<ペコロス>

2012・7・18

 「ペコロス」は、増刊ヤングガンガンビッグのVol.2から始まった連載で、その後新創刊されたビッグガンガンへと連載が引き継がれました。増刊時代から好評だったようで、そのままビッグガンガンでも当初から人気作品のひとつとなっています。

 作者はシバユウスケ。元々は芳文社のまんがタイムきららキャラットで連載を行っていた作家で、そこでの連載「チェルシー!」は、2008年から2010年まで2年ほど連載され、コミックスも2巻ほど出ています。そちらでの連載も好評だったと思うのですが、しかし連載は2年で終了し、以後しばらくマンガの連載の仕事は途絶えていました。

 しかし、2011年の6月になって、上記の増刊ヤングガンガンビッグで連載開始。スクエニでの新連載はちょっと意外でしたが、見事に好評を博したようで、当初の隔月刊行での連載から、ビッグガンガン移籍以降は晴れて月刊連載となりました。芳文社の4コマ誌からこうしてスクエニへと移籍して成功した例は、割と少数のようで貴重だと思います。

 作品の内容ですが、家が隣同士で幼なじみの子供たちの家は、実は地下でつながっているシェアハウスとなっていて、そこで共同生活を送る4人の賑やかな生活を楽しく描いたコメディとなっています。かわいいキャラクターたちの、和気あいあいとした掛け合いが面白く、気兼ねなく誰もが笑って楽しめる作品になっています。
 ネット上のこのマンガのレビューを当たってみると、いくつかの場所で「苺ましまろ」と雰囲気が似ているというコメントを目にしました。小さくてかわいいキャラクター同士の楽しい掛け合いという点では、確かにそんな印象を受けるかもしれません。このマンガが好きだった読者には、特におすすめしていいと思います。

 (参考)【オススメ】シバユウスケ/ペコロスマンガ一巻読破


・芳文社・スクエニ間の移籍作家あれこれ。
 いわゆる「きらら系」の萌え4コマを有する芳文社と、コアな読者を有するスクエニのコミックは、比較的親和性は高いと思いますし、いくつか出版社の間で移籍、というか「あちらの方でも連載を始めた」というケースはよく見られます。

 少し前では、かつて芳文社で「ドージンワーク」でヒットを飛ばしたヒロユキが、スクエニで「マンガ家さんとアシスタントさんと」を始めたケースがあります。初期の頃は両出版社で連載していましたが、今ではスクエニでの連載のみとなり、移籍した形となっています。

 逆に、スクエニから芳文社へと移籍した例としては、かつてガンガンで「女王騎士物語」を描いていた下村トモヒロが、今では芳文社のまんがタイムスペシャルで「シュガービーチ」というビーチバレーギャグマンガを描いています。下村さんは、かつてはスクエニでもかなりの人気作家でしたが、今では他の出版社に活動の場を移しているようです(芳文社意外では、集英社のジャンプSQ.19でも連載中)。
 同じく、スクエニから芳文社へと活動の場を広げているケースとしては、カザマアヤミが挙げられるでしょうか。今でもスクエニのJOKERでも連載を行っていますが、今はどちらかといえば芳文社の活動の方が中心になっているような気がします。

 そして、今回は、かつて芳文社のまんがタイムきららキャラットで「チェルシー!」の連載を行っていたシバユウスケが、こうしてスクエニのビッグガンガンで連載することになりました。「チェルシー!」は、主人公と友達3人の4人組が漫才カルテットを結成して活動する話で、相当面白かったと思っていただけに、こうしてスクエニでも新しい連載が無事に定着して人気を得たのは、大いにうれしかったですね。


・姉妹×姉弟4人組のシェアハウス共同生活が楽しい!
 このマンガの主人公は、青田(あおた)家の高校一年生・小学六年生の姉妹と、菜原(なはら)家の同じく高校一年生・小学六年生の姉弟の4人。彼らは上も下も同学年の幼なじみで、家も隣同士で仲良く暮らしています。しかし、実は、その隣同士の家は地下の共有空間でつながっていて、他人には秘密のシェアハウス生活を送っていたのです。
 しかも、4人の両親はいずれも海外へと旅立ち、子供達はいまの家から離れたくないと残っているのですが、しかし「共同生活が他の人にバレたら今の家を引き払って即両親の元に合流」という条件を付けられています。それゆえに、仲のよい友達が家に遊びに来るたびに「ばれるか?」というドキドキの展開も楽しい、ちょっと変わったコメディとなっています。

 青田家の長女は、冬果(とうか)。「性格はいたって乱暴」「成績は普通、運動はそこそこ」「スタイルは残念」などと紹介される活発な女の子で、しかしこのシェアハウスではみんなをまとめる母親的存在となっています。一方でなぜか年上の親父が好きというちょっと変わった性癖も(笑)。対して、妹の環(たまき)は、こちらも明るい性格ですが、お調子者でいたずら者なところがあり、他のみんなによくちょっかいを出して楽しんでいます。

