<BAMBOO BLADE B>

2009・10・20

 「BAMBOO BLADE B」は、少年ガンガンで2009年2月号より開始された連載で、ヤングガンガンで連載されている人気作品「BAMBOO BLADE」の外伝作品にあたります。「BAMBOO BLADE」は、ヤングガンガンでは2004年の創刊号から始まった人気連載で、アニメ化まで達成してこちらも高い評価を獲得した、今のスクエニでも最も人気・評価の高い作品のひとつであり、その関連作品を今度は少年ガンガンで連載する運びとなったようです。

 「BAMBOO BLADE」の作者は、原作が土塚理弘、作画が五十嵐あぐりという実力派の布陣であり、土塚さんの優れたストーリーと、五十嵐さんの丁寧かつ綺麗な高い作画レベルが組み合わさった点が、大きな成功の理由でした。しかし、この「BAMBOO BLADE B」では、作者が土塚理弘 & スタジオねことなっており、土塚さん自身が作画に参加している点が、最大の特徴となっています。実際には、作画はアシスタント陣との共同作業らしいのですが、作中の男性キャラクターについては、おそらくは土塚さん自身が作画しており、いかにも彼らしい独特の風貌のキャラクターを幾人も見ることができます。逆に、女性陣、特に女の子はかわいらしい絵柄となっていて、こちらは他の方が作画を担当しているのかもしれません。単行本第1巻巻末によれば、「スタジオねこ」とは、土塚理弘と亜積沙紀、それに6人のアシスタントからなるらしく、この亜積沙紀さんが、もうひとりの作画の中心なのかもしれません。

 肝心の内容ですが、「BAMBOO BLADE」の外伝だけあって、こちらも剣道部の男女の活躍が見られますが、本編とは直接の関係がなく、舞台は飛鈴中学校という中学校となっており(本編キャラクターであるキリノとサヤの母校という設定)、本編より一回り小さい中学生の剣士たちが活躍する物語となっています。さらに、より少年マンガ、剣道マンガ色の強い一編となっていて、一応の主人公は中学生の女の子ユウであるものの、その友達として登場する小学生の剣士ケンにも大きく焦点が当たっている点が、本編との最大の違いかもしれません。

 土塚作品だけあって、全体的に手堅い作りであり、主人公ユウとケンの剣道に対する意識の違いや、中学校の剣道部顧問の先生の確執など、それぞれの場面で深みのあるストーリーが展開され、読み応えがあります。一方で、軽快かつまったりとしたコメディ中心の作風で楽しませる本編と比べると、全体的にオーソドックスで特徴にやや乏しい感もあり、今のところ本編ほどのブレイクには達していないようです。


・土塚理弘の旺盛な創作精神。
 作者の土塚さんは、この「BAMBOO BLADE」以外にも、ガンガンで「マテリアル・パズル」を長期連載しており、こちらの方も高い評価を獲得しています。その上で、この「BAMBOO BLADE B」の連載まで開始したわけですが、実はこの連載以前にも、土塚さんによる新しい連載が、2008年以降ガンガンを中心に一度に始まり、彼の新しい創作が、この時期に一気に登場する形となりました。

 まず、その「マテリアル・パズル」の新たな新章である「第3章」と「第4章」。そのうち、第3章の一部は「彩光少年」として短期連載されました。さらに、その「マテリアル・パズル」の第0章とされる「マテリアル・パズル ゼロクロイツ」が、これは土塚さんとは別の作画担当者を迎えて連載開始。しかし、肝心の「第3章」と「第4章」は、実際にはすぐに連載されることはなく、これは読者の間で戸惑いを招きました。
 そして、それとは少し前に、土塚さんのデビュー作にしてもうひとつの柱であるギャグマンガの新章「清村くんと杉小路くんろ」が連載を開始。「マテリアル・パズル」と「BAMBOO BLADE」の2大連載を抱えている以上、もうこの連載の復帰はないと思われていただけに、これも驚きをもって読者に受け入れられました。

 そんな一連の動きの最後になって、この「BAMBOO BLADE B」の連載開始が告知されます。ここまでも新しい土塚作品が次々と登場した上に、まさか「BAMBOO BLADE」の新作まで始まるとは、しかも今回は自分自身が作画に参加して執筆するとは、彼の創作ストックの多さと、その旺盛な創作精神には恐れ入ります。ただし、この「BAMBOO BLADE B」の構想は、「BAMBOO BLADE」コミックの9巻後書きに記されており、それによれば、「中学生のキャラクター」などの基本的な設定は既に固まっていたことが分かります。

