<STAR DRIVER 輝きのタクト>

2011・4・7

 「STAR DRIVER 輝きのタクト」は、同名のテレビアニメのコミカライズ作品で、ヤングガンガンで2010年No.18より開始されました。アニメの放映と時期を同じくしての開始で、当初から連動してのコミック化だったことは間違いありません。スクエニでは、他社の作品(主にライトノベル)をコミック化して、それがアニメになることで連動するケースが数多くありますが、この「STAR DRIVER」は、アニメオリジナルの作品であり、それをスクエニの雑誌でコミック化するという形式になっています。最近では、このようなタイプの作品も多く見られるようになっており、直近のケースでは、ガンガンJOKERで連載されている「花咲くいろは」があります。

 アニメ版を制作しているのは、ボンズという制作会社ですが、このボンズとスクエニは、以前より非常に親密なつながりがあるようです。きっかけは、なんといってもあのあの「鋼の錬金術師」をのアニメをボンズが制作担当したことでしょう。2回に渡っていずれも1年の長期間でアニメ化され、いずれのシリーズも極めて高い人気と評価を獲得しました。「鋼の錬金術師」は、スクエニ発のマンガが原作でしたが、この「STAR DRIVER」は、ボンズの制作したアニメが原作。ちょうど立場が逆になっています。

 コミック版の作画を担当しているのは、KEY by Ylabとなっており、今まで聞いたことのない作者で、スクエニの新人ではないかとも思うのですが、詳しいことは分かりません。ただ、コミカライズの作画レベルは非常に高く、原作アニメの絵柄をどこまでも忠実に再現している上に、美しい背景描写や迫力のロボットアクションシーンの出来もまったく申し分なく、極めて優秀な仕事をしています。ヤングガンガンは、ほかにも絵のレベルの高い作品は数多くありますが、原作もののこの作品もまた、それらに匹敵する高い作画レベルを維持しています。

 アニメの方は当初から前評判が高く、ロボットもの+学園ものという独特のコンセプトに注目が集まりました。そして実際の放映も大人気でしたが、このコミック版の方は、アニメに比べれば展開が遅く(ヤングガンガンが隔週刊の上に定期休載が入るため)、コミックスが出るのも遅かったためか、あまり大きな話題にはならなかったのが残念なところです。スクエニは、このアニメを高く買って、ヤングガンガンで毎週のようにカラーページで特集を組み、スクエニ作家によるアンソロジーもこのコミックスと同時発売するなど、かなりの力を入れてきました。そしてこのコミック版も、やはり相当な力作になっており、アニメを視聴した方だけでなく、観たことのない方でも楽しめるレベルの高い作品になっています。


・ボンズとスクエニ、ヤングガンガンの密接な関係。
 前述のように、「鋼の錬金術師」のアニメ制作をボンズが担当して以降、スクエニとボンズの関係は密接なものとなり、以後ボンズのアニメをスクエニの雑誌(主にヤングガンガン)で連載することが、何度も見られるようになりました。また、ボンズの方でも、「鋼の錬金術師」に次ぐガンガンの看板連載である「ソウルイーター」を長期アニメ化し、こちらも人気を博するなど、スクエニのマンガにとってもボンズは有力なアニメ制作候補となっています。

 ボンズ発のアニメで、最初にヤングガンガンで連載されたものとしては、2006年の「天保異聞 妖奇士」があります。タイトルどおり天保時代の江戸を舞台にした時代劇調の作品でしたが、主人公が中年の男であったり漢字の意味(語源)を元ネタにした技を使ったりと、中々に渋い作りにもなっていました。コミック版の作画を担当したのは蜷川ヤエコで、その作画レベルは非常に高く、アニメ版以上にキャラクターの描写が際立っていました。アニメもコミックも双方ともによかったと思うのですが、渋い作風からかアニメの人気は低迷し、1年の予定のところが半年で終了する形となり、コミックもそれに合わせる形で早期で終了してしまったのが残念なところです。

 逆に、アニメもコミックも成功した例として、「DARKER THAN BLACK」があります。2007年に放映されたシリーズ(「黒の契約者」)が高い評価を得て、2009年にその続編(「流星の双子」)が制作・放映されました。ヤングガンガン連載のコミック版は、そのいずれのコミカライズでもなく、第一のシリーズの直後の話を描いたオリジナルストーリーとなっていて(「漆黒の花」)、しかもその作画をアニメのキャラクター原案を担当した岩原裕二が担当。これはテレビアニメのファンも納得の人選で、さらには内容的にも非常に面白く、非常に高い話題と人気を獲得し、ヤングガンガンのコミカライズとしては最も成功した作品のひとつとなりました。