 対して菜原家の長女・菘(すずな)は、おっとりとして少し天然の入った性格のお姉さん。美人でなにげにクラスの男子にも人気もあるのですが、本人は冬果が好きな百合気質で、いつも冬果のことをきにかけています。その弟の蕗(ふき)は、どこか抜けたところのある菘の世話をし、家事も一手に引き受けているしっかり者。彼もなにげに冬果のことが好きで日々気にかけています(冬果大人気ですね)。

 この4人が、地下が共同のリビングルームになっているシェアハウスで、あるいはそれぞれが通う学校で、賑やかに楽しく過ごしている様子が、とても楽しく描かれています。なんというか、「和気あいあい」という表現がぴったりするような作品だと思います。この手の4コママンガでは、近しい関係で近くに住むキャラクター達が、こんな風に楽しく過ごす話はよくありますが(ひとつの定番ですね)、しかしこのマンガの場合「シェアハウスでひとつの家で暮らしている」ということで、より近い家族のような一体感まで感じられます。そのドタバタ賑やかな楽しさが心地よい作品となっていますね。


・4人の周囲を取り巻く友達も加わってさらに賑やかに。
 そして、この4人の学校での友達が、時に家にやってきたり、あるいは学校やお外で共に遊んだりといった展開が加わることで、さらに賑やかで楽しいコメディとなっています。
 とりわけ賑やかなのが、環の小学校の女友達の深舞・雫コンビと、蕗の小学校の男友達の成人・卓・智トリオでしょうか。とりわけ、4話で4人の家にやってきた深舞・雫コンビは、とりわけ活発な雫の方が家の中に興味津々で、何か秘密を暴こうとやっきになって励み、それに対して環たちが必死に隠そうとするくだりがとても笑えます。一方で、おとなしい少女の深舞(みまい)の方は、蕗のことが好きでストーカー行為にまで走ろうとする危なさを披露(笑)。小学生ながらこの個性は侮れません。

 一方で、冬果・菘の高校の友達として登場するのは、五十嵐町子と佐藤元(はじめ)。町子は、さばさばした性格でふたりの数少ないフォロー役。一方で元は、菘のことがすきなのですが、その行動が空回りしていらぬ騒ぎを起こしてしまうギャグキャラクターとなっています。

 彼らが登場する話で一番良かったのは、小学生組の深舞・雫と成人・卓・智たちが一度にシェアハウスにおしかけ(笑)、環と蕗のふたりを誘って、近くの公園でみんなで雪遊びをする第7話でしょうか。子供らしく雪に目を輝かせて雪合戦をしたりそり遊びをしたり、大勢で遊ぶ賑やかさが出ていてとてもよかったと思います。最後には様子を見に来た冬果と菘も加わってみんなで雪合戦で締め。

 ただ、こういった賑やかさ全開のエピソードの一方で、ちょっとおだやかな、あるいはしんみりした話がときに見られるのも、いいアクセントになっていると思います。第7話は、実は二部構成になっていて、小学生組が公園に出かけて雪遊びをする一方で、高校生の冬果と菘は家のこたつでのんびりと過ごし、遅れて家に来た町子とともにちょっとした一騒動といったエピソードになっていて、こちらはこちらでいいなと思ってしまいました。
 また、1巻の最後の10話、環が3階の屋根裏部屋でひとり星を見て過ごしていた折、突然の来訪者がやってくるエピソードも印象深い。これは、今までになく落ち着いた雰囲気のちょっと不思議な話となっていて、環の隠れた心情が描かれる最後の展開も加わって、思わず感動する一編となっています。


・絵ものびやかできもちいい快作。これはいい1Pコミック。
 さらに、こうした楽しいエピソードを描く、シバさんの作画もいいですね。すごくかわいいキャラクターなんですが、その動作がのびやかで実にアクティブに描かれていてとても気持ちいい。その一方で、細かい背景まできちんと書き込む繊細さも見られ、画面の密度がほどよく濃くていいですね。決め細やかにすごく丁寧に描かれた作画ではないかと思います。

 あと、そうした決め細やかさは、設定の作りこみにも表れています。4人が暮らすシェアハウスなどは、1階がそれぞれの部屋の台所やリビング、2階がそれぞれの個室、そして地下に共有のリビングでそのさらに下には屋内プールまであるという驚きの設定で、その間取りもきっちりと決められていて、雑誌連載時には前書きで紹介されたこともありました(コミックスにも収録されています)。こうした丁寧な仕事ぶりには好感が持てますね。

 今のビッグガンガンは、これ以外にも連載本数が多く、看板クラスの作品もいくつもありますが、この「ペコロス」もかなりいい線行っていると思います。今のところは雑誌の中堅くらいかな?と思いますが、コミックスの1巻は中々好評のようですし、これからさらに人気が上がっていきそうです。誰もが楽しく笑って読める、かわいい1Pコミックになっていると思います。シバユウスケさんの芳文社での前作は、はからずも2巻どまりで終わってしまいましたが、新天地となったこのビッグガンガンの連載は、最初からずっと好評のようで、さらなる進展にも期待できると思います。


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