<ガンガン2007年の危機>

2007・10・7

 ここにきて、再びガンガンの将来に不安な要素が満ちてきたようです。
 ここ最近のガンガンは、2003年後期の「鋼の錬金術師」のアニメ化による大攻勢と、同時期のスクエニゲームへの過度の依存からは脱却し、ようやく普通の雑誌になってきたようです。一時は、「鋼」関連の特集ページや付録と、スクエニの人気ゲームの大特集ばかりが誌面を席巻し、肝心の連載マンガの本数が激減し、新連載の本数も極端に少ないなど、マンガ雑誌としていびつな状態に陥っていました。しかし、2006年以降これらの状態は大幅に改善され、「鋼」やスクエニゲームへの依存からようやく脱却、連載マンガの本数と新連載の本数も大幅に回復しました。一時期に比べれば、今のガンガンははるかにましになったと言えますが、しかし、それにもかかわらず、決して面白いとは言えない誌面が続いているのです。

 具体的には、連載マンガの本数は増えたにもかかわらず、相変わらず面白いマンガが少ない。新連載もまたしかりで、成功したものはあまり見られない。雑誌のページ数は極端に増加し、1000ページを超えるような分厚い雑誌になったにもかかわらず、その中身が伴っていないのです。そして、昨今の新連載や新人の様子を見ても、今後の改善がますます期待しづらい状態になってきたように思います。この記事では、「ガンガン2007年の危機」と題して、今のガンガンの現状と、今後のガンガンへの決して明るいとは言えない展望を記述していきたいと思います。


・すでにアニメ化以前の部数にまで落ち込んだ。
 かつて2004年、わたしは「もし、今ガンガンから『鋼の錬金術師』が無くなったらどうなるのか真剣に考える」という記事を書きました。そこで、わたしは、「今は『鋼の錬金術師』のアニメで一時的に部数が大きく伸びているが、『鋼』の連載が終わればこの部数は元に戻るか、あるいはさらに落ち込むだろう」と述べました。そして、「鋼の錬金術師」のアニメが終わって3年が経過した今、その予想は現実のものとなってきました。

 こちらのデータによれば、鋼アニメ化の真っ最中だった2004年には37万部だったガンガンの部数が、その後の2005年には27万部、そして2006年には20万部へと減少しています。鋼アニメ直前の部数が16万部だったらしいですが(このデータでは20万部)、もう2006年の時点でそのレベルまで落ち込んでいるわけです。2007年のデータはいまだありませんが、このところのガンガンの誌面に大きな変化がなく、かつ「鋼」アニメから時間が過ぎ、人気がさらに落ち着いてきていることから、さらに部数は漸減していると推測できます。もう、鋼アニメ以前のガンガンの部数である16万部程度か、あるいはそれをも下回ってきているのではないでしょうか。(わたしの家の近くの書店やコンビニでも、ガンガンの入荷冊数は随時減ってきており、その推測を裏付けています)。

 そう、今のガンガンの売り上げは、いまだ『鋼』の連載が続いているにもかかわらず、もうアニメ化以前のレベルにまで落ち込んでいるのです。アニメ化で増えた読者は、ほとんどが女性読者だそうですが、今でもこの層の読者は残っているはずです。にもかかわらず、アニメ化以前と同レベルの部数しか確保できていない。この上で、もし「鋼の錬金術師」が終わるとどうなってしまうのでしょうか。もはや、さらにさらに低いレベルにまで落ち込むのではないか。
 かつて3年近く前に、「『鋼の錬金術師』はあと3年ほどで終わる」と予想しましたが、その予想は外れ、まだまだ連載は続きそうです。しかし、それでもあとストーリーは佳境に迫っており、あと2、3年程度で終わることは確実でしょう。その時期が来たら、本当にどうなってしまうのか。

 そしてもうひとつ、かつて「鋼の錬金術師」と同じくガンガンを支えた人気マンガ「スパイラル」も、いまだその外伝である「スパイラル・アライヴ」という形で続いています。しかし、こちらはもっと早く終わることは明白です。先日3巻が発売されましたが、その巻末で、作者自ら「この作品は5巻で終わる予定です」と明言しています。だとすれば、あと1年経たないうちに終わります。これが終わることで、かつての古参ガンガン読者を引っ張ってきた人気連載がいよいよ終了、そしてその後しばらくして「鋼の錬金術師」も終了し、かつての読者はほとんどいなくなってしまうのではないでしょうか。


・その他の人気連載もこれ以上伸びる可能性は低い。
 そして、「鋼」と「スパイラル」が終わるとするならば、それ以外の人気作品が、誌面をカバーしていかなければなりませんが、これらの連載がいかにも頼りないのです。連載自体はまだまだ続きそうですが、これ以上伸びるような気配が感じられません。

