<新感覚癒し系魔法少女ベホイミちゃん>

2007・10・20

 「新感覚癒し系魔法少女ベホイミちゃん」は、月刊Gファンタジーで2006年8月号より開始された連載で、同誌で連載中の「ぱにぽに」から派生したスピンオフ作品です。「ベホイミちゃん」は、「ぱにぽに」に登場するキャラクターのひとりで、原作でもかなりの人気キャラクターだった彼女が、このマンガの主人公となっている点が、最大の売りとなっています。作者は、無論「ぱにぽに」と同じ氷川へきる

 元々、氷川へきるの描くマンガは、作品同士で何らかのつながりがあることが多く、他出版社での掲載である「まろまゆ」「桃組っ!!」「ジャイ子ちゃん」などは、この「ぱにぽに」と共通の世界観を有し、双方で共通のキャラクターが出演することが通例となっています。そして、この「新感覚癒し系魔法少女ベホイミちゃん」も、まさにこの路線を踏襲しており、しかも主人公が「ぱにぽに」内でも人気のあるキャラクター・ベホイミがあてがわれており、かつ他にも「ぱにぽに」のメインキャラクターが多数登場するなど、特に直接的な繋がりを強く感じさせる内容となっています。かつ、「ぱにぽに」と同一雑誌での並行連載というのも大きな特徴で、これはあまり見ないタイプの思い切った企画だと思われます。

 「ぱにぽに」と非常に繋がりの強い作品ということで、基本的な作風は「ぱにぽに」に程近いところがあり、絵柄等ビジュアルや基本設定はほぼまったく同じ、シュールなギャグやグダグダ感が漂う雰囲気も、元作品と非常に近いものがあります。しかし、その一方で、若干ギャグネタの印象が異なると思われる側面や、タイトルにもあるような「魔法少女」としての活躍をシリアスに描くシーンもあり、一味違った作風を見せているところも見逃せません。

 現在でも「ぱにぽに」と並行で連載中ですが、双方同時に掲載するのは作者には辛いらしく、どちらか一方の作品しか掲載されない号も珍しくありません。ふたつの作品を1セットで考えれば、掲載ページ数は減少していませんが、一作品ごとのページ数、進行度合は明らかに遅くなっており、毎号どちらか一方しか読めないことが多いのは、少々懸念される材料ではあります。


・アニメ版の影響があったのか。
 前述のように、この作品は、氷川へきる作品では定番のスピンオフ作品であり、こういった作品がいつ登場してもおかしくはない下地はあったのですが、しかし、この「ベホイミちゃん」に関しては、少し前に放映された「ぱにぽに」のTVアニメ「ぱにぽにだっしゅ!」の影響が大きいのではないかと考えられます。

 TVアニメ「ぱにぽにだっしゅ!」は、原作以上にはじけたノリのネタ全開の作品でしたが、その中でも「ベホイミ」というキャラクターは、なぜか制作者にやたら可愛がられ、要所要所でやたら出番が多かったのが印象的でした。特に、アニメに盛んに挿入された「アイキャッチ」では、このベホイミの画像を使ったものがやたら多く、制作者に重宝されていたことが分かります。このような扱いを受けたベホイミは、アニメを通じて原作以上に人気キャラクターとなり、作品内に多数いるキャラクターの中でも、特に目立つ存在のひとりになりました。その動きを受けて、原作を連載する雑誌側も、このベホイミをピックアップしてスピンオフ作品を作ろうとしたのではないでしょうか。

 また、アニメでは、ベホイミと同様に、原作のギャグキャラ「宇宙人」たちがやたら登場してカルト的な人気を博しましたが、この「ベホイミちゃん」でもやはり「宇宙人」たちがメインとなって登場して笑える役どころを見せています。このあたりも、やはりアニメ化の影響を受けたのではないかと推測されるところです。
 細かいところでは、ベホイミと共に闘う小学5年生の魔法少女「鈴原未来」(後述)が着ているコスチュームが、アニメ版「ぱにぽにだっしゅ!」10話に登場したものとほぼ同じデザインなのも、その影響を感じさせます。

