<勤しめ!仁岡先生>

2007・8・4

 「勤しめ!仁岡先生」は、ガンガンパワードで2005年秋季号から始まった4コママンガの連載です。作者は新人の尾高純一

 ガンガンパワードは、かつては新人による読み切り中心の雑誌でしたが、やがて新人やベテランによる連載作品も増え、次第に普通の連載雑誌へと変わっていきます。そんな中で現れたこの4コママンガもまた、新人による連載作品の一角としてスタートします。しかし、4コママンガというページ数の少ない小規模な連載ということもあって、当初はさほど注目されませんでした。ガンガンパワード自体も、当時は季刊誌でひどくマイナーな雑誌だったこともあって(隔月刊になった今でもやはりマイナーですが)、やはりこの連載に注目している人はあまりいませんでした。

 しかし、連載を重ねるにつれ、次第にその「4コママンガ」としての面白さが認められ、一部の読者の間で確かな評価を獲得するようになります。そして、連載開始約一年後にコミックス化されたのを契機に、これが大きく注目を集め、4コマファンを中心にかなりの人気を獲得します。これで完全に雑誌に定着したと言ってよいでしょう。さらに、当時のスクエニでは、他の雑誌でも4コママンガの人気作が登場しており、このマンガもその中の良作のひとつとして、スクエニ系4コママンガのラインナップの充実に大いに貢献したことは間違いありません。

 このマンガの優れた点は、萌え要素なども一部に見られるものの、それだけでなく、純粋に「ギャグの面白さ」で評価されて人気を獲得したことです。そのため、ありがちな萌え・癒し要素を中心とした萌え系4コマとは、確かに一線を画したところがあり、純粋にギャグ4コマとして楽しめるのが大きな特長と言えます。

 その後、2009年4月号でガンガンパワードは休刊し、この作品はガンガンへと移籍することになりました。元々どこの雑誌でも人気を得られるような優良な作品だったので、どこの雑誌へ移籍してもおかしくはありませんでしたが、一般向けを志向するガンガンでもこのマンガならやっていけると判断しての決定なのでしょう。知名度の高い雑誌へと移籍したことで、さらなる躍進も期待できます。


・確かに仁岡先生が主役のはずなのだが・・・。
 このマンガの主人公は、タイトルにもあるとおり、ある中学校の教師である仁岡先生(仁岡隆志)です。彼は、先生なのに子供嫌いで、子供をいびるために先生になったという謎の経歴の持ち主です。当初は、この子供嫌いの変人先生が、「ムカつく子供たちを滅ぼす」という邪悪な目的を達成するために、生徒たちに日々嫌がらせを繰り返す・・・というマンガになるはずでした。少なくとも、連載第一回の冒頭では、そのような始まり方でスタートしました。

 しかし、連載開始してすぐに、この仁岡先生を上回るかのようなイカれた生徒や先生が多数登場し、逆に仁岡先生の方が、周りの人たちに嫌がらせ的な行動をされる有り様で、「子供嫌い」という設定の意味は、いきなり思いっきり薄れてしまいました。それでも、最初のうちはまだ子供嫌いをネタにした4コマも散見されましたが、回が進むにつれてそれもどんどん少なくなり、ついには周りの変人生徒・先生たちのバカバカしい言動に対してツッコミを入れまくるという、完全なツッコミ役になってしまいました。しかも、子供嫌いどころか、むしろ生徒のためを思ってやっているような言動まで目立つようになり、当初の「子供嫌い」という設定は、ほとんど意味のないものとなってしまいました。

 確かに、このマンガの仁岡先生は、子供嫌いの破天荒な言動が目立つ変人ではありました。しかし、周りの人々が、それよりもはるかに問題のある変人ばかりなので、相対的にまともに見えるようになっているのです。そのため、「子供嫌いで生徒に嫌がらせを繰り返す」という、本来ならば相当な問題になるであろう行動がオブラートに包まれ、気軽に読めるギャグマンガへとうまく昇華されています。


