<タケピロのハッスル列島>

2007・3・10

 「タケピロのハッスル列島」は、少年ガンガンで2002年6月号から2004年3月号まで連載された作品で、常にガンガンの巻末を独占して掲載されたマンガです。作者はサイレン☆ボラ夫
 もっとも、これは、正式には連載マンガとして扱われておらず、雑誌内の企画として扱われていました。ページ数も至って少なく、しかも雑誌内企画ということで、ガンガンの編集者たちもよく登場し(後述)、読者から作品内のネタを募集するという企画も頻繁に行われていました。その点では、その後も同誌で連載を続けている「真・ケモノ道」に近いページであり(こちらの方は連載扱い)、純粋な連載とは言えないかもしれません。
 しかし、その内容は完全にひとつのマンガであり、連載のひとつとして見る読者が大半でした。しかも、その内容が至って最悪に近いものがあり、面白くない上に徹底的に不快で気持ち悪いその作風は、多くの読者を困惑させるに十分でした。

 しかも、これほど面白くない存在にもかかわらず、これがなんと延々と2年近くも連載が続いてしまうのです。連載が始まったのは2002年6月号ですが、この時期のガンガンは、あのお家騒動以後の新連載ラッシュが終了し、この「タケピロ」の連載を契機にするかの如く、その後は新連載の勢いがぱったりと止まってしまいます。そして、その後のガンガンは、面白い連載が次々に移籍、もしくは終了となり、代わって平凡なマンガばかりが残り、あるいは新連載として始まるなど、大きく誌面のクオリティが低下していきました。そして、この「タケピロ」終了時の2004年3月号時点では、もはやかつての面影もないほどに誌面は変質しきっていたのです。その意味で、この「タケピロのハッスル列島」、この時期のガンガンの質の低下の象徴となった感すらありました。


・極めて不快で気持ち悪いキャラクターたち。
 このマンガの不快さ、気持ち悪さは、まずその主人公・タケピロの姿に集約されます。
 この、全身ジャージに身を固めた気持ち悪い主人公を見て、まずほとんどの読者は、徹底的な不快感にさらされるでしょう。このタケピロ、常に気持ち悪いジャージ姿で登場し、その上なにかあるごとに他のキャラにボコられ、鼻血を噴き出し吐血しまくるという、なんとも卑屈で不快なキャラクターとして登場しています。これを一目見るだけでも、普通の人はこのマンガを避けてしまうのではないでしょうか。

 気持ち悪いのは主人公だけではありません。主人公の相棒でツッコミ役として登場するハカセというキャラクターも、なんとも不快な存在です。見た目はハゲ中年のいかにも典型的な博士的な姿ですが、その性格は最悪で、気持ち悪い提案を次から次へと垂れ流すその不真面目な姿勢は、タケピロ以上に不快なものがあります。このタケピロとハカセのふたりのキャラクターだけで、このマンガの低劣さは極まったと見てよいでしょう。

 加えて、ふたり以外に登場するゲストキャラクターたちも、どれも気持ち悪い連中ばかりで、全体を通してあまりにもひどいビジュアルに徹しています。中には、萌えキャラをパロディ化した気持ち悪いキャラが登場する回も何度かあり、本来ならばかわいい萌えキャラをキモ化したそのビジュアルは、もう不快の頂点に達した感もありました。


・不真面目な編集者たちも頻繁に登場。
 そして、先ほども述べたとおり、このマンガは雑誌内の企画扱いのページであり、ガンガンの編集者たちも頻繁に登場します。そして、彼らもまた一貫して気持ち悪いビジュアルで統一してあり、そんなひどい顔のキャラクター(しかも編集者)が次々に登場する様は、なんとも言えないものがあります。また、彼らの性格も、タケピロやハカセ同様に不真面目でいいかげんで、打ち出す企画も悪ノリに満ちたものが大半であり、この企画マンガに携わる編集者たちの不真面目な姿勢が浮き彫りになっています。

 しかも、時にはその悪ノリのままに、編集者が実写で登場することも珍しくなく、そのあまりにも不真面目な姿を見て、ほとんどの読者は「この雑誌は本当に大丈夫なのか?」と疑問に思うはずです。全体を通して、マンガを執筆する作者だけでなく、この作品に関わる編集者たちの不真面目さや悪ノリまで全面的に出た内容となっており、このような企画を作るガンガン編集者の質にまで疑問を感じさせる内容でした。このようなページが、他の真面目なマンガ雑誌、例えば「モーニング」や「アフタヌーン」のような雑誌に載ることが考えられるでしょうか。まずありえないでしょう。このような企画が平然と載る雑誌では、まじめなマンガ読者であればあるほど読むのを避けてしまうのではないでしょうか。

 もっとも、この当時のガンガンは、誌面の低年齢化を露骨に志向しており、自分たちが求める低年齢の読者にはこのような内容でも受け入れられると考えたのかもしれません。しかし、いくら低年齢向け雑誌とはいえ、ここまで不快で不真面目な内容はありえないように思います。


