<WING休刊は回避できた>

2009・2・28

 ガンガンWING2009年4月号(2月26日発売号)において、ついにWINGの休刊が決定してしまいました。告知によれば、ガンガンWINGは、かねてよりその内容が告知されていた新雑誌「ガンガンJOKER」として生まれ変わる、とされていますが、誌面の連載ラインナップは完全に一新されており、WINGは名実共に完全に休刊となったと見てよいでしょう。WINGの連載作品・作家は、このガンガンJOKERともうひとつ、昨年10月に創刊されたウェブ雑誌「ガンガンONLINE」に分割されて引き継がれるようで、同じくこの二誌に引き継ぐ形で休刊されたガンガンパワードと合わせて、実に大掛かりな再編となりました。要約すれば、「パワード+WING→JOKER+ONLINE」といったところで、スクエニでも比較的コア向けの雑誌が、今の状況に合わせて再編される形となっています。

 このような再編が行われた理由を推測するに、大きく3つの理由が考えられます。

  • 寄せ集め感の強かったパワードの連載を、より作風に合った雑誌に移籍させる。
  • 明らかに落ち込みの激しかったWINGを休刊してしまう。
  • 今までやってこなかったウェブ雑誌という新しい試みをスタートさせる。
 この3つを一手に進める手段として、今回の再編は行われたと見るべきでしょう。おそらくは、ガンガンONLINEが創刊された10月の段階で、ある程度このような計画は存在していたのではないかと思われます。WINGのかつての主力作家だった小島あきらがONLINEで連載を開始し、それ以外にも幾人かのWING・パワードで活躍していた作家たちをこちらで掲載させていました。これでウェブ雑誌が成功すれば、あとは本格的に再編を行うつもりだったのでしょう。

 今回の再編は、実際のところかなりの妥当性があり、特にWINGの休刊はもう仕方ないかなと思えるところもありました。このところのこの雑誌の落ち込み方は尋常ではなく、新しい連載陣がまったく奮わず、連載ラインナップが極度に落ち込み、おそらくは雑誌の売り上げもひどく低迷しており、もう巻き返しは難しいような状態でした。もうこの状況となっては仕方のない選択だったのかもしれません。

 しかし、それにしても、なぜここまでWINGは落ち込んだのか。直接的な原因としては、2006年に年間を通して行った「1年間連続新連載」の失敗に尽きると言えますが、実際には、その前後においても色々と問題があったのだと考えます。ここでは、WINGの休刊に至った原因について、今一度考えてみたいと思います。


・なんとか健闘していた騒動後のWING。
 かつてのWINGは、あのお家騒動で最も大きな被害を受けた雑誌であり、主要な連載陣が根こそぎ離脱してしまい、残ったのはまだ新人だった小島あきらの「まほらば」、ギャグ王からの移籍で当時WINGで連載していたたかなし霧香の「ハイパーレストラン」「ワンダフルワールド」のみというような状態でした。そこで、急遽WING編集部は大量の新連載を穴埋め的に立ち上げざるを得なくなります。

 しかし、騒動直後に手がけた新連載攻勢第一弾は、そのほとんどが失敗し、わずかに成功したのは、稀捺かのとの「天正やおよろず」のみという状態でした。しかし、しばらくしてさらに新連載攻勢第二弾とも言える多数の連載を打ち出し、これが奇跡的にほとんどが成功するのです。それは、やはり騒動前からの新人であった藤原ここあの「dear」、河内和泉の「機工魔術士」、冬季ねあの「天眷御伽草子」、ガンガンからWINGに移籍してきた作家の新作「瀬戸の花嫁」(木村太彦)、そしてこのときからの完全な新人による「ショショリカ」(上杉匠)、「がんばらなくっチャ!」(仲尾ひとみ)、「BEHIND MASTER」(坂本あきら)などの作品です。これに加えて、当時休刊したステンシルからの移籍作品「KAMUI」を加えて、かなりのまとまった数の成功作が登場し、以後数年の間すべてが長期連載となり、ようやく雑誌は持ち直します。この時期の数年間は、随分と安定した誌面を維持しており、他のスクエニ雑誌に比べれば連載本数や圧倒的な人気作品の数では劣るものの、それでも比較的堅調だったと見てよいでしょう。