・変人・バカ揃いの生徒たち。
 そして、そんな仁岡先生が苦労させられることになる、周りの生徒や先生たちの個性が本当に面白い。
 まず、このマンガのヒロインである生徒・浅井さんですね。彼女は、「自称」不良で、ひたすら悪ぶった言動を繰り返すのですが、その実不良っぽいことはほとんどやっておらず、成績は優秀で予習復習もまじめにこなし、校内の掃除まで積極的にやるという優等生です。そんな優等生で、しかも身長が低く体も小さいなりで、それでいて悪ぶった言動を繰り返すギャップが、最高に面白いギャグになっています。また、なぜか仁岡先生にほれてしまい、猛烈なアタックを繰り返して先生がとばっちりでひどい目に遭う様子も、定番のギャグとなっています。
 また、生徒や先生の多くが虜になっているという、見た目的な可愛らしさもポイントで、このマンガの最大人気のキャラクターとなっています。

 浅井の幼馴染の親友で、今江もひどくずれた個性の持ち主です。今時完全に死語と化したコギャル用語を多用しまくり、自らをチーマーと名乗り、 未だにPHSを使用しているという、明らかにずれまくった生徒として描かれています。しかも、相当なバカで、ほとんど勉強はできず、教えようとした人までバカ化させてしまうようなひどさで、仁岡先生も散々苦しめられることになります。そんな彼女も仁岡先生に惚れまくっており、強引なアタックでこれまた仁岡先生の悩みの種となっています。このマンガでは、仁岡先生がなぜかもてまくるのですが、そのために理不尽なアタックをされてひどい目に遭う、というのが、ひとつのパターンとなっています。

 そして、もうひとりほど、比較的まともな生徒と言えるのが、上原ですね。浅井や今江に比べればまともに見える生徒ですが、実はとにかく面白いこと最優先の悪ノリで行動する困った生徒で、頭はひどく優秀なのに勉強嫌いでまったくやろうともしません。浅井よりもはるかに不良らしい生徒で、「一見して普通に見えるが、裏では悪いことを考えまくっている」という、ある意味リアルな不良と言える生徒かもしれません。彼女は、頭はいいのに真面目に勉強しない、成績問題児として仁岡先生を悩ませることになります。


・やはり変人・バカ揃いの先生たち(笑)。
 先生たちも負けてはいません。はっきりいって、生徒たちよりもさらにはた迷惑な人たちが多いです。
 まず、可愛いもの好きの体育教師で、仁岡先生にほれまくって暴力的なアタックを繰り返す河原先生(河原桜)。がたいのでかい女教師で、最初は中学生たちを、とりわけ浅井さんをひたすら可愛がっていましたが、ある日メガネをはずした仁岡先生の可愛さにほれまくり、以後はひたすらつきまとうようになります。そのあまりにも高い戦闘能力で行われるアタックは非常にデンジャラスで、仁岡先生にとっては、もっとも厄介で危険な人物となっているかもしれません。

 その実の弟である河原梅夫も、姉同様にすさまじい変態です。中学生好きで、しかも仁岡先生にほれているという点では姉と変わらず、しかもナルシストというおまけがついています。アメリカ帰りで英語は堪能なはずですが、なぜかたびたび変な英語を使いまくるところも面白い。

 しかし、彼ら以上に強烈な個性を放ちまくっているのが、何と言っても校長ですね。一見して人当たりの良さそうなおじさんですが、性格は激しく邪悪。しかも極度のロリコンで、校長なのにひたすら可愛い生徒に手を出しまくっているという、あまりにもどうしようもない人物です。浅井さんに特に目を付けまくっており、浅井がほれている仁岡先生を過度に敵視、ことあるごとにちょっかいを出しまくってきます。はっきりいって、この校長こそが、変人・変態揃いのキャラクターたちの中でも、最大の問題人物であることは間違いないでしょう。熊の着ぐるみを着て仁岡先生を襲おうとする話などは、バカバカしさも頂点に達した感がありました。


