<ガンガン2005年の危機>

2005・4・22

 前々から予想はしていましたが、2005年初頭から始まったガンガンの新連載攻勢は、まったくもってつまらないものでした。今回の新連載のラインナップは、「コード・エイジ・アーカイブス」「キングダムハーツ チェインオブメモリーズ」「『ロマンシングサガ ミンストレルソング』ビジュアルストーリー」「王様の耳はオコノミミ」「屍姫」の5つです。
 この中で、純粋に今後も読みたいと思えるのは「屍姫」のみです。あとの4つは、決して悪いというわけではないものの、概して平凡な印象の作品であり、新連載攻勢としては随分と力不足の感は否めないものでありました。その上、これらの連載は、ガンガン編集部の目指す特定の方向性のみが感じられ、決して独創性の高い作品ではなく、むしろ雑誌をさらに平坦に、味気なくさせる物であるとも思えます。
 これまで、このサイトでは、近年のガンガンが非常な不振に陥っており、作品の完成度も独創性も大きく失われているという意見をたびたび述べてきました。しかし、事ここに及んで、ついにガンガンは、危機的な状況と言ってもよいほどの極度のつまらなさに満ちてきたような気がします。わたしは、これを「ガンガン2005年の危機」と題し、今のガンガン誌面の危機的な状況を改めて解説していこうと思います。


・作家の質の低下が真の原因ではない。
 まず、最初に言うべきことは、今のガンガンの不振は、個々の作家の質の低下が真の原因ではないということです。いや、確かに作家全体の質も明らかに低下しています。しかし、それはあくまでもひとつの側面に過ぎず、ガンガンが不振に陥った真の原因は別にあるのです。
 では、真の原因とは何か。それは(これまでもたびたび言ってきましたが)、ガンガン編集部の強引な誌面創りにあります。


・極端な少年マンガ路線が最大の問題。
 まず第一に、編集部による強引な「メジャーな少年マンガ誌路線」が最大の元凶であることは言うまでもありません。従来のガンガンにあった独創的な路線をあえて放棄し、極めて強引なやり方で、誌面を一般向けの「少年マンガ」中心の路線へと切り替え、その路線に見合う新規の「少年マンガ」を大量に投入したのです(この路線変更の事実は、毎日新聞によるガンガン編集長へのインタビュー記事からも明らかです。詳しくはこちらを参照ください)。
 そして、その新規投入した「少年マンガ」作品が、全体的に大きく質の劣るものばかりで、そのためにガンガンという雑誌全体の質も一気に低下してしまったのです。

 そして、さらに問題なのが、ガンガンの編集部が「少年マンガ路線」にこだわるあまり、そういった質の低い作品をかばい続け、質が低いにも関わらずひたすら連載を続けさせてきたことにあります。


・あまりにも滑稽だった「ガンガンヒーローフェア」。
 そんな編集部の行動で、過去一番おかしかったのが「ガンガンヒーローフェア」という企画です。
 これは、2004年中期に行なわれた、ガンガンの連載マンガの3作品をピックアップした宣伝・推進企画です。その3作品とは「マテリアル・パズル」「666(サタン)」「女王騎士物語」の3つです。似たような企画はどのマンガ雑誌でも行なわれていますが、ガンガンのこの企画だけは非常に不可解なものでした。

 こういった宣伝・推進企画は、マンガ自体がある程度人気があるか、あるいは人気はないが編集部内で評価が高い場合に行なわれるのが普通です。
 例えば、人気の出てきたマンガを、さらに広めるために宣伝・推進企画を行なう。近年ジャンプで「DEATH NOTE」というマンガが大ヒットしましたが、これは当初の予想を上回るヒットだったため、ジャンプの編集部もコミックスの売り上げに合わせて大々的な宣伝活動を行ないました。このようなケースは珍しくありません。
 あるいは、今のところ作品の人気はないものの、編集部内で評価が高く、そのために編集部が率先する形で特定作品の宣伝・推進活動を行なうケースもあります。同じガンガンでも「鋼の錬金術師」では、作者の荒川さんが新人の中の大本命と言われるほどの実力派作家であったため、連載当初から積極的な宣伝・推進活動が行なわれていました。

