<WING2009年最大の危機>

2009・1・29

 このところ、スクエニの雑誌では、突出した低迷を続けているガンガンWINGですが、この2009年に入って、ついにこれまで以上に大きな危機を迎えつつあるように思えます。連載本数の極度の低下と、雑誌を支えるに足る良質の連載の不足、そして他雑誌への作家の流出が重なり、雑誌の力が極度にまで落ち込みつつあり、実際に休刊(廃刊)まで現実にありえるのでは?と思えるような状態に陥っています。この記事では、そんなWINGの現状の報告と、ここから立ち直ることが出来るのかその考察を行っていきたいと思います。

 今のガンガンWINGは、かつての「エニックスお家騒動」で最もひどい被害を受けた雑誌であり、主要連載陣のほとんどが抜けるという痛手から辛くも存続してきたという経緯があります。そのため、元々雑誌の基盤自体が他のスクエニ雑誌よりも弱く、連載本数が一回り少ない上に、他からの有力作家の投入やメディアミックス展開も少なく、自前の新人作家だけでほとんどの連載陣をまかなってきました。連載マンガ自体も広く一般受けするようなカラーではなく、一部のコアな読者向けとも言えるような雑誌だったと思います。そのため、元々脆弱な体質の雑誌であり、今のスクエニで真っ先に休刊するならこの雑誌ではないかと前々から言われていました。

 それでもなんとか今まで雑誌が運営してこられたのは、比較的少数ながら優良な連載に恵まれたからに他なりません。お家騒動以前からのほぼ唯一の作品にして最大の人気連載だった「まほらば」(小島あきら)を筆頭に、2002年ごろに開始された新連載に良質のものが多く、それらが中核となってずっと雑誌を支えてきました。
 しかし、それ以降数年間、これといって優れた作品が登場しなかったのがネックとなり、2006年以降そんな良質の連載が次第に終了を迎えていくにつれて、雑誌が落ち込んでいくことになりました。これを回復するために、2006年に「1年間連続新連載」という大規模な企画を行いますが、これがまったく奮わず、成功したのはほんの数作品にとどまってしまいます。しかも、2007年以降の新連載でも成功したものは多くなく、一方でかねてよりの優良な連載はほとんど終了を向かえ、連載陣の力は極端に衰えてしまいました。そして、ついにこの2009年に入って、事態は一層深刻なものとなります。


・この連載本数の少なさは危機的。
 まず、2009年に入っていきなり、僅か2カ月のうちに5つもの作品が終了を迎え、一気に連載本数が10本を割ってしまいました。これは、ひとつの(紙媒体の)マンガ雑誌としては非常に低い本数で、ひとつの雑誌として存続できるかどうかもはや分からないくらいの、危険水域に入ってきたと言えます。

 元々、お家騒動以後のガンガンWINGは、雑誌の基盤が弱いために常に連載本数が少なめで、他のスクエニ雑誌よりも一回り少ない12〜15作品程度の連載本数で、これまで5年以上もやってきました。しかし、さすがに10本を切るまで連載本数が下がったことは、今まで一度もありませんでした。
 しかし、2006年以降の新連載は、そのほとんどが雑誌を支えるには力不足の作品ばかりで、そんな作品の多くがこの時期に一度に終了を迎えることになり、一気に連載本数が急降下したのです。これが、単に終了の時期が重なっただけなのか、これ以降の展開のために編集部が連載をまとめて終わらせたのか、そのあたりの事情はよく分からないのですが、しかしいずれにせよ、ひとつの雑誌の連載本数がこのレベルまで落ち込んだのは非常に不安です。

 現在(2009年3月号)時点で、3本の連載が終わり残りの連載本数は9本。しかも、あと2回で終了すると告知された連載があるため、それが終われば8本になります。ウェブ雑誌ならばこれくらいの連載本数のところはよく見られますが、店頭に並ぶ通常の雑誌において、ここまで連載本数が落ち込むと、雑誌の厚さそのものも極度に薄くなります。これまでのWINGも、雑誌の薄さは大きな懸念材料だったのですが、来月以降どこまで薄くなるのか本気で不安です。一応、来月号では新人の読み切りが2本予告されていますし、各連載作品のページ数を増やせば、それなりに雑誌の形は整うのかもしれませんが・・・。
 しかし、雑誌を実際に買って読む読者にとっては、あまりにも読み応えのない誌面になってしまうことは避けられないでしょう。たった9本(8本)では、ガンガンやヤングガンガンの連載本数の二分の一以下です。しかも、来月号ではまだ新連載が予定されていません。もし、このまままとまった本数の新連載が現れず、今の状態が数カ月以上続くとなると、本気で雑誌の存続が危ぶまれます。


・ひとつひとつの連載も奮わないものが多い。
 連載本数が少ないだけではありません。個々の作品ラインナップを見ても、雑誌を支えるに足る優れた連載が多くなく、こちらも大きな問題です。そもそも、ここまで連載本数が一気に減ってしまったのも、終了した作品の多くが奮わず、比較的短期で最終回を迎えてしまったからに他なりません。

