<俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる>

2013・12・5

 「俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる」は、ガンガンJOKERで2011年7月号から開始されている連載で、同名のライトノベルのコミック化作品にあたります。原作はGA文庫から刊行されており、1巻の発売は2011年2月となっています。スクエニでは(あるいは他社でも)こうした他社のライトノベルのコミカライズは、すでに定番中の定番となっていますが、これは原作小説の刊行から半年足らずとかなり早い時期から連載が始まっており、のちに行われたアニメ化と連動してのコミカライズではないようです(テレビアニメの放送は2013年1月〜)。最初期から原作を評価してのコミカライズだったと言えるでしょう。

 作者は、原作が小説の作者である裕時悠示、作画は七介。キャラクター原案に原作のイラストを担当しているるろおの名前が挙がっています。七介さんは、JOKERからの新人のようで、これが初連載作品のようです。

 さらには、このコミカライズを皮切りに、スクエニの他雑誌でもスピンオフ作品の連載が始まりました。まず、当時創刊されたばかりのビッグガンガンで「俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる+H」(作画・稲瀬信也)が、さらにヤングガンガンでも「俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる4コマ(作画・まりも)」が直後から連載され、この3つをセットにしてスクエニ各誌で大きく宣伝されていました。当初からかなり力を入れたコミカライズの企画だったと思います。
 さらに、これはずっと遅れて、2013年のアニメ化に合わせる形で、再びビッグガンガンで「俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる 愛」(作画・睦茸)というスピンオフ連載が開始されました。ここまで多数の連載が行われたコミカライズは、最近のスクエニでも中々見られません。

 作品の内容ですが、学園を舞台にした恋愛、もしくはラブコメ色の強い作品で、タイトルどおり主人公を巡って「彼女」と「幼なじみ」、さらに主人公を慕う女の子たちが、部室で時に争い時に仲良く活動する様をコメディタッチで描いています。一方で時に各キャラクターを掘り下げたシリアスなストーリーにも読み応えがあり、連載がある程度進んでからはそういったエピソードもよく見られるようになっています。

 現在では、JOKERでの本編のコミカライズ以外はすべて連載は終了し、アニメの放映も1クールで終了してしばらく経ち、一連のメディアミックスの多くが一段落した状態となっています。ここでは、これらスピンオフを含めたコミカライズすべてを扱ってみます。


・最近ではやや少数派?のスタンダードなラブコメディ。今どきのライトノベルならではの要素も。
 上記でも言及したとおり、原作小説の「俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる」は、学園を舞台にしてかつ恋愛要素がかなり大きな作品で、オーソドックスな恋愛ラブコメと言える作品になっています。また、主人公の元に集まる女の子たちの多くが主人公に好意を寄せているという設定は、最近ではやや珍しくなった「ハーレムもの」作品であると言えるかもしれません。

 県立羽根ノ山高校(通称ハネ高)に通う高校1年生・季堂鋭太は、とある理由から恋愛を避け、誰とも付き合わずに日々勉強に取り組んでいました。ところが、そんな折、校内一の美人と評判の夏川真涼が、「私のフェイク(偽者)の恋人になってくれませんか」と奇妙な提案をしてきます。断ろうとした鋭太でしたが、かつての中学時代に中二病だった時のノートを見せられ、弱みを握られて彼女に従うことになってしまいます。

鋭太と真涼 このふたりのカップルは学内でえらく評判になりますが、それに対して反対せずにはいられなかったのが、鋭太の幼なじみだった春咲千和でした。真涼は、「自らを演出する乙女の会」なる部活を立ち上げ、そこに千和も加わることになりますが、そこで繰り広げられる光景は、まさに鋭太を巡る修羅場な光景でした。さらになぜか鋭太の「元カノ」を主張する、中二病的な感性を持つ秋篠姫香と、婚約者を自称する冬海愛衣が加わり、さらに「修羅場すぎる」光景が展開されることになるのです。

 このように、確かにオーソドックスな恋愛・ラブコメもので、さらにはハーレムものと言ってもいい設定ではありますが、しかし主人公やヒロインにいわゆる中二病的な側面が見られたり、あるいは部活動の場である部室での会話でコメディが行われたり(いわゆる部室だべりもの的な要素)、最近のライトノベルやアニメでよく見られる設定も散見され、このあたりは今の流行をバランスよく取り入れた作風になっていると思います。


・シリアスなキャラクターの掘り下げもしっかり見せる本編コミカライズ。絵の印象がちょっと薄いのが残念。
 さて、その原作のコミカライズですが、まずJOKER連載の本編について見ていきましょう。こちらは、基本原作のストーリーを忠実に辿っていて、そのエピソードの再現度はかなり高いと思われます。また、遅れて始まったアニメと比較しても、それほど大きな違いは見られず、アニメでこの作品に触れた人にもとっつきやすくなっています。

 冒頭で鋭太が真涼に中二病をネタに脅されるシーンや、真涼と千和の(傍から見ると)賑やかで楽しい対決など、この作品ならではのコメディシーンがよく描けていますし、さらにはストーリーが進むに連れて訪れるシリアスなストーリーも読み応えがあります。鋭太と偽装カップルを演じざるを得なかった真涼の事情、鋭太と千和の過去を描いたじんとくるエピソード、独特な感性を持った姫香の意外なほどの懸命さ、幼い頃から長い時を経て再開した愛衣の想いの強さなど、キャラクターたちの掘り下げに見るべきものがあると思います。