 また、この時期の連載の特徴として、「機工魔術士」「瀬戸の花嫁」のような少年マンガ的な作品、「がんばらなくっチャ!」のような少女マンガ的作品などもありましたが、それ以上に「まほらば」「dear」「天正やおよろず」という、まったりのんびりした日常描写が特徴の「ゆる萌え」とも言える作品が特に目立ちました。これらの作品は、比較的騒動初期の頃からの長期連載であったため、この「ゆる萌え」こそが騒動後のWINGのカラーともなり、以後そのような連載や読み切りが数多く出ることになります。

 しかし、これらのWINGを長く支えていた優良作品は、2006年以降次第に連載終了を迎え、ラインナップが劣ってくる感は否めなくなります。特に、真っ先にアニメ化した最大の人気作品「まほらば」の終了はあまりにも大きく、これだけでWINGという雑誌の人気は大きく揺らぐことになりました。


・その後の建て直しが失敗したいくつかの理由。
 そのため、WINGの編集部は、これら抜けた長期人気連載の穴を埋めるべく、2006年の「1年間連続新連載」をはじめ、数々の新規連載を立ち上げることになりました。しかし、これらのほとんどは失敗し、結局雑誌を立て直すことができず、これが休刊の直接の原因となってしまいます。これらの試みが成功しなかったのは、実にいくつかの理由がありました。


1.とにかく短期連載が多かった。
 「1年間連続新連載」がまずそうなのですが、出てくる新連載は多いものの、その多くが短期で終了する連載であり、まったく戦力にならないものが多かったのです。しかも、その多くが新人による連載でしたが、一旦短期連載を終えた新人作家が、再び新しい連載を始めるケースが非常に少なく、せっかく集めた新人が活躍できずに消えてしまうケースがひどく目立ったのです。

 特に、1年間連続新連載における新人作品「リアル・ファミリー・リレイション」(いせだいちけん)、「リアリスの私写真」(和泉なぎさ)、「あおいろ家族」(敷誠一)、「ヴィオラ」(夏目わらび)、小説大賞のコミック化である「Fiss」(北川尭史)、「スタンプ・デッド」(桑里虎助)などは、いずれも5回以内の短期連載で終わっています。この中では、和泉なぎさと敷誠一あたりの新人は、一回の短期連載で終わるには惜しいような作家だったと思うのですが、しかしその後再登場することはなかったのです(*敷誠一さんは、つい最近になってガンガンONLINEの新人競作で登場し、WINGにも実に久々に掲載されました)。

 また、他の出版社からの招聘作家の作品にしても、「そらのひとひら」(野々原ちき)、「ネバー☆ネイバー」(ととねみぎ)、「偶像遊戯」(柚弦─韓国作家)など、いずれもどういうわけか短期連載で終了。二度と登場することはなかったのです。この中では、「そらのひとひら」の連載中断は今見ても不可解で、野々原さんのブログの記述から鑑みるに、どうも何か編集部との間で問題が合ったのではないかと推察される状態です。

 なぜこれほどまでに短期で終わるような連載ばかりなのかは不明であり、序盤のうちは多少我慢しても連載を長く続けさせ、もっとじっくりと新人作家や招聘作家を育てるべきだったと思うのですが、そのあたりどうだったのでしょうか。

 2007年以降の連載でも、これほどの短期ではないものの、多くが1年程度の連載で終了しています。が、これらは、最初から短期の予定だったわけではなく、単純に作品が奮わずに短期で打ち切りになったのだと思われます。



2.有望な新人の起用を行わなかった。
 いや、しかし上記の新人たちは、まだ短期でも連載を行うことが出来てよかったと言えるでしょう。実際には、連載すらほとんど持つことなく、読み切りのみで消えていった新人作家、あるいは他社からのゲスト作家もかなりの数にのぼるのです。

