<学園革命伝ミツルギ なかよし>

2011・4・21

 「学園革命伝ミツルギ なかよし」は、ヤングガンガンで2010年No.20から開始された連載で、学園もの、それも生徒会もののギャグマンガとなっています。他の生徒会ものと比べても、この過激なギャグテイストは突出しており、極めて異色の作品となっています。さらには、絵柄も、耽美系の少女マンガ(女性向けマンガ)を思わせるような、装飾過多の一種異様な見た目となっていて、その見た目と正反対の過激なギャグとのミスマッチが、作品最大の特徴となっています。

 元々は、ジャイブの月刊マンガ雑誌「コミックラッシュ」の連載であり、同誌でも名物マンガとして高い人気を誇っていました。しかし、2010年なかばにして急に最終回を迎え、その後どういうわけかスクエニのヤングガンガンへと移籍して連載を再開することになりました。移籍再開するにあたって、タイトルに「なかよし」が付いてリニューアルされましたが、中身はまったく変わっていません。また、ヤングガンガンやガンガンONLINEでも、かつてのコミックラッシュ時代のエピソードを「よりぬき!」と称して不定期で掲載しており、移籍前からのエピソードも定着させようという試みが見られます。この記事でも、コミックラッシュ時代の作品を、まったく同じ作品として同時に扱います。

 作者は、原作が河田雄志、作画が行徒となっています。原作の河田さんは、元々は自分でマンガを描いていた作家なのですが、この「ミツルギ」では一貫して原作を担当しており、さらにはこの「ミツルギ」以降の新作でも、作画担当の行徒と組んで原作に専念しているようです。この二人組の作品は、どれも華美な作画と裏腹の過激なギャグマンガという点で一致しており、ふたりで完全に作風を確立したようです。

 コミックラッシュ時代は、雑誌自体がかなりマイナーなこともあって、まさに「知る人ぞ知る」異色作となっていましたが、ここでスクエニの中でもメジャーなヤングガンガンへと移籍したことで、以前より高い注目を集めているようです。作者の新しい別作品の方も好調連載中のようで、コミックスの発売に際して合同フェアなどの催しも見られます。


・生徒会ものの中でも異色中の異色の先駆作。過激なギャグが通好みの作品となった。
 かつてコミックラッシュでこの作品が連載を開始したのは、2005年の3月です。最初は短期で終わる予定だったようですが、読者の評判がよく長期連載となりました。その点で、昨今いろいろと登場してきた生徒会もの作品の中では、ずば抜けて登場が早く、先駆的な作品に当たるかもしれません(「生徒会の一存」などよりもずっと早い)。しかし、この作品の場合、その作風があまりにも異色すぎて、他の作品とは一線を画するところもあり、直接比較されることはあまりないようです。

 コミックラッシュは、「となぐら!」などのアニメ化された人気作品の傾向から、少年誌、もしくは男性向けの趣きが強い雑誌ですが、この作品の場合、見た目があまりにも華美で耽美なものとなっていて、他の連載の中でもその異質さが際立っていました。その上で、それとは正反対の異様なノリの濃いギャグを展開する作風で、一部の通好みのマンガ読者に知られることになりました。中でも、ネット通販で有名な書店「まんが王倶楽部」が、初期の頃からこの作品を高く評価して、何度も自分のサイトで採り上げたことを覚えています。

 その後も、長く好調な連載を維持してきましたが、どういうわけか2010年になって急に最終回が告知されました。特に人気が落ちたようにも見えなかったため、この最終回自体がギャグのネタなのではないかとも言われましたが(笑)、どうもネタではなかったようで、実際に最終回を迎えてしまいました。
 しかも、その後しばらくして、スクエニのヤングガンガンに移籍して連載再開が決定。他社に移籍して再開というマンガはよく見られますが、このように、雑誌が休刊したわけでもないのに、何事もなかったように移籍するというのはちょっと珍しい。何か事情があったのかもしれませんが、そのあたりはわたしにはよく分かりません。

 ただ、この時期を前後して、作者が他の雑誌でも新しい連載を何本も始めるようになっており、この「ミツルギ」の移籍も、その流れのひとつなのかもしれません。現在、角川書店のヤングエースで「もぎたて☆アイドル人間」、双葉社の漫画アクションで「くのいち一年生」を連載しており(こちらの作画担当は行徒妹となっています)、新しくヤングガンガンで再開されたこの「学園革命伝ミツルギ なかよし」と同時期に相次いでコミックス1巻が発売され、発売に際してフェアが開かれるなど盛況となっているようです。


・この華美で耽美で装飾過多な絵でギャグをやるというミスマッチ。
 このマンガは、誰が見てもまずその極端な絵に目を惹かれると思います。少女マンガ、それも極端に耽美系のゴテゴテしたキャラクターの描き方があまりにも印象的で、まさかこれがギャグマンガだと思う人はほとんどいないでしょう。しかし、こんな絵柄であえてギャグをやるからこそ面白いと言えます。