 ただ、このコミカライズ、作画の七介さんの絵が、あまり原作を再現していない点が、少々惜しく感じられます。シンプルかつかなりデフォルメが強めの絵柄で、るろおさんの原作イラストの絵柄があまり再現できていません。カラーイラストの淡い色使いは原作のイメージに近く好印象なのですが、ただあまりにも色合いが薄すぎて、見た目の印象まで薄くなっているように感じます。また、キャラクターの造形や全体の描き込みに関しても、他のコミカライズの方が上回っているように感じますし、肝心の本編のコミカライズの見た目が、ちょっとインパクトが弱く感じられるのは残念なところです。


・ストーリーは最も面白いと感じた「+H(プラスエッチ)」だったが・・・。
 次に、ビッグガンガンで連載されたスピンオフストーリー「俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる+H」ですが、これは本編では出てこないオリジナルキャラクター・美空美晴(みそらみはる)が登場するアナザーストーリーとなっています。時系列的には、姫香と愛衣が自演乙に入部する前のタイミングでのエピソードとなっていて、このふたりは登場せず、主人公の鋭太を巡って真涼・千和とこの美晴が争うようなストーリーとなっています。

 この美晴、主人公たちからはずっと年下の中学2年で、違う学校に通いながらなぜか鋭太に好意を寄せ、「お兄ちゃん」と呼んで積極的にアプローチするようになります。表の顔は明るくかわいい妹的な性格なのですが、本性はひどく辛辣で、真涼や千和に対しては対抗心を露にしてきます。この二面性のある妹キャラクター・美晴の存在がとても面白く、見た目のかわいさも文句なく魅力的な存在に仕上がっていました。さらには、その裏に隠された悲しい事情を絡めたシリアスなストーリーもよく出来ていて、展開的には最も興味深いものがあったと思います。

 しかし、このスピンオフ連載、回が進むに連れて致命的な欠点が出てくるようになります。それは、作画の稲瀬さんの描くキャラクターのデザインが極端に崩れてしまったこと。特に真涼・千和・美晴ら女の子たちの顔つきがゆがんでかわいげのないものとなり、さらには体つきまでまるで男性のようにごつごつした異様な外見になってしまいました。さすがにこれは許容する限度を超えるほどの崩壊でした。連載の初期は普通にかわいく描けており、あるいは作者のこの連載以前の同人作品を見ても、そのような絵の崩れはまったく見られないため、なぜこのようなことが起こったのかまったく分かりません。約1年の比較的短い連載期間で終わってしまいましたが、この作画ではやむなしと言えるでしょう。


・原作付き4コマとして理想的な作品だったヤングガンガンの連載。
 一方で、こちらはヤングガンガンでの連載だった「俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる4コマ」。こちらは、作画もストーリーも大きな欠点はなく、よくまとまった良作になっていたと思います。マンガやアニメなど原作を原作とした、原作付き4コマの中でもかなりの出来で、理想的な作品でもあったと思います。

 まず、まりもさんの作画が一貫して安定していて、一連のコミック化作品の中で間違いなく最もレベルが高かったと思います。いわゆる萌え絵に最も近い絵柄だったと思いますが、それでいてずっと整ったキャラクターの作画で、終始安心して見ていられました。

 さらに、毎回のエピソード作りも卒なくこなれていて、楽しめるストーリー4コマになっていたと思います。4コマということで、原作にあるシリアスなストーリーはなく、毎回楽しい日常のコメディを見せてくれました。原作のキャラクターのイメージを崩すことなく、かつそれぞれの個性がよく出たエピソードとなっていて、原作にはないオリジナルの読み切りコメディとはいえ、読んでいてまったく違和感はありませんでした。また、毎回部室が舞台となっていることが多く、部室でのキャラクターたちの他愛のない会話を楽しむ、最近のライトノベルの流行を最もよく感じられた連載でもあったと思います。

 「4コマオブザイヤー」という有志によって行われた4コマの投票企画でも、原作ものでありながらこれを挙げる人が何人かいて、その出来の良さを証明していたと思います。良作の多いスクエニ4コマの中に、またひとつこの作品を加えてもいいでしょう。


・愛衣ちゃんのかわいさがよく出ていた最後のスピンオフ連載。コミカライズ全体を通して見れば成功だったと思う。
 最後に、ずっと遅れてアニメに合わせる形で連載が始まった「俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる 愛」ですが、これは他の作品とは少し異なり、メインヒロインのひとり愛衣ちゃんを主役に置いたスピンオフ作品となっています。終始愛衣視点で描かれるほか、設定も本編とは少し変わっているようで、これのみ他からは少し外れたパラレルストーリーとなっているようです。

 愛衣ちゃんは、特にアニメの放映を通して最も人気を集めたキャラクターで、「おそと走ってくる」「愛衣ちゃん大勝利ー!」などの迷言も一時期かなり話題になりました。そんな彼女を主役にした連載を始めるのは正解だったと思います。他の作品に比べるとキャラクターの描き方にエロ度が増していて、いわゆるお色気要素が増えているのが特徴ですね。

 しかし、この連載は短期で終了し、他のスピンオフ連載もすべて終了していて、現在は本編のコミカライズのみ連載が続いている状態となっています(2013年12月現在)。アニメの放映も1クールで終わり(2013年1月〜3月)、一連のコミックとアニメによるメディアミックスによる展開は、今では一段落着いたところだと言えるでしょう。この一連のメディアミックスでかなり盛り上がったことは間違いないですし、コミック単体での出来には若干の差こそあれ、コミカライズ全体を通して見れば成功だったと思います。

 さらに、原作小説の刊行はまだ継続中で、本編のコミカライズでも興味深いエピソードは続いています。最新の展開では、真涼を他のメンバーが協力して助けようとする展開にまで発展し、ぐっと盛り上がってきました。この後もう一度メディアミックスが盛り上がるのか、あるいはこのままで終わりまで行くのか分かりませんが、いずれにせよ最後まで描き切って有終の美を飾ってほしいと思います。


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