 特に、WINGの長期連載陣が少しずつ終わりを迎えていく2005年以降、そのような新人やゲスト作家はかなり見られ、彼らをうまく育てればいい後継者になれたはずなのに、どういうわけか有望だと思える新人やゲスト作家の数多くを、半ば逃しているという現実が見えてきます。そもそもWINGは他雑誌に比べて新人の読み切りが多いのですが、2005年以降は特に多くなり、1年間に膨大な量の読み切りが掲載されるようになります。にもかかわらず、そこから有力な連載作家が多くは出てこなかったのです。

 具体的には、まず連載を持ち得なかった有力な新人作家として、江添友弘・月ノ輪航介・桃山ひなせ・蓮希ゆき・杉野素泳・巳蔦汐生あたりが挙げられます。これ以外でもかなり多く、前述の短期連載で終了してしまった敷誠一や和泉なぎさ、いせだいちけん等を合わせると、かなり多くの新人作家が日の目を見ずに終わっています。この中では、江添友弘などは本当に素晴らしい作家だったと思うのですが、何度も珠玉とも言える読み切りを残しただけで、結局連載を持つことはありませんでした。さらには、桃山ひなせなどは、同じく何度か卒のない読み切りを残した実力のある作家だったのに、結局WINGでは連載を持つことはなく、のちになぜかGファンタジーの方で「ひぐらしのなく頃に 皆殺し編」のコミック化作品を連載することになってしまいます。実は、この桃山ひなせのように、WINGで読み切りを掲載しながらスクエニ他誌や他出版社に移ってしまう作家もちらほらみられ、それにはパワードで「シューピアリア」を連載したichtysや、のちにヤングガンガンで連載を持つ蜷川ヤエ子が挙げられます。ガンガンWING4コマエディションで執筆した巳蔦汐生も、のちに一迅社の方で連載を持つことになりました。なぜかいい新人を発掘しながら、WINGに定着しないというケースが頻発しているのです。

 また、のちに他社で連載を手がける作家となると、あらきかなお高崎ゆうきも見逃せません。このふたり、かつてWINGで同時期に読み切りを手がけ、どちらもかなりの良作ぶりを発揮し、あらきかなおなどは好評を得て再度読み切り掲載されるという厚遇でもありながら、やはり連載にまで達することはありませんでした。このふたりののちの他社での異様な活躍ぶりを見ても(笑)、なぜWINGで連載させなかったのか、それが疑問で仕方ありません。


3.終了した人気作家の再起用が遅れた。もしくはなかった。
 さらにもうひとつ、一旦長期連載が終了した人気作家が、また今一度再起用されるまでがひどく長かったり、あるいは終了した後二度と再登場がなかったのも、あまりにも痛かったと言えます。そもそも、あれだけ安定した人気を確保していた作家が、間髪入れずにすぐに新連載を始めることが出来れば、あそこまで雑誌が落ち込むこともなかったはずなのです。しかし、どういうわけか、それが実現されることはほとんどありませんでした。

 その中でも最も痛かったのは、やはり小島あきらの新規連載がなかったことに尽きます。もっとも、「まほらば」の終盤から続く作者の体調不良が再登場できなかった大きな理由らしいので、これは仕方ないといえば仕方ないのですが、それにしてもその後数年の間長らく新作がなかったのは、この雑誌にとっては痛すぎました。一応、小冊子で小さな読み切りを掲載することはありましたが、目だった活動はそれだけであり、連載となるとはるかのちのガンガンONLINEでの登場を待たなければなりません。しかも、このときにはもうWINGの休刊は半ば決まっている状態だったのです。

 それ以外でも、典型的な例としては、「KAMUI」の七海慎吾がいます。2006年初頭に連載を終了後、次回作への布石となる「YOUNGSTER GHANGSTER」という読み切りを手がけますが、これがどういうわけかあまり芳しくなかったようで、連載用に調整するまでにかなりの期間を要し、ついに新しい連載「戦國ストレイズ」が始まったときには、もう2008年になっていました。「天正やおよろず」の稀捺かのともそれに近いものがあり、2007年冒頭の連載終了後、再登場までに一年以上の月日が経過しています。また、冬季ねあは、「天眷御伽草子」を終了後、比較的早い時期に次回作(「Ark」)を手がけますが、これは最初から短期間での連載と決まっていたのか、1年程度の連載で終了してしまい、その後の再登場はやはりありませんでした。