 そして、この「BAMBOO BLADE B」が始まったことで、既に連載が開始されていた「清村くんと杉小路くんろ」「マテリアル・パズル ゼロクロイツ」を合わせて、ガンガンでの連載ページ数が毎月100ページを超えることになりました(現在では「ゼロクロイツ」はガンガンONLINEに移籍)。その上で、ヤングガンガンでは「BAMBOO BLADE」も連載中なので、本当に土塚さんの活躍ぶりはめざましいものがあります。


・より少年マンガ色の強い内容。
 このマンガの主人公は、大城戸優(ユウ)という、中学生になったばかりの女の子。背が高くやや大人びた外見とは裏腹に、まだ子供っぽいあどけない性格をしており、素直に明るく好感の持てるしゅじんこうになっています。しかし、彼女は、小学生の頃にやっていた剣道が、強いにもかかわらずあまり好きではなく、中学生になって剣道を続けることに消極的な姿勢を示しています。これは、本編の主人公(格)の女の子であった川添珠姫と近い設定(こちらも剣道はめっぽう強いが今は続けたくないという心理)ではありますが、キャラクターの性格が対照的に異なるため、主人公を取り巻く雰囲気も大きく変わったものとなっています。どちらかといえば、この「B」の方がストレートに少女マンガ的な印象を受けます。

 しかし、このマンガには、そのユウの剣道仲間であった小学生・ケンタ(笹森健太)が、もうひとりの主人公とも言うべき存在感を示しています。彼の、ユウとは対照的に剣道に必死に打ち込む姿勢、それが精一杯に描かれており、大いに読者の心に響くものがあるのです。その最大の理由は、かつての最大のライバルだった少年を越えるため。このあたりの設定は、まさに少年マンガ的なものがありますし、女の子が主人公という点では本編と共通しているものの、その内容はより少年マンガ的なものになっています。少年誌でこういったシリーズを描きたいとも言ってましたし、まさに土塚さんの描きたいマンガがこのあたりに凝縮されていると言えます。

 作画を土塚さん自身が手がけている点も、少年マンガ色をより強く感じる一因になっているかもしれません。本編の五十嵐あぐりさんの作画が、中性的で綺麗な作画で、より女の子のキャラクターが全面に出ており、萌えをも強く感じる作画になっているのに対して、今回は土塚さんの描く男の子キャラクターに、彼独自の絵柄が顕著に出ており、一部には王道少年マンガである「マテリアル・パズル」を彷彿とさせるものも感じられますし、こういった土塚さん自身の色が強く出た「BAMBOO BLADE」の外伝になっていると思います。


・より剣道色も強く出ている。
 そしてもうひとつ、より「剣道」に関する描写が多いのも、この外伝の大きな特徴です。

 いや、実は本編の「BAMBOO BLADE」でも、剣道を深く扱う内容はありました。特に序盤のうちは顕著で、剣道の用具や試合形式などの知識だけでなく、剣道に取り組む精神についての言及まで見られ、作者の土塚さんの剣道に対する思い入れには、本当に並々ならぬものを感じることが出来ました。
 ただ、本編は、それ以上にまったりとした作風が心地いいコメディ色が全面に出ていて、和気あいあいとした女の子たちの日常シーンも強く出ていて、そちらの方の印象の方がむしろ強かったと思います。実際、多くの人にとって、「BAMBOO BLADE」はスポーツマンガだとは思われていないらしく(笑)、ガンガン系のスポーツマンガを語るときも、「BAMBOO BLADE」の名前を聞いて、「あれスポーツマンガかなあ」などという言葉を聞くことも珍しくないと思います。

 それに対して、この「B」の方は、序盤からより強く剣道描写が出ていて、さらにはその剣道に真剣に取り組むケンという少年の姿が全面に出ていることもあって、本編よりもより剣道色が強く、こちらはまさに「剣道マンガ」「スポーツマンガ」と言い切ってもよいと思います。ケンだけでなく、ユウの方もストーリーが進むに連れて剣道に対する思い入れを取り戻していきますし、さらには顧問の先生たちの剣道に対する取り組み、立ち位置の違いにも、それぞれ見るべきものがあります。

