<ぱにぽに>(後編)

2001・11・14
全面的に改訂・画像追加2006・10・8

*前編はこちらです。

・随所に散りばめられた小ネタも面白さのひとつ。
 そして、シュールなネタと並んで、さらにこのマンガがマニアに受けた要素として、随所に散りばめられた小ネタの数々があります。
 キャラクターのセリフやコマ内の書き文字、各種設定等に、映画やドラマ、アニメ・マンガ・ゲーム作品等から採りいれたネタを仕込むという手法で、これも「ぱにぽに」最大の特徴になります。作者の氷川へきるの趣味らしく、映画や海外ドラマ関係のネタに特に目立つものがあり、アニメではロボットものや、あるいは特撮からのネタも多い。読者の方でも、マンガをくまなくチェックして、これらの「元ネタを探す」という楽しみが広まっていきます。

 そして、のちに始まった「ぱにぽに」のTVアニメ版である「ぱにぽにだっしゅ!」では、この小ネタの要素がさらに徹底的に強調され、全編に渡って無数の小ネタが乱舞する異様な作品となり、これがもの凄い話題と人気を獲得しました。これに比べれば、原作の「ぱにぽに」の方の小ネタは、他の要素を圧迫しない範囲内で、さりげなく随所に採り入れられており、アニメ版とはかなり異なる印象があります。

 また、このような小ネタを作品内に散りばめてネタにするという手法は、昨今では様々なマンガで頻繁に見られるようになり、「ぱにぽに」のようなサブカルチャー系のネタを出しまくるマンガも、これまた多くなっています。この「ぱにぽに」は、それらのマンガの源流のひとつと言って言えないこともありません。


・重箱の隅をつつきたくなる作品。
 そして、これらの各種小ネタについてもそうなのですが、この「ぱにぽに」というマンガは、マンガ内をくまなくチェックして各種設定・ネタの数々を調べたくなるという、特殊な楽しみを誘発するマンガでもあります。

 まず、このマンガはとにかくキャラクターが異様に多い。頻繁に登場する主要キャラクターだけでも20人以上おり、それも学園の生徒・先生だけでなく、各種動物や宇宙人など人外の生物も多数含まれています。これにチョイ役で出るゲスト系のキャラクターも含めれば、膨大な数にのぼります。そして、それらひとりひとりのキャラクターが、個性的な設定の固まりで、しかも連載が進むにつれて、新しい設定も次々加わっていきます。ここで、彼ら彼女らの動向を各話ごとにチェックして、その変遷を辿っていくという試みをする読者が生まれました。

 また、キャラクターだけでなく、各話の舞台設定も多岐に渡っており、しかもシュールな舞台も多数見られ、それらの特殊な設定を追うという楽しみも生まれました。なにしろ、このマンガは、基本的には学園ものでありながら、学園だけが舞台とは限らず、だまされて未開のジャングルに連れていかれて大冒険をしたり、穴の中に落っこちて二人でシュールな会話を繰り広げたり、他の学校に間違えて登校してえらい目にあったり、なぜか宇宙人に監視されていたり、人様の夢の中でバカな行為を繰り返したり、とにかく特異な設定の話が多い。むしろ「いかにシュールな設定を作るか」というところにかなりの力が入っているように感じます。

 そして、これらに加えて、前述の小ネタの数々もあります。そして、これらの各種キャラクター・設定・小ネタをひたすら解析し、まるで重箱の隅をつつくかのようなはまり方をする読者が、連載を重ねるにつれ急増していきました。特に、一気に知名度が上がったアニメ放映後には爆発的に広まり、ネット上でもその試みが多数見られるようになります。例えば、「ぱにぽにWiki」などは、アニメ・原作共に無数の情報を寄せ書きするWikipedeia系サイトとして、異様な盛り上がりを記録しました。Wikipedeia本家においても、「ぱにぽに」の項目(特にキャラクター)には膨大な書き込みがあり、あるいは「はてなダイアリー」でも、ぱにぽに関連のキャラクターや用語には詳細な説明がしてあることがかなりあります。どうも、この「ぱにぽに」というマンガは、各種設定を調べてそれを解析するという、マニアックな行動を誘発する力があるようです。





・読者だけでなく、雑誌の編集者や作家、ライターにも愛された作品。
 そして、このような楽しみは、読者だけでなく、作り手側である編集者や、関連書籍への寄稿作家、ライターにも見られました。

