<わ!>

2009・10・27

 「わ!」は、ガンガンONLINEで創刊時に当たる2008年10月に連載が開始された4コママンガで、当初から大々的に扱われており、同じく創刊時より開始された「舞勇伝キタキタ」(衛藤ヒロユキ)と並び、最大の看板作品となりました。同誌は、主に新人中心であまり知名度のない作品が当初は多かったのですが、これだけは完全に別格でした。のちに不定期連載のとなったあと、2009年11月号よりJOKERへと移籍されますが、移籍先でもその大きな扱いはまったく変わっていません。

 作者は小島あきら。かつて、1999年よりガンガンWINGであの「まほらば」を長期連載し、特に2001年のお家騒動以後は、雑誌の中心作品が多数離脱した後で数少ない安定した人気作品となり、2006年に終了を迎えるまで同誌を一手に引っ張ってきました。その後、TVアニメ化されてこちらも大人気を博し、スクエニの中でも屈指の有名な作品になったことは、いまだ記憶に新しいところです。

 しかし、2006年に「まほらば」を円満終了したのち、次回の連載が中々執筆されず、その間にWINGも大きな不振に陥り、数年ののちには末期的な状態にまで陥っていました。最大の人気作家だった小島さんの復帰が待たれるところでしたが、結局WINGで再度連載が再開されることはなく、ついに新しく創刊されたウェブ雑誌・ガンガンONLINEのほうで、この「わ!」の連載を開始。もはやこの時点でWINGは休刊が決まっていた節すらあり、小島さんも新しい雑誌の看板として任命されたようです。

 今回の「わ!」は、「まほらば」と異なり4コママンガですが、元々「まほらば」にも4コマで描かれた箇所はいくつもあり、作者にとって4コマは得意ジャンルでもあるようで、まったく違和感のない創りになっています。面白いコメディ・ギャグがふんだんに織り込まれた良質の4コママンガとして、他にも良作の4コママンガが数多いONLINE誌上の中でも、なおも屈指の面白さを誇っていました。のちに、諸事情からJOKERへと移籍されますが、こちらでも変わらぬ活躍が期待されます。

 なお、この4コママンガは、通常の4コママンガの形式と異なり、1コマ1コマが横に非常に長いスタイルとなっており、その横長の4コママンガが、コミックスでは1ページに1本ずつ掲載されています(通常は2本)。これは、非常に珍しい形式であり、まさにワイド4コマとでも言うべき個性的なスタイルであり、コマが大きめで読みやすく1コマの情報量も多い(特に背景の描きこみが豊富)という長所を生んでいます。


・ついに帰ってきた小島あきら。
 それにしても、小島あきらさんが帰ってくるまでに、相当な時間が経過してしまいました。まさに待望の、いやむしろ遅すぎた復帰といった感もあります。

 ガンガンWINGで長らく連載していた「まほらば」が終了したのは、2006年7月号ですが、当時は1年ほど前に終了したTVアニメ版の余韻も残っている状態で、まだまだ人気は健在でした。ストーリー的にももう少し続いてもおかしくなかったと思うのですが、それがやや早めに終了してしまったのは、作者の病気が大きな原因だったと伝えられています。元々「まほらば」連載中もずっと病気がちだったのですが、それが最後の頃になっていよいよ悪化し、これ以上長く続けられない状態になり、終了した後で長らく療養状態に入ってしまったのです。

 その後の小島さんは、たまにガンガンWINGやその付録小冊子、ガンガン増刊カスタムなどで読み切りや短編を掲載するものの、病状は芳しくなかったようで、長らく次回作の連載はないままで推移してしまいました。そして、小島さんがいなくなった後のガンガンWINGは、他に人気作も次々と終了した上に、後を継ぐべき新規連載も多くが奮わず、極度の不振に陥ってしまいます。ここでこそ小島さんの連載復帰が待たれる状態だったのですが、それはついにかなうことはなく、ようやく2008年10月にこの「わ!」がONLINEで始まったときには、もう建て直しがきかないほどの状態に陥っており、半年後の2009年3月にはついに休刊してしまうのです。