 また、アニメ版との繋がりを直接的に感じさせる企画として、このマンガのコミックス一巻(初回限定版)の付録だった小冊子の資料集があり、この制作にはアニメ版スタッフが直接関わっています。


・本編とは異なるギャグの質。
 このマンガの主人公である「ベホイミ」は、本編の「ぱにぽに」では、なぜか魔法少女として派手なコスチュームで転入してきましたが、周りに認められずにショックを受け、以後は地味な普通の姿でやさぐれて生きているという、非常に歪んだ二面性を持つキャラクターです(笑)。そして、主人公となったこの「ベホイミちゃん」でも、そのやさぐれた生き方は健在で、なぜかいちいち不幸な目に巻き込まれてひどい目に遭いまくるという、不幸系いじられキャラとしての面白さが全面に出ています。

 このように、基本的にはほぼ「ぱにぽに」と変わらない設定でありながら、しかし作品の肝である「ギャグ」に関しては、「ぱにぽに」とはかなり異なる笑いがあるように感じられます。「ぱにぽに」のギャグは、とにかくシュール系で一見して意味不明なネタであることも多く、人によってはひどく理解し難く、「どこで笑っていいのか分からない」と言われるほどの、微妙な笑いを提供し続けています。
 しかし、この「ベホイミちゃん」のギャグは、そこまでシュールな分かりにくさは半減されており、比較的分かりやすいギャグが多くなっています。特に、キャラクター同士の掛け合いが漫才的で面白く、「ぱにぽに」でのグダグダ感全開の会話シーンとは、少々異なるハイテンションぶりまで見られます。

 それが全面に表れているのが、ベホイミを魔法少女に仕立てた張本人である宇宙人との掛け合いです。「ぱにぽに」でも、シュールな外見に似合わない妙に庶民派のキャラとして人気の高い宇宙人ですが、こちらでもその笑える行動は健在で、やさぐれキャラであるベホイミとバカバカしい掛け合いを繰り広げます。ここでの掛け合いのギャグは、「ぱにぽに」とは異なりオーソドックスなギャグの応酬で、非常に分かりやすいものとなっています。これは、「ぱにぽに」とは異なる質のギャグとも言え、一見して単なる「ぱにぽに」の外伝的作品に見えて、肝心のギャグで本編とは異なる面白さを提供している点は見逃せません。とりわけ、「ぱにぽに」での微妙なギャグに馴染めなかった読者には、こちらの方がとっつきやすく面白いものかもしれず、むしろこちらの方を「ぱにぽに」よりも評価する声もあります。


・魔法少女としての不幸ぶり、活躍ぶりも見られる。
 そして、単なる会話での掛け合いだけでなく、ベホイミが持ち前の不幸体質を発揮して、魔法少女としてはことごとく空回りしている様がまた面白い。魔法少女でありながら、悪を倒すために闘うようなまともなシーンは少なく、魔法少女のコスチュームを見られて妙なフォローをされたり、なぜか漫才の相方として誘われたり、やさぐれてバイト先で人生相談をしたりと、現代に生きる魔法少女ならではの(?)庶民的な行動が笑えます。ある意味では、魔法少女もののパロディ作品的な要素があり、魔法少女が本当に現代で生きるとどうなるかという、そのバカバカしさを笑うシーンが多いのです(このあたりの笑いは、同じスクエニ系の「プラネットガーディアン」を連想させるところもあります)。

 特に面白いのが、バイト先の着ぐるみである「ドクロ仮面」なるコスチュームを着て行動する話で、見た目的には明らかに悪の幹部見たいな外見で、魔法少女として行動するさまが、ギャップの固まりのようで最高に面白い。その姿で宇宙人とバカバカしい掛け合いをするシーンなどは、見た目からして最高に笑えるギャグとなっています。

 しかし、そんな魔法少女としてままならない不幸ぶりを見せる一方で、時にはまともに強敵と闘って勝つような活躍ぶりも見られます。これはこれで盛り上がるシーンで、時にはこんなシリアスな場面も見られるわけですが、大抵はそのすぐ後にギャグで不幸な目にあってしまい、まともなエンディングにはならずにオチてしまうのも、またこの作品らしいところです。


