<ガンガンWING2008年の危機>

2008・7・5

 このところ、ガンガンWINGがかなり危険な状態を迎えているようです。雑誌の連載が全体的に低調で、連載本数も少なく、雑誌の質が非常に落ち込んでいるようです。これは、ここ数年、具体的には2006年以降のWINGから一貫して見られている傾向なのですが、ここ2008年に入ってから、その落ち込みはさらにひどくなったようです。
 この記事では、今のガンガンWINGの現状と、そうなってしまった理由、そしてここからの打開策までを徹底的に考えてみたいと思います。


・人気長期連載が終了したことが直接の原因。
 今のWINGの連載陣が、ここまで落ち込んできた最大の理由は、やはりかねてから雑誌を支えてきた長期連載が、ことごとく終了したからに他なりません。あの「まほらば」を始めとする、WINGの人気連載は、どれも2002年以前からの長期連載であり、そんな作品が相次いで終了を迎えるのは、時期的にやむなしとはいえ、やはり厳しいものがありました。

 具体的には、まず2006年にあの最大の人気マンガ「まほらば」(小島あきら)の終了を筆頭にして、「がんばらなくっチャ!」(仲尾ひとみ)、「KAMUI」(七海慎吾)、ワンダフルワールド(たかなし霧香)などが終了、これが2007年以降はさらに深刻で「天正やおよろず」(稀捺かのと)、「ショショリカ」(上杉匠)、 「dear」(藤原ここあ)、「機工魔術士 -enchanter-」(河内和泉)など、雑誌の中心作品のほとんどが終了してしまいます。この間、ゲーム原作コミックの終了も相次いでおり、なかでも昨今の「ひぐらしのなく頃に 目明し編」(竜騎士07・方條ゆとり)の終了は、雑誌を支える人気連載だっただけにあまりにもその穴は大きいものでした。

 そして、このように長期の人気連載が相次いで終了した結果、雑誌を支えるに足る力のある連載が非常に少なくなってしまいました。もちろん、どんなに人気のある連載でも、いつかは終了するのは当たり前であり、かつスクエニの場合、連載自体がそんなに長引かないで終了するケースが多く、これらの人気作品の終了も予想の範囲内の出来事ではあります。ここで本当に問題なのは、それらの人気連載の後を継ぐべき、有力な新規連載の数が非常に少ないことなのです。それこそが、今のWINGの落ち込みの真の原因だと思われるのですが、ではその新規連載の動向はどうだったのか。


・「1年間連続新連載」の失敗が最大の原因だが・・・。
 長期連載の後を継ぐ新連載確保の試みとしては、2006年に1年を通して行われた「1年間連続新連載」という、非常に大きな企画がありました。これは、当時からすでに終了気味だった長期連載、とりわけ「まほらば」の終了の穴を埋めるために行われた企画であり、2006年を通して1年間毎号必ず何らかの新連載を行う、という大掛かりなものでした。

 しかし、(これはこのサイトで過去幾度となく指摘しましたが)、実際に出てきた新連載は、どれもまるでぱっとしないものばかりで、どうにも見掛け倒しの感の否めない期待はずれの企画でした。大半の新連載が、短期間で終わるシリーズ連載として始まり、とりあえず毎号新連載の体裁を整えただけとしか思えませんでした。そして、そんな連載群はことごとく予定通り短期で終了してしまい、かろうじて成功して雑誌に定着したと言えるのは、数少ない通常連載で始まった数作品、具体的には「ちょこっとヒメ」(カザマアヤミ)「東京☆イノセント」(鳴見なる)「夏のあらし!」(小林尽)の3作品程度でした。わずか3作品では、次々に終了する人気連載の穴を埋めるには到底足りなかったのです。