 そして、その休刊を受けて新たに新創刊された雑誌が、「ガンガンJOKER」であり、小島さんはこちらでもう1本連載復帰することになります。それが「まなびや」であり、こちらは「まほらば」の感動ストーリーを受け継ぐような感傷的なストーリーマンガとなっています。しかし、やはりいまだ作者の体調は思わしくなかったようで、この「まなびや」は連載わずか半年でコミックスが1巻だけ出た状態で休載となり、代わってこの「わ!」がONLINEからJOKERへと移籍して継続される形となりました。作画の負担の軽い「わ!」1本に絞って連載継続したようで、こちらだけでもかろうじて連載が続くことになって、これは不幸中の幸いだったかもしれません。

 なお、この「まなびや」と「わ!」は世界観を共有しており、同じ学校が舞台で、一部キャラクターは双方に登場しています。


・多数のキャラクターがコメディを繰り広げる、賑やかで楽しい学園もの。
 このマンガは、湘南海岸にあるという私立高天原学園(タカマノハラがくえん)の高等部を舞台とした学園コメディであり、キャラクター同士の恋愛関係も随所に織り込まれた軽快なラブコメディとも言うべき作品になっています。
 それも、ただのラブコメではありません。多数のキャラクター間でいくつもの関係が見られ、場面を次々に変えつつ同時並行的に展開される様子が、追っていてとても面白いものとなっています。作者のコメントによればこれは「群像劇」らしいですが、確かに特定の主人公と言うべきキャラクターが存在していないようでもあり、それぞれのキャラクターすべてに等しくスポットが当たっているようです。

 具体的には、恋愛関係を織り成す7人の個性的なキャラクター「純情で照れ屋や生徒会長・岩千鳥帝」「クールで無表情な一年生・立浪大吾」「ポニーテールでボーイッシュな女の子・菊川勇魚」「エロゲー好きな秀才オタクの副会長・扉一心」「人間観察が趣味の不思議少女・朝霧美月」「かわいらしく料理の得意な女の子・椎名里子」「ぶっきらぼうな性格の風紀委員・杜若鵠太」が、それぞれ別のキャラクターに片思いをしており、その関係が一周した「輪(わ)」になっているのが最大のポイントで、これこそがまさに作品のタイトルにもなっています。彼らが繰り広げる笑える会話の応酬がどれも非常に楽しく、しかも4コマ数本ごとに次々と登場キャラクターが入れ変わっていき、別なところに飛んだりまた最初に戻ってきたりと、読者をまったく飽きさせません。特に、彼らの中でもお気に入りのキャラクターを見つけることが出来れば、より楽しくこのマンガを読むことが出来るはずです。

 わたしが好きなキャラクターとしては、まず生徒会長の岩千鳥帝と副会長の扉一心が気に入りました。生徒会室のPCで堂々でエロゲーをプレイする一心と、そのエロゲーを嫌ってやめさせようとする帝との応酬が楽しい。しかも、帝は、一心がいなくなったときに好奇心に耐えられずエロゲーをプレイしてしまい、それを一心に見られて写真に撮られ、逆に弱みを握られて掃除をさせられてしまうという、傍から見ると最高に笑える掛け合いを見せてくれます。このふたりは、上記で述べた片思いの関係ではありませんが、実際にはこのように恋愛関係のみならず、幾多のキャラクター同士で様々なコメディ展開が楽しめるところが最大の魅力です。かつての「まほらば」で見られた楽しい日常コメディと近い感覚がありますし、いかにも小島あきららしいマンガになっていると思います。

 あるいは、常に不思議でずれた言動を取る天然少女・朝霧美月も面白い。実は家は貧乏であまり恵まれてはいないようなのですが、それでも毎日を不思議な感性で楽しく生きているようで、同性の里子への恋愛感情も隠そうとせず、そのフリーダムな生き方には大いにいとおしいものを感じてしまいました。


・作者らしい鋭い着眼点に満ちたギャグも見もの。
 そしてもうひとつ、そんな楽しいコメディ展開に加えて、随所に織り込まれる小島あきら独特のギャグネタ、こちらもひどく面白いのです。それも、この作者らしい独特の鋭い見方まで感じられます。