・想像を絶するあまりにも気持ち悪いネタ全開のギャグマンガ。
 そして、肝心のギャグの内容も、あまりにも気分の悪いものです。あまりにも低俗で低劣なギャグの数々は、全く笑えないばかりか、読者に対して意図的に不快感を与えようとしているとしか思えないものばかりでした。

 そもそも、ただ単に笑えない、面白くないだけならば、いくらなんでもそれほどひどいギャグマンガにはなりません。ただ単につまらないだけで終わりです。しかし、この「タケピロ」の場合、単につまらないだけでなく、読者に対して気持ち悪いネタをぶちまけようとする意識ばかりが感じられ、そこには作者や企画担当の編集者の悪意が強く見られるのです。

 中でも最高に問題だったのが、この「ハッスル列島 ファッションの秋スペシャル!!」という回で、「ハッスルTシャツ」なる意味不明なグッズを作ろうと企画し、実際にTシャツを作ったばかりか、そのTシャツを着た編集者をひたすら実写で登場させまくり、さらにはそのTシャツファッションをネタにして不快なギャグを繰り返しまくるという内容で、あまりにも人をバカにしまくったひどい企画でした。こんな企画に協力してくださったTシャツ製作メーカーの方には、あまりにも申し訳ないとしか言いようがありません。


・こんなマンガが2年近くも続くガンガンという雑誌の実態。
 そして、こんなひどいマンガが、なんと2年近くも続いてしまったのです。これこそが最大の問題で、当時のガンガンの状況を端的に物語っています。
 この「タケピロ」連載当時のガンガンは、お家騒動の混乱が一段落着き、残ったガンガンの編集者たちが、自分たちのガンガンを積極的に作ろうと邁進していた時期でした。しかし、その編集者たちが作ったガンガンは、決して面白いと言えるものではなく、平凡なマンガばかりが次々と掲載され、中にはどう見ても面白いとは思えない明らかな駄作まで数年に渡って連載されました。一方で数少ない優良だと思えるマンガばかりが次々と打ち切り、もしくは他雑誌へ移籍の目に遭い、一気に誌面のクオリティが低下していったのです。

 そして、そんなガンガンの最後尾に常に存在していたのが、この「タケピロ」だったのです。どう見てもつまらない、不快極まりない作品が、いつまで経っても終わらず、毎回毎回巻末で待ち構え続ける。その点で、まさにこの「タケピロ」、この当時のガンガンの低質化の象徴的な存在でありました。こんなマンガが、まるでジャガー(*)のごとく巻末に居座り続けていたこの雑誌、毎回「最後にこんなマンガが待ち構えている」と憂鬱な気分で読み進めていたものでした。

 そして、この時期は、ガンガンで数少ないヒット作であったあの「鋼の錬金術師」が、アニメ化で大ブレイクし、一気に雑誌の売り上げが倍増した時期でもありました。しかし、そんな「鋼」と同じ掲載誌の巻末に、こんなマンガが載っていたことを知っていた人は、一体どれだけいるでしょうか。あるいは、当時「鋼」目当てでガンガンを読み始めた読者が、このマンガをうっかり目にした場合、一体何を思ったのでしょうか。

(*ジャガー・・・週刊少年ジャンプの「ピューと吹く!ジャガー」のこと。)


・タケピロの血を引き継ぐマンガたち──その後に続くガンガンの低俗ギャグマンガの起源──。
 しかし、そんな「タケピロ」も、ようやく2004年3月号をもって終了し、多くの読者が胸をなでおろしていたのも束の間、今度は、この「タケピロ」をも上回るかのような低俗なマンガを描く「地獄ゆき」の読み切りが何度も掲載されるようになります。そして、その地獄ゆきの読みきりが、断続的とはいえ2004年〜2005年の1年間にかけて掲載され続けます。それがようやく終わったと思ったら、今度は2006年になって、地獄ゆきをも上回るかのような低俗極まりないマンガを描く堀田和哉の読み切りが何度も掲載されるようになります。そして、それがようやく出てこなくなったと思いきや、2007年になって、今度はまつしんなる作家が登場。これもまたふたりに酷似した内容の読み切りで、こういった低俗ギャグマンガの存在が、当時にガンガンの定番と化した感すらあります。

 これらのマンガは、どれも極めて低俗で読者を不快にさせる内容や、担当編集者の悪ノリに満ちた態度が共通しており、そしてこれらの要素はもちろん、この「タケピロ」とも共通しています。その点で、この「タケピロ」こそが、これらガンガン低俗ギャグすべての起源となっていると見てよいでしょう。

 そして、この「タケピロ」、ガンガンのお家騒動のしばらく後から連載され続けました。そして、その連載終了後も、このマンガの血を受け継ぐ低俗ギャグが断続的に掲載され続けているわけで、つまり、お家騒動後のガンガンは、長い間このような低俗なギャグが掲載され続けていたことになります。
 その点で、まさにお家騒動後のガンガンのあり方を象徴するかのようなこれらの低俗ギャグマンガ群、その起源という点でこの「タケピロのハッスル列島」の存在、それは非常に重要なものであると言えるでしょう。


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