 さらに、最近の作品としては、これはガンガンの方でコミカライズされた「HEROMAN」があります。アニメは半年で終了してしまいましたが、コミックの方は一年以上長く続いているようです。

 そして、ここにきて「STAR DRIVER 輝きのタクト」のコミック化。ヤングガンガンでのボンズアニメのコミック化はこれで3作目、もはや定番の企画となった上での連載であり、もうこれといった驚きはありませんでしたが、しかし内容的には非常に充実しており、今回もまた申し分のない出来となっています。


・絵の完成度が素晴らしい。
 まず、この「スタドラ」のコミック版は、作画のレベルが非常に高いことが大きな評価ポイントです。なんらかの原作(この作品ではアニメ)がある以上、まず何よりもそのイメージをよく再現しているか、平たく言えばどこまで似ているかは、誰もが気になるところです。そして、このマンガの絵の再現度は非常に高い。

 まず、キャラクターの絵柄が本当によくアニメの絵を再現しています。アニメのキャラクターは、全体的に身体のラインが細く、独特のくせのある作画になっていると思うのですが、このコミック版でもまさにそのまま。いや、むしろこのコミック版の方が、アニメ以上にその特徴をよく捉えているようです。主人公のタクトやライバル役の少年・スガタなどは、アニメ以上の美少年となっていますし、ヒロインのワコを始めとする女性キャラたちも、その独特の体形からか多くがセクシーで魅力的な印象を受けます。全体的に、コミック版のキャラクターは、アニメ以上の美少年・美少女揃いになっていると言っても過言ではありません。

 キャラクターだけでなく、背景を含めた全体的な作画レベルも押しなべて高い。特に、舞台となっている南の島の美しい自然、とりわけ広大な海や空、草原を描き出したシーンに、非常な美しさを感じます。この美しい南の島の断片を丹念に描き出していることで、非常に開放的で雰囲気のいい作品になっている。これは、この作品の最大の魅力のひとつと言っても過言ではありません。

 さらには、もちろん肝心のロボットものとしてのアクションシーンの完成度も文句なし。作画担当だというKEY by Ylabという名前は、これ以前にはまったく聞いたことがなく、名前からして外国の人?かとも思えるのですが、そんな無名の作家でいきなりここまでの絵を描く人が登場するとは驚きました。ヤングガンガンは、以前から画力の高い作家が本当に多いのですが、ここでさらにこのような作家が出てくるとは、その充実ぶりには感心するばかりです。


・学園もの+ロボットものという盛りだくさんな内容。明るい主人公を中心に据えることで気持ちのいい作品になった。
 肝心の内容ですが、基本的には「ロボットもの」アクションなのですが、一方で主人公たちの普段の学園生活の描写にも大きく視点が割かれている、「学園もの+ロボットもの」という、ちょっと珍しいタイプの作品にもなっています。これは、原作アニメの方もまったく同じなのですが、ヤングガンガンのコミック版の方は、連載の都合上、1回の話がまるまる学園ものの描写のみという回が多く、より学園ものの印象が大きくなっています。

 学園ものの方では、美しい南国の島を舞台にして、主人公たちが属する演劇部の活動あり、「キス」をひとつのテーマにした恋愛ものあり、とそれだけでも一つの作品として楽しめるほどです。その上で、実はほとんどの生徒が「裏の顔」とも言うべきもうひとつの姿を持ち、そちらでは巨大ロボット(この作品では”サイバディ”と呼称)を操って激しいバトルを繰り広げるという、そんな大きく異なる二面性こそが、最大の鍵とも言える作品になっています。

 そんな中で、唯一主人公のタクト(ツナシ・タクト)のみが、島の外から来た予期せぬ来訪者ながら、裏表のない明るい性格をして、普段は楽しくも学園生活を送りつつ、夜はサイバディを操って、綺羅星十字団なる組織の陰謀を阻止すべくバトルを繰り広げる。これがとても痛快です。制作者の話によれば、「元々はこの話は、タクトのライバル役でクールな美少年・スガタの方が主人公のはずなのだが、タクトの登場でそれが変わってしまった」ともあり、唯一まっすぐで屈託の無い存在であるタクトを中心に据えることで、度重なる陰謀やバトルなどで暗く重くなりすぎない、明るい学園もの+ロボットものとして描くことに成功しているのではないかと思います。サブタイトルの「輝きのタクト」も、まさにこの作品の内容をよく表しています。