 作品の中心人物・生徒会長の美剣散々がまさにそうなのですが、ボリューム感のある銀髪ポニーテールの髪型で、制服も特注品でゴテゴテした装飾に満ち、まさに全身で耽美を体現しているようなビジュアルになっています。これだけなら(多少の誇張こそあれ)美貌の持ち主でもあると言えるのですが、その内面があまりにもふざけた性格で、こんな姿から繰り出される数々の奇行が、爆発的なギャップを生み、最高に面白いギャグを作り出しているのです。

 それ以外のキャラクターも、どれも徹底的なまでに細部まで描き込まれた華美な外見で、全体的に画面がとにかく”濃い”。この画面の濃縮ぶりは、一度でも見た者の目をとりこにするような強烈な力があります。実際、この異様な描き込みの作画だけで、このマンガの個性は十分に保たれています。最近では、少女マンガでもここまで濃い描き込みのマンガは中々ない。それに加えて、この絵を上回るほど強烈なギャグを次々と繰り出す。まさに、作品の持つインパクトだけならトップクラスのマンガだと言えるでしょう。

 このような少女マンガ的な外見でミスマッチを生むギャグ作品としては、あの「B.B.Joker」(にざかな)を思わせるところがあります。このマンガも、ブラックなギャグと少女マンガ的な絵柄のギャップが面白さを生む、印象深いギャグマンガの名作として長く連載しました。こちらは白泉社の「LaLa」という、正真正銘の少女マンガ誌に連載された点で、「コミックラッシュ」連載の「ミツルギ」とは若干状況は異なるのかもしれませんが、しかし「強烈なギャグ+少女マンガ的な絵柄」という作品性が一致しているのは面白いところです。


・個性的な濃い生徒会キャラクターたちが最大の魅力。
 このマンガの舞台は、私立波亜怒雲高等学校(パー高)と呼ばれる名前以外あまり特徴のない高校で、そこで学校の新入生確保のために、「革命」と称して生徒会の役員たちが様々な斬新な企画を行う、といったあらすじの作品になっています。しかし、その革命を請け負った生徒会役員が、誰一人とっても変人・変態と思えるようなふざけた連中ばかりで、学校の予算を独占して部活の部費を削減した上に、考えられないような奇行を次々と行う、非常に困った組織となっています。そして、その奇人・変人たちの濃い個性が実に素晴らしく、このマンガの最大の売りとなっていると言っても過言ではありません。

 そんな生徒会員たちの中心にいるのが、このマンガのイメージをも一手に体現している生徒会長・美剣散々(みつるぎちるちる)。華美な服装と美貌でよく目立つ外見で、外見だけなら決して悪くないようにも見えるのですが、しかし繰り出す提案はどれもこれもふざけたものばかりで、そんな提案を大真面目な顔で実行しようとする、困った変人キャラとなっています。外見と中身のギャップを最もよく表しているキャラクターと言えます。

 そして、そんな生徒会長以上に困った変人が、副会長の中二階堂三一(なかにかいどうさぶいち)。数々のふざけた奇行と変態行為を繰り返す、変人を通り越してまさに変態であり、彼の繰り出す言動こそが、このマンガの数あるギャグの中で最も印象に残るものとなっています。ある意味、このマンガの真の主役と言っていいかもしれません。

 書記の姫宮京(ひめみやみやこ)は、落ち着いた外見と言動のお嬢様キャラクターとして描かれ、上記二名に比べれば自分からふざけた行為に及ぶことは少なく、一見してまだまともそうに見えるのですが、しかしやはり天然な言動には事欠かず、上記二人のふざけた意見に勝手に同調し、むしろさらに事態を混ぜくり返して悪化させることも珍しくありません。

 こんな変人・変態たちの中で、唯一まともなのが、会計の緑川青羽(みどりかわあおば)。このマンガの突っ込み役を一手に引き受け、暴走を繰り返す生徒会員たちの間で気苦労が絶えないかわいそうなキャラクターとなっています。数々の奇妙な決定を常識を持って止めようとするのですが、最後には押し切られる形となって、自分までその中に巻き込まれる姿が哀れを誘います。

 最後に、このマンガの名物キャラとなっている、会計監査の妻先ドリル(つまさきどりる)がいます。日々不可解な言葉を吐き出すいわゆる「不思議ちゃん」として描かれ、意図的に会長や副会長のように意図的に悪ふざけに及ぶことは少ないものの、その異様な言動と見た目で圧倒的な存在感を放っています。以前開かれたサイン会では、最もイラストのリクエストも多かった人気キャラクターでもあります(2位は中二階堂だったらしい)。

 この5人以外で個性的な変人として、校長の藤原万床(ふじわらばんしょう)がいます。生徒会に「革命」を命じた張本人であり、自身も相当な変人。怪しげな髭のおっさんとして描かれ、生徒会にに率先して奇行に及ぶことも珍しくありません。

