<ガンガン2006年の危機・前編>

2006・3・14

 この記事はガンガン2005年の危機の続編(?)記事です。


 ついに、本年もこの記事を書かねばならない時がやって来てしまいました。わたしは去年の4月に、当時のガンガンの状況を嘆いて、上記の「ガンガン2005年の危機」を執筆致しました。その後、その記事で書いたガンガンの危機はほぼ現実のものとなってしまいました。そして一年後の今では、ガンガンの誌面状況はさらに悪化しており、もはや末期的な状況を示し始めました。
 ここでは、今一度ガンガンの置かれている状況を整理し、今の誌面の問題点を悉く洗い出していきたいと思います。


・去年の新連載攻勢は予想通り失敗した。
 まず、「2005年の危機」の冒頭で、当時のガンガンで行われていた新連載攻勢のラインアップを記述しました。具体的には、「コード・エイジ・アーカイブス」「キングダムハーツ チェインオブメモリーズ」「『ロマンシングサガ ミンストレルソング』ビジュアルストーリー」「王様の耳はオコノミミ」「屍姫」の5つです。このうち、「『ロマンシングサガ ミンストレルソング』ビジュアルストーリー」は、新連載のマンガというよりは、一種のイラスト企画的なものだったので除外するとして、残りの4つが昨年のガンガンの新連載のすべてです(実は、昨年のガンガンには新連載がたった4つしかなかったのです・・・この問題は後で触れます。)
 このうち、真に成功して人気を得たのは、「屍姫」のみです。これは、既に昨年の記事で触れていましたが、1年が経過した今となって、その事実はさらに明確になりました。それ以外の作品は、「王様の耳はオコノミミ」以外はすべて1年程度の短期で終了しており、さほどの高い人気も評価も得られず、ガンガンのラインナップの充実には貢献しませんでした。1年でたったのひとつしか成功作が出ないというのは、考えてみれば極めて深刻です。
 そもそも、どんな雑誌においても、活きのいい新連載の存在は必須です。どんなに実力派のベテランが長期連載で頑張っても、それだけでは雑誌は保たないのです。今のガンガンでは、既にベテランとも言える荒川弘さんが、「鋼の錬金術師」の力でガンガンを保っている状態ですが、そんな状態をいつまでも続けていいはずがない。雑誌を常に新鮮な状態の保ち、勢いを持続させるためには、最低でも年に2〜3作、出来れば3〜4作以上の雑誌に定着した成功作が必要でしょう。しかし、昨年のガンガンの新連載ラインナップは、そのレベルに遠く及ばない成果しか出せませんでした。これでは、いずれ雑誌が保てなくなることは明白です。


・この3年で最小の成果しか出していないガンガン。
 そして、問題は昨年1年間だけに留まりません。実は、今のガンガンは、過去3年間に渡ってほとんど成果が出ていない状態が続いているのです。

 まず、この3年間で、新連載の本数自体が極端に減少しているという事実があります。先ほど、「昨年のガンガンには新連載がたった4つしかなかった」と書きましたが、では、その前の年(2004年)の新連載はどうだったのか。なんと、たったの2本しかありません。そのもうひとつ前の年(2003年)は5本です。5本ならばまだ平均レベルですが、実は、そのもうひとつ前の年(2002年)には、なんと10本もの新連載攻勢を行っているのです。そして、あのブレイド騒動(エニックスお家騒動)が起こった2001年には、雑誌自体は混乱の極地にありながらも、これまた10本もの新連載があるのです! 以上、この5年間の新連載本数の推移は「10本→10本→5本→2本→4本」です。この本数の推移を見れば、ここ3年でガンガンの新連載が大幅に激減しているのは誰の目にも明らかでしょう。

 もちろん、お家騒動当時のガンガンは、多くの作家がブレイドに抜け、その穴埋めのために大挙して新連載を投入するという事情がありましたから、単純に今のガンガンと比較はできません。しかし、その次の年の10本というのは特筆に価します。この当時のガンガンの編集部は、離脱したブレイド陣に対抗して、残された自分たちの雑誌を盛り立てよう、路線を変更して新しい雑誌を作ろうという意気込みが強かったのか、実に10本もの新連載を打ち立てています。また、この10本以外にも、シリーズ連載で数カ月の短期で終了した連載もいくつかあり、非常に活気に満ちた状況でした。
 それに比べて今はどうでしょう。かつての路線変更当時の勢いは全くなく、まるで灯が消えてしまったかのようです。2001・2002年の2年間の新連載本数は20本(シリーズ連載を加えればそれ以上)なのに対して、ここ3年での新連載本数は11本。ここ3年間の新連載本数が、その前の2年間の半分程度しかないのです。


