<路線変更後のガンガンの少年マンガについて考える(まとめ)>

2007・9・2

*前編はこちらです。
*中編はこちらです。
*後編はこちらです。

 さて、これまで路線変更後のガンガンの「少年マンガ」(ここでは、いわゆる王道・バトル系の少年マンガ)を見てきました。そして、見ても分かるとおり、これらの数多い作品の中で、成功したものは決して多くありません。また、ガンガンは、これらの(王道バトル系)少年マンガと共に、同じく一般メジャー誌を強く意識した方向性の作品を、やはり数多く載せるようになります。具体的には、美少女系のラブコメ(エロコメ)作品や、あるいは低俗汚れ系ギャグマンガなど。さらに、スクエニ雑誌ならではの「ゲームコミック」にも、やはり少年マンガ的な作品が増えています(今回の記事では、オリジナル作品のみに限ったのであえて扱いませんでしたが、これらのゲーム原作ものを加えれば、少年マンガ的作品はさらに増大します)。しかし、これらの作品もまた、成功したものは多くないのが現状なのです。なぜここまで成功できないのか。ここからは、これらの作品全体をまとめて、今のガンガンの現状を見ていきたいと思います。


・この成功率の低さは半端ではない。
 まず、こうして作品を並べてみて誰もが気づくのは、「いくらなんでも成功率が低すぎる」という点ではないでしょうか。確実な人気と売り上げを獲得しているのは「鋼の錬金術師」と「ソウルイーター」のみ。厳密に成功したと言えるのは、この2作品のみです。まあ、これに、「大きな人気はないが、コアなファンの評価を獲得している」と言える「ドラゴンクエスト エデンの戦士たち」と「マテリアル・パズル」も、一応成功作に加えてもよいかもしれません。しかし、これを加えても4作品です。

 それ以外の作品となると、長期連載作品として「666(サタン)」「女王騎士物語」「王様の耳はオコノミミ」などが挙げられますが、これらは連載こそ長く続いているものの、まるで人気を得られていません。そして、これらを除く連載は、ことごとく1、2年程度の短期の打ち切りで終わっています。あるいは、最初から短期連載であっさりと終了してしまうものもあります。

 加えて、前述のような「(王道バトル系)少年マンガでないメジャー向けマンガ」を加えると、成功率はさらに低くなります。美少女ラブコメは、まだ「ながされて藍蘭島」という成功例がありますが、それ以外はどれも面白いとは言えず、「悪魔事典」のような明らかな駄作も含まれます。ギャグマンガの成功作はさらに少なく、ほぼ唯一連載化された「はじめての甲子園」も、思ったほどの人気は得られていません。ゲームコミックも、かつてのような精彩は感じられず、どれも平凡な作品ばかり。「スターオーシャン3」や「ファイナルファンタジークリスタルクロニクル」がその代表です。

 こう見てくると、この「ガンガンのメジャー向けマンガ」の成功率の低さは、本当に半端ではありません。ガンガンが目指しているであろう、メジャー誌の代表格である週刊少年ジャンプが、ここ数年かなり斬新な作品作りをしており、人気作も次々とアニメ化されているのとは対照的です。路線変更後のガンガンでアニメ化されたのは、「鋼の錬金術師」と「ながされて藍蘭島」のみ。「鋼」に次ぐと言われる看板作品「ソウルイーター」でさえ、アニメ化の話はまったく聞かれない状態です。それ以外のマンガに至っては、もうなんら期待できない作品ばかりであることは明白でしょう。その上、「ブレイド三国志」のような明らかにひどい作品を、あっさり本連載化するような昨今の編集部の方針を見れば、今後の作品も成功できないであろうことは、容易に予想できてしまいます。


・しかも、その下には読み切りだけで終わった作品が無数に存在。
 いや、それだけではないのです。上記の作品は、まだ連載できただけましだと言えるでしょう。実際には、この下に、「読み切りとして載っただけで、連載には至らなかった作品」が無数に存在するのです。