 しかし、帰ってきた作家はまだ良いほうです。一度あれだけの人気連載を手がけたのに、もう最後まで帰ってくることのない作家も幾人もいました。藤原ここあや上杉匠は結局最後まで連載復帰はありませんでしたし、それよりもさらに問題なのは、かなり早い時期(2005年末から2006年にかけて)に連載を終了した坂本あきらや仲尾ひとみです。坂本あきらはヤングガンガンに掲載の場を移してしまいますし、それ以上に問題なのは仲尾ひとみで、連載作の「がんばらなくっチャ!」はWINGのコアな読者には大いに受けた連載で、次回作が切に待たれていた作家だったのに、その後WINGはおろかどの雑誌でもまったく登場がなくなってしまい、はるかのちに他社のコミックアライブで連載を受け持つまで、何の消息もなくなってしまいました。「がんばらなくっチャ!」の終了後、どういう経緯を辿ってそこに行き着いたのかまったく分からないのですが、WINGで次回作の構想はなかったのでしょうか。この作家の処遇に関しては、おおいに疑問と言わざるを得ません。


・この休刊は惜しい。盛り返すだけの力はいくらでもあった。
 以上のように、WINGの休刊に至るまでの数年間では、確かに相次ぐ人気連載の終了で誌面が落ち込んではきたものの、それでもまだまだやり方次第ではいくらでも盛り返せる力はあったと思うのです。特に、WINGは昔から新人発掘に熱心で、新人投稿の月例賞である「金の翼賞」(のちに「天の翼賞」)からの新人は非常に数が多く、その中でも優秀な新人は決して少なくはなかったのです。もちろん、その中でもきちんと発掘できて連載を獲得した作家もおり、カザマアヤミや鳴見なるなどはそれに該当します。しかし、それ以上に、連載を獲得できずに消えていった新人の方がはるかに多い。これはあまりにももったいないことでした。

 他からのゲスト作家をあまり活かせなかったのも大きい。この時期のWINGは、おそらくは交流があったきらら系からのゲスト作家がかなり多く見られ、それ以外からも、例えば2005年の別冊付録「ガンガンWING4コマエディション」などには、数多くの作家が招聘されていました。しかし、これまたこれらの作家がWINGに定着し、成功した例はまったくと言っていいほど見られなかったのです。せっかくかなりの有名どころの作家を呼んできても、単発の読み切りで終わってしまって後が続きませんでした。

 さらには、連載を終了した人気作家たちの多くが、どういうわけか次回作の動きが鈍かったのが致命的でした。次回の連載が出るまでに一年以上の時間を要したり、あるいはもうWINGには帰ってこない作家もさらに多かったのです。これでは、昔からの熱心な読者が離れていったのもやむなしといったところでしょう。実際、2006年の「まほらば」の終了を大きなきっかけとして、人気連載作品が次々と終わっていくのを見て、数多くの読者が離れていってしまい、それを取り戻すことは最後まで出来ませんでした。

 もし、上記のことがひとつでも、欲を言えばすべて達成できていれば、WINGは難なく盛り返せていたと思うのです。雑誌を長く支えてきた貴重な人気作家をしっかりと確保し、一方で有望な新人やゲスト作家にはもっと積極的に連載の機会を持たせる。それだけでまったく雑誌の様相は変わっていたはずなのです。しかし、結局それは何一つかなわなかったのです。単なる出版不況や雑誌離れのせいで休刊したのではなく、編集部の雑誌運営においてもかなり大きな失敗と言える点があり、休刊を回避できる方法はいくらでもあった。今休刊を目の当たりにして、そのことだけがあまりにも残念だったと思うのです。


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