・小学生編から導入された設定、キャラクターも魅力。
 そして、「ぱにぽに」本編でも人気の高かった「小学生編」から入ってきた設定が見られるのも良いところです。
 しかも、小学生編ではあまり目立つ存在ではなかった鈴原未来というキャラクターが、こちらでは正統派魔法少女として(こちらも名前はなぜか「ベホイミ」)、真面目な活躍ぶりを見せるところが、いかにもスピンオフ作品ならではの面白さです。ベホイミちゃんとは違って、まともな魔法少女として好対照を見せるところが面白い。マスコットキャラクター(サラマンダー)が生意気なのは割とお約束ですが、これはこれで個性的なキャラクターとして、ベホイミたちとの掛け合いがギャグ要素としてよく出来ています。

 しかも、双方で魔法少女として同じ敵を相手にしているうちに、ふたりの間に交流が生まれ、次第にいい関係になっていくくだりは、ギャグ全開の話とは打って変わって「ちょっといい話」として描かれており、単なるギャグ作品には留まらない奥行きを与えています。むしろ、ストーリー的にはここが作品の肝だと言えるでしょう。

 鈴原未来ちゃん以外にも、小学生編で人気だったキャラクターたちも要所で登場するところも、ポイントが高い。ベホイミちゃんの通う桃月高校と合わせて、二面的な舞台構成となっており、ここでも話に広がりが与えられています。総じて、「ぱにぽに」本編のよいところをよく選んで採り入れた構成となっており、好感が持てますね。「ぱにぽに」でも人気の高かった一編なので、これからも積極的に登場させてほしいところです。


・これからの展開にも期待できる、が・・・。
 以上のように、この「ベホイミちゃん」、元々の「ぱにぽに」で見られた基本要素はそのままに、分かりやすくなったギャグや、魔法少女のパロディものとしての面白さ、本編でも人気だった小学生編からの導入要素など、魅力的に感じられるところも多く、「ぱにぽに」のスピンオフ作品として十分な面白さを持つ連載となっています。むしろ、「ぱにぽに」よりもストレートに面白いと感じられる話も多く、一個の連載マンガとして単体で過不足なく楽しめる作品になっています。

 また、この作品は、元はTVアニメの影響を受けて作られた経緯から、アニメスタッフとのかかわりも深く、先日発売されたコミックス一巻(初代限定版)では、アニメスタッフが制作に大きく関わる資料集も企画されました。この動きから見ても、このまま順調に連載が進めば、アニメ化ということも視野に入ってくるかもしれません。それこそ「ぱにぽに」本編の再アニメ化(2期制作)よりも、タイトルが変わって新鮮さが保てるこの「ベホイミちゃん」の方がアニメ化への期待度が高いところもあります。あるいは、アニメ化まで行かずとも、Gファンタジーで「ぱにぽに」と並ぶ人気連載として、雑誌内でラインナップに貢献できる存在であることは間違いありません。「ぱにぽに」とは別作品としてドラマCD化などはありそうです。

 ただ、ひとつ気がかりな点として、「ぱにぽに」との並行連載が、いまいち不安定なことが挙げられます。一応ふたつの作品を同時に連載するという触れ込みにはなっているのですが、実際には作者の制作能力的にそれが厳しいらしく、どちらか一方の掲載に留まっている号が珍しくありません。そのため、双方の連載ペースがかなり遅めで推移しており、双方のコミックスも1年間の連載でようやく形になる状態でした。この場合でも、双方の掲載を合わせて考えれば、かつての「ぱにぽに」と同じか、それよりも多めのページ数は確保しているのですが、しかし、それぞれ単体の作品では進みが遅く、これではこれからの展開に多少のひっかかりが出てくるかもしれません。連載ペースが遅い作品では、メディア展開がしづらく、マンガ自体の盛り上がりも欠けがちになるのは事実でしょう。今後、何とかうまく連載ペースを調整したいところです。


「Gファンタジーの作品」にもどります
トップにもどります