 しかし、この「ガンガンヒーローフェア」だけは、そのどちらにも当てはまりません。この「ヒーローフェア」の3つの作品は、人気はまるでぱっとしないし、評価も決して高いとは言えない作品ばかりなのです。わたし自身、なぜこのような平凡な、とりたてて目立たない作品を3つも集めてフェアを行なおうとするのか、非常に疑問でした。
 しかし、理由は至極簡単でした。この3つの作品は、ガンガン編集部が推す「少年マンガ路線」の中核的作品だったのです。少年マンガ路線を推し進めるために、あえて人気のないマンガまでテコ入れして宣伝・推進企画を行なったというのが真相でしょう。
 しかし、これはどう考えてもおかしい。大体、人気も評価もないマンガを、そこまで無理して推進する必要がどこにあるのでしょうか? 人気も評価もないマンガは、むしろ打ち切りにするのが正論でしょう。この3つの作品のうち、「マテリアル・パズル」だけは、まだ固定ファンがいくらかついており、それなりの評価もあるようですが、「666(サタン)」「女王騎士物語」のふたつは実に平凡極まりない作品で、決していい人気も評価も得られていません。そのようなマンガを、打ち切りにするどころか、無理に推進しようとまでするとは異常です。


・あまりにも不可解な「悪魔事典」の長期連載。
 ガンガン編集部の不可解な行為は他にもあります。今のガンガンで、最も不可解なのは、本来打ち切りにされるほずの評価の低いマンガが、いつまでも終わらずに延々と続いてしまうことでしょう。その最たる例が「悪魔事典」の長期連載でした。
 このマンガ、最初のうちはごく平凡なラブコメマンガでしたが、連載を重ねるごとにどんどん質を落とし、連載中期以降の出来は到底受け入れがたいものでした。絵の質がどんどん悪化して、キャラクターのデッサンが明らかにおかしくなり、特に頭の大きさが異様で、多くの読者が「気持ち悪い」と感じるほどでした。内容的にも、基本的に同じことの繰り返しで、回を重ねるごとにマンネリ化が進み、それを打開するために女の子の新キャラクターを次々に登場させて安易に場を凌ぐという、非常に困った状態でした。
 連載当初から平凡な作品で、特に長期連載するようなマンガには見えなかったのに、その上さらに質が悪化していったわけですから、早々に打ち切るべきだと思ったのですが、どういうわけかこれがさっぱり終わりません。最終的には2年半も連載が続き、単行本も6巻を数えましたが、とてもそれに値する連載とは思えませんでした。

 実は、最近のガンガンでは、このような「なぜ続いているのか分からない」連載が非常に多く、誌面の質を大幅に落としています。「タケピロのハッスル列島」などは、「悪魔事典」以上にひどい、不快感さえ感じさせる汚れ系のギャグマンガでした。これら以外にも、そこまでひどいとは言えないものの、しかし長く続けるべきとは思えない平凡な作品は数多いです。「666(サタン)」や「女王騎士物語」はその典型ですし、「フラッシュ!奇面組」や「円盤皇女ワるきゅーレ」などもそうでしょう(もっとも、この2作品は外部からのファンが多いのでやめるにやめられないのでしょうが)。

 これらの連載が終わらない理由も簡単です。結局のところ、今のガンガン編集部は、自分達の望むべき「メジャーな少年マンガ誌」を目指すために必要なマンガは、絶対に終わらせたくないのだと思われます。「666(サタン)」や「女王騎士物語」はその典型ですし、「悪魔事典」もメジャー雑誌によく載っているラブコメ系のマンガだと考えれば納得できます。「タケピロのハッスル列島」だけはよく分かりませんが(笑)、これもジャンプ辺りでよく見られる汚れ系のギャグと考えれば一応納得できます。
 そして、このような「メジャーな少年マンガ誌を目指すためならば、つまらないマンガでも延々と続ける編集姿勢」こそが、今のガンガンの最大の問題だと思われるのです。