・膨大な会話文でたたみかけるハイテンションギャグが面白い。
 そして、上記のような変人キャラクターたちが、かなり長めの会話の応酬で、次第にハイテンションになって盛り上がるギャグが、きっちりとはまっていて面白い。キャラクターの個性や、見た目の可愛さから来るキャラ萌え要素もありますが、それ以上に「ギャグそのもの」の面白さで、作品が成り立っている点が高く評価できます。
 とにかく、ひとりひとりのセリフがかなり長く、それぞれのキャラクターが、みな独特の個性的な口調で、延々と自分の(しょうもない)主張を繰り広げます。それに対して、さらに別のキャラクターが、やはり延々と自らの見当違いな主張を繰り広げ、そんなバカバカしい会話に対して、ひとりいたたまれなくなった仁岡先生がツッコミまくるという、最高に面白い掛け合いが楽しめます。また、キャラクター同士の主張が激突し、次第にテンション高くキレまくっていく応酬も頻繁に見られます。

 このマンガのコミックスの帯では、「学園ゆるゆる4コマ!!」との宣伝文句が書いてあるのですが、これは必ずしも正しいとは言えないような気がします。むしろ、随分と賑やかな会話の応酬でギャグが成り立っている、かなりのハイテンション系ギャグマンガではないでしょうか。その点で、ゆるい雰囲気の萌えと和み、癒しで人を惹きつける「萌え4コマ」とは、かなり方向性の異なる4コママンガで、むしろ正統派のギャグマンガ、ギャグ4コマではないかと思えるのです。その点が大いに評価できます。

 ただ、会話文が非常に長いというのは、人によっては苦手とする読者もいるかもしれません。とにかく読むのに時間がかかります。元々、4コママンガは読むのにかなりの時間を要するのですが、このマンガは特に時間がかかるものになっています。テンポよく読み進めたい人にとっては、少々つっかえることが多く、途中で読むのに疲れてしまうかもしれません。


・スクエニの4コマラインナップの一角を為す貴重な成功作品。
 しかし、おおむねひどく楽しめるギャグマンガとなっていることは間違いなく、昨今の4コマ作品の中でも、かなりの良作の部類に入ることは確かでしょう。それも、キャラクターの萌え要素やゆるい雰囲気が中心の作品ではなく、純粋にギャグの面白さで楽しめる作品になっているところが、高く評価できます。一方で、キャラクターの可愛さから来る魅力も見逃せないところで、キャラ萌え、とりわけヒロインの浅井さん人気はあなどれません。そのあたりでも人気を得ているところは、さすがにスクエニ系のマンガであると言えます。ただし、それでいて決してマニアックな作風ではなく、純粋なギャグマンガとしてかなり幅広い読者に楽しめる作品であることが、やはり最大の魅力です。

 ここ最近のスクエニ系雑誌では、4コママンガの良作が何本も見られ、それぞれの雑誌でかなり高い人気を獲得しています。具体的には、ヤングガンガンの「WORKING!!」、ガンガンWINGの「ちょこっとヒメ」あたりですが、ここに「勤しめ!仁岡先生」が加わることで、4コママンガのラインナップがひどく充実してきた感があります。しかも、この「勤しめ!仁岡先生」は、ガンガンパワードというマイナーな季刊誌(現在は隔月刊誌)で、しかも完全な新人の作品で成功したという点が大きい。これは、実にかなりの掘り出し物と言えるのではないでしょうか。

 もっとも、これまでの「勤しめ!仁岡先生」は、他の4コママンガほど大きなメディアミックス展開は見られず、コンスタントに雑誌で連載を重ねるにとどまっていました。これは、ガンガンパワードが隔月刊で、しかもページ数の少ない4コママンガのため、中々連載ペースが上がらなかったことも原因でした。そのため、コミックスの刊行ペースも、かなり遅いものとなっていました。しかし、今このマンガは晴れてガンガンへと移籍しました。これで、さらなる人気と注目を集め、さらに大きな展開を目指すことも可能になったのではないか。この貴重な掘り出し物である良作4コマは、さらに発展する可能性を大いに秘めています。


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