 まず、「鋼」の後を継ぐとされる人気連載「ソウルイーター」ですが、ここ最近、かつてほどの勢いがなく、人気が停滞しているように思えるのです。アニメ化などのメディアミックスの話も聞かれないままで、「鋼」の後を継ぐ作品としては、いかにも弱い。ストーリーの新鮮味が乏しくなってきているのが原因で、なにか大きなテコ入れでも行わないかぎり、これ以上伸びるのは難しそうです。
 先日アニメが終了した「ながされて藍蘭島」も、さすがにこれ以上雑誌の表に出続けることは難しいでしょう。元々、ガンガン内では中堅クラスの作品で、雑誌の看板クラスの作品ではありませんし、美少女系のハーレムラブコメということで、読者を選ぶマンガであることも大きい。内容、特にストーリーも平坦なマンガで、突出した出来の作品というわけでもない。アニメも終わった以上、この作品でガンガンを支えることは難しいでしょう。
 そしてもうひとつ、「ソウルイーター」に次ぐクラスの人気作品である「屍姫」も、このところどうも停滞しているように思います。連載開始当時は、美少女+ガンアクションということでかなりの話題を集めましたが、このところはどうもかつての勢いが感じられません。今ひとつストーリーに躍動感に欠けるのが原因かもしれません。あるいは、絵のレベルがさほど上がっていないことも考えられます。いずれにせよ、今のままではこれ以上ののびしろはないように思えるのです。

 上記の作品群は、今のガンガンで「鋼」や「スパイラル」の背後を支える人気作品なのですが、いずれもこれ以上伸びる可能性があまり感じられません。今後のガンガンを支えていけるかは極めて疑問であり、「鋼」や「スパイラル」終了後の看板作品になれるとは思えないのです。


・最近の連載にはまるで期待できない。
 そして、今のガンガンには、「鋼」と「スパイラル」以外にも、終了を迎えるであろう連載がいくつもあります。「666(サタン)」や「王様の耳はオコノミミ」は、ストーリー的に見てじきに終わることは明白ですし、「女王騎士物語」も、これ以上の長い展開はできそうにない。最近始まった連載の中では、「Doubt(ダウト)」は短期終了が決まっていますし、「精霊の守り人」なども、メディアミックス作品でアニメも終了したことから、そう長くは続かないでしょう。つまり、一気にかなりの本数の連載が終わるだろうと予想されるのですが、その後を継ぐべき作品が、どうにも見当たらないのです。

 前述のように、「ソウルイーター」や「屍姫」などの中堅人気連載ものびしろがありませんし、さらに問題なのは、ここ最近になって始まった新規連載群です。これが、どれもこれも力不足の物足りない作品ばかりで、中には到底面白いとは言えない作品も含まれています。

 まず、ギャグマンガである「はじめての甲子園」と「閉ざされたネルガル」。どちらもある程度の作品ではありますが、大きな読者人気を得ている作品ではなく、ギャグマンガでページ数が少ないこともあって、これらがガンガンを支えていくとはいかにも考えにくいです。
 次に、2007年5月号から始まった2つの新連載「とある魔術の禁書目録」と「紅心王子」は、いずれも中々の作品で、ここ最近のガンガンでは良質です。しかし、前者は他社のライトノベルのメディアミックス作品、後者は今のガンガンでは異色の少女マンガ的作風の一作ということで、今後のガンガンの主流を占める作品になるとは思えません。もっとも、他に何もめぼしい作品がないとなると、この2つに頼らざるを得ない状況にまで追い込まれる可能性はあります。
 そして、なんといってもひどいのが「ブレイド三国志」ですね。かつての短期連載時代から、到底掲載できるとは思えないほと破天荒な作品で、これを連載化してしまったガンガン編集部の決定には暗澹とした気分にさせられます。このようなマンガを連載する今の編集部の能力では、今後もろくな作品は生まれないのではないかと危惧されます。

 そのことは、2007年10月号に掲載された新連載と読み切り作品で、さらに顕在化されます。まず、新連載である「FULL MOON」ですが、これがあまりにも平凡な作品で、新連載にしてはあまりにも弱すぎます。このマンガの作者は、このところ読み切りを何度か載せてもらえるなど編集部に期待されているようですが、肝心の実力が伴っているかは疑問です。
 そして、読み切り作品の「ROLL」(第10回スクウェア・エニックスマンガ大賞・特別大賞受賞作)がまたひどいものでした。絵は綺麗だったかもしれませんが、ストーリーは完全に崩壊しており、このマンガに特別大賞を授与するという編集部の選定が信じられないようなマンガでした。このような完成度のマンガが、ガンガン編集部に評価され、今後のガンガンに登場すると予想されるようでは、到底ガンガンには期待できないことになります。実は、ここ最近のマンガ賞受賞作には、明らかに平凡で受賞に値しないようなマンガが、頻繁に受賞するようになっているのですが、この「ROLL」はもう極めつけでした。これでは話になりません。