・最初から決まっていた「オコノミミ」の連載決定。
 ガンガン編集部の不可解な行動はまだ続きます。
 2004年中頃に、「王様の耳はオコノミミ」という料理マンガの短期連載が始まりました。 このマンガ、短期連載でアンケートの評判が良ければ正式に連載決定、という運びだったのですが、これが、どうもアンケートの結果はさほど重要視されず、最初から連載が決定されていた節が感じられるのです。
 そもそも、ガンガンでは料理マンガが評価されるような下地がありません。今まで料理マンガの連載など聞いたこともないですし、ガンガンのみならず、エニックス全体を見渡してもほとんど存在していません。このような状態で、連載決定を勝ち取るには、下地のなさを覆すほどの独創的な面白さが求められると思うのですが、実際に始まった短期連載は、極めてベタベタな低年齢向け「料理対決(バトル)もの」の少年マンガで、実に平凡極まりないものでした。
 正直言って大した評価は得られそうにないマンガだと思ったのですが、しかしどういうわけかこれが実にあっさりと連載が決まってしまったのです。もっとも、この当時(2004年中頃)には、もうガンガンのメジャーな少年誌志向は明らかで、わたし自身「どうせこれも最初から連載させるつもりなんだろう」と冷めた目で見ていましたので、さほどの驚きもありませんでした。ガンガン編集部としては、「料理マンガ」というメジャーなジャンルのマンガをどうしても連載させたかったのでしょう。そして、この「オコノミミ」こそがガンガン2005年の新連載攻勢のうちのひとつなのだから、最初から話になりません。


 以上のように、ガンガン編集部の「メジャーな少年マンガ誌路線」の弊害は非常に大きいもので、今のガンガンの不振の最大の原因になっていると思われます。


・ガンガンはスクエニゲームの広告塔なのか。
 そして、この「メジャーな少年マンガ誌路線」と並んで、もうひとつ今のガンガン編集部の不可解極まりない方針があります。「ゲームマンガの大量投入」です。
 確かに、過去のガンガン系雑誌においても、ゲームマンガは常に一定の数を占めていました。ただ、これまでのゲームマンガは、一つ一つの企画がかなり練りこまれたもので、実力派の作家による個性的な連載が多く、ただのゲームマンガに留まらない、むしろ作者の個性が全面に出たものが多かったのです。
 しかし、最近のガンガンのゲームマンガは、そのような個性があまり感じられず、典型的なゲームマンガ(ゲームプレイヤー向け作品)でしかないものが大半を占めるようになったのです。

 特に、2005年に入ってからのゲームマンガ攻勢は、ガンガンのみならず他のエニックス雑誌まで巻きこんだあまりにも露骨なもので、多くの読者の不信を呼び起こすに十分でした。ガンガンの場合、「キングダムハーツ チェインオブメモリーズ」「『ロマンシングサガ ミンストレルソング』ビジュアルストーリー」のふたつがそれに該当しますが、どちらも「とりあえずスクウェアゲームの話題作をコミック化しました」という意図だけが露骨に感じられるもので、非常に平凡な感は否めませんでした。特に「『ロマンシングサガ ミンストレルソング』ビジュアルストーリー」に関しては、雑誌内の企画扱いにすぎない上に、割と「美術的」な要素の強い、高年齢向けのビジュアルコンテンツで、今のガンガンの低年齢向け少年マンガ路線とはまるで合っていません。なぜこのような企画が載るのか非常に不思議です。
 このような方針を見る限り、今のガンガンは、とりあえずスクエニの話題作ゲームならばなんでも載せてしまおうという乱暴な路線が窺えます。元々、スクエニ(スクウェア・エニックス)は、ゲームが本業であり、ドラクエ・FFを始め多くのメジャーな話題作を抱える存在です。そして、そのようなメジャーな話題作ゲームの力を借りてガンガンのメジャー化を目指し、かつコミック化によるゲームソフトの宣伝という「広告塔」的な目的も兼ねて、スクエニのゲームマンガをガンガンで連載していこうという意図が顕著に感じられるのです。
 そして、これらの企画は、あくまでゲームをコミック化すること自体が目的であり、話題作が載せられればそれで良しとするもので、かつてのゲームマンガのように作家の個性が見られなくなってしまったのだと思われます。