 今回一気に終了した5作品のうち、比較的長く続いたのは、2007年から約2年ほど連載した「ネクロマンシア」で、やや短めながら予定通りの終了であったようです。加えて、「機工魔術士」の外伝作品である「SEQUEL」も、本編の後に5カ月ほど掲載された追加編という位置づけで、これも予定通りの終了でしょう。よって、この2作品はまだ良いのですが、残りの3作品が奮いませんでした。
 具体的には「イグナイト」「まじぴこる」「アリスのお茶会」の3作品で、後者ふたつは完全な打ち切り、「イグナイト」も、はっきりとは分かりませんが、内容的にはかなり不振の作品だったので、あまり長続きしないうちでの終了だったことは明白でした。個人的には「まじぴこる」と「アリスのお茶会」は決して悪い作品だとは思わなかったのですが、読者の反応はいまいちだったのかもしれません。

 そして、短期の終了がこの3作品だけならまだよいのですが、ここ最近のWINGは、前後でも様々な作品が短期終了を迎えています。前年に終わった作品を見ても、「今印」「絶対世界の黒い虎」「東京魔人学園剣風帖 龍龍(トウ)」「兄弟-BROTHERS-」など、どれひとつとっても2年続いたものはありません。さらには、次々号の2009年5月号では「WARASIBE」も終了するようで、これも1年あまりしか続きませんでした。

 これらの作品は、ほとんどが新人による新連載ですが、それらがほとんど成功せずに1年前後の短期で終了しています。かろうじて2年もった「ネクロマンシア」がまだましなくらいで、新人の作品がまるで成功せずに次々と終了を迎えているのです。このような新規の連載がまったく成果を挙げていない状態では、今後の誌面にも期待するのは難しいのではないでしょうか。

 実際のところ、今のWINGで良質と言える連載は「ちょこっとヒメ」「東京☆イノセント」「夏のあらし!」「戦國ストレイズ」程度でしょうか。いかんせんこれだけでは、どんな読者にとっても物足りないでしょう。しかも、唯一の長期連載でアニメ化も果たした最大の人気作品と言える「瀬戸の花嫁」は、現在長期休載状態であり、いつ復帰するか分からない状態というのも、今の誌面の落ち込みに拍車をかけています。


・今の雑誌の方向性にも疑問。
 そして、単に個々の作品の質だけでなく、このところ雑誌全体に見られる方向性についても疑問があります。
 お家騒動後のWINGは、長らく「まほらば」や「dear」「天正やおよろず」などの作品が雑誌の中心を占めたことから、ゆるやかな雰囲気で日常を描くマンガ、これをあるWING読者が「ゆる萌え」と名付けたのですが、そのようなマンガが雑誌の特徴的なカラーとなっていました。ところが、最近になってそのようなマンガが次々と最終回を迎えた後からは、従来とは別の路線とも言える新連載が目立つようになり、雑誌のカラーが揺れるようになりました。

 まず目立つのは、王道系、もしくはバトル系とも言えるファンタジー作品です。いわゆる正統派に近いファンタジー作品で、「ネクロマンシア」「イグナイト」「磨道」など多くの作品がこれに該当します。それまでのWINGにもファンタジー的な世界観を持つ作品はありましたが、いずれも「ゆる萌え」系の作品が多く、このような作品は少数派でした。しかし、2007年以降、この手の作品の投入が顕著になり、しかもいずれも今ひとつの作品が多く、残念ながら完全に成功したと思える作品はほとんどありません。

 さらには、明らかに女性向けとも思える作品も目立ちます。「ゆる萌え」時代のWINGは、比較的男女読者のバランスが取れていたのですが、しかしそれでも「まほらば」や「瀬戸の花嫁」のヒットに伴い、多かれ少なかれ男性読者が増えたのも事実のようで、今になって減った女性読者の比率を取り戻すためなのか、明らかに女性向けとも言える、美形男性キャラクターが目立つ作品が増えてきました。「戦國ストレイズ」「兄弟-BROTHERS-」「WARASIBE」「絶対世界の黒い虎」などがおそらくはそれに該当しますし、王道バトル系ファンタジーのいくつかもこれを意図した可能性があります。しかし、これらの作品の中で成功したのは「戦國ストレイズ」のみであり、それ以外の作品はことごとく短期での終了を余儀なくされています。

 あと、連載では少数ですが、逆に男性向けのエロコメ・萌えコメとも言える作品も登場するようになりました。連載では「おとして↓アプリガール」のみですが、新人の読み切りにこのような作品が目立っており、しかもこちらは明らかにレベルが低くコンセプトにも疑問を感じるものばかりで、こちらからも良質な作品は出てこないように思えます。

 以上のように、昨今のWINGで見られる新規路線の作品は、いずれも決して成功しておらず、雑誌の方向性そのものにも疑問符が付く内容となっています。従来どおりの方針でもさほど問題なかったと思いますし、新しい路線自体も安直に人気の出そうなジャンルばかりを追いかけて行っているようにも見え、実際に成功作が非常に少ない現状を見ても、これが優れた雑誌の方針とは到底思えないのです。


