<ピース*2>

2012・5・19

 「ピース*2」は、少年ガンガンで2011年9月号から開始された連載で、学園コメディ4コママンガとなっています。ガンガンでは、4コママンガの連載も、常に1〜2本ほどコンスタントに出ている印象がありますが、この時期では久しぶりの新連載かもしれません。なお、同時期の4コマでは、少し前にパワードの休刊に伴って移籍してきた「勤しめ!仁岡先生」があります。

 作者は、鳴海ケイ。スクエニからの新人のようで、これ以前には、オンラインのフレッシュガンガンの方で「桂木さん家の日常」という読み切りを残していて、これが新人読み切り競作企画「2010AUTUMNカップ」で晴れて1位を獲得、見事ガンガンONLINEでの連載化が決まったようです。しかし、こちらの方の連載はいまだ始まっておらず、先にこのガンガンの方で、この「ピース*2」の連載が始まったようです。もしかすると、ONLINEよりもガンガンの方に活動の中心が移っているのかもしれません。

 マンガの内容ですが、ヒロインの女子高生・間宮さんが、「ドエロい思考をもった官能小説家」という設定が最大のポイントで、彼女の変態的な言動に振り回される潔癖な男子高校生・瀬川くんの突っ込みが楽しいギャグマンガとなっています。間宮さん以外にも、変態的な嗜好を持つキャラクターが多数登場、シンプルな絵柄に反して中身はマニアックなエロ・変態ネタ満載の濃い内容になっています。

 同時期の新連載の中では、無名の新人の作品、それもページ数の少ない4コママンガということで、当初の注目度は高くなかったようですが、そのコンスタントに笑えるギャグや個性的なキャラクターが好評を博したようで、今では雑誌の前の方に載ることも珍しくなくなりました。最近、スクエニの各雑誌で良作4コマが増えてきた感があるのですが、このマンガもその一角に数えられるでしょう。また、同年に始まった他のガンガンの新連載のほとんどが、原作付きのコミックとなっている中で、これは貴重なオリジナルの良作ではないかと思います。


・「ヒロインがエロ全開の官能小説家」というギャップが面白すぎる。
 このマンガの最大の魅力、というかギャグのポイントは、なんといってもヒロインの間宮さんでしょう。見た目かわいらしい外見で、「おとなしいクラスメイトだと思っていた」(瀬川くん談)彼女ですが、実は普段からエロ妄想全開で、官能小説まで書いて日々活動しているという、筋金入りの変態さんでした。男女見境なく妄想を繰り広げ、潔癖な性格の瀬川くんは、日々それに振り回されることになります。

 そんな、「こんなかわいい女の子が実はドエロ全開」という設定がとにかく楽しく、そんな間宮さんの普段の行動が、何かにつけてすべてエロに走る様が爆笑できる4コマになっています。女の子とエロをネタにしたギャグマンガは多いですが、エロ小説まで書くヒロインとなると中々いません。ガンガンの連載とは思えないほど、マニアックなネタ全開の4コママンガになっています。

 そんな間宮さんの行動を、日々見かねていた瀬川くんですが、ついには自分の主役にした官能小説まで書かれたとあって完全にブチ切れ(笑)、ついにはエロ関連のものに触れることを完全に禁じる命令まで出すほどになってしまいます。その時のマジで怒っている顔がまたひどく笑えるのですが、しかしそれでも完全には間宮さんを拒絶しているわけではなく、結局は間宮さんのお母さん役としてその行動を心配してしまう姿に、なんとも言えない人の良さを感じます。

 このように、「エロ全開のヒロインと、エロが嫌いながら彼女を見かね、日々突っ込みを入れる主人公」という、まるで男女の役割が入れ替わったかのような関係が、まさにこのマンガの壷だと言えるでしょう。なお、エロをネタにしているとはいえ、あくまでネタとして扱っているだけで、実際にエロい描写が出てくるマンガではないので、その点では健全と言えます(?)。女性でも十分楽しめるマンガではないでしょうか。


・周囲を取り巻く変態的なキャラクターたちがまた面白い。
 間宮さんだけの行動だけでも十分に笑えるマンガですが、次々と登場するさらなる変態キャラクターたちも見逃せません。苦悩する潔癖少年・瀬川くんの心配をよそに、友達(変態)の輪は加速していくことになります。

 まず、瀬川さんが属するマン研(マンガ研究会)の部長・大和先輩。涼しい顔をしてオタクな言動に終始するその姿が面白い。また、この先輩だけでなく、マン研の部員たちは、変な被り物をして怪しい宗教団体のような姿で活動しており、そのオタクを通り越した異様な言動で大いに笑わせてくれます。
 同じくオタク趣味を持つ妄想少女として、里田さんがいます。間宮さんとは対照的に健全な?少女マンガが趣味で、その少女趣味に焦がれる妄想で、こちらはこちらでかなり危ない。日々マンガを描いているという点では、間宮さんの日々の小説書きと共通したところがあり、どちらも妄想趣味という点では共通した面白さがありますね。