 まず、このマンガは、かなり早い時期から、コミックスに毎号初回限定版が発売されるようになり、しかもその限定版付属の冊子が毎回非常に凝ったものでした。
 最初の3巻で付属した「飛び出す絵本」の内容も凄まじくシュールでしたが、さらに本領を発揮するのは、4巻付属の「ぱにぽに取り扱い説明書」です。これは、「ぱにぽに」というマンガの「読み方」を、キャラクターや設定の解説も交えて面白おかしく紹介するというもので、当時のGファンタジー作家による寄稿イラストもあり、これが編集者や作家がこぞってぱにぽにをネタにして作り上げた最初の「設定解説本」となります。そして、このようなタイプの初回限定版冊子は、その後の続刊でも次々と発行され、これが他のマンガの限定版ではあまり見られない「ぱにぽに」のコミックスの特徴となっています。元々、これらの冊子は、「他のマンガの初回版にはないものを作ろう」という試みで始まった企画らしいですが、それはうまく成功してます。

 そして、その初回版冊子をさらに大型化して、単独で刊行したものが、各種の「公式ガイドブック」です。これには、ガイドブックとして相当に細かい情報まで網羅されており、特にアニメ化に合わせて刊行されたアニメ版のガイドブック(「試験にでるぱにぽにだっしゅ!」「今日から使えるぱにぽにだっしゅ!」)は、アニメのヒットに合わせる形で爆発的な売れ行きを示しました。

 そして、連載人気の上昇に合わせて多数リリースされた「ドラマCD」も、かなりの力作でした。なんとこの「ぱにぽに」のドラマCD、全部で6つも出ています。アニメ放映後のアニメ版ドラマCDも合わせれば、もう少し数は増えます。こんなに多数のドラマCDが出たマンガは、スクエニでは他に見られず、他出版社のマンガでもあまりないでしょう。これは、人気があるのに中々アニメが始まらなかったことも原因のひとつですが、逆に言えば、アニメにもなっていないのにここまで作り手側が積極的に関連企画を推し進める作品も珍しいと言えます。


・同作者によるスピンオフ?クロスオーバー?な作品も面白い。
 そして、この「ぱにぽに」がさらに面白いのが、作者である氷川へきるの描くほかのマンガとも関連していることです。
 具体的には、「電撃萌王」連載の「まろまゆ」、テックジャイアン連載の「TG戦士ジャイ子ちゃん」、「エース桃組」に連載されていた(現在は終了)「桃組っ!!」等の作品とリンクしています。これらの作品と「ぱにぽに」は、互いにリンクしており、一部のキャラクターが他の作品にまたがって登場し、ある連載話の別視点の話が他作品に掲載されたり、あるいは裏話的な話が見られたりと、頻繁なつながりを見せています。

 そして、これもまたコアな読者をさらに引きつける要素となっており、すべての話のつながりを知るために他の作品にまで手を出して解析するという行為が広く行われています。「まろまゆ」にしろ「TG戦士ジャイ子ちゃん」にしろ、連載はかなり長く、「ぱにぽに」の初期の頃から延々と連載しており、当時から熱心な読者はこちらまで追いかけていましたが、「ぱにぽに」アニメのヒット以来、こちらの諸作品にも注目が集まる結果となりました。

 なお、「まろまゆ」のコミックスの装丁も、「ぱにぽに」と同じよつばスタジオが担当しており、そのデザインも出版社の垣根を越えて「ぱにぽに」と同一のタイプを採用しており、これもかなり話題を呼びました。


・異常なヒットを記録したアニメ。
 そして、このような人気の高まりに応えて、2005年7月にようやくTVアニメが放映開始されます。連載開始から実に4年半以上も経過しており、スクエニ系のアニメ化作品の中でも、非常に遅いタイミングでのアニメ化となりました。アニメ化自体のタイミングは遅かったものの、アニメ化の告知から実際の放映までの期間はなぜか異様に短く、告知後一カ月余りでいきなり始まりました。アニメ化に際してタイトルが一部変更され「ぱにぽにだっしゅ!」として放映されました。
 このアニメは、同じスクエニ作品である「まほらば」のアニメ化の後を受けて、同一枠で放映されました。この「まほらば」のアニメがかなりの良作であったため、その後を継いだ「ぱにぽに」の方の成否にも注目が集まりましたが、これが実は良作だった前枠をはるかに上回るかのような異常なヒットを記録します。