・ガンガンONLINEへの流出が最も懸念される。
 ただ、これらの傾向については、ここ数年のガンガンWINGではずっと見られているものであり、これまでもたびたびこのサイトで言及してきました。しかし、つい最近になって、今度はスクエニから新たに創刊されたウェブ雑誌「ガンガンONLINE」への作家の流出が顕著に見られるようになり、これまで以上に非常に不安視される材料が出てきた形となりました。

 まず、なんといっても「まほらば」の小島あきらが、ガンガンONLINEで創刊時から新連載を始めたのが衝撃でした。復帰するならばWINGだとばかり思っていたのに、こちらに出てくるとは意外でした。もちろん、雑誌の新創刊に際して、人気のある作家を幾人か雑誌の看板として採用するのは、新創刊時によく見られる戦略であり、決して間違った方針ではないのですが、しかしWINGを長らく支えていた小島あきらさんがこちらで連載というのは、ここ数年落ち込みが激しいWINGにとってはかなりの痛手であったことは間違いありません。その後、同じくWINGで長らく「ショショリカ」を連載していた上杉匠も、こちらで新連載を始めると告知されています。

 加えて、さらに懸念されるのは、かつてWINGで作品が掲載された新人作家の幾人かが、このガンガンONLINEの方で掲載され始めたことです。かつてWINGで読み切りと短期連載を重ねた敷誠一がそうですし、一回ほど読み切りを掲載されたねこたま。さんもそうですね。今のところはまだ少数ですが、ただでさえ雑誌の落ち込みが激しく、良作の投入が急務の雑誌から、貴重な新人候補が少しずつとは言え他の雑誌に流出してしまうのは、決していいこととは思えません。

 実際、最近のスクエニはこちらのガンガンONLINEにひどく力を入れているようであり、WINGのこのところの急速な連載本数の低下と急激な落ち込みと合わせて考えると、どうもWINGという雑誌自体が半ば見捨てられつつあるというか、こちらの新雑誌の方に力点がシフトしていっているのではないかと思える節があります。本来ならば、WINGに力を入れて雑誌の盛り返しを図るべきところが、むしろこちらのガンガンONLINEの方に一層力を入れている状態です。少なくとも、小島あきらや上杉匠がこちらで連載を始めるというのは、WINGにとっては非常に痛い。この状況を見るに、WINGの休刊すら本気でスクエニの視野には入っているのではないかと、大いに懸念されてならないのです。


・1〜2年以内のWINGの休刊は現実にありえる。
 以上のような状況を総合して考えると、近いうちのガンガンWINGの休刊(廃刊)は現実にありえることで、スクエニ側でもそれを視野に入れているのではないかと感じる節すらあります。

 ここまでひとつの雑誌が苦境に陥っており、連載本数も極度に少ない状態ならば、早急に周りからテコ入れを行ってもおかしくないはずです。しかし、そのような動きがまったく見られない。むしろ、新創刊雑誌のガンガンONLINEの方に力が入っている状態で、そちらの方でかつての人気作家が連載を始めるという状態です。このような動きを見ると、今のスクエニは、半ばガンガンWINGの運営をあきらめており、新雑誌(ガンガンONLINE)へと移行の準備を始めつつあるのではないか?とすら考えられます。

 そして、WINGの連載が極端に少なくなり、人気のある連載が僅かになった今、いよいよ雑誌の休刊の態勢は整ったと言えます。あとは人気連載のみを他雑誌に移行して、雑誌自体は休刊する、という流れではないでしょうか。これはわたしの予想ですが、今のガンガンWINGで他誌に移行して連載するほどの連載は、「ちょこっとヒメ」「東京☆イノセント」「夏のあらし!」「戦國ストレイズ」の僅かに4つ。このうち、女性人気の高い「戦國ストレイズ」はGファンタジーに移籍し、4コママンガの「ちょこっとヒメ」は4コマに力を入れているガンガンONLINEへの移籍が順当でしょう。幅広い層に受け入れられる実力のある「夏のあらし!」は、どこの雑誌でもやっていけそうですが、少年誌に載せても十分な作風からガンガンへの移籍もありそうです。ゆる萌え系ラブコメの「東京☆イノセント」だけはちょっと微妙ですが、これも「ちょこっとヒメ」同様にガンガンONLINEが妥当かもしれません(既に外伝も掲載していますし)。こうして、重要な人気連載4つを移籍した後は、あとは残った連載で適当なものは同じく移籍させ、あるいはおもむろに終了させて休刊、という顛末になります。

 今現在では「夏のあらし!」が4月からアニメ化の予定なので、これが続いている間は、当面雑誌の休刊はないと思いますが、それが終了した10月以降は、本当に休刊もありうると考えています。ここ1、2年以内の休刊の可能性の高い雑誌として、その動向には強く注視すべき存在となるでしょう。


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