<改善の兆しが見られるガンガン>

2006・8・25

 このところ、ガンガンの内容に対する批判的な記事を書き続けてきた当サイトですが、ようやくここに来て肯定的な記事を書くことが出来そうです。
 半年近く前に、このサイトでガンガン2006年の危機という記事を書き、その中で、当時のガンガンの状況について、次のように記述しました。

  1. 今のガンガンは、「スクエニゲーム」と「鋼の錬金術師」というキラーコンテンツに依存しており、そればかりが全面に出ている。
  2. その一方で、肝心のマンガが停滞しており、新連載が非常に少ない状態が続いている。
  3. そのために、連載本数自体も非常に少なくなっており、これだけの分厚い雑誌でありながら、まったく物足りないものとなっている。
 これは、執筆当時のガンガンについてはよく捉えた記事だったと思いますが、その後のガンガンで、かなりの部分で改善の兆しが見られ、今では幸いにも多くで当てはまらなくなってきています。ガンガンは、2006年に入ってしばらくして、これまでのスクエニゲーム依存の方針が変化し、再びマンガ中心の雑誌に戻ろうという兆しが窺えるのです。


・新連載が出るようになったのは大きい。
 とりあえず、これまでとは打って変わって、多くの新連載が出てくるようになったのは大きいです。
 2004年・2005年の2年間のガンガンは、とにかく新連載の本数が極端なまでに少なく、2年間にわずか6本しかありませんでした。しかも、そのうち3本はスクエニ系ゲームコミックで、オリジナルの新連載に関して言えば、わずかに3本しかありませんでした。2年間でオリジナル新連載がわずかに3本とは、マンガ雑誌としては通例考えられないくらい少ない本数でした。

 しかし、ここ2006年に入って、ようやくガンガンはかなりの本数の新連載を打ち出すようになりました。正直遅すぎるくらいの策だと思いますが、何はともあれ新鮮な新連載が入るのは良いことです。
 それも、スクエニのゲームマンガでない、オリジナルの新連載が多いのも評価できます。もっとも「キングダムハーツII」のみスクエニゲームコミックですが、これは特に大物タイトルで、前作(チェインオブメモリーズ)のコミック化からの継続連載の趣きもあるので、これは仕方ないでしょう。もうひとつ「ひぐらしのなく頃に 暇潰し編」も(スクエニ系でない)ゲームコミックですが、これはガンガン以外のスクエニ雑誌との連動の側面もあるので、これも規定路線でしょう。それ以外はすべてオリジナルで、「衛星ウサギテレビ」「はじめての甲子園」「スパイラル・アライヴ」、シリーズ連載ですが「ブレイド三国志」「新体操舞技」と、合わせてすでに5本。前述のゲームコミック2本も合わせれば、今年に入って7本の新連載があります。これだけあれば、新連載の本数としてはまったくもって十分でしょう。
 新連載が大量に入ったことで、大幅に落ち込んでいた雑誌連載本数も回復し、一時期は14本しかなかったものが、今では(2006年9月号現在)19本になっています。

 もっとも、個々の新連載の質に関しては、かなり疑問なのですが・・・これについては後述します。


・ゲーム関連の特集ページが減った。
 そしてもうひとつ、大きな改善ポイントとして、かつて毎号のように巻頭を埋め尽くしていた大量のゲーム紹介・特集ページが、大幅に縮小したことが挙げられます。
 少し前までのガンガンでは、とにかく巻頭のゲーム紹介ページがコロコロコミックなみに多く、しかも2005年後期ごろから、スクエニのビッグタイトルを大きく採り上げた特集企画が目立つようになっていました。表紙までゲーム関連の画像が独占し、特製ポストカードやイラストギャラリー・製作者インタビュー・ソフトプレゼントなどの各種企画が雑誌の巻頭を占領し、まさに肝心のマンガよりもスクエニゲームの方が雑誌の表に出る状態でした。これは、最初からスクエニゲームの記事を求める読者にとっては良いのかもしれませんが、純粋にマンガを求める読者に対しては、到底すすめられない状態であったことは明白でしょう。

