<ばのてん!>

2011・4・15

 「ばのてん!」は、少年ガンガンで2010年1月号より開始された連載で、ほのぼのした絵柄とキャラクターたちが繰り出すドタバタ騒ぎが楽しい、学園生徒会を舞台にしたコメディとなっています。最近では、このような生徒会ものコメディがいろいろな雑誌で見られるようになっており、ひとつの定番ともなりつつありますが、ついにガンガンでも連載されることになりました。
 また、ガンガンと同時並行で、ウェブ雑誌のガンガンONLINEでも、姉妹編としてキャラクターたちの夏休みの姿を描く「ばのてん! -SUMMER DAYS-」が連載され、こちらのコミックスも発売されています。最近では、スクエニの紙雑誌とガンガンONLINEで並行連載するマンガも珍しくなくなりました。この作品以外では、ガンガンJOKERとONLINEで同時連載の「ヤンデレ彼女」、ガンガンとヤングガンガンとガンガンONLINEの三誌に渡って連載している「マンガ家さんとアシスタントさんと」があります。

 作者は河添太一。フレッシュガンガンで掲載された同名の読み切りが初掲載で、その後ほぼそのままの形で連載化されました。これ以外の作品は今のところ多くを残しておらず、デビュー作がそのままガンガンで連載となったのは本当に僥倖でしょう。

 内容は、前述の通り生徒会を舞台にして、とりとめもない日常の(大抵は)バカバカしい騒ぎをまったりドタバタと描く作風で、他の生徒会ものとも比較的近いものがあります。ただ、この作品の場合、キャラクターの作画の頭身が低くてかわいらしく、彼らの行動もどこか無邪気なものが多いためか、ドタバタしながらもほのぼのとしたところがあるように感じられます。そのあたりで、他の生徒会ものとはちょっとしたイメージの違いも感じられ、それがひとつのオリジナリティとして新しい読者の獲得に成功しているようです。「かわいらしい生徒会もの」という表現がぴったりかもしれません。


・生徒会もの、部室だべりものの中では後発に当たる。
 このマンガは、毎回のように生徒会室でのキャラクター同士の会話を中心に構成され、そこで引き起こされるドタバタ騒ぎを見て楽しむ作品となっています。このような作品は、ここ最近とみに顕著で、「生徒会もの」もしくは「部室だべりもの」として、ひとつのジャンルを形成した感もあります。この「ばのてん!」は、その中でもかなり後発の作品で、他の出版社や、あるいはスクエニの他誌ですでに生徒会ものが連載されている中で、満を持して(?)ガンガンにも登場することになりました。

 この手の作品の端緒となったのは、まず間違いなく「生徒会の一存」という富士見ファンタジア文庫のライトノベルで、これはコミック化・アニメ化もされて高い人気を獲得、同レーベルの看板的作品にまで成長しました。その後も生徒会の日常を舞台にした作品は相次ぎ、メジャー誌の週刊少年マガジンで連載された「生徒会役員共」はこれも高い人気を得てアニメ化されました。スクエニでもこの手のマンガはいくつも見られるようになり、ガンガンONLINEで創刊時から連載されている「生徒会のヲタのしみ。」、ヤングガンガンで連載された「んぐるわ会報」、他社からなぜかヤングガンガンに移籍してきた「学園革命伝ミツルギ」などがあります。いずれの作品も高い人気を獲得した成功作となっており、この手のジャンルは今まさに盛況であると言えるでしょう。

 それと同時に、これとかなりかぶるところもあるのですが、「部室だべりもの」というジャンルも盛況です。どこかの学校の部室で、キャラクター同士がとりとめもない会話をして成立する作品の総称で、実は上記の生徒会ものの多くもこれに該当します。生徒会もの以外の作品としては、メディアファクトリーのMF文庫Jから出たライトノベル「僕は友達が少ない」、小学館のガガガ文庫の「GJ部」などがあります。こちらの作品も人気を得て成功しており、前述の「生徒会の一存」と合わせて、特にライトノベルではひとつのジャンルとして、こうした作品がひとつの定番となっている感もあります。

