<WORKING!!>

2006・8・1

 「WORKING!!」は、ヤングガンガン創刊時から始まった4コママンガの連載です。作者は高津カリノ。創刊当初は、ページ数の少ない4コママンガということもあって、さほど大きい扱いでもありませんでしたが、その面白さが次第に話題を呼び、今では雑誌を表で支える人気連載となりました。今のヤングガンガンでは、このように地道に人気を獲得し、雑誌を支えるまでに成長した作品の存在は欠かせません。

 内容的には、北海道の某所に存在するファミリーレストラン「ワグナリア」の店員たちを描く「ファミレスマンガ」なのですが、肝心のファミレスの仕事の描写はほとんどなく、個性的な(変人的な)登場人物の笑える掛け合いが、内容のほとんどを占めています。尚、前述のように、これは北海道にあるファミレスを舞台にしたマンガではあるのですが、実際に北海道を思わせる描写はほとんど(まったく)なく、北海道である必然性は無いような気がします。


・Webから生まれた大ヒットコミック。
 さて、このマンガは、元は作者が自分のウェブサイトで手がける「ウェブコミック」であり、しかも数あるウェブコミックの中でも非常に高い人気を得ていました。雑誌での連載開始当時も、そのことを最大の宣伝文句にしていましたし、単行本1巻発売時(2005年11月)のコピーも「累計500万ヒットの超人気ウェブコミック」というような触れ込みでした。そして、このヤングガンガンの連載と単行本の人気を受けて、さらにウェブでの人気も上昇し、単行本2巻発売時(2006年6月)には、帯のコピーが「800万ヒット」となり、そして今現在(2006年8月1日)には、もう1000万ヒットも近いのではないかという状況です。おそらく、ウェブコミックの中でも最高に近い人気を得た超話題作と言ってよいでしょう。
 なお、作者のサイトで発表されているコミック「WORKING!!」は、ヤングガンガンの連載とは別物であり、「雑誌とウェブとでふたつの『WORKING!!』が読める」というのも、双方で大きな人気を得た要因であると思われます。

 高津カリノ(がはこ)公式「うろんなページ」

 ヤングガンガンでは、当初からこのようなウェブ上での優れたコミックを発掘し、それを雑誌に採り入れるという方針を積極的に続けており、その中でもこの「WORKING!!」は最大の成功例となりました。「ウェブコミックの積極的な起用」という、当初からの方針は見事に成功したと言えそうです。
 なお、この作品以外のヤングガンガンでのウェブコミックからの成功作としては、一連の筒井哲也作品(「ダズハント」「リセット」「マンホール」)が挙げられます。


・超個性的なキャラクターの掛け合いが最高に面白い。
 前述のように、このマンガは、ファミレスを舞台にした「ファミレスマンガ」でありながら、肝心のファミレスの仕事の描写はほとんどなく(強調)、「ほとんど働いていないのでは?」と思われる描写もたびたび見られます。
 そして、その内容は、ほとんどが個性的な店員たちのコメディ的な会話に費やされます。そして、その店員たちが揃いも揃ってみな変人ばかりであり、その変人同士の掛け合いが最高に面白いのです。店員はすべて変人で、まともなキャラクターは客のみという状況です。


 まず、一応の主人公と言えるのが、フロアスタッフの小鳥遊宗太(たかなしそうた・16歳)。主人公だけあって比較的まともな部類に入る高校生アルバイターですが、実は小さな可愛いもの好きで、特に12歳以下の女の子のみを溺愛するという困った性癖を持つ変態であり、相手が13歳以上の場合は手のひらを返したかのように冷たくあしらうその姿は(←)、それは人としてどうなのかと考えてしまいます。

 そして、宗太がファミレスに入るきっかけとなった、同じくフロアスタッフのアルバイターである種島ぽぷら(17)。見た目的には小学生で、そのことを気にして大いに背伸びして頑張っているのですが、やや空回りしている印象です。みんなに背が低いことをいじられつつちまちま働くその姿に癒されます。

