<陽だまりのピニュ>

2005・1・1

 日本にやってきたチパルル王国のお姫さま、ピニュエート・チパル・チパルル(ピニュ)の、日本の高校でのほのぼのとした楽しい毎日を描くハートフルストーリー。

 このマンガは、あのこがわみさきさんの久々のコミックスで、作者初の連載もの作品です。こがわさんは、元々は(エニックスではない)別の出版社で活躍しており、その当時からマンガマニアの間では非常に評価の高い作家でした。エニックスに来てからは、主に少女マンガ誌のステンシルで読みきり作品を多数執筆し、ここでも数多くの良作を残しました。
 しかし、そのステンシルが、(おそらくはブレイド騒動の影響を受けて)売り上げ不振に陥り、最終的には廃刊を余儀なくされてしまい、こがわさんの作品も掲載場所を失ってしまいました。これは熱心なファンを大いに心配させましたが、なんとか季刊ガンガンパワードでの連載が決まり、季刊で遅いペースながらも連載を重ね、ようやく先日コミックス第一巻が発売されました。それが、この「陽だまりのピニュ」です。
 先ほども書きましたとおり、作者のこがわさんは、コアなマンガ読みの間では極めて評価が高く、初期作品の「でんせつの乙女」などは、まさに伝説の名作として知れ渡っています。そして、この「陽だまりのピニュ」も、作者初の連載ものながら大変面白い作品に仕上がっています。ストーリー・絵・作品の雰囲気、そして萌え(笑)と、すべてにおいて素晴らしいマンガです。

 かつて母親の恋人だった、日本から来た旅人のおじいさんの話に憧れて、お姫さまのピニュは国を抜け出して日本に来てしまいます。わずかな手がかりを頼りに、ようやくおじいさんの故郷であるという日下(くさか)町に辿り着き、そこでおじいさんの孫娘である湊(みなと)さんと出会います。そして彼女の家に引き取られて一緒に暮らすようになり、日本の高校に通うようになります。

 こがわさんと言えば、やはりどこまでも癒されるような作品の雰囲気がすばらしいですね。このマンガも、ピニュを中心に巻き起こる、ほのぼのとした楽しい出来事を、豊かな自然の描写も交えて情感豊かに描いており、読んでいて癒されます。
 そして、何と言ってもこがわさんは絵が素晴らしい。シンプルで、極めて線の少ない絵柄だと思うんですが、それでもきっちりとキャラクターが描きわけられていて、そして背景も過不足なく描かれていて、マンガの絵として完成しています。わたしはあまり徹底的に細部まで描きこみまくったマンガは好きではなく、むしろシンプルで読みやすい絵のマンガの方がよいと思っているのですが、そんなわたしにとってこれは理想的なマンガです。

 日本の高校生活は、ピニュにとってはすべてが新鮮で、故郷の母さまへの手紙にもたくさんのことを書いて送る毎日。周りの生徒たちも、そんなちょっと変わった外国の女の子のピニュに影響されて、時に意外な一面を見せたりします。そんな日々の生活が、ちょっとした恋愛の要素と、豊かな自然と、そして時にピニュの故郷の王国の幻想的な描写も交えて、情感豊かに流れていきます。

 このマンガのいいところは、恋愛の要素を交えながらも、単なるラブコメにも恋愛物にもなっていないところでしょう。単純なラブストーリーではなく、日常のほのぼのした出来事を豊かな描写で描いた、ハートフルなストーリーであるところが実によいのです。
 作者自身も、コミックスの後書きで「湊を男の子にしていたら立派なラブコメになっていたのに!!(笑)などと今更ながら思ったりしてます」とコメントしていますが、むしろそこがラブコメにならないのが、正にこがわさんのマンガだと思うのです。読者の方としても、素直にピニュと湊さんに萌えて読むのが正しい読み方だと思われます(笑)。


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