 しかし、問題は新連載の本数だけではありません。仮に、新連載の本数が少なくても、それらすべてが人気を得て雑誌に定着することが出来れば、それは成功だと言えるかもしれません。例えば、もしここ3年間の新連載11本がすべて人気を得て雑誌に定着していれば、それはそれで十分な成果でしょう。つまりは、「どれだけの本数の新連載がうまくいったか」という点が最も重要なのですが、実は、こちらの方がさらにさらに大問題なのです。
 まず、昨年(2005年)の成功作が、「屍姫」1本のみでしかないことは、既に述べました。では、2004年はどうか? この年には、そもそも2本しか新連載がないのですが、この2本とは「ファイナルファンタジークリスタルクロニクル」と「ソウルイーター」です。このうち、成功しているのは「ソウルイーター」1本のみ。まあ、2本のうち1本が成功しているのだから、まだましでしょうか。
 そして、さらにその前の2003年はどうか。この年の5本の新連載は「スターオーシャンTill the End of Time」「ドラゴンリバイブ」「グレペリ」「女王騎士物語」「ヴァンパイア十字界」ですが、このうち成功しているのは多分1本もありません(笑)。まあ、現在も連載が続いている「女王騎士物語」「ヴァンパイア十字界」は、一応は長期連載で雑誌に定着したとは言えるかもしれませんが、実際には到底人気があるとは思えず、これではとても成功したとは言えないでしょう。

 さて、ではこの3年間の成功作の本数を合計してみましょう。と言っても、「1+1+0」だから2本にしかなりません。そう、ガンガンは、ここ3年間で2本しか成功作が出ていないのです。これでは全く話になりません。もし、仮にガンガンが3年前に創刊されていたとすれば、もうとっくの昔に潰れています。2本では雑誌は保ちません。今のガンガンが雑誌として形を成しているのは、2002年以前からの長期連載での人気作、特に「鋼の錬金術師」と「スパイラル」の存在に大幅に頼り切っている(いた)ことが、これで証明できると思います。

 はっきり言って、ここ3年間だけを切り取ってみれば、今のガンガンは、他のどの少年誌と比べてもひどく劣る存在です。雑誌のランクでも下から数えた方が早い、というか、ほぼ最底辺でしょう。最近になって新興の月刊少年誌が次々と創刊されていますが、それらと比べても雑誌の勢いは大幅に劣っています。


 では、ここでガンガン創刊時からの「年別の成功作本数」を見てみます。1991年からここまで、すべてを見てみます。

 年 成功本数 具体的な作品名(カッコ内は成功かどうか微妙な作品)
1991   7 ロトの紋章・パプワくん・ハーメルン・パッパラ隊・ZMAN・輝竜戦鬼ナーガス・ドラクエ4コマ
1992   3 魔法陣グルグル・TWIN SIGNAL・電撃ドクターモアイくん
1993   0
1994   1 夢幻街
1995   5 風の騎士団・けんけん猫間軒・忍ペンまん丸・浪漫倶楽部・CHOCOビースト
1996   3 ぷりん帝国・守護月天・刻の大地・(斬郎汰)・(護衛神エイト)
1997   5 ハレグゥ・アークザラッドII・PON!とキマイラ・里見八犬伝・東京アンダーグラウンド
1998   2 ワルサースルー・スターオーシャンセカンドストーリー・(コインランドリー)
1999   3 魔探偵ロキ・ピースメーカー・スパイラル
2000   4 ヴァルキリープロファイル・ドラクエモンスターズ・清村くんと杉小路くんと・マジックマスター
2001   5 エデンの戦士たち・鋼の錬金術師・プラネットガーディアン・妖幻の血・(ドームチルドレン)・B壱
2002   3 マテリアルパズル・PAPUWA・ながされて藍蘭島
2003   0
2004   1 ソウルイーター
2005   1 屍姫

