<ガンガンWING4コマエディションについて>

2006・10・14

 かつて、ガンガンWING2006年7月号において、「ガンガンWING4コマエディション」という別冊付録が付いたことがありました。この冊子、雑誌の付録としてはかなり大掛かりなもので、通常の雑誌本体に加えて、もうひとつ4コママンガを中心とした雑誌が付いていると言ってよいものでした。無論、ページ数自体は本体よりははるかに少なく、薄い雑誌ではあるのですが、執筆陣は非常に多く、総数で47名の作家が参加している、ということを最大の売りとしていました。最近、このような「雑誌に4コママンガ中心の別冊が付く」という企画は、他の出版社でもいくつか見られるようですが、これはそれらの中でもかなり大型の企画だと思われます。

 この当時のWINGは、「まほらば」のアニメ化の成功で部数を大幅に伸ばし、雑誌に勢いがあった時期で、その勢いがそのまま出たような思い切った企画でした。そのあたり、アニメ化の勢いに依存した点は否定できませんが、しかし安直に「まほらば」関連のグッズを付録につけるよりは、このような内容(マンガ)のある付録、しかも大勢の作家のマンガが読める付録の方が意義があったことは確かであり、実際の読者の反応もおおむね好評でした。


・冊子の構成について。
 この冊子は、「4コマエディション」の名前どおり、内容の多くが4コママンガで占められていますが、実際には4コマでない、通常形式のショートストーリーもかなり含まれています。しかし、4コマにしろショートストーリーにしろ、非常に短い、数ページで終わる作品のみで構成されています。
 そして、一本の作品が短い分、総勢47名もの多数の作家が参加しているわけですが、この作家陣は、大きく3つの出自に分けられます。すなわち、

  1. 当時のWINGで連載を持っていた現行連載陣。
  2. WINGが発掘中だった新人作家。
  3. 外部(他雑誌、他出版社)から呼ばれたゲスト作家。
 これらの作家陣ごとに、それぞれ異なったタイプの作品を提供しており、同じ雑誌内でも、それぞれの作品でややカラーが異なります。


・現行連載陣は、WING連載の外伝4コマのみ。
 まず、WINGの現行連載陣ですが、彼らの作品は、すべて自分の持つWING連載マンガの4コマ作品を描いています。当時のほとんどの作家がこの冊子に参加しており、その総数は17名。雑誌の中のかなりの部分を占めています。具体的には以下のとおり。

 それら17本の作品をもって、「WING連載作品オール4コマ化」と銘打たれています。もっとも、実際には連載作品すべてが参加しているわけではなかったりします。実は、「ワイルドアームズ ザ フォースデトネイター」(CHIHIRO)、「ひぐらしのなく頃に 綿流し編」(方條ゆとり)の2作品は含まれていません。このふたつが含まれていないのは、原作ゲームつきのマンガ、それもスクエニ以外のゲームだからという理由もあると思いますが、同じタイプのゲームマンガである「テイルズオブエターニア」(小池陽子)は含まれていますし、それだけが理由ではないでしょう。実際には、このふたつの連載が、「4コマエディション」発行の直前に連載が始まっており、この企画自体に間に合わなかったというのが最大の理由だと思われます。

 さて、それぞれのマンガの出来については、さすがに連載を持つほどの作家の作品だけあって、どれもそれなりに読める4コママンガになっていました。特に、アニメ化で盛り上がっていた看板作品である「まほらば」は、さすがに巻頭カラーで掲載されています。
 ただ、クオリティの点ではさほど問題ないのですが、掲載が4コママンガのみ、それも連載作品の外伝のみというところは、少々物足りなくもありました。現行連載陣以外の参加作家は、どれもオリジナルの作品を載せており、それらと比較して読むと、「連載作品の外伝だけでなく、現行作家のオリジナルも読みたかった」という希望も出てきます。いや、むしろ 、連載作とは異なるオリジナルの方を読んでみたかったと思いますし、「連載作品の外伝」という形にこだわる必要もないかなと思いました。


・WING新人作家は、オリジナル4コマ中心。
 次に、WINGが抱える新人作家による作品は、そのほとんどがオリジナル作品の4コママンガです。参加人数は9名とやや少なめで、そのうち8名までが4コママンガです(残り1名はショートコミック)。

 現行連載陣の4コマと違い、オリジナルの作品が読めるのは魅力でしたが、肝心のクオリティに関しては、全体的にいまひとつ振るわなかったように思えました。新人作家の未熟さが出ていたように感じます。ただ、その中でも特筆すべき存在として、カザマアヤミさんの「365日猫!」という4コマだけは、斬新な設定で非常に面白く、鮮烈な印象を残しました。このカザマさんの作品の存在感は、冊子の全作品の中でも突出していました。そして、この4コマエディションでの高評価を経て、のちにほぼ同じ設定で連載化されます(「ちょこっとヒメ」)。これが、この冊子最大の収穫でしょう。