 このように、ここ最近の新連載や新人の読み切りは、どれもこれも明らかな力不足か、ともすればひどい完成度の作品も散見される状態で、今後のガンガンを支えるべきマンガは見当たりません。今のガンガンの目次、そこに掲載されるラインナップを見れば、最近のガンガンの新規連載がいかに貧弱で見劣りがするか、それをストレートに感じることができます。


・いよいよ超新星爆発も近いのか?
 以上のように、今のガンガンの状態は、部数はすでに「鋼の錬金術師」アニメ化以前の水準にまで落ち込み、その上連載陣の多くが終了を迎えることが予想される状態なのですが、その後を支えるべきマンガがまったく見当たりません。連載本数は20本を超えているにもかかわらず、ひとつひとつの作品は驚くほど貧弱なのです。今のガンガンの目次を見れば、まとまった人気のある連載はほんの一部、せいぜい「鋼の錬金術師」「スパイラル」「ながされて藍蘭島」「ソウルイーター」「屍姫」程度で、それ以外はまったく存在感のない名前ばかりが並んでいることに気づくはずです。ガンガンの読者でさえ熱心に読んでいる人は少ないだろうと予想され、ましてや雑誌外の読者には、その名前すらまったく知られていないような作品が、雑誌の大半を占めているのです。

 とりわけ、ここ1〜2年に始まった新規連載だけを採り上げて見ると、そのラインナップの貧弱さが浮き彫りになります。「はじめての甲子園」「閉ざされたネルガル」「Doubt」「精霊の守り人」「とある魔術の禁書目録」「紅心王子」そして「ブレイド三国志」「FULL MOON」。この中では、「とある魔術の禁書目録」「紅心王子」がましな程度で、後は短期終了が予定される作品か、あるいは力不足でまるで存在感のない作品ばかりです。というか、これらの作品が、今後ガンガンの中核として雑誌を支えていく姿が、まるで想像できません。まさか「ブレイド三国志」や「FULL MOON」が、これからのガンガンの表紙になるとでもいうのでしょうか。

 そして、これだけラインナップが貧弱であるにもかかわらず、今のガンガンは、ここ1、2年で一気にページ数が増加し、1000ページを超えるほどのすさまじい分厚さとなりました。しかし、肝心の中身は伴っておらず、非常に密度が薄くまるで読みがいがありません。この状態を見る限り、規模は肥大化したのに中身の密度は薄いという、まるで赤色巨星のような状態がさらに進んでおり、もうそろそろ本気で超新星爆発が近いのではないかと思われます(笑)。

 そして、その超新星爆発が起こるのが、あの「鋼の錬金術師」の終了時なのでしょう。「鋼」の終了でさらに部数は漸減し、その後を継ぐ連載も見当たらず、残るのは力不足の貧弱なマンガばかり。これでは到底雑誌を保てず、あとは一気に収縮して大爆発(=まともな連載が確保できずに華々しく廃刊)するばかりです。そして、このガンガンが爆発するとなると、これに連なる連星(スクエニ系姉妹雑誌)たちもただではすみません。この場合、最大部数を誇る中心雑誌たるガンガンがなくなってしまうわけですから、そこから連星をつなぎとめる重力がなくなってしまったわけで、連星すべてが一気にどこかへ吹っ飛んでしまう可能性があります。

 真面目な話、中心雑誌たるガンガンなくして、他の雑誌が存続することは難しい。極端なマイナー誌でさほどの採算もないWINGやGファンタジーだけを、スクエニという会社が律儀に維持するとは到底思えません。となると、あとはそちらの雑誌まで連鎖的に廃刊されるか、あるいは他の出版社へ飛んでしまってそちらに吸収されるかということになります。雑誌自体は廃刊してしまって、人気連載だけが他の出版社で継続、という流れが現実的かもしれません。いずれにせよ、スクエニ系マンガ全体に致命的な影響が出ることは避けられず、スクエニのマンガ事業すべてが連鎖的に崩壊する可能性すらあります。

 これが、普通のマンガ出版社ならば、どうあっても自社の雑誌は維持するでしょう。しかし、スクウェア・エニックスの本業はゲームです。いまだにゲーム関連の収支が会社の中心であり、出版事業はあくまでも副業です。もっとも、最近では出版部門の利益は決して低くはないようですし、メジャーな人気作品(「鋼の錬金術師」)の売り上げなどは、ゲーム部門の人気作以上のものがあります。しかし、その一方で、極端にマイナーな雑誌、マイナーな作品群というものも常に存在しており、その部門を切るということは十分にありえます。かつて、リニューアルしたばかりのギャグ王を、何の前触れもなくいきなり廃刊したという前例もあります。このことから見ても、雑誌の不振に伴って、その部門をあっさり切り捨てるという決定は、いつでも現実的に起こりえるのではないかと、わたしは本気で危惧しているのです。


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