<ToHeart2〜colorful note〜>

2006・1・31

1巻表紙 これは優れたゲームコミックです。
 言わずと知れた大人気美少女ゲーム「ToHeart2」のコミック化作品です。Gファンタジーでの連載で、きたうみつながコミック化を担当しています。

 実は「ToHeart2」のコミック版は、メディアワークスの雑誌「電撃大王」の方でも連載されており、こちらの方は御形屋はるかがコミック化を担当しています。この「電撃版」のコミックと区別するために、こちらの「Gファンタジー版」には「colorful note」というサブタイトルが付いています。これは、あくまでふたつの作品を区別するためのものと思われ、原作にないサブタイトルが付いているからといって、例えば内容が原作から大きくアレンジされているとか、原作とは異なるサブストーリーであるとか、そういったことは一切ないので安心してください。(むしろ、原作に非常に忠実な内容です。)


・なぜ、ふたつもコミック化作品があるのか?
 ここで、誰しも疑問に思う点として「なぜ、わざわざふたつの雑誌でコミック化されているのか」という問題があります。これは、(主に)Gファンタジーの過去にちょっとした事情があります。

 まず、「電撃大王」の方のコミック化ですが、そもそも「ToHeart2」のコミック化ならばこちらの方が本命です。元々電撃系(メディアワークス系)の雑誌は、美少女系作品に力を入れた誌面であり、美少女ゲームのコミック化も盛んです。そして、過去に「ToHeart2」の前作である「ToHeart」のコミック化も行われており、今回もコミック化されるならまず電撃系雑誌だろうと思われていました。そして、その予想通り今回も「ToHeart2」コミックの連載が「電撃大王」で始まったわけです。

 では、「Gファンタジー」の方はどうか? こちらの雑誌は、そもそも美少女系作品がそれほど盛んな誌面ではありません。この雑誌のみならず、出版社のエニックス全体を通して見ても、雑誌で美少女ゲームの連載が企画されることはほとんどありません。

まじかる☆アンティーク・1巻表紙 しかし、かつて、ほぼ唯一の例外と言える連載がありました。かつてGファンタジーで2001年から約2年ほど連載された「まじかる☆アンティーク」です。
 このマンガ、割と女性寄りの誌面であったGファンタジーでの連載ということもあって(当時は「最遊記」の全盛期でした)、開始前の予告編の段階で様々な話題を呼びました。「なぜエロゲー?」「なぜリーフ?」「なぜよりによってまじアン?」と、疑問は尽きず、肝心のマンガの内容以前に妙なところで話題を集めてしまいました。(最後の「なぜよりによってまじアン?」という疑問ですが、これは、連載開始時点で原作ゲームの発売からかなりの期間(9カ月)が過ぎていたことと、そしてリーフのゲームの中でも大きな人気がなく、さして話題を呼ばなかった作品ということで、「なぜいまさらこのゲームなのか」という意味から来た疑問です。)

 そして、その連載を担当したのが、今回の「ToHeart2」と同じきたうみつなです。この方は、はるか昔、1997年に「21世紀マンガ大賞」で準大賞を受賞したことがあるのですが、受賞から連載までの期間があまりにも長すぎ、しかもその間にほとんど読み切り作品も残していないので、ほとんどの人はこの方の存在を知らなかったのではないかと思われます。なぜこの時になって、しかも「まじかる☆アンティーク」のコミック化の担当として抜擢されたのかは、非常な謎です。


 そんなこんなで、かなりの意外な連載であったこのマンガ。内容的にはそこそこよく出来たコメディでしたが、雑誌の中では取り立てて目立つ存在ではなく、一部に美少女マニアの間でちょっとした話題になった程度で、さほど大きな話題にもならず、2年足らずの連載期間を経て終了してしまいました。

 しかし、これが実は今回の「ToHeart2」のコミック化に繋がっているのです。つまり、かつて「まじかる☆アンティーク」を連載した経緯から、今回のリーフ(アクアプラス)の新作である「ToHeart2」も連載したい、と、そういう運びになったのだと思われます。
 しかし、「ToHeart2」の連載ならば、かつて「ToHeart」を連載し、美少女系コミックでも定評のある「電撃大王」の方も本命です。「ToHeart2」の原作ゲームの開発元であるリーフ(アクアプラス)としては、この「電撃大王」と「Gファンタジー」と、その双方からの連載要請を断ることが出来ず、結局ふたつの雑誌の両方で連載という、ゲームコミックとしては異例の形式を認めたのだと思われます。


・絵が素晴らしい。
 さて、前置きが非常に長くなってしまいましたが、ここからようやく内容について触れていきます。

 まず、このマンガの特筆すべきは絵、それもキャラクターの絵です。とにかく絵が素晴らしい。ゲームのコミック化となると、やはり原作のビジュアル的なイメージをいかに再現するか、という点が非常に重要だと思うのですが、このマンガはその点が非常によく出来ています。とにかくキャラクターがいい。みんな可愛い。原作ゲームの絵柄に非常に近いイメージを再現しつつ、かつ作者の個性もきちんと出ているというハイレベルなビジュアルで、ほぼパーフェクトの出来となっています。
 最初に話題となったのは↑上記の表紙イラストの出来の良さですが、もちろん肝心の本編の絵もよく出来ています。この業界には「一枚絵のイラストはよく描けているが、マンガの絵は数段落ちる」という作品が結構あるのですが(美少女ゲームの原画師・イラストレーターの描くマンガにはそのような例が多い)、このマンガについてはそんな心配は全くありません。きたうみさんは本職のマンガ家なので、マンガ本編でもイラスト同様の安定したクオリティの高さを維持しています。
このみとタマ姉委員長 るーこ主人公の貴明と悪友の雄二。雄二は原作より悪ガキっぽい?
 なお、この点で「電撃大王」連載のメディアワークス版は対照的な存在で、こちらの作者の御形屋さんの絵は、かなりデフォルメが効いた絵となっており、原作ゲームとは大きく印象が異なっています。この御形屋版の絵が悪いというわけではないのですが、しかし原作ゲームのイメージとはかなり離れているのも事実。原作に近いビジュアルを求める人には、こちらのきたうみ版の方がおすすめできると思います。