 このような中でガンガンで登場した「ばのてん!」。先行の作品があまりにも多すぎたために、わたしは当初、「ガンガンでも生徒会ものが始まったのか。でももう今だとちょっと新鮮味に欠けるかな」とも思っていたのですが、実際に読んでみると、これはこれで先行作品とはちょっと違ったイメージでかつ楽しい仕上がりのマンガとなっていて、非常に好感が持てました。同時期にガンガンONLINEでも並行連載が始まり、どちらも好評連載中で、これもまたひとつの成功作となったようです。


・かわいらしい絵柄でほほえましい作風の生徒会コメディ。
 このマンガの主役となる生徒会の役員は3人で、この3人の掛け合いが作品の中心を占めています。いつも騒ぎを起こすおふざけ役、真面目な突っ込み役、いじられ役と3人の個性がはっきりと別れていて、3人でやる漫才を見ているかのような楽しいコメディこそが最大の魅力と言えます。

 いつも騒ぎを起こす張本人が、生徒会会計の千夏(瀬野千夏)。がさつでいい加減な性格で、まだ一年生なのに自分より上の役員に平気でタメ口で会話し、常に面白いことを引き起こそうと考えているいたずらっ子として描かれています。この(いい意味で?)いい加減なキャラクターこそが、このマンガの本質をよく体現していると言えるかもしれません。タイトルの「ばのてん!」とは、「人生は、その場のテンションで!」の略らしいのですが、それはこの千夏の性格をもっともよく表しているような気がします。
 そんなしょうもないいたずらばかりしている千夏に対して、日々突っ込みを入れているのが、生徒会の中で唯一とも言える常識人である生徒会副会長・蓮寺(伊達蓮寺)。黒髪眼鏡の真面目な優等生なのですが、千夏には振り回されっぱなしの苦労人として描かれています。
 そして3人組の最後が、生徒会長である眠花(眠花・キュニョー)。生徒会長なのですが、いつも寝てばかりの天然ボケ娘で(しかし成績はよい)、しかも名前が示すとおりの巨乳キャラとして描かれ、千夏のいたずらの標的にされることが多い、まさにいじられ役となっています。

 そして、この3人のほどよくパターン化された掛け合いが、特に初期の頃は作品のほとんどを占めています。

というひとつの典型的なパターンが、毎回のように楽しい笑いを読者に提供しています。

 このとき特徴的なのは、河添さん独特の頭身の低いかわいらしい絵柄です。一応彼らは全員高校生という設定なのですが、ぱっと見た外見では、その低い頭身と、ふにゃっとした柔らかい描線から、もっとずっと小さく幼く見える気がします。なんと言うかいい意味で子供らしいかわいさがそこに感じられます。子供らしさという点は、キャラクターの性格にも言えています。毎回しょうもないいたずらを繰り広げようとする千夏や、いつも寝てばかりで言動も天然な眠花などは、ひどく無邪気な子供っぽさを感じさせます。
 これは、先行する同系の生徒会もの作品の中で、このマンガの最大のオリジナリティになっているように思えます。他の生徒会もののキャラクターが、どれも等身大の高校生の姿と性格をしているのに対して、このマンガのキャラクターは、どこまでも無邪気でかわいらしいイメージをしています。実は、千夏の毎回やっているいたずらは、時にかなりひどいものもあるような気がするのですが(笑)、このキャラクターのかわいらしい外見と性格で、その毒が一気に中和され、ほのぼのと楽しめるほほえましい作品になっています。


・キャラクターが増えてさらに楽しくなってきた。
 ただ、メインキャラクターが3人しかいないというのは、ややバリエーションに欠けるところもありました。このような生徒会ものの場合、複数の個性的なキャラクターの組み合わせによって、いろいろな会話・駆け引きが楽しめるのが魅力です。考えてみると、先行する生徒会もの作品は、生徒会の役員が大抵の場合5人くらいいて、毎回個性的な組み合わせを楽しめるのが最大の特徴でした。