 ただ、この「1年間連続新連載」の失敗が直接の原因とはいえ、そもそもの元を辿れば、その企画の前にいい新連載がなかったことも大きな原因となっています。つまり、WINGの人気連載は、ことごとく2002年当時の一時期に集中して登場しており、その後の2003〜2005年に投入された新連載は、どれも今ひとつの作品であり、結局雑誌に定着するような人気マンガを得ることが出来なかったのです。そもそも、この時期にいい連載が複数登場していれば、2006年になって「1年間連続新連載」などという強引な企画を立てる必要もなかったわけで、結局のところ、ここ最近のWINGの落ち込みは、長らく長期の人気連載のみに頼り、その後に続くいい作品を打ち出すことが出来なかった、WINGという雑誌の長期的・構造的な問題が真の原因だと言えます。


・2007年以降の新連載も奮わない。
 そして、2006年の「1年間連続新連載」の結果が奮わなかったのを受けて、2007年以降もWINGは新連載を出し続けることになります。しかし、これらの作品もいまいち奮わないのです。

 具体的には、2007年の「ネクロマンシア」(はましん)、「イグナイト」(ひいろ莎々)、「磨道」(パーダ・五十嵐洋平)、「WARASIBE」(松葉サトル)などは、それまでのWINGの連載とは若干異なる、王道的なバトルファンタジー作品を志向したものとなっていますが、どれもいまひとつふるわず、いまだ雑誌の中核となるほどの連載には至っていません。この中では、「ネクロマンシア」は連載が進むにつれてかなり良くなってきたのですが、その実あまり長い連載にはならないようで、いずれ終わってしまうというのが残念なところです。「WARASIBE」は、最近では雑誌側の推進ぶりがかなり目立ち、看板的な作品にしようという意図が感じられますが、そこまでいい作品になっているかは少々疑問です。
 それ以外では、「今印」(今豊太郎)というギャグマンガの新連載もありますが、これも決して面白いとは言い難いギャグマンガとなっています。

 2008年の新連載も、基本的にはあまり変化がありません。唯一、「戦國ストレイズ」(七海慎吾)のみが、非常に優秀な連載となっていますが、それ以外の新連載がいまだ微妙です。「兄弟-BROTHERS-」(成瀬芳貴)も、バトル系ファンタジーですが、設定に癖が強く、幅広い読者に受け入れられるかは分かりません。「まじぴこる」(稀捺かのと)は、かつての「天正やおよろず」の作者の新作ですが、今のところ前作ほどではないような気がします。「おとして↓アプリガール」(望月菓子)などは、これまでのWINGでは見られなかった典型的な萌えマンガとなっていて、しかも決してレベルが高いとは言えないマンガとなっています。

 それと、ここ最近は読み切り作品で奮わないものが増えています。特に、あまりにもありがちな萌えマンガが目立つようになり、単につまらないだけでなく、雑誌の方向性から考えてもかなりの疑問となっています。


・ここ最近の方向性の転換はうまくいくのか。
 それと、今も書いたとおり、これらの新連載の中に、これまでのWINGには見られなかったタイプの作品が見られるようになっています。どうも、ここ最近のWINGは、これまでの誌面とは若干の方針転換を図っているようですが、これが果たしてうまくいくのかどうか。

 まず、2007年以降、一昔前の雑誌で見られたような、王道バトル系ファンタジーが頻繁に投入されるようになりました。お家騒動後のWINGは、ファンタジーと言える作品はいくらでもありましたが、それらはいずれもゆるい日常をまったりと描くタイプの作品が数多くを占めており、このようないわゆる「ゆる萌え」な作品が誌面のメインカラーとなっていたのです。一応、一部に「BEHIND MASTER」(坂本あきら)のようなバリバリのバトル系和風ファンタジーや、あるいは一部ゲームコミックにはそのような作品はありました。しかし、それはWINGの誌面では少数派であり、この誌面ではやや異色の浮いた存在でもありました。

 それが、2007年以降、「ネクロマンシア」「イグナイト」「磨道」「WARASIBE」「兄弟-BROTHERS-」など、日常をまったりと描く作品とはまったく異なる、バトルが基調のファンタジー作品が数多く新連載されるようになったのです。しかし、前述のように、これらの作品は今のところ全体的にいまひとつで、これから大きな人気を得られるかどうかは未知数なのです。唯一「ネクロマンシア」は最近になってかなり好印象になってきたのですが、これはあまり長い連載にはならないようです。