・バカバカしいことを大真面目にやっている姿が面白い。
 そしてもうひとつ、この作品の面白いところとして、設定やキャラクターの言動にわざとバカバカしい(と思える)要素を取り入れており、しかしそれを誰もが大真面目にやる姿を見て楽しむという点があります。

 元々、このアニメが開始された冒頭で、いきなり「銀河美少年」なるキーワードが登場し、そして主人公のタクトがその銀河美少年で、ロボットバトルの前振りで、「颯爽登場!銀河美少年!!」などという思わせぶりな掛け声とともに登場したり、あるいは主人公の敵役である”綺羅星十字団”の構成員たちも、誰もが珍妙な仮面をして、ことあるごとに妙なポーズで「綺羅星!」と挨拶を交わすその姿は、見ているものを笑わせるには十分なものでした。こうした内容を受けて、アニメ自体も「STAR DRIVER」「スタドラ」と呼ばれることは少なく、「銀河美少年」「綺羅星」などという呼称が定着してしまい、もはやそっちの方が真のタイトルではないのかと思えるような状態でした。

 そして、こうしたバカバカしいと思える行動を、しかしキャラクターたちがしごく真面目に取り組んでいるところが、抜群の面白さと、時にそれ以上の感動を生んでいるのではないかと思えるのです。バカバカしい行動をふざけてやったところで、見ている方はしらけるだけ。大真面目にやっているからこそ面白いのですし、一転してシリアスな展開になった時には、その裏にあった真意を知ることで、思わぬ感動を呼ぶのではないかと思うのです。受け取る側も、こういった要素をバカバカしいと思いつつも楽しむ懐の広さがあったほうが、より楽しめるでしょう。「何が綺羅星だよバカバカしい」などと思っていては、この作品の真の面白さに辿り着けないのではないかと。

 コミック版では、クールな主人公の友人・ライバルであるスガタが、群れからはぐれたアホウドリの雛を巣立たせるのために、自らアホウドリの真似をして雛を飛ばせようと奮闘する姿が印象的でした。初見ではその作り物の羽を広げた珍妙な姿から思わず笑ってしまったのですが、しかし雛のために毎日懸命にそんなふうに頑張っている姿を見て、やがてそれは感動へと変わっていきました。最後にはタクトの方も協力して雛に最後の一押しをして、ついには訪れた親鳥の群れと共に巣立っていくシーンは、本当に心動かされる名場面になっていたと思います。


・ヤングガンガンでも優れた連載のひとつだが、アニメが終わった後の展開は気になるところ。
 以上のように、基本的には原作アニメに忠実に、そして美麗な作画を中心に完成度の高いコミカライズとなっている、コミック版の「STAR DRIVER 輝きのタクト」、アニメを観て気に入った方にはもちろんおすすめできますし、観ていない読者でも十分楽しめると思います。これまでのヤングガンガンの原作付き作品の中でも、非常によく出来た作品になっていると思います。今のヤングガンガンは、これ以外にも良作の多い充実した誌面になっていますが、その中でもこれは人気アニメの連動作品ということで、アニメ放映中はカラーページや前の方でのページの掲載が多く、その扱いはひときわ大きいものがありました。が、それに見合う内容になっていたと思います。

 しかし、この2011年4月冒頭を持って、原作のテレビアニメは半年の放映期間で終了してしまいました。これによって、これ以降この連載がどうなるのかちょっと気になるところです。アニメの方は最後までよどみない面白さで駆け抜けた文句の付けようのない作品となりました。コミック版のほうの内容も申し分ないのですが、しかしアニメが終わったことで、こちらの方の勢いが小さくなってしまう可能性は高いと思われます。かつてアニメがなかば打ち切りとなった「天保異聞 妖奇士」に比べれば、こちらは最後までアニメは盛況だったので、その点では問題ないのですが、しかしコミック版はかなり進みが遅く、ストーリー的にはまだまだこれからといったところ。コミックスもまだ1巻が出たばかり。アニメが終わった今、これからどこまで連載を続けていくのか、そのあたりがちょっと気がかりですね。

 個人的には、アニメの方が終了しても、コミック連載はマイペースで続けてほしいと思っています。現在ガンガンで連載されている「HEROMAN」は、アニメが終わってからもう半年ほど経ちますが、それでも堅調に連載は続いているようです。こちらも、中途半端なところではしょったり打ち切ったりせずに、最後まで丁寧に描き切ってほしいと思います。


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