 そう、なぜか、この手の生徒会ものの作品では、メインとなる生徒会関係者が、本当に「主人公も合わせて5人」であることが多いのです。「生徒会の一存」がまずそうですし、(顧問の先生を合わせれば)「生徒会役員共」もそうですし、「生徒会のヲタのしみ。」も「んぐるわ会報」も「学園革命伝ミツルギ」も、生徒会のメインキャラはみんな5人。現実の生徒会が、5人程度の構成が多そうだからそれに準じているのか、それとも5人程度キャラを作れば最も話を作りやすく連載しやすいからなのか。いずれにしても「生徒会もののメインキャラは5人」というのが定番のようです。

 それに対して、この「ばのてん!」は、当初はメインキャラクターが3人しかおらず、毎回同じようなパターンで読者を楽しませるタイプの作品となっており、それはそれで定番のパターンを楽しむという面白さはあるものの、他の生徒会ものとはキャラクターのバリエーションが少ないところが残念に思っていました。

 しかし、話が進むに連れて、生徒会以外の生徒たちがあれこれ登場し、さらには今まで登場しなかった生徒会役員たちも登場、これでキャラクターの掛け合いの組み合わせが増え、エピソードの幅が出てきて、さらに面白くなったような気がします。特に、第14話から登場してきた福井会真という生徒会会計の女の子は、蓮寺に尋常でない好意を寄せていて、その微妙に危なっかしい言動が見ていて楽しいキャラクターになっています。さらに最新話では、生徒会書記でサッカー部員の佐藤駆という男の子が登場。熱血系?のサッカー少年だけどどこか抜けた性格となっていて、いきなりボールで生徒会室の窓ガラスをぶち壊してしまい(笑)、それがきっかけでさらにひどい目に遭うことになります。眠花とは異なる形での一種のいじられキャラとして、彼もまた楽しい存在になりそうです。


・ガンガンらしい誰でも楽しめる楽しい連載。ガンガンONLINEとの並行連載も面白い。
 このように、他の生徒会ものとは異なる、かわいらしいイメージの外見と内面のキャラクターがとてもほほえましい、ほのぼのと笑ってゆるく楽しめるドタバタコメディとなっています。作品によっては、割と毒のあるネタ、マニアックなネタ、アクの強いキャラクターなども散見される生徒会ものの中で、この「ばのてん!」だけは、どこまでも無邪気で屈託のない作品になっていて、心の底から安心して読める作品になっていると思います。
 ガンガンは、今でも他のスクエニ雑誌よりは低年齢の読者を対象にしているのかもしれませんが、そんな読者にも安心して薦められるいい連載作品となっています。ちょうど「ジャングルはいつもハレのちグゥ」とかもっと昔の「魔法陣グルグル」とか、ああいったかわいらしい絵柄と内容で、子供から大人まで誰でもほのぼの楽しめる作風になっています。いや、「ハレグゥ」は時にかなり毒の強い作風でもあったので、こちらのほうがより安心して薦められるかもしれませんね。

 また、ガンガンONLINEで連載している「ばのてん! -SUMMER DAYS-」も面白い。基本的にはメイン3人の掛け合いで本編そのままのノリですが、舞台が夏休みとなったことで、校外での彼らの活躍が見られるのも、目先が変わって新鮮味があってよいと思います。「もうひとつの本編」ということで、余裕があればガンガンONLINEにもアクセスして読んでほしいところですね。

 そして、これから先、さらにこのマンガが発展していけばいいと思いますが、果たしてどうでしょうか。他の生徒会ものでアニメ化したりする作品も出ている中、このマンガもそこまで行ってほしい。いや、アニメ化までは無理でもドラマCDでもいい。このゆるいノリのほのぼのした笑える掛け合いを、是非とも音声で聴いてみたいと思っています。


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