 路線変更以降のガンガンは、マンガ賞でも少年マンガ偏重の受賞が多くなり、少年マンガ指向の新人たちが、数多く賞を受賞することになりました。それも、大賞や特別大賞、準大賞といった高いランクの賞を受賞することが、もはや日常茶飯事となります。しかし、これらの作品を手がけた新人作家たちは、受賞作を読み切りとして載せてもらえただけで、あるいはその後にいくつかの読み切りを載せてもらえただけで、連載デビューまで至らなかったケースが大半なのです。つまり、あれだけ少年マンガ的な新人を多数受賞させながら、ほとんどの作家を成功させられずにいるのです。

 とりわけひどかったのが、2003〜2005年当時のガンガンです。この頃のガンガンは、新連載の数自体が極端に少なくなっており、ゲームコミックを除くオリジナルの連載に限れば、さらに少数の新連載しか始めていませんでした。具体的には、2003年が4本、2004年はなんと1本、2005年は2本で、3年間でわずか7本、1年間に2本強程度しかオリジナルの新連載がありませんでした。しかも、これらすべてが新人による新連載というわけではありませんから、新人による新連載はさらに少なくなります。実際、この当時に連載デビューできた新人は数えるほどしかおらず、1年間に1人か2人というような状態でした。
 そんな当時のガンガンが何をやっていたかというと、「鋼の錬金術師」のアニメ化に伴う大特集と、スクエニゲームの特集やそれ関連のゲームコミックばかりでした。特に、「鋼の錬金術師」の毎号の特集は凄まじいもので、誌面全体が「鋼の錬金術師」一色となり、「『鋼の錬金術師』に他のマンガが付録としてついてくる雑誌」と揶揄されるまでの有り様でした。その一方で、新連載には非常に消極的で、雑誌の連載本数自体も減っており、そのため連載ラインナップは大きく停滞し、新人作家が誰もデビューできないという雑誌に成り果てていたのです。

 この状態は、2006年以降ようやく改善が見られ、過度の「鋼の錬金術師」とスクエニゲームへの依存は少なくなり、新連載の本数も大幅に回復します。しかし、それでもデビューできた新人は多くありません。相変わらず読み切りこそ載るものの、思うような人気が獲得できないのか、連載を持たせてもらえないケースが大半で、結局今に至るまで数えるほどの作家しかガンガンでデビューできていないのです。それでも、最近は、原作付きコミック(ゲームコミック)や、少年マンガ作品でない個性的なマンガでのデビューは、それなりに見られるようになりましたが、相変わらず少年マンガ作品では不毛が続いています。とりわけ、スポーツマンガの読み切りなどは、しつこく何度も続けているものの、連載化できるような作品はまるで出てきていません。
 これまで、わたしは、マンガ家を目指す新人さんへの忠告として、「ガンガンでだけはデビューを目指さない方がいい」とこのサイトで何度か書きましたが、これは本当に具体的な事実に基づく忠告です。ここ数年のガンガンの新人連載の数を見れば、ほとんど数えるほどしか存在しないことは分かるはずです。

 むしろ、新人の育成に関しては、ガンガンの姉妹誌である「ガンガンパワード」や近年発行の単発誌「フレッシュガンガン」「ガンガンカスタム」の方に一任してしまった感もあります。こちらの方が新人連載デビューがはるかに多い。しかし、肝心のガンガンでは、新人に対して極端に厳しい状態が続いています。


・ガンガン少年マンガのヒエラルキーを考える。
 さて、ここで、最後のまとめとして、路線変更後のガンガン少年マンガのヒエラルキー(階層構造)を考えてみます。これが、考えれば考えるほど、極端なまでに厳しいことが分かるのです。一番上から順を追って見ていくと、こうなります。


