<よん駒!>

2012・3・10

 「よん駒!」は、ヤングガンガンで2011年から不定期連載されている読み切り作品で、学校の「将棋部」を舞台にした4コママンガとなっています。最初に掲載されたのは2011年のNo.17で、その評判がよかったのか、約3ヵ月後のNo.23において再度掲載されました。その後も好評を得て次々と掲載を重ね、現在(2013年3月現在)、12回まで掲載を重ねています。特に、2013年に入ってからは、6号のうち4号で掲載されるなど、掲載ペースが日増しに上がっており、不定期の読み切りでありながら安定した人気を獲得しているようです。

 作者は、みやびあきの×maa坊となっており、みやびあきのが作画、maa坊が原作担当のようです。また、ペンネームの表記からは分かりませんが、このふたりは実の夫婦であるようで、これを聞いたときはかなり驚きました。
 このふたりのうち、作画のみやびあきのさんは、以前からマンガやイラストの活動を続けており、このヤングガンガンでは、ゲーム制作企画のキャラクターデザイン の仕事も見かけました。また、芳文社の「まんがタイムきららフォワード」では、2011年より「はぢがーる」という連載を続けており、こちらはコミックスも既に3巻まで出ています。今のところ、最もよく知られている仕事はこれでしょう。

 一方で、それとほぼ同時期に始まった「よん駒!」は、まだ不定期掲載でコミックスも出ていないこともあって、残念ながら、雑誌読者以外には、まださほど知られてはいないと思います。しかし、これは本当によく出来た良作4コマであり、ほどよく将棋ネタが織り込まれた楽しいコメディと、中性的でバランスの取れた作画で、多くの人に楽しめるマンガではないかと思います。
 ヤングガンガンは、このような4コマの不定期掲載を積極的に行っているようで、かつて「よん駒!」に先行して始まった「ゴッホちゃん」という異色の芸術家読み切りは、晴れてコミックスが刊行されました。この「よん駒!」も、17回の掲載でコミックス1巻分のストックがたまるようで、これからも掲載を重ねて是非とも刊行につなげてほしいと思います。


・みやびあきのとは?
 前述のとおり、今では主に「はぢがーる」の連載で知られていると思われるみやびさんですが、かつては同人で精力的に活動しており、イラストやマンガでいくつも本を出していました。その頃はイラスト作品の方が多かったと思いますが、しかしマンガのうまさにも光るものがあり、これはマンガでもいけるのではないかと思っていました。そして、のちに本当にプロへの道を志すようになったようです。

 そして、最初に手がけたマンガの仕事、これが携帯で配信されるコミックでした。確か「ManaStone」というタイトルで、これが全ページ完全フルカラーコミックだったはずです。実際に携帯の画面で見せられて、そのきれいな色に驚いた記憶があり、なんでも月産24ページほどフルカラーで描いていたようです。
 しかし、これは大変な力作だったと思いますが、結局ほとんど知られることなく、失敗に終わってしまったようです。どうも海外での配信が先行だったようで、日本での配信もずっと遅れていました。また、日本での携帯でのコミック自体いまだマイナーな域を出ておらず、いまだほとんど知られていないはずです。

 そんなわけで最初の仕事の結果は芳しくありませんでしたが、その後もさらなる努力を怠らなかったようで、今度こそ紙媒体でのマンガの仕事を獲得することになります。上記のとおり、ひとつは芳文社きららフォワードでの「はぢがーる」、そしてもうひとつはスクエニの主にヤングガンガンでの一連の仕事です。どちらも人気は上々で、今度こそ本当に成功したと見てよいでしょう。かつての同人時代から知っていたものとしては、こうして努力が実って見事に商業で成功した姿を見るのは、とても感慨深いものがありました。

 彼女の作風は、まずいわゆる「中性的な絵柄」が大きな特徴で、一般的な萌え絵とはちょっと異なる魅力があります。これは、個人的には非常に好きな作風で、それが商業においても見事に人気を得たのは大変うれしく思いました。


・個性的過ぎる部員たちが最高に面白い。彼らを引き締めるレオくんの姿にも注目。
 さて、この「よん駒!」ですが、主人公は白鷹レオという高校に入学したばかりの男の子。将棋部があると聞いてこの高校に入学してきたようで、本格的に将棋を志している高校生のようです。
 しかし、彼が入部した将棋部は、個性的過ぎる女の子ばかりの部活で、彼女たちの奇妙な行動に振り回されることになります。女の子たちがメインキャラクターの部活もの4コマということで、いわゆる将棋萌え4コマと言ってもいい作品かもしれません。

 最初に登場するのは、将棋部の部長だと言うきらり。彼女は、見た目きらきらしたギャルみたいな娘ですが、中身もギャルそのもので(笑)、きらきらした空気が漂っています。しかし、そんなキャラクターなのになぜか将棋は強い。レオくんを倒すくらい強い。そのギャップが面白い。
 副部長の萌々(もも)というキャラクターもまた一風変わっています。見た目黒髪のかわいらしい和服美少女なのですが、中身はいわゆる腐女子で(作中でも本当にそう紹介されている)、将棋の駒を擬人化したりしてあらぬ妄想を繰り広げます。最近では腐女子なキャラクターは珍しくなくなりましたが、将棋+腐女子は中々斬新な組み合わせだと思いました(笑)。

