<少年ガンガンの歴史(1)創刊前夜>

2004・10・19

 少年ガンガンが創刊して、既に14年が過ぎようとしています。もはや創刊初期の頃のガンガンを知っている人も少なくなりました。このページでは、最近になってガンガンを手に取った読者のためにも、まずはガンガン創刊に至る経緯まで遡って記述し、そして少年ガンガンの創刊当時からの誌面の変遷を、できるだけ詳しく書いていこうかと思います。


・エニックスによる出版事業の開始。
 少年ガンガンは、株式会社エニックス(現スクウェア・エニックス)によって創刊された雑誌です。エニックスと言えば、何と言っても「ドラクエ」で有名なゲーム会社ですが、実は創業時から様々な事業をマルチに展開する個性的な会社でした。なにしろ、創業当時は寿司屋を経営していたということもある会社で、ゲーム業界に参入した時も、コンテストでアマチュアから新規プログラマーを募って参入し(当時としては異色の企画)、人々を驚かせました。そんな挑戦的な会社ですから、それがいきなり出版業に参入したとしても不思議ではありません。

 しかし、そのエニックスが出版業に参入したのには、ひとつの大きなきっかけがあります。1988年2月に発売されたドラクエ3の成功です。
 ドラクエ3(ドラゴンクエスト3)は、ドラクエシリーズの中でも最大の成功を収めた作品で、ファミコンで累計380万本を売り上げ、当時は社会現象にまでなったゲームソフトです。その成功を受けて、エニックスは、ドラクエのグッズを自社で販売するようになり、その一環として、ドラクエの関連本を多数出版するようになります。これがエニックス出版の起源です。
 そして、小説やサイドストーリー本など、ドラクエ関連本が多数出版される中で、特に成功を収めた商品がふたつありました。公式ガイドブックドラクエ4コマです。

 「公式ガイドブック」とは、ゲーム攻略本の一種ですが、従来の攻略本とは異なり、データ重視・ビジュアル重視の方向性を目指したもので、これが大ヒット。特に、ドラクエ3の公式ガイドブックは、攻略本としては異例の100万冊を超える売り上げを記録。のちのゲーム業界に与えた影響も非常に大きく、「公式」「ガイドブック」の名を冠した攻略本が他社からも多数登場。今でも「公式ガイドブック」は攻略本の主流となっています。

 しかし、公式ガイドブックのヒットは、少年ガンガンの創刊とは直接の関係はありません。関係があるのはもうひとつのヒット商品・・・そう、ドラクエ4コマです。
 これはドラクエの設定・キャラクター・ストーリーを元ネタにした4コママンガを集めて一冊の本にしたもので、複数の作家を集めて一つの本にする形式を採っています。そして、ここから多数の人気作家が出るほどの人気を集め、こちらも大ヒット。以後多数の巻を重ね、読者からもネタを募集してこちらも大いに盛り上がるなど、ドラクエ関連本最大のヒットシリーズとなります。そして、このドラクエ4コマのヒットこそが、少年ガンガン創刊最大の契機となるのです。ドラクエ4コマ出身の作家(柴田亜美、衛藤ヒロユキ等)が初期ガンガンで大人気を博したこと、そしてドラクエ4コマ自体も少年ガンガンの連載で人気を集めたことから、ドラクエ4コマが、少年ガンガン創刊のひとつの母体となったと見て間違いないでしょう。

 なお、このドラクエ4コマもまた、ゲーム業界、出版業界に多大な影響を与え、類似の形式のゲームネタの4コマ集、その類型であるアンソロジー(ショートストーリーの集合形式)が他社からも多数登場。今だにこの手の4コマ、アンソロジーは多数出版され続けています。


・ガンガンの前身・・・「エニックスファンタジーコミック大賞」
 そして、ドラクエ4コマと並んで、ガンガンの母体となる存在があります。ガンガン創刊前に募集された「エニックスファンタジーコミック大賞」です。
 もともとゲーム業界に参入した時にも、「コンテストでアマチュアからプログラマーを募って」参入したという経緯を持つエニックスですから、マンガ雑誌に参入する時にも同じ手法を採用したわけです。ドラクエ4コマヒット後のマンガ賞で、しかもこの直後に少年ガンガンが創刊されていることから、この大賞を募集した段階で、もはやガンガンの創刊は視野に入っていたと推測されます。
 そして、このマンガ賞で、大賞を受賞したのが渡辺道明、優秀賞を受賞したのが西川秀明、奨励賞を受賞したのが松沢夏樹です。彼らがまさに初期ガンガンの主力マンガ家となります。このマンガ賞、評者の意見が全体的に厳しく、評価は必ずしも高くなかったのですが、こうして彼らが人気マンガ家として成功したところを見ると、実は決して悪いものではなく、むしろ新人の発掘に見事成功していたと言えそうです。


 ・・・そして、このように「ドラクエ4コマ」と「ファンタジーコミック大賞」をふたつの母体として、少年ガンガンが創刊されます。創刊は1991年3月。88年のドラクエ3の成功から3年。出版事業に参入したエニックスが、ついにマンガ雑誌を創刊することになります。では、その創刊されたガンガンはどんな誌面だったのか。次回は、その「創刊当時のガンガン」の状況を見ていきましょう。


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