 このアニメの製作の中心となったのが、アニメ監督の「新房昭之」ですが、彼の作るアニメ作品は、極端なマニア志向とも言える特異な作風であり、それがこの「ぱにぽにだっしゅ!」製作では全面的に良い方向に働きました。中でも「画面を埋め尽くすかのような圧倒的な小ネタの嵐」は、監督の前作「月詠 -MOON PHASE-」でも頻繁に見られた手法ですが、この「ぱにぽにだっしゅ!」ではそれが大評判を呼び、ネットの各所でそのネタの話題で盛り上がりまくり、あちこちで徹底的な解析が進められるいうフィーバーぶりを見せます。さらには、原作以上にシュールなストーリー・全般的に高い作画レベル・凝った仕掛けが満載の幕間演出・豪華な声優陣の熱演・「エンドカード」に代表される視聴者への過剰なサービス・名曲が多かったオープニング&エンディングテーマの数々、等の要素がいずれも高い人気を呼び、一躍当時の放映アニメの話題の中心に躍り出ました。

 一方で、製作者たちの色が出すぎて、原作とは様々な点で異なるアニメ化となったのも事実であり、膨大な小ネタがことさらに全面に出た作風・一部しか採用されなかった原作のエピソード・原作のまったり感が薄くなり、代わって作品を席巻したハイテンションぶり・男性の製作陣の趣味なのか、原作にはないエロ要素が多数見られた点など、原作の忠実なアニメ化とは言えない作品にもなった点も否定できません。
 しかし、それにもかかわらず、このアニメは、原作ファンにも高く支持されました。一部に違和感を覚える向きもあったものの、ほとんどの読者はこのアニメを受け入れ、あるいは絶賛する人も多く、誰もが優れたアニメ作品として存分に楽しみました。その理由としては、やはりアニメ自体のクオリティが抜群に高かったことに加え、キャラクターの個性やシュールなギャグ等の原作の中心要素が失われていなかったことや、原作者である氷川へきる自身も、アニメ製作に積極的に参加し、それを支持する姿勢を示したことが大きいと思われます。なんにせよ、原作からは外れたアニメ作品の多くが、原作ファンには支持されにくい中で、このように原作からはかなり離れた作風ながらも、原作ファンに大きく支持されたアニメ作品は、かなり珍しいと思われます。


・さらなる新しい動きを見せる「ぱにぽに」。
 そして、アニメは大盛況のうちに半年全26話を終了して幕を閉じましたが、終了後も再アニメ化を望む声は根強く、熱心なファンの期待は今でも持続しています。
 また、アニメのヒットに伴い、原作の方もさらにブレイクします。元々人気の高いマンガではありましたが、やはりアニメの力はそれ以上に強く、その効果でさらに読者層が広がり、今ではスクエニ系でもトップクラスの作品になったと見てよいでしょう。

 そして、アニメ化終了後も、このマンガはさほど勢いが落ちることはなく、コンスタントに盛り上がりを維持しているように思えます。これは、アニメ終了後も再アニメ化の声が高いことも要因のひとつですが、それに加えて、原作である「ぱにぽに」自身も、アニメの要素をも積極的に加味する形で新鮮味を維持しており、さらに活発に新しい動きを見せていることも大きいと思われます。
 まず、Gファンタジーでは、「ぱにぽに」のさらなるスピンオフ作品として、「新感覚魔法少女ベホイミちゃん」なる、ぱにぽにの一キャラクターにスポットを当てた新連載が始まりました。これが、元の「ぱにぽに」とは一味異なるギャグとグダグダ感があり、同一の雑誌内での連載ながら、まさに新感覚な作風を展開しています。
 既存の関連作品である「まろまゆ」も、掲載誌の刊行ペースの高速化に伴い連載ペースが上がり、初のドラマCDもリリースされました。このように、アニメ終了後も各所で積極的な動きを見せており、長く盛り上がりが続く作品となっています。

 これまでの長い経歴を見ても、実に優れたヒットを続けてきた「ぱにぽに」ですが、今現在の積極的な展開を見るに、これからもまだまだコンスタントに連載を続けていきそうな気配が感じられます。2000年以後のスクエニでは、「鋼の錬金術師」や「まほらば」と並ぶロングヒット作品として、長く楽しめる優秀な作品であると言えそうです。


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