・原作を丁寧にコミック化。
 そしてもうひとつ、肝心のストーリーの出来もいい。
 基本的には原作ゲームに忠実で、マンガでも大きな流れは変わりません。しかし、個々のエピソードが丁寧に作りこまれていて、中には原作ゲームよりもさらにメリハリが効いたシーンとなっているところも多く、かなりの好印象です。楽しいドタバタのシーンと、のんびりまったりしたシーンがバランスよく盛り込まれており、楽しく読みすすめることが出来ます。作者の前作「まじかる☆アンティーク」も同じようなイメージの作品だったのですが、後発の作品であるこちらの方が明らかにレベルが上がっているように思えます。また、前作ではとにかく連載のページ数が安定せず、毎回のページ数が少ないことが多くて盛り上がりに欠くことも多かったのですが、今作ではそのようなことは少なく、安定した連載となっています。

 特筆すべきは、登場するキャラクターの傾向でしょう。原作ゲームには8人のヒロインがいるのですが、このマンガで序盤から登場するのは、まずメインヒロインのこのみ(柚原このみ)、そして最大のキャラ人気を誇るタマ姉(向坂環)と委員長(小牧愛佳)あたりの定番キャラクターなのですが、彼女たちに加えて、るーこ(ルーシー・マリア・ミソラ)が最初から大きく登場しているのがポイントです。
 これは、電撃大王の御形屋版とは大きく異なるポイントで、あちらの方が序盤のうちはメインキャラクターの3人の登場がほとんどなのに対して、このきたうみ版の大きな特徴となっています。これは、ふたつのマンガ連載の内容がかぶらないようにする開発元からの配慮なのかもしれませんが、原作ゲームからのファンならば、このあたりの特徴を考慮して購読を検討するとよいかと思います。るーこファンならばこのきたうみ版がおすすめででしょう。


・エニックス的なゆるやかな空気が楽しめる。
 そしてもうひとつ重要なのが、このマンガが、原作が美少女ゲームでありながら、エニックスのマンガに特有の、ゆったりまったりとした居心地のいい雰囲気に浸って楽しむ要素を持ち合わせていることです。いや、そもそも原作ゲームの「ToHeart」シリーズ自体もこの要素が強いゲームではあるのですが、このGファンタジー連載のコミック版では、その点をさらにはっきりと打ち出している感があります。
満点の星花見in春休み
 そのため、美少女ゲームにさほど興味がない人、特に恋愛ものがダメだという人でもさほど抵抗無く読めるようになっています。そもそも、このマンガは恋愛の要素はさほど強くなく、日常のドタバタとほんのりまったりのシーンを楽しむことが中心であり、これはエニックスのマンガと原作ゲーム「ToHeart」シリーズに共通している要素なのです。その点において、原作ゲーム「ToHeart2」とエニックスのマンガは、割と親和性が強い作品同士だと言えるもので、その点でもGファンタジーでの連載は成功しています。


・「ToHeart2」関連商品の中では一押し。
 以上のように、この「Gファンタジー・きたうみつな」版の「ToHeart2」は、絵的にも内容的にも原作に忠実で、かつ安定した高いクオリティを見せており、最近のスクエニ雑誌でのゲームコミックの中でも、極めて「手堅い」作品となっています。原作ゲームのファンはもちろん、エニックス系のマンガとも親和性が高く、こちらの読者にも幅広くオススメできる一品です。作者の前作である「まじかる☆アンティーク」より明らかに面白くなっており、今回はGファンタジーの連載の中でも遜色ない出来栄えとなっています。

 しかし、このマンガは「ToHeart2」関連商品の中では、さほど知名度が高くありません。「ToHeart2」のコミック版としては、やはり「電撃大王・御形屋版」の方が本命である印象が強く、さらに「ToHeart2」はTVアニメ版もかなりの話題を集めており、それらの商品と比較すると、このGファンタジー版は傍流に近い感が強く、原作のメインユーザーである美少女マニアにはさほど知られていない印象があります。これは、掲載誌のGファンタジーが、美少女マニアとは縁遠い雑誌であることも強く影響しています。

 しかし、個人的には、このマンガを関連商品の中で一押しとしておすすめしたいところです。まず電撃版のコミックと比較した場合、やはり原作のビジュアル的なイメージをより強く再現している点が評価が高い。そしてストーリー的にも遜色ありません。そして、鳴り物入りで始まったTVアニメ版についてですが、これは明らかに評判が悪く、思ったほどの支持を得られていません。今ひとつの内容に加えて、作画レベルがまるで安定していなかったのが大きな欠点で、この点でも明らかにアニメ版よりコミック版の方が優れています。総じて原作のイメージを最も良く再現しているのが、このGファンタジー版だと言えるでしょう。


「Gファンタジーの作品」にもどります
トップにもどります