 しかし、今年に入って数カ月後、このような過度のゲーム特集はかなり下火になり、少なくとも表紙をゲーム画像が占めるようなことはなくなりました。それに伴い、巻頭のゲーム関連のページもかなりそのページ数を減らし、一昔前のガンガンとさほど変わらないほどのページ数に落ち着いてきました。例えば、今月(9月号)のガンガンならば、せいぜい10ページしかありません。これでも、一般のマンガ雑誌に比べればまだ多いほうでしょうが、元々ゲーム系記事が多いガンガンではさほど突出したページ数ではなく、「いつも程度のガンガン」に戻った感があります。これならば十分許容範囲でしょう。

 このゲーム関連ページの減少化は、ここ数カ月のうちに急速に行われたもので、何か編集部の間で大きな路線の変更があったのかもしれません。ちょっと前までは「FFアドベントチルドレン」「ダージュオブケルベロス」などのFF系ビッグタイトルの大特集が何度も組まれていたのですが、今ではそのような大規模なゲーム特集は見られなくなっています。純粋にマンガを求める読者にとっては、これは少なからぬ朗報でしょう。


・ようやく「鋼の錬金術師」から脱却か。
 それともうひとつ、今年に入って、ようやく「鋼の錬金術師」への過度の依存から脱却する兆しも見られるようになりました。

 「鋼の錬金術師」がTVアニメで大ヒットして以降、その圧倒的な人気に合わせてガンガンも「鋼」一色となり、毎号のように表紙を飾り、数十ページに渡る特集ページが毎号組まれていましたが、それもここに来てようやく下火になり始めています。
 また、「鋼の錬金術師」のメディア展開を見ても、大人気だったTVアニメが終了して久しく(放映終了は2004年10月)、その後の劇場版も2005年の夏に公開された後、ついにメディアへの露出がひと段落したところがあり、最後にお遊び的に作られたOVAを最後に、一通りのメディア露出は終了した感があります。それに伴い、ガンガンでもようやく「鋼」関連のコンテンツは少なめになり、表紙になることも少なくなりました。これは、ガンガンが「鋼」のみに頼っていた誌面からの脱却、その第一歩と見てよいでしょう。

 とはいえ、「鋼」の後に続く人気作にはいまだ乏しいことも事実で、まだまだこの後の誌面がどうなるか、それは未知数ではあります。


・とはいえ、新連載のクオリティにはかなりの不安が残る。
 このように、今のガンガンでは、ちょっと前のガンガンで見られた「スクエニゲームや鋼の錬金術師への過度の依存」「新連載の極端な減少と、それに伴う連載本数の減少」という大きな欠点がかなり解消された感があります。過度のゲーム特集は大きく下火になり、新連載と連載本数が増えてマンガへの依存度が大きくなり、本来の「マンガ中心の雑誌」へと改善の兆しが見られます。これは素直に評価すべきポイントでしょう。

 しかし、このように雑誌の中のマンガの比率が上がったのは好ましいことですが、肝心の「マンガの質」に関してはまだまだ不安が残ります。特に、今年に入ってからの新連載については、全体的に見てさほど質が高いとは言えない状態です。今年の新連載7本のうち、手放しで評価できるものは多くありません。