 中でも特に顕著なのは、梅(うめ)と桜井(さくらい)というふたりの女の子が、校庭のベンチに座って、他愛もない会話の応酬を繰り広げる一連の4コマでしょう。この梅と桜井、上記の片思い7人の輪には入っていない、独立したキャラクターなのですが、実はこのふたりがタイトルの「!」の部分を構成しているようで、最後にこのふたりが加わることで「わ!」のタイトルが完成するという、凝った作りになっています。
 そして、このふたりこそが、このマンガの爆笑ギャグネタを一手に引き受けているのです。その内容は、一見してどうということはない単語に捻りまくった(あるいは歪みまくった)独特の解釈を加えたり、社会や歴史の知識を妙に捻って解釈したり、どうでもいい些細な小ネタをひねり回したり、そんなくだらないネタばかりで、最後に「たしかに!」とか「でもあるあるある」とかお決まりの突っ込みが入って終了するという、なんとも言いようのない脱力系のネタになっています。

 しかし、これが本当に面白い。扱う材料はくだらないかもしれませんが、それに対する作者独特の鋭い着眼点が感じられ、むしろ大いに感心してしまうくらいなのです。しかも、読者があまり知らないような興味深い知識もいくつも見られ、そちらでも何か得したような気分になります(笑)。そして、ほんのりと散りばめられた毒(皮肉・風刺)のようなものが感じられるのもまた楽しい。作者・小島あきらの持つ鋭い感性、並ではないな・・・と爆笑しつつも感嘆してしまいます。(日常の些細な事柄を独特の視点で見るという点では、あの美術系4コマ「スケッチブック」のネタにも近いものもあるような気がします)。

 そして、この梅と桜井の会話4コマ以外にも、この手のネタは随所に見られます。例えば、エロゲーオタクの一心が「ポケ○ン」を語るシーンで、「気に入った相手を死なない程度にギリギリまで痛めつけてから道具を使って体の自由を奪い我がものとする・・・その後はどんな命令にも逆らわない従順な哀願動物として連れまわすことができる・・・。フフ・・・こんなに楽しいゲームはありませんよ・・・。」などと語り、それに杜若が全力で突っ込みを入れるところなどは、まさに最たるネタだと言えるでしょう。前作「まほらば」で、いたるところに散りばめられた小ネタに近いものも感じますし、あの独特のシニカルな感性は今回も健在なのです。これもまたいかにも小島あきらさんらしい鋭い面白さが存分に出ていると言えるでしょう。

実際には他にも諸説あるみたいだけど。


・軽快なコメディ・ギャグの面白さが4コマに凝縮された良作。連載継続を喜びたい。
 以上のように、この「わ!」、いかにも小島あきららしいコメディとギャグがふんだんに楽しめる、軽快で明るく楽しい学園ものになっています。元々作者がよく手がけていた4コママンガだということもあり、非常な良作に仕上がっていると思います。まさに作者の本領発揮といったところでしょう。加えて、多数のキャラクターが同時並行的に登場する群像劇としても面白く、賑やかで楽しい作品にも仕上がっています。

 しかし、この作品も、一時は作者の体調とスケジュールのためか休載しがちであり、少々不安に見舞われていました。ONLINEでの連載が始まって半年後に不定期連載となり、おそらくはJOKERで「まなびや」が始まったことが一番の理由だとは思われますが、作者の体調が思わしくないことも大いに関係していたのではないでしょうか。そして、結局のところ「まなびや」と「わ!」の同時連載は、作者の体調悪化に伴って不可能となり、この「わ!」のみがガンガンJOKERに移って連載継続、という形になりました。主要人気連載が抜けたONLINEにとってはかなりの痛手だと思いますが、これは仕方のない措置だったかもしれません。

 むしろ、この作品だけでも、無事連載継続できたことを喜びたいと思います。ガンガンJOKERならば、ウェブ雑誌と異なり多くの人の目に触れることになりますし、よいことではないかと思います。4コママンガ過多のONLINEと違い、JOKERには連載マンガに4コママンガがほとんどありませんし、そこに4コマを1本加えるのもいい効果を生むのではないか。あとは、休載する「まなびや」のために、世界観が共通する「わ!」の方で「まなびや」のキャラクターがもっと出てくればいいかなとも思っています。

 そして、ゆくゆくは、このマンガも、「まほらば」に匹敵するほどの人気マンガに育ってほしいという願いもあります。いずれはこれも「まなびや」とセットでアニメ化ということになれば本当に楽しい。今では4コママンガのアニメ化ももう当たり前になりましたし、まして「まほらば」の小島あきらの新たなる良作となれば、ガンガンJOKERのオリジナル作品で、初のアニメ化候補になる可能性も十分考えられます。ワイド型の4コマでワイドテレビにも完全に対応したこのマンガ(笑)、是非ともそこまで発展してほしいと思います。


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