 さらに、より変態度の高いキャラクターとして、ドMな趣味を持つ中尾くんがいます。なじられたり殴られたりすることに快感を覚える正真正銘の変態で(笑)、見た目は端正な顔立ちのイケメンなのに、その残念な姿があまりにも痛々しい「残念SM王子」とも言えるキャラクターとなっています。ある意味では、このマンガを最も象徴したキャラではないかと思います。
 間宮さんの兄の生徒会長も、また個性的な存在です。比較的明るい性格ながら変態的な趣味は間宮さんそのままで、間宮さんの変態行動をそのまま受け入れて、嫌がる瀬川くんにも気軽に受け入れるように促すその姿は、何とも空気の読めない存在で、瀬川くんにとってはまた悩みの種だったりします。

 そして、こうした変態的なキャラクターたちがどんどん増えることで、このマンガの面白さはさらに増してきました。男性・女性双方の個性的なキャラクターたちが競演する作風は、いかにもスクエニらしい作品だと言えるのではないでしょうか。


・「月刊少女野崎くん」とちょっと似た作風も。
 そして、このマンガのこのような作風が、ガンガンONLINEのこちらも人気4コマ「月刊少女野崎くん」と共通したところもあるようにも思いました。この「野崎くん」、2011年の8月から連載が始まっており、開始時期もこの「ピース*2」と比較的近いのですが、どちらも学園を舞台にしたギャグコメディとして設定が近く、さらにそのギャグの中身もちょっと似たところがあると思います。

 まず、この「野崎くん」の主人公の野崎くんは、見た目ガタイのでかい男子高校生なのに実は少女マンガ家で、そのギャップが大きな笑いを生んでいます。そして、この「ピース*2」のエロ小説書きのヒロイン・瀬川さんも、同じようなギャップの面白さがあります。すなわち、「無骨な男子高校生なのに少女マンガ家」「かわいい女子高生なのにエロ小説家」という、見た目とは異なるキャラクター性が、どちらも爆笑のギャグを生みだしていると思うのです。ある意味では、双方で男女の関係がそのまま逆転しているようなマンガになっていて、非常に興味深いですね。

 また、連載を重ねるにつれ、主人公とヒロインの周囲に、さらに個性的なキャラクターたちが増えていくという展開にも、共通したところを感じます。どちらも、主役ふたりを時に押しのけるほどのアクの強いキャラクターが多数登場し、とてもにぎやかで楽しい学園ものになっています。違う雑誌で、4コマの良作がほぼ同時に出ていて、しかもギャグや設定で割と近い作風も感じる。偶然なのか何か雑誌間でつながりがあるのかは知りませんが、いずれにしても面白い結果だと思います。


・まだ注目度が低いのが残念。しかし今のガンガンで一押しかも。
 しかし、その「月刊少女野崎くん」が、作者の椿いづみがすでによく知られた作家で、最初からかなり注目され一躍人気作品となったのに対して、この「ピース*2」の方は、作者がまだ無名の新人だったこともあり、いまだあまり知られていないのが残念なところです。最近では、ガンガンでもかなり扱いはよくなっているのですが、それでも雑誌を読んでいない人にはまだまだ知られていないのではないでしょうか。

 また、同時期のガンガンの新連載が、いずれも原作付きの大型連載となっており、そちらの方にほとんどの話題が集中していたのも、当初注目されなかった一因でしょう。具体的には、「うみねこのなく頃に散 Episode7」「ギルティクラウン」「咲-saki-阿知賀編 episode of side-A」「FINAL FANTASY 零式」などの連載が、このマンガの前後に始まっており、特に「ギルティクラウン」などは、テレビアニメの放映がほぼ同時に始まったこともあり、そちらの方にガンガンの特集の多くが使われました。同じ号に始まった連載の「咲-saki-阿知賀編」も、当初から非常に大きな扱いで、アニメが始まった今では完全に看板作品となっています。その一方で、この「ピース*2」は、比較的ひっそりと始まり、あまり話題にはならなかったのも無理はありません。

 しかし、このマンガ、個人的には今のガンガンで一押しとも言ってもいいくらいで、非常に面白い4コママンガではないかと思います。ここ最近、スクエニでは4コマの良作がまた出揃ってきて、またガンガンでも2012年になって「恋するみちるお嬢様」(若林稔弥)という、これもかなり感触のいい4コマの新連載が出ています。アニメ作品や連動作品に注目するのもいいですが、一方でこうした4コマの良作に目を向けてみるのも、面白いのではないでしょうか。


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