・連動企画への大いなる不安。
 加えて、「コード・エイジ・アーカイブス」という、一種の連動企画の存在も不安です。
 これは、ある作品コンセプトを打ち出し、そのマンガ化・アニメ化・ゲーム化等を同時並行的に進めていく企画で、スクウェア・エニックスは、これを「ポリモーフィック・コンテンツ」と命名しています。
 元々、この「ポリモーフィック・コンテンツ」は、あの「鋼の錬金術師」において行なわれた企画です。あまり知られていませんが、「鋼の錬金術師」では、原作マンガの連載初期のうちから早々とアニメ化・ゲーム化の企画が進められていました。そのため、アニメ製作・ゲーム製作に相当な時間をかけることが出来、その成果でアニメのクオリティは群を抜いており、ゲームに関しても、一般の原作付きゲーム(いわゆる「キャラゲー」)の中ではかなりよく出来たものとなっていました。

 そして、「鋼の錬金術師」という成功例を経て、ここで「コード・エイジ」という新しいコンセプトの元に、再び「ポリモーフィック・コンテンツ」を行なおうとしているのです。既に、ガンガンでのマンガ連載に加えて、ゲーム化の企画も発表されています。その意味では、これも一種の「ゲームマンガ」に近いものと言えるかもしれません。
 しかし、これもまた非常に不安な要素に満ちています。ガンガンが安定した質を保っている状態ならば、このような大掛かりな企画を打ち出しても問題ないでしょう。しかし、今のガンガンは、編集部の強引なメジャー化路線で、連載作品の質も独創性も極端に落ちている状態です。そのような状態で、このような外部からの企画を持ち込むことは、ガンガンの独創性をさらに失わせ、誌面の質を低下させる可能性が高いと思われます。先ほども書きましたが、結局のところ、これも一種の「スクエニのゲームマンガ」なのです。
 今の「コード・エイジ・アーカイブス」の連載を見ても、SF的な作品としてある程度の完成度は備えているものの、あくまで平均レベルの作品の印象で、突出して目立つ存在にはなっていません。ガンガンの新連載攻勢としては物足りない作品に留まっています。


・ガンガン15年目にして最大の危機。
 このように、今のガンガンは、編集部による「メジャーな少年マンガ誌路線」と「メジャーなスクエニゲームマンガの大量投入」により、誌面の質と独創性が大いに失われています。実は、ガンガン編集部の5年前の「メジャーな少年マンガ誌路線」開始以来、ここまでガンガンの質は下がり続けてきたのですが、ここに来て「ゲームマンガの大量投入」によって、質の低下は致命的なものとなった感があります。今のガンガンは、平凡な「王道少年マンガ」と、これまた平凡な「スクエニゲームマンガ」で満たされており、かつてのような独創性のある作品は、もはや数えるほどしか見られません。

 今のガンガンは、「鋼の錬金術師」の圧倒的な人気で雑誌を保ってはいるものの、もしそれが無くなれば、すぐにでも雑誌が保てなくなると予想される状態です。このような危機的な状態では、もはやなりふり構わずに質の高い新規連載を大量に投入する必要があります。「メジャーな少年マンガ誌を目指す」とか「メジャーなスクエニゲームの話題作を取り入れる」とか、そんなことを考えている場合ではないのです!
 ガンガン読者の大多数が望んでいない「メジャーな少年マンガ誌路線」「スクエニゲームマンガ大量投入」という方針を続けるガンガン編集部は、一体どういうつもりなのか。今のガンガンの編集部は、もはや偏執部とも言える存在であって、まったくどうでもいい路線ばかり進めて、肝心の誌面の質、独創性の向上にはまるで努力していないのです。

 今のガンガンは、ページ数だけは肥大化しているものの中身の質が伴わない、赤色巨星のような末期的な状態にあり、このままでは早々と超新星爆発を起こして滅び去ってしまうか、あるいは仮に残ったとしても、もはや形だけの「少年マンガ」と「ゲームマンガ」が誌面を覆い尽くすだけの、白色矮星のような抜け殻の雑誌に成り果ててしまうでしょう。
 いや、もうそう成りつつあるのかもしれません。2005年初頭からのガンガン新連載攻勢は、わずかに「屍姫」というひとつの成果のみを残して、それ以外には大した作品はなく、それどころか「大量のゲームマンガ」という新たな質の低下の要因を生み出しただけでした。そして、これでもう新連載攻勢は終わりです。これ以上新しい連載は、しばらくは登場しそうにありません。これではガンガンの今後の見通しは非常に暗いものだと言えるでしょう。

 少年ガンガンが創刊して15年目の2005年。今、ガンガンには最大の危機が訪れているのです。


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