 店内で最強とも言えるのが、店長である白藤杏子(28)です。店長なのに働く気はまったくなく、ひたすらものを食うだけというとんでもない存在で、性格的にも傍若無人を地で行くが如しの人物です。
 客への態度も割と最悪で、そのことで「客よりも店員の方が偉い」という斬新な発想を提示。「店員いないと店にならないだろうが」「」店員がいないと客はなにもできん」「よって客にこびる必要はない 店員第一」という大胆な発想には、目からウロコが落ちそうになりました。

 ビジュアル的に最もインパクトが強いのが、フロアチーフの轟八千代(20)。美人でよく働くという点では非常に優秀な店員なのですが、なぜか帯刀しており、その帯刀の理由というのがまた・・・。不自然な帯刀で不必要に店員や客を威圧しています。
 さらには、なぜか昔から店長の杏子にベタ惚れしており、彼女ののろけ話を店員に向けて延々と話すという困った性癖も・・・。その最大の犠牲者が次に紹介するの佐藤です。

 比較的まじめに働いているのが、キッチンスタッフの佐藤潤(20)。変人揃いのファミレス店員の中で、割とマイペースにやっている存在ですが、困ったことになぜか轟八千代に惚れており、彼女ののろけ話(店長の話)を延々と聞かされてストレスを溜めまくったあげく、その腹いせに背の低いぽぷらをいじりまくってうさを晴らすという、非常に困った関係が生まれています。

 フロアスタッフの伊波まひる(17)は、極端な男嫌いで、男性恐怖症のあまり、近くにいる男を思わず殴りまくるという、非常に困った性癖の持ち主です。被害に遭うのはほとんどの場合タカナシで、男嫌いを治そうと近づきつつも思わずなぐってしまうという状態です(実はなぐりたいだけの時もある?)。常にいっぱいいっぱいで生きていますね。

 マネージャーの音尾兵吾(38)は、非常に影の薄い存在です。普段はいなくなった奥さんを探しているらしく、店にいないことの方が多く、いたらいたで「空気」として扱われているかわいそうな人物です。店長よりも身分は上のはずなのに、そんなところはまったくなく、むしろ店長におみやげの食い物を供給する存在として見られていたりします。なぜかそのことで轟八千代の嫉妬を買い、帯刀で命を狙われたりと、いろいろと存在が儚い。仕事はできるのですが、「いなくてもなんとかなりそう」と思われている哀れなマネージャーである・・・。

 連載途中で登場した新キャラ(?)である相馬博臣(何歳だっけ?)は、佐藤と同じキッチンスタッフ。働いてはいるらしいですが、なぜか情報に鋭く、店員たちの弱みを握ってはさりげなく脅しまくっているという、道徳的に大いに問題のある男です。苦手は伊波で、脅す前にいきなり殴られてどうしようもないらしい。

 かなり後に登場した、最新の新キャラである山田葵(年齢不詳)は、経歴詐称の家出娘です。一見してミステリアスに見えて、いろいろと腹黒いことを常に考えているわけですが、他の店員の方が一枚上手であることが多く、ひどい目に遭うことも珍しくありません。


 以上のように、登場する店員のほとんどすべてが、ひどく個性的な変人であると言ってもよく、そんな変人同士の会話での掛け合いが、内容のほとんどを占めていると言ってよいでしょう。そして、これが本当に面白い。変人同士の常識外れの会話、適度ないじりっぷり(いじられっぷり)がなんとも言えません。何度読んでも思わず笑ってしまうような良質のネタが多く、4コママンガとしてのクオリティは非常に高いと思われます。


