからデビューして単行本を出せた数少ないケースのすべてだと思われます(*ただし、筆者の覚えている範囲ですので、見落としがあるかもしれません)。これは、新人の発掘を目指して作られたコーナーからの、しかも6年間も続けた上での成果としては、あまりに少ないものではないでしょうか。また、この3人にしても、出せた単行本の数は現在のところほんの1〜3冊程度で、まだまだ定番の人気作家には程遠い現状です。
 もっとも、堀田きいちの「君と僕」は、現在3巻まで出ており、かなりの人気を獲得している状態なので、これからまだまだ伸びるかもしれませんし、火村正紀の「はじめての甲子園」も、現在はまだ1巻ですが、当初からの人気の高さを見れば、やはりこれから伸びる可能性はあります。しかし、「6年もコーナーを続けてまだ単行本が数冊程度」と考えると、やはり成果は遅すぎ、少なすぎだとも思えます。

 過去のギャグ作家と比べても、今ひとつ小粒の感は否めません。もともと、ガンガン(もしくはエニックス)は、ギャグマンガが面白いというのが定番の評価で、今までかなりの実力を持つギャグ作家が多数生まれてきました。初期のガンガンでは、柴田亜美(「南国少年パプワくん」)、松沢夏樹(「突撃!パッパラ隊」)、衛藤ヒロユキ(「魔法陣グルグル」) などの錚々たるメンバーが並んでいます。中期以降のガンガン系雑誌でも、金田一蓮十郎(「ハレグゥ」)、くぼたまこと(「GOGO!ぷりん帝国」)、たかなし霧香(「ハイパーレストラン」他)、魔神ぐり子(「コインランドリー」他)、土塚理弘(「清村くんと杉小路くんと」)、氷川へきる(「ぱにぽに」)と、こちらも錚々たる作家たちが誕生しています。これらの作家に比べれば、この2Pギャグからの出身作家は、数も少ないし実力的にも小粒の感は否めないのではないでしょうか。
 実は、路線変更以降のガンガンでは、これといったギャグマンガの新人が出てこなくなっており、新人の発掘に失敗し続けている感が強くなっています。この2Pギャグもその象徴と言えるもので、とにかく新人ギャグ作家の発掘の成果が非常に乏しいのです。それどころか、前述の「地獄ゆき」のような劣悪な作家が登場するなど、むしろひどい作品が出てくる印象も強い。この点でも、この「2Pギャグ」というコーナーには、否定的な評価を下さざるを得ません。


・というか、読者としてはこんなコーナーは読みたくないというのが本音。
 そして、最大の問題は、とにかくこのような「面白くない」ページがガンガンに存在し続けているという事実です。これは、実際にガンガンを読んでいる読者にとってはかなりの苦痛です。つまらないページがひとつあるだけで、雑誌を読む読者としてはがっかりしますし、そんなページが増えれば雑誌を買う意欲も減退してしまいます。
 というか、前にも書いたとおり、今のガンガンで、このコーナーを楽しみにしている読者がどれだけいるのでしょうか。他の連載と同じように楽しみにして読んでいる、そんな読者がどれだけいるか。まったくいないということはないでしょうが、かなり少ないはずです。初期の頃の内容は、とにかく絵も内容もひどく、到底読める場所ではありませんでした。現在は、かつてよりはましになっているとは言え、それでも面白いと思える作品は、毎回1〜2作品程度です。正直、積極的に続けるほどのコーナーでもないでしょう。

 それでも、そこから抜群に面白い新人作家が多数生まれるようならば、多少読者が我慢してでも続ける意義もあるでしょうが、実際にはいい新人はあまりにも出てこない。これではますますもって続ける意義は薄い。
 そもそも、新人の発掘ならば、従来通りのマンガ賞による発掘や、他出版社やウェブからの登用でも十分やっていけるはずです。そうして発掘した新人に、通常の形態の雑誌掲載を重ねさせて実力をつけさせればよい。例えば、パワードで読み切りから連載枠を獲得した尾高純一という作家は、現在「勤しめ!仁岡先生」の連載が人気を博し、単行本も活況を呈しています。ヤングガンガンでは、ウェブコミックからの登用である高津カリノの「WORKING!!」が今や大人気です。このように、従来どおりの普通のやり方で新人を発掘しても十分いい作家は出てくるわけで、あえてこのようなコーナーの運営にこだわって、読者を苦しめる必要もないでしょう。


・プロ作家による読み切り中心に変えてみるのも手ではないか。
 むしろ、このようなコーナーよりも、先日行われた「特上!GGグランプリ」という、既存のプロ作家たちを集めてショートギャグを描かせるコーナーの方がはるかに面白かったように思います。これは、全部で10人のプロ作家に競作をさせるという企画で、スクエニ系雑誌からの作家と、他出版社からのゲスト作家によって構成されていました。

 スクエニ系からは、「キングダムハーツ」の天野シロ、「マテリアル・パズル」の土塚理弘、「これが私の御主人様」の椿あすといった面々。前述の、「はじめての甲子園」の火村正紀や、「勤しめ!仁岡先生」の尾高純一も、その外伝作品である「はじめての2Pギャグ」「偽れ!田村先生」という読み切りで参加しています。この中では、久々のギャグマンガだった土塚理弘の作品が特に面白く、火村正紀や尾高純一の外伝もかなり良かったように思います。
土塚理弘「World S」火村正紀「はじめての2Pギャグ」尾高純一「偽れ!田村先生」

 一方で、他出版社からのゲスト作家としては、講談社や双葉社、竹書房等で4コマ中心に活躍している真右衛門、きらら系4コマ作家である現津みかみ、真田一輝といった作家たちが執筆していました。これらの作家の作品も、どれもいつものガンガンのマンガとは異なる作風が新鮮で、いずれもかなり読めるマンガだったように思います。
真右衛門「ゴリン星人」現津みかみ「きらきら!」真田一輝「Dangerous☆Check」

 総じて、通常の2Pギャグのコーナーに比べてはるかに面白く、十分に楽しめる企画でした。このようなコーナーならば読者も満足ですし、大いにやる意義はあるでしょう。そして、この企画は、少し前にガンガンWINGで行われた別冊付録企画である「ガンガンWING4コマエディション」に近いものがあります。スクエニ系からの作家と、外部(他出版社)からのゲスト作家、という構成が似ているのです。
 ただ、「4コマエディション」の方は、加えて発掘中の新人作家にも描かせており、連載を持つプロ作家と新人作家との双方の作品が載っていたことが特徴的でした。この「特上!GGグランプリ」も、このように新人の作家、それも実力のある作家に絞って参加させれば、新人の発掘にもつながりますし、さらに企画の意義は深まるのではないでしょうか。このような、プロ作家による作品中心で読者が楽しめ、かつ新人作品を載せて新人の発掘も行えるコーナーに変えてみるならば、ようやく面白くなるのではないでしょうか。今のままのコーナーでは、これからも続ける意義があるかは不明です。


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