<キミキス after days>

2008・4・26

 「キミキス after days」は、ガンガンパワードで2007年9号(10月号に相当)から始まった連載で、タイトルどおり、PS2の恋愛シミュレーション「キミキス」を原作にしたゲームコミックです。短期連載であり、2008年6月号にて全4回で終了しました。

 この「キミキス」という作品は、これまでに何度もコミック化されており、おそらくはこれは4番目か5番目に相当する作品だと思われます。作者は、原作に香月アイネ、作画に佳月玲茅(かづきれち)が担当していますが、このどちらもが新人の作家です。作画担当に新人を採用するケースはスクエニではよく見られますが、原作者の方まで新人が担当するケースは、かなり珍しいのではないかと思われます。

 そして、ガンガンパワードにおいても、既に一度コミック化されており、その時には「lyrical contact」というサブタイトルが付けられていました。この時のコミック化担当は黒井みめいで、この作者も新人作家でした。最近、スクエニでは、このように新人にゲームコミックを担当させるケースがかなり目立ちますが、その中でもこの「キミキス」は、2回のコミックス化すべてが新人、原作者まで新人と、とにかく新人ばかりです。

 そして、やはりまだまだ技量には乏しい新人のためか、どの作品も完成度は今ひとつであり、残念ながらゲームコミックとしては決して優れているとは言えない作品になっています。他社の「キミキス」コミック化作品と比べても今ひとつで、マイナー雑誌であるパワードで掲載されているせいか、圧倒的に知名度は低い状態で推移しています。
 そもそも、なぜパワードはそこまで「キミキス」にこだわるのでしょうか? なぜ他社と競合してまで、他のメーカーのゲームをコミック化しなければならないのか。しかも、まだまだ技量が未熟な新人に担当させるのか。そのあたりの意図がまるで判然としません。

 ただ、この「after days」に関しては、技量はまだまだ未熟ながらも、新人が精一杯取り組んでいる姿勢は感じられ、そこには好感が持てます。他の「キミキス」作品に比べて、絵がかわいいのが特徴的で、これは黒井みめいの「lyrical contact」の方にも言えており、パワード発の「キミキス」作品のひとつの特徴となっているようです。


・「キミキス」のコミック化作品について。
 この「キミキス」というゲームは、どういうわけか多数の出版社でコミック化が何回も行われています。この手の美少女ゲームでは珍しくないことではありますが、それにしてもここまで何回も行われるのは珍しい。

 まず、ゲーム発売元のエンターブレインのゲーム雑誌「ファミ通PS2」に連載されたものがあります。ゲーム発売元の出版社からのコミック化ということで