 (参考:GanganSearch・コミックレビュー「ガンガン掲載作品」

 1993〜94年当時はほとんどめぼしい新連載がありませんが、この当時は新規の連載に乏しく、一時的に雑誌の勢いが衰えていました。このことは「少年ガンガンの歴史」でも記述しています。それ以外の年では、ほぼコンスタントに3つ以上の成功作を出しています。(唯一、隔週刊から月刊に戻った1998年だけは、誌面がやや慌しく、大きな成功作が出にくい状態でしたが、それでも2つは出ています)。
 この表を見るだけでも、ここ3年でガンガンが一気に衰えていることは明白でしょう。


 ガンガンの改革(路線変更)が始まったのが2000年、その余波でブレイド騒動(お家騒動)が起こったのが2001年で、これ以後、ガンガンはその誌面のクオリティが衰えていくのですが、実は、その当時からいきなり誌面が大きく衰えたわけではないのです。むしろ、ブレイド騒動の混乱期前後では、残ったガンガンの編集者たちがかなり積極的に新連載を投入し、誌面の充実に向けて奮闘した跡が窺えます。路線変更自体の是非はともかく、まだ誌面には活気がありました。実際、その当時のわたし(管理人)は、路線変更自体には否定的でしたが、積極的な誌面作りの姿勢に対してはかなり高く評価しており、むしろ楽しんでガンガンを読んでいました。

 ところが、それが2002年後半を境に、一気に誌面の勢いが衰えていきます。実は、2002年の新連載10本というのは、どれも2002年の前半(上半期)に集中しており、2002年後半(下半期)以降ぱったりと新連載が出なくなるのです。つまり、「ここ3年(2003〜2005年)の新連載の本数が11本しかない」と書きましたが、厳密には2002年後半以降新連載がないわけですから、実は「3年半もの長き間で新連載が11本しかない」という事実が浮かび上がってきます。これは、1年間にほぼ3本ずつしか新連載がないという超低空飛行の状態です。
 しかも2003年に入って、2月に「ドラゴンクエストモンスターズ+」、6月に「B壱」と、質の高い連載がなぜか次々と打ち切りになり、しかも同時期に、「妖幻の血」「ドームチルドレン」「ARTIFACT;RED」等の個性派連載が次々と他の雑誌に飛ばされ、大きくガンガンのクオリティが低下したのです。
 そして、ようやく1年後の2003年半ばになって、次の新連載攻勢である5本の作品(「スターオーシャンTill the End of Time」「ドラゴンリバイブ」「グレペリ」「女王騎士物語」「ヴァンパイア十字界」)が登場するのですが、実はこの時になって、わたしは、「もうガンガンはまずい」とはっきりと感じました。この新連載攻勢、特に「ドラゴンリバイブ」「グレペリ」「女王騎士物語」の3つは、どれも露骨に王道・低年齢化を意図したものばかりで、平凡で全く面白くなく、これで誌面のクオリティは一気に大幅に転落しました。

 しかもそれ以降、2004年にはわずか2本、2005年には4本という極めて少数の新連載しか投入されず、誌面は大幅に冷え切ってしまうのです。そして、その後のガンガンは、改革以前(もしくは改革当時)から続く人気作の長期連載のみに頼るという誌面になっていまいます。しかも、そんな人気作の一角である「東京アンダーグラウンド」や「スパイラル」等も次第に終了してしまい、「ハレグゥ」もマンネリ化が進んでかつての面白さは全く感じられなくなり、唯一残った超人気連載「鋼の錬金術師」とその作者荒川弘に頼りきっている状態になっているのです。


 以上のように、「この3年(厳密には3年半)の新連載の数があまりにも少ない」「しかもそのうち成功作がわずか2本」というだけで、今のガンガンは致命的な状態にあると言えますが、実は真の問題はこんなものではないのです。実は、今挙げた問題は、あくまでも「一方的な見方」であり、実はガンガンという雑誌の真相は別にあるのです。
 そもそも、普通の雑誌ならば、2年間でわずかに新連載6本、3年間で成功作わずかに2本というだけで、本当に致命的です。おそらくは雑誌が維持できないで廃刊に追い込まれる可能性が高いでしょう。しかし、実際には未だにガンガンは続いており、しかも月刊誌の中でもコンスタントに部数を維持しています。これは一体なぜなのでしょうか。ひとつには、もちろん「鋼の錬金術師」の力なのですが、実はこれだけではありません。さらなる大きな理由があります。では、その理由とは何か?

 あまりにも記事が長くなるので、続きは後編に回します。


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