 まず、決していいと言えないのが、「衛星ウサギテレビ」と、シリーズ連載の「ブレイド三国志」でしょう。「衛星ウサギテレビ」は、あの衛藤ヒロユキの久々の新作ですが、かつての「魔法陣グルグル」ほどの面白さは見られず、今の状態で連載が続くのは大いに不安です。「ブレイド三国志」は、そもそも最初から全く話にならないレベルであり、三国志という新鮮味のない設定で、内容も説明ばかりで面白みに欠け、絵的にもひどく見づらいなど、いいところが見当たらない状況です。大々的に始まったにもかかわらず、短期のシリーズ連載で終了など、企画そのものもちぐはぐな感が否めません。
 つい最近始まったスポーツマンガ「新体操舞技」も今ひとつです。これまでのガンガンのスポーツマンガに比べれば今回はまだよいと思いますが、それでもまだまだ平凡な感は否めず、これが大きな人気を獲得するのは厳しそうです。

 そこそこ読める新連載としては、「キングダムハーツII」「はじめての甲子園」が挙げられます。「キングダムハーツII」は、スクエニ系ゲームのビッグタイトルのコミック化で、前作「チェインオブメモリーズ」のコミック化の後を受けて始まりました。定番のゲームコミックと言えますが、物語の序盤を見る限りでは中々の好感触で、これから期待できるかもしれません。「はじめての甲子園」は、弱小野球部を舞台にしたギャグマンガで、絵的には大した見栄えのする作品ではありませんが、ギャグに面白いものがかなり見られ、それも連載を重ねるにつれて少しずつ良くなってきました。

 最初からかなり面白いものとしては、「ひぐらしのなく頃に 暇潰し編」「スパイラル・アライヴ」があります。「ひぐらし」は、他誌連載の他の編同様、優れた原作をうまくコミック化しており、安定して読める作品になっています。「スパイラル・アライヴ」は、昨今終了したあの「スパイラル」の外伝であり、連載中断からのブランクが長いことから、個人的にはかなり不安だったのですが、ふたを開けてみれば本編同様に読める作品になっていました。
 ただ、この2作品は、確かに内容は安定していますが、一方は定番のゲームコミックで短期終了は規定路線であり、もう一方はかつての人気作の外伝ということで新鮮味には乏しく、いずれもこれからのガンガンを支える新作という点では、物足りなさが残ります。本当に完全な新作でヒット作が出るのが望ましいのですが・・・。

 以上のように、新連載の本数こそ多いものの、これからのガンガンを支えるべき、力のあるオリジナル新連載には乏しいのが実情です。マンガ中心の誌面へと改善の兆しが見られるのはよいのですが、肝心のマンガの質に関しては、まだまだこれからといったところでしょう。


・ここ数年のガンガンに比べれば、かなりいい方針だと言える。
 しかし、とりあえずマンガ中心の正常なマンガ誌へと改善の兆しが見られるのは、かなり大きな朗報です。ほんの少し前の、ゲーム画像が表紙で、大量のゲーム記事が巻頭を席巻していた頃に比べれば、雑誌の構成に対する違和感はかなり解消されました。
 それも、ここ数カ月の間の急速な変化という点が目に付きます。編集部の間でも、あまりにもゲームばかりが全面に出た誌面作りへの反省があったのかもしれません。もしそうならば、編集部によるこの路線変更は大いに評価できますね。

 それともうひとつ、ガンガン本誌とかなり近い関係にある「ガンガン増刊パワード」のリニューアル・新装刊の影響もあるかもしれません。この雑誌は、元々は新人の読み切りを載せる雑誌でしたが、ほんの数カ月前のリニューアルによって、連載マンガ中心の普通の雑誌となり、ゲームコミックの新連載を目玉とする雑誌へと新装されました。ゲームコミック以外の新連載も多彩で、従来のガンガン本誌の硬直化した誌面とは対照的な、積極的な誌面作りが見られます。ガンガン本誌も、このような増刊パワードのアクテイブな雑誌作りの影響を受けて、多数の新連載を打ち出す積極的な誌面作りへと動き出したのかもしれません。最近のスクエニでは、ガンガン本誌よりも、このパワードや、あるいはヤングガンガンあたりの雑誌の方が活気に満ちていると思いますし、それがガンガン本誌にもいい影響を及ぼすのなら、それは幸いでしょう。


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