最上層「超人気連載」
圧倒的な読者人気を有し、売り上げも非常に高いレベルを達成しているもの。
該当作品:鋼の錬金術師

第二層「人気連載」
雑誌内でかなりの人気を博し、掲載順も早く安定して連載しているもの。
該当作品:ソウルイーター
*最上層からいきなり第二層に落ちる点に注目。「第一層(看板クラスの作品)」と言える連載が存在しない。

第三層「不人気連載」
長期の連載は続いているが、人気はかなり低いもの。掲載順も総じて遅く、雑誌を支えているとは言い難い。
該当作品:666(サタン)、女王騎士物語、マテリアル・パズル、王様の耳はオコノミミ
*上記の中では、まだ「女王騎士物語」の人気は高い方である。

第四層「打ち切り連載」
連載が始まったはいいが、不振であっさり打ち切られたもの。数は非常に多い。
該当作品:スサノオ、パンツァークライン、PHANTOM;DEAD OR ALIVE、ドラゴンリバイブ、グレペリ、他多数。

第五層「不定期・短期連載」
連載化を試みたものの、それすら成功していない作品。このケースも多い。
該当作品:鬼切様の箱入娘、新体操舞技などのスポーツマンガ全般、他。
*連載化した「ブレイド三国志」などは、実際には連載化できるような作品ではなく、本来はここに入るべきと言える。

第六層「読み切り作品」
読み切りとして載ったものの、それ以降作者の連載がないもの。連載デビューできなかったケース。数え切れないほどある。
該当作品:各種マンガ賞の大賞・特別大賞・準大賞などの受賞作品。そのほか新人による読み切り全般。


 このヒエラルキーの顕著な特徴は、「上に行けば行くほど極端に数が少なくなる」ことです。つまり、最上級〜上級、中級までの、雑誌を支える人気作に非常に乏しい。ここまで散々言ってきたとおりですね。そして、これは、少数支配を最大の特徴とする、典型的なヒエラルキーの姿です。つまり、いまだにガンガンは「鋼の錬金術師」に誌面を依存している状態が変わっていないのです。

 このような状態が延々と続いているガンガンでは、いまだ今後に期待できないのが常であり、今の路線が絶対的に成功できないことを如実に表しています。成功できない理由は大きくふたつあり、まず第一は、編集者にマンガを見る力がないこと。ブレイド三国志のような作品を本連載化させ、それ以外にも見込みのない連載を次々と打ち出し、多くが打ち切りか、人気のないままずるずる続く長期連載で終わらせているような力量の編集者が、数多くいるようでは、今後も当然期待できないでしょう。

 そしてもうひとつ、さらに大きな理由は、少年マンガにこだわる路線そのものが間違っていること。より厳密には、少年マンガを含む、メジャー一般誌志向のマンガへのこだわりです。王道バトル系少年マンガ、美少女ラブコメ(エロコメ)、低俗極まりないギャグマンガ、などがこれに該当します。スクエニのブランドを全面に押し出したゲームコミックも、これに該当するかもしれません(少年マンガ的な作品も多いですし)。
 これらの作品は、単にメジャー少年誌的な作風をなぞるばかりで、まったく平凡で面白さの見られないものばかりです。独創的な作品作りを放棄し、メジャーなジャンルをそのままなぞるかのような作品作り、メジャー雑誌を真似るだけの雑誌作りでは、まるで話になりません。とりわけ、今のガンガンが特に目標として目指している「週刊少年ジャンプ」をそのままもうひとつ作るかのような雑誌作りばかりが目立ちます。しかも、単に真似をするばかりで、作品のクオリティは本家ジャンプにまるで及んでいません。昨今のジャンプが、斬新な作品を次々と打ち出し、アニメ化まで達成できるような成功作を数多く生み出しているのとは正反対です。今のガンガンは、さしずめ、「ジャンプの劣化バージョン」「ジャンプもどき」「なんちゃってジャンプ」と言えるような雑誌に過ぎないのではないでしょうか。


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