<盗んでリ・リ・ス>

2006・5・27

 「盗んで(はぁと)リ・リ・ス」は、ガンガンパワードに連載中のマンガのひとつで、極めて美少女萌え系の要素の強い作品となっています。ある意味では、ガンガン連載の「ながされて藍蘭島」や、同じくガンガンパワードに連載中の「これが私の御主人様」よりもさらに萌え要素が強いと言えるかもしれません。作者はてぃんくる

 最初は読み切りマンガとして掲載され、好評を得てもう一度続編の読み切りが掲載され、さらに好評を得てついに連載化されました。最初の読み切り2回がそのままストーリーの第1話・第2話といった内容となっているので、連載版の第1回は実質的には第3話と言える話になっています(コミックスでは読み切り版が最初に収録されると思われます)。


・てぃんくるとは?
 さて、作者のてぃんくるとは、本業は美少女系の原画師・イラストレーターで、その筋では非常に著名な存在です。実は「はるかぜせつな」と「ベル」の2人からなる2人組の作家です。PCソフト「眠れぬ森のお姫様」「Cafe Little Wish」「まじかる☆ている ちっちゃな魔法使い」などの原画を担当し、最近では雑誌のイラスト企画や(「Duel Dolls」マジキュー連載)、ライトノベルの挿絵(「マテリアル・ゴースト」)などの仕事もこなしているようです。最近では画集(「月夜茶会」)も発売されています。今、人気上昇中の作家だと言えるでしょう。

 しかし、この作家がマンガを描き、それもガンガンパワードに掲載されるというのは、個人的にはかなりの意外な出来事でした。イラストレーターがマンガの執筆を始めるというケースは、それなりによく見られますが、このような明らかな美少女系の原画師が、美少女系とは縁の薄いガンガンパワードで掲載されるというのはひどく意外であり、その経緯が非常に謎だったりします。ガンガンパワードの中でも、あるいはスクエニ系作品すべての中で見ても、かなりの異色の存在だと言えます。そして、その作品内容も、イラストレーターという出自を色濃く反映させたものとなっています。


・絵はとても綺麗なのです。
 まず、作者初のマンガ作品でありながら、絵の出来はかなりのもので、非常に綺麗な絵を描けていることは間違いありません。特に、やはりこの絵師の本懐であるキャラクター、それも美少女キャラクターはかなりうまく描けています。一方で、背景はあまり丁寧に描けておらず、こちらはあまり見栄えがしないのはややマイナスです(本業であるイラストの方の仕事では、背景もきっちりと完成しているのですが、やはりマンガの執筆では勝手が違うのでしょうか)。

 ただ、それでも十分に掲載レベル以上のものが描けていることは間違いなく、本業のイラストに近いクオリティをマンガでも見ることが出来ます。この手のイラストレーターがマンガを描いた場合、本業のイラストより絵の出来が数段劣ることが珍しくないのですが、このてぃんくるの場合、そのような劣化がほとんど見られず、マンガの絵もきっちりと描ける希少な存在であると言えます。


・少女マンガ的なストーリー・・・なのか?
 このように、絵の出来は合格なのですが、問題は内容です。このマンガのストーリーは、なんというか、少女マンガ的というか、読んでいてやたら恥ずかしいというか、なんとも言えないです。

 「盗んで」のタイトルからも連想されるとおり、基本的には怪盗もので、主人公の少女リリーナ(怪盗リリス)が怪盗として美術館の絵を盗んでいくというものですが、その設定がなんとも言えません。このリリーナ、さる名家のお嬢さまなのですが、その兄で天才画家であるミッチェルのヌードモデルをやらされていて、その絵が美術館に展示されるのが嫌で、その絵を盗んでいくというストーリーなのです。これだけでも色々と考え込んでしまうストーリーなのですが、さらに、そのお兄様とのラブラブシーンやら、お色気で誘惑するシーンやら、もちろんヌードモデルのシーンもありと、あまりにも少女マンガ的な恋愛&お色気に満ちた作風となっていて、読んでいて(個人的には)かなりの抵抗があります。ガンガン系では女性作家による女性寄りの作品も珍しくありませんが、ここまでストレートな少女マンガ的作品は極少数でしょう。

 今のガンガンパワードは、他の雑誌からあぶれた作品を寄せ集めた感が強く、ひとつひとつの連載の作風がばらばらで統一感がない誌面のため、このような異色のマンガでも載る余地があると言えます。(むしろ、このマンガもまた、誌面の統一感のなさに貢献していると言えなくもありません。)


・この萌えとエロへのこだわりは一体なんなのか。
 しかし、このマンガは絶対に女性向けではありません。むしろ、美少女マニアに向けた萌えマンガの要素が非常に強いものです。
 というか、さすが現役の美少女原画師が描いているだけあって、このマンガの萌えレベルは非常に高いものです。ガンガン系には萌えマンガと言えるものはたくさんありますが、この「リリス」の場合、明らかに美少女ゲーム系の絵柄であって、ストレートに昨今の萌えの売れ線を反映しています。その点において、ガンガン系のほかのマンガとはニュアンスが異なりますが、しかし同時に「ガンガン的」とも言える中性的な作風も併せ持っており、この作家がガンガンパワードに招聘された理由もなんとなく分かるような気がします。

 しかし、このマンガは萌えだけではなく、明らかなエロも含んでいます。そもそも、ヌードモデルのシーンからして、いわゆる芸術的な目的での描写とは思えず、エロを第一の目的として描いているとしか思えません(笑)。しかもそれ以外でも、露骨に下着姿や半裸やパンチラ描写が多量に含まれており、このあたりの描写は他のガンガン系マンガとは一線を画しています。
 その中でも、特にパンチラの描写には異様なこだわりを感じます。しかも純白率がやたら高い(笑)。この作家の画集などを見てもそれを感じるんですが、「とにかくパンチラ」と言わんばかりのパンチラ(純白)の連発には作者の強烈な意志の力を感じずにはいられません。もう何ていうか、この「なにがなんでもパンチラ(純白)させる」という作者の異常なまでの熱意を感じてもはや参った。


・面白いと言えるかは疑問ですが・・・。
 このように、萌えとエロに関しては(ある意味)すばらしいものがあるのですが、さすがにマンガとして面白いと言えるかは疑問です。内容的にはベタベタの少女マンガ的なもので、つまらないとまでは言わないものの、結局のところ平凡さは否めないもので、これが面白いとは言い切れないでしょう。
 ただ、それでもこのマンガは、絵はとても綺麗なものですし、なんといっても萌えとエロはあります。元々は、「美少女系の人気イラストレーターによる初マンガ作品」という点が最大の売りだったわけで、少なくともその売りだけは満たしているわけです。その点は大いに評価できます。少なくとも萌えはある。少なくともパンチラはある。これは非常に重要です(笑)。
 最近のガンガンでは、萌えを売りにしながらも、中途半端で大して萌えという目的を満たしていない作品が多く見られます。中には、萌え系のラブコメでありながら、絵が異様で到底萌えられないような作品もあり(あえてタイトルは言いませんが)、そのような作品に比べれば、この「リリス」ははるかにましなのではないでしょうか。

 萌えしかない。しかし、萌えはある。
 パンチラしかない。しかし、パンチラはある。

 そう考えれば決して悪い作品ではないでしょう(笑)。これで内容が充実してくれれば言うことはないんですが・・・。


「少年ガンガンの作品」にもどります
トップにもどります