 このような変人・変態揃いのキャラクターたちに、他の(比較的)まともな生徒たちが振り回されるマンガになっています。特に、部費を勝手に削減され生徒会に対決を強要される運動部主将たちの哀れさがひときわ目立つ作品になっています。本来ならば生徒の強い味方として役に立つ存在のはずの生徒会が、実は最もひどい組織になっているという、他の生徒会ものとは正反対の設定こそが、この「ミツルギ」の最大の特徴であり、やはり他とは一線を画するマンガとなっているようです。


・中二階堂のムカつく面白さが最大のツボ!
 そんな誰一人とってもアクの強い個性的な生徒会キャラクターたちの中で、特に一人これはという人物を挙げるとすれば、それはなんといっても中二階堂ではないかと思います。このキャラクターの持つ変態性、読者をムカつかせるような言動を繰り返しながら、なおも面白いと言い切れるキャラクター性は見逃せません。

 あまりにもひどい行動の数々で幾多の”伝説”を打ちたて、セクハラとも言えるひどい言葉を吐きまくり、常にふざけたアクションを取り続ける彼は、ともすれば周囲の人間をムカつかせるに十分で、読者もその例外ではありません。生徒会が設置している目安箱への投書が、中二階堂への文句が大半を占めるという設定も、誰もが納得するようなキャラクターになっています。しかし、そこまでムカつくようなキャラクターでありながら、それでも圧倒的に”面白い”のです。ムカつくけど、しかし面白い。なんというか、読者の持つ不快感を、なんとかギリギリ許せる絶妙なレベルにまで調整しきっているような気がします。このマンガは、そのさじ加減が絶妙なまでにうまい。

 そして、この中二階堂があまりにもひどくてムカつくために、生徒会のほかのキャラクターが、相対的にまともに見えるのもおかしなところです。美剣を始めとする他のキャラクターも、相当にひどい者ばかりなのですが、中二階堂があまりにもひどくて痛すぎるために、周囲のキャラクターの変態性が相対的に低く見えてしまう。それゆえに、むしろ作品全体のバランスが取れ、過度に不快感を覚えずに読むことが出来るのではないかと思うのです。

 つまり、中二階堂というひどすぎるキャラクターを中心に配置することで、他の変人キャラクターを比較的まともに見せ、読者の不快感を軽減する効果を生んでいるのではないか(笑)。だとすれば、これは極めて巧みな構成だと言えるでしょう。


・長期連載ながらその面白さは衰えない。ヤングガンガンでのさらなる発展に期待。
 このように、この「学園革命伝ミツルギ」、絵も中身も極端に濃い異色の作品で、極端に華美で耽美な濃い絵柄の中で、変人・変態キャラクターたちが数々の奇行に及ぶという、本当に異様なノリのギャグマンガになっています。数あるギャグマンガの中でも、見た目のインパクトもギャグの衝撃度もトップクラス、これほど面白いマンガはそう多くはありません。

 ただ、変人・変態キャラクターたちの奇行がギャグの中心となっていて、前述の中二階堂のように、露骨に周囲を小バカにしたようなふざけた言動でギャグを取る者も多いため、人によっては不快感の方が先に立って厳しいものがあるかもしれません。一応、多くの読者にとって、ギリギリ耐えられる不快感のレベルに調整してあるとは思うのですが、やはりそのあたりは人それぞれ。中には、中二階堂の言動に本気で腹を立て、「この野郎マジで許さん」とブチ切れる人がいてもおかしくはない(笑)。生徒会に翻弄されてひどい目に遭わせる一般生徒も多く、そういった姿は人によってはつらいものがあるかもしれません。いずれにせよ、その辺りでかなりアクの強いギャグマンガなので、穏やかで優しい、くすっと笑わせるタイプのギャグマンガとは一線を画するものはあります。

 ただ、そういったひどい生徒会をあえて主役に据えたマンガというのも、他にはない面白さがあると思うのです。学校の予算を独占して勝手に部費を削減し、苦情を述べに来る一般生徒を逆にひどい目に遭わせるような生徒会は、学園ものでは悪役として登場してもおかしくはないでしょう。そんな傍若無人な生徒会を、あえて主役に据えているところが面白い。他にはない個性的な生徒会ものと言えるでしょう。

 そして、そんなノリのままで長らく連載を続けてきましたが、今に至るまで面白さは衰えていません。コミックラッシュで最終回を迎え、ヤングガンガンに移籍してからも、その中身はまったく同じで、コンスタントに楽しいギャグを提供し続けています。これならば、今後もさらに期待できるのではないか。ヤングガンガンお得意のアニメ化まで行ってもおかしくはない。さらには、最近始まった作者の別作品も揃って好調で、これからも安定して面白いギャグを楽しんでいけそうです。


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