 一応、カザマさん以外でも、和泉なぎささんや岩師静次さんの4コマは、それなりに読めるものがありましたが、しかしそれほど印象に残るものではありませんでした。新人作品での良作の選択では、実質的にカザマアヤミ一択だったと見てよいでしょう。


・ゲスト作家はショートストーリー中心。
 さて、最後にWING外からのゲスト作家による寄稿作品。これは、すべてオリジナルの作品で、WING以外からの作家ということで作風も新鮮で、冊子中でも最も目立つ存在でした。掲載作家も21名と最も多く、冊子の中でも中心的な存在でした。ただし、総数21名のうち、「中村光」さんについては、かつてのWINGの連載作家(当時はヤングガンガンで連載中)であり、さらには「瀬口たかひろ」さんも、当時のWINGで読み切りを残しており、彼もまたのちにヤングガンガンで連載を開始しています。そしてもうひとり「はましん」さんについても、この号のWING本誌で読み切りを残し、のちのWINGでも定期的に読み切りを掲載している作家なので、実質的にはWINGの新人作家の趣きがあります。この3名は、むしろWING関連の作家として扱うべきで、実際のゲスト作家は18名と考えられます。

 そして、これらの作品の多くは4コマではなく、通常のストーリーマンガになっています。しかし、その多くがほんの数ページ程度のショートストーリーであり、正直一本一本の作品には物足りないものがありました。わずか数ページの読み切りでは、まとまりのあるストーリーが読めるほどの作品は多くありませんでした。
 ゲスト作家の質に関しては、萌え系4コマ作家や、角川や電撃萌え作家を中心に、有名どころも作家もかなり見られるのですが、肝心の作品の質にはいまいちなものが多く、連載を持つプロ作家陣の作品にしてはさほど見栄えがしなかったように思えます。

 ただ、その中でも目だって完成度のある作品として、巳蔦汐生(みづたうしお)という作家(当時は電撃系で執筆)による「雲の上の僕の世界」という作品は、ページ数も多く、作画も安定していて、かなりの良作でした。上にも下にもどこまでも続く塔の中に住む青年が、塔の果てを求めて探索に出るというもので、その特異な世界観が印象的な作品でした。彼は、近々一迅社のゼロサムでの連載開始が決まっており、これからそちらの方で良作が期待できるかもしれません。

 それ以外の良作としては、まずきらら系4コマの「ひだまりスケッチ」でも大人気を誇る蒼樹うめの作品は外せません。かわいい絵柄ながら一抹の寂しさを感じさせる感傷的なストーリーで、この読み切りでも良作を見せてくれました。あとは、電撃やきらら系で萌えマンガを多く描いているあらきかなおのマンガも中々の評判でした。この人の描くマンガは、一般誌でありながら百合かつエロいネタが多く、他誌では女の子のパンツを脱がしたりパンツを脱がしたりパンツを脱がしたりするマンガをよく描いているのですが、さすがにWINGでは掲載誌を配慮してかエロはかなり控えめでほとんど見られません。このマンガは、冊子の中でも中々の人気だったようで、のちにWING本誌でももう一度読み切りが掲載されました。あとは、はましん(マンガよりもイラストレーターとして著名)の作品も、コミカルで中々に読めるものでした。

 逆に、それ以外の作家には、これといってぱっとした作品は少なく、そして何かやたらエロにネタを求める作家も多く(苦笑)、思ったほどのクオリティは見られませんでした。もう少し作家を絞って、一本一本にそれなりの分量(ページ数)を持たせた方が良かったように思えます。


・これからもこの種の付録には期待したいが・・・。
 ただ、全体的なクオリティこそ微妙でしたが、大多数の作家による大型の別冊付録という点ではかなり読み応えのあるもので、ありがちなグッズのような付録よりも満足度は高く、おおむね読者の反応は好評でした。できれば、これからもこの手の付録を企画してもらいたいところです。

 ただ、これまで見てきたような不満点もかなりあり、改善すべきところは改善すべきだとも思えます。
 まず、WINGの連載作家にも、現行連載の4コマという形にこだわらず、オリジナルの読み切りを積極的に描かせるべきでしょう。人気連載の外伝ならば数本あっても良いとは思いますが、それよりも「作家の別のオリジナルを読んでみたい」という希望の方が強いのではないでしょうか。
 そして、マンガの掲載本数自体ももっと絞って、真に読める良作のみを、まとまったページ数で読ませるような構成にすべきだとも考えます。「総勢47名の作家陣」というと聞こえはいいですが、その大半がほんの数ページの4コマとショートストーリー、しかもあまりにぱっとしない作品ばかりでは落胆してしまいます。むしろ、作家の総数を20名程度に絞って、実力のある作家にまとまったページ数を取って描かせた方が、ずっと面白い付録冊子になるのではないでしょうか。そのような構成ならば、今後もこのような付録を企画する意味は多いにあるでしょう。

 ただ、「まほらば」が最終回を迎え、WINGも過渡期にある今では、このような企画はすぐには難しいかもしれません。それでも、これからの新人作家の発掘も兼ねて、再びやる意義はあると思います。


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