 さらには、お凛という部員、彼女はなぜか霊媒体質で、突然奇声を発したり呪い殺そうとしたりしてレオくんを驚かせます。対局中は棋士の霊を呼び寄せて教わりながら指すという反則技を披露してくれますが、しかし根は恥ずかしがりやで、レオくんに将棋を真面目に指そうと言われて真っ赤になって逃げ出したりするかわいらしい側面を持ち合わせています。
 さらに、うららという部員、こちらはなぜか忍者で、対局では忍術(?)を駆使して駒を消したりします。しかし目に見えなくするだけで、ルールはきちんと守る律儀さを持っていたりします。

 と、こんな個性的過ぎる楽しい部員ばかりですが、しかしともすればはっちゃけすぎる彼女たちを、要所で引き締めて真面目に将棋を指そうとするレオくんの存在にも注目です。というか、将棋に対して真面目な彼が中心にいて、時にかなり強い態度で導く姿勢まで見せるからこそ、将棋というテーマが崩れずにひとつのマンガ(将棋4コマ)として成り立っているような気がします。


・ほどよく織り込まれる将棋ネタが楽しい!
 さて、そんな個性的でかわいい女の子キャラクターたちが、作品最大の魅力であることは確かだと思いますが、しかし決してキャラクターだけの作品でもありません。メインテーマである将棋が、しっかりとコメディのネタに織り込まれているのは、非常に大きな長所だと思います。

 例えば、冒頭第1話では、部長でギャルっ娘のきらりが、将棋の駒を飾り付けた「デコ駒」なるものを見せてくれます。さらに、副部長で腐女子の萌々は、将棋の駒の擬人化が嵩じて、対局中に桂馬と香車を美形化して会話させ、「桂?何をする気だ」「お前のような直進バカ・・・・・・、今は死なせるわけにはいかぬ」などと妄想を繰り返し、しまいには対戦相手のレオくんに、自分の妄想通りに打つように涙ながらに訴えたりします(笑)。

 中でも特に面白かったのが、霊媒体質のお凛ちゃんの口寄せでしょうか。彼女は、かつての将棋の名人たちの霊を呼んで、アドバイスを受けつつ打ったりするわけですが、かわいい女の子たちの絵の中で、いきなりかつての強豪プロ棋士・大山十五世名人や彼のライバルだった升田幸三らが出てくるあたり、そのギャップに思わず笑ってしまいました。

 これらの将棋ネタは、将棋を知っている人でないと分からないような本格的なものはほとんどなく、「将棋を知らない人でも読めるように描いた」というのが基本コンセプトのようです。その点では、もっと本格的に将棋を扱ってほしい、将棋好きの読者にはちょっと物足りないかもしれませんが、わたしとしてはこのくらいのゆるやかなネタでも十分面白いと思っています。同じヤングガンガンの「咲」のように、より本格的にゲームを扱うスタイルのマンガもいいと思いますが、このようにちょっとした将棋ネタも楽しめて、気軽に読める4コママンガというコンセプトもいいと思いますね。


・ヤングガンガンの良作4コマがまたひとつ。作者のみやびさんのスクエニでの活動にも期待。
 以上のようにこの「よん駒!」、個性的なキャラクターと楽しいコメディという4コマのスタンダードをよく押さえつつ、将棋というこのマンガならではのテーマもうまく織り込んだ良作4コマになっています。ヤングガンガンは、4コマならずとも不定期掲載のマンガをよく出していますが、その中でも最も人気のあるシリーズになっているようです。最近では2回に1回以上のペースで掲載されるなど、準レギュラーといってもいい作品になっています。

 個人的にも、このマンガの「将棋」というテーマがひどく気に入っています。わたしは、今でこそ将棋からは長く離れていますが、かつては将棋はかなりやりこんだ趣味のひとつで、学校でも将棋部に入っていたことがあります(といっても小学校での話ですが)。あの頃、学校で将棋が指せることが楽しくて仕方なかったのですが、このマンガでその楽しさを思い出しました。作中に登場する大山名人や升田名人も、一昔前の世代の方がなじみの深い棋士ですし、その点でも懐かしく感じてしまいました。わたしのように将棋が好きな人は、今でもたくさんいると思いますし、このテーマで連載を続けていけば、多くの読者に親しまれるマンガになると思います。

 また、ヤングガンガンのみならず、作者のみやびあきのさんのスクエニでの活動に期待したいところです。苦労してようやくプロのマンガ家としてデビューし、芳文社のほうでは一足早く連載を獲得したみやびさんですが、スクエニでももっと本格的にやっていける実力はあると思うのです。今まではヤングガンガンでのこの不定期掲載 と、さらにはゲーム関連での仕事にとどまっていますが、もう本連載を獲得してもおかしくないでしょう。まずは、この「よん駒!」のコミックス発売と本連載化を達成して、その後の活動にも期待したいと思います!


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