「E'S」

2001・11・13

 97年の連載開始以来コンスタントに人気を伸ばし、今やGファンタジーを代表する作品といえる「E'S」を紹介します。
 いや、今のGファンタジーの看板は「最遊記」であることは確かです。だがしかし、Gファンタジーのイメージを最も体現しているのはこの作品だと思うのです。いかにもGファンタジーらしいというか、ひいてはエニックスらしいというか。何かいかにも表紙が映えるような気がします。

 まあ、それはともかく。もちろんこの作品はイメージだけでなく、内容的にも実に面白いマンガです。Gファンタジーの作品の中でも複雑な設定が目を引く、ややマニアックな作品ですが、しかし一旦ストーリーを理解すればこれほど面白いものはありません。

 このマンガは、まず何と言っても「絵」と「ストーリー」の面白さに目を惹かれます。
 とにかく絵がうまい。誰もがまずこの絵に惹かれます。作者の結賀さとるさんは最初から絵のレベルが高かったんですが、この「E'S」ではさらにレベルアップし、もうエニックスの作家陣の中でも最高レベルの画力といってよいでしょう。個人的にはエニックスではこの結賀さんと西川秀明さんが最も画力が高いと思っていたのですが、西川さんがエニックスを去った今、結賀さんがまさにエニックス最高の絵師となったと言えるでしょう。
 キャラクターの造形も完成しているんですが、それ以上に緻密に描き込まれた背景や小道具、さらにはアクションシーン等に見られる迫力のエフェクトが素晴らしい。全体的にとにかく徹底的に描き込まれたイメージがあり、隅々まで絵を見るだけで楽しめます。

 そしてもうひとつの楽しみはストーリーですね。このマンガはSFコミックという触れ込みですが、実際にはサイバーパンクといったほうがしっくりきます。近未来の地球で、国家の枠組みが薄れ、代わって企業が世界を支配するようになった時代。旧市街の「ガルド」と呼ばれる半ばスラムと化した廃棄地区に新たに発生した権益を巡って、企業や組織が争う政治・陰謀劇がメインとなるストーリーです。
 さらに能力者(=超能力者)という存在があり、主人公の戒(カイ)も能力者ということで、能力者同士のバトルアクションという側面もあります。とくに序盤の1巻あたりはその傾向が強く、ぱっと見た感じではなんというかサイキックフォース(笑)。とはいえ、それはあくまで一要素に過ぎず、基本的には様々な人間が絡んでくる陰謀劇という感じで、とにかくストーリーの展開が面白く、一旦ハマって読むとやめられないものがあります。かなり複雑な設定であるにもかかわらず、どんどん読み進められるだけのストーリーパワーがある。これが最大の魅力です。

 このように絵とストーリーがまず目を引きますが、それ以外の要素も魅力的です。キャラクターにも実に個性的なメンバーが揃っていますし、ところどころに挿入される笑えるシーンもいい。(くずした絵もうまいです。)逆にアクションシーンには迫力や駆け引きの面白さがある。各キャラクターに課されるテーマも重いものが多く、とくに能力者としての存在意義で揺れる主人公戒の心情描写がいい感じです。それ以外でも、社会的で現実的なテーマが多数盛り込まれており、実に考えさせる作品になっています。

 ただ、ひとつだけ欠点があるとすれば、やはり設定が複雑ということで、ストーリーの把握がかなり難しいこと。作者の創作精神にかなり気まぐれなところがあり、突然場面が切り替わるシーンが多く、面食らうこともあります。まあ最初からコミックスで読んでいる読者には問題ないですが、逆に雑誌で途中から読み始めてこのマンガを理解するのはなかなか厳しい。このあたりはやはりマニアックな作品です。


 しかし、このマンガは取り組むに値するマンガであることは保証します。これほどにまで豊かなテーマ性を保持しているマンガは珍しい。個人的にはGファンタジーで最も内容のあるマンガだと思っています。


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