 特に注目すべきは、三人目の顧問として登場した持田先生でしょうか。剣道の腕前は相当なものがありながら、無気力にも思える指導方針で、剣道部部員の間に戸惑いの感情を生み出しています。なぜ剣道において極めて優れた人間でありながらも、このような指導方針を採るのか。「BAMBOO BLADE」本編のコジロー先生で見られた深い人間性が、こちらの先生にも見ることが出来るのか。それに注目したいと思います。


・手堅い作品ではあるが、本編に比べていまひとつに思えるところも。
 このように、より少年マンガ色が強くなったこの外伝、剣道マンガ・スポーツマンガ色も強くなり、各キャラクターの剣道への思い入れの強さも感じられるストーリーになっており、より真剣に読ませる作品になっていると思います。土塚さんのストーリー作りは非常に丁寧で巧みなものがあり、このマンガにも彼の創作の面白さがよく出ていると言えるでしょう。

 しかし、その一方で、ヤングガンガン連載の本編と比べると、こちらは今ひとつかな・・・と感じるところもあります。具体的にどこが問題なのかはっきりとは分からないのですが、いまひとつはまれない。

 あえてその理由を自分なりに考えてみると、まず見た目の絵柄がやや平凡に感じられるでしょうか。前述のように、このマンガの作画は、土塚さんが参加しているとはいえ、アシスタントさんたちとの共同作業で行われているようです。これを本編の五十嵐さんの作画と比較してみると、作画の綺麗さや丁寧さ、作画自体のレベルでは、残念ながら及んでいないと思います。また、土塚さんが単独で執筆している「マテリアル・パズル」と比較すると、あちらのような大ゴマを連発する大胆な作画には乏しい。つまり、五十嵐さんのような綺麗な作画とも、土塚さんのような大胆な作画とも異なる、微妙に中途半端な作画にとどまっているような気がするのです。その結果として、ガンガンではありがちな、比較的オーソドックス(平凡)な少年マンガ的絵柄になってしまっているような気もします。

 加えて、ストーリーもオーソドックスな少年マンガになってしまい、あまり幅広い読者に印象を残せていないのかもしれません。さらには、部活動内での先生同士の確執など、負の側面が序盤から出てしまっているのも、やや抵抗があったのかもしれません。ヤングガンガンの「BAMBOO BLADE」は、従来の熱血系スポーツマンガらしくない、まったりした雰囲気のコメディ中心の展開と、土塚さんの持ち味であるギャグの面白さで、今までこのジャンルに関心の少なかった読者まで引きつけました。しかし、この「BAMBOO BLADE B」は、そこまでの多くの読者に熱心に読まれる作品には弱いかもしれません。そういえば、土塚さんのギャグが今回は薄めなのもちょっと残念なところです。


・とはいえ、ガンガンで「BAMBOO BLADE」が読めるのは貴重。
 とはいえ、決して悪いマンガではありませんし、あの「BAMBOO BLADE」の外伝が、ガンガンの方でも読めるというのは、実にありがたいことです。今のガンガンの少年マンガの中でも、さすがにかなりの良作に仕上がっているようですし、さすがに土塚さんだけのことはありました。

 ただ、今のところ本編ほどの強い魅力を感じないのも事実であり、果たしてこれが「BAMBOO BLADE」に匹敵する人気作品となって成功できるか、それはかなり厳しいと思います。ガンガン読者の間での反応も今のところさほどでもないようですし、コミックスの売り上げも、「BAMBOO BLADE」の関連作品にしては、まだ低い数字にとどまっているような気がします。

 ただ、同時期に開始された土塚作品「マテリアル・パズル ゼロクロイツ」が、これ以上に芳しくない成果だったらしく、1年の連載期間を経てガンガンONLINEへと移籍してしまったことを考えれば、こちらの方はまだまだ連載を続けて人気を得られる可能性も出てくると思います。なによりも、土塚さんの作画で「BAMBOO BLADE」が読めるのは本当に貴重ですし、「マテリアル・パズル」が中断状態の今ならば、その価値はさらに高まります。

 個人的にこのマンガに今後期待することは、よりストレートに少年剣士ケンの活躍を見せてほしいということ。そして、もちろん主人公のユウの強さの描写も見逃せません。序盤のうちに、部活動での先生同士の確執という、あまり印象のよくないエピソードが出てきたのは、やはりちょっといただけませんでした。それよりは、やっぱりこのマンガでは少年少女の活躍が素直に見たい。それこそが、少年マンガ、剣道マンガとしての最大の魅力だと思うのです。


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