 さらに、このところ、女性読者をターゲットにしたような連載が目立ってきています。かつてのWINGは、女性読者も多かったようですが、ここ数年は「まほらば」や「瀬戸の花嫁」の影響が大きく、男性マニア読者にかなり読者層が傾いたようで、少なくなった女性読者を取り戻そうとしているように思えます。「戦國ストレイズ」や「兄弟-BROTHERS-」がその代表的な作品で、上記の王道系バトルファンタジーの一部もそれに当てはまります。これらの作品は、今のところさほど悪いものはないようですが、今後あまり極端に女性向けだと分かるような作品が出てくるようだと少々問題だと思えます。

 そしてもうひとつ、それとは正反対に、典型的な男性向けのラブコメ・エロコメ系萌えマンガが出始めています。今のところ、連載化されたのは「おとして↓アプリガール」のみですが、それに近い雰囲気の読み切りが、何度も見られるようになっています。これは、そもそもあまりにも疑問とも思える方針で、そのようなマンガがWINGに合うとは到底思えません。これまでの、エロや露骨な萌えに頼らず、優しい雰囲気で萌えさせる「ゆる萌え」マンガとは正反対の作品で、しかも内容的にもまったく芳しくありません。この方針転換は、明らかに誤りだと思うのですがどうでしょうか。


・WINGを回復するにはどうすればよいのか。
 以上のように、ここ最近のWINGは、有力な人気連載が次々と終了する一方で、数多く投入される新連載も全体的に奮わず、しかも雑誌の方向性の転換とも思える新しいタイプの連載もいまいちで、雑誌の落ち込みがあまりにも激しくなっています。現在、かつての人気長期連載は「瀬戸の花嫁」をのぞいてすべて終了しており、しかもその「瀬戸の花嫁」も、作者の都合でしばらくの間休載予定となっており、唯一最も頼りになる人気連載も不在という状態です。その「瀬戸の花嫁」をのぞく最長の連載が、「1年間連続新連載」で始まった「ちょこっとヒメ」というのも、今のWINGの現状をよく表しています。
 ここまで雑誌が落ち込むと、もはや廃刊すら現実に思えてくるわけですが、ここから回復するにはどうすればよいのでしょうか。

 まず、多かれ少なかれ、かつての人気作家の復帰は必須ではないでしょうか。現在、稀捺かのと・七海慎吾あたりはすでに新連載を開始していますが、さらに何人かこれら実力派の作家は必要なはずです。小島あきらさんの復帰が何よりも待たれますし、藤原ここあや河内和泉の復帰も必要でしょう。冬季ねあや仲尾ひとみ、方條ゆとりなどの作家も復帰すれば心強いことは言うまでもありません。

 次に、実力を持つ新人を厳選して新連載させる必要があるのではないでしょうか。このところ新連載を始める新人たちは、どうも実力にばらつきがあるような気がするのです。そして、より強く新連載が待たれる、もっといい新人がいるはずなのです。具体的には、桃山ひなせ・江添友弘・杉野素泳・月ノ輪航介・蓮希ゆき・椀田一(いせだいちけん)などの作家で、彼らの新連載が登場すれば、かなり誌面は変わってくるのではないでしょうか(桃山ひなせさんはGファンタジーで連載を始めてしまったので難しいですが)。それ以外でも、今思えば高崎ゆうきやあらきかなおを連載させておけば面白かったかなと思います。両者とも、今では他社で連載を行っているのでWINGでの登場が難しいのが残念なところです。

 そして最後に、WINGのカラーをしっかりと守ることでしょう。このところの方向性の転換が、必ずしもすべて悪いわけではありませんが、かつての安定していた時期のWINGの誌面の雰囲気、あのゆる萌えに満ちた居心地のよさ、そんなマンガで誌面が満たされた安心感がなくなるのは、決していいことではないでしょう。新しいタイプの作品を採り入れる一方で、WING本来の誌面のカラーもしっかりと維持するような方針、それを達成できるバランス感覚が求められるのではないでしょうか。


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