・いじられ系のネタだが、嫌悪感がまったくない。
 このように、このマンガのギャグは、ほとんどが個性的な店員たちの変人ぶり、あるいはそのいじられぶりを見て笑うものです。通例、このような、人をいじりまくるようなギャグネタの場合、人によってはかなり抵抗を感じることも少なくないと思いますが、このマンガの場合、なぜかそのような嫌悪感がほとんど感じられないのです。その理由を推測するに、おそらくは、このマンガのキャラクターのいじられ方が、非常にあっさりとしていて、その場で明るく笑って終わるようなものばかりで、後にまで違和感が残るようなものがないためだと思われます。 あるいは、キャラクターひとりひとりが、全員まんべんなくいじられるような形態を採っているため(笑)、誰かひとりが標的にされていじりまくられるような点が少ないのも、また明るく気軽に読める理由かもしれません。
 とにかく、この手のギャグマンガにしては、ほとんど抵抗や嫌悪感を感じることがないというのは、実に優れたポイントです。誰にでも安心して薦められる良作だと言えるでしょう。


・決して上手い絵ではないが・・・。
 絵的な側面を見ると、さほどうまさを感じる絵ではなく、純粋な画力だけを見れば、特筆すべき点はあまりないかもしれません。しかし、ギャグマンガらしい独特のセンスは感じられ、決して悪い印象はありません。画力で見せるストーリーマンガのように、圧倒的な描き込みや目を見張る構図のうまさがあるわけではありませんが、これはこれでこのマンガ独自のセンスは感じられます。同じガンガン系の作品で言うならば、金田一蓮十郎や氷川へきる、あるいは同じヤングガンガンで連載を持つくぼたまことのように、圧倒的な画力こそ感じられないものの、その作者独自の個性的な絵柄は確立しているのではないでしょうか。ギャグマンガとはいえ、このようなセンスとオリジナリティが感じられる絵柄は絶対に必要でしょう。

 また、このマンガの絵は、厳密には萌え系の絵柄ではないと思うのですが、雑誌で連載されて以降は、その手のマニアックな人気もかなり獲得しているように思えます。きらら系(芳文社系)の萌え系4コマほどストレートな萌えマンガではないにせよ、絵から来るキャラクター人気にもあなどれないものが見られます。


・ウェブからの成功という道を切り開いた意義ある作品。
 以上のように、この「WORKING!!」、ヤングガンガンの中でも数少ない4コママンガの中で、最高に近い成功を遂げた作品ということで、実に貴重です。元々雑誌内でページ数の少ない、さほど扱いの大きくなかった作品が、ここまで大きな人気を獲得できたのは素晴らしい成果であると言えます。表紙等への露出こそ少ないものの、今のヤングガンガンの隠れた看板のひとつであることは疑いないところでしょう。今のヤングガンガンでは、このように目立たない雑誌の中堅どころから人気を得て、雑誌を支える作品にまで成長したマンガがいくつも見られますが、その中でも最高の作品ではないでしょうか。

 さらには、これが元はウェブサイトでの人気マンガだったということで、ウェブでの成功作が紙媒体の雑誌・単行本に進出してそこでも成功するという、よき前例を作りだしたことも大いに評価できる点です。「実力派のウェブコミックの発掘・起用」という企画は、ヤングガンガンの創刊以来の諸企画の中でも、最も評価できるものでしょう。
 また、このマンガは、普段あまりスクエニ系マンガを読まない読者の間でも、大きな人気を集めているのも、特筆すべき優れたポイントです。そして、これもウェブサイトでの人気の影響が大きく、ウェブで作品を目にした読者が、紙媒体の単行本まで購入するケースが多いためだと思われます。「ウェブサイトを接点に、普段はガンガン系に縁の薄い読者まで引き込んだ」という点でも、その功績は見るべきものがあります。


 単純に、「4コママンガでの成功作」という点でも大きい。今や、4コママンガの世界では、きらら系の萌え系4コマがほぼ寡占するような状態になっていますが、それに対抗できる作品として、スクエニ系から1作だけでも優れた作品を打ち出せたことの意義は大きい。ストレートな萌え系4コマと異なり、一般の読者にも幅広く人気を集めている点でも評価できます。スクエニからの数少ない4コママンガ成功作として、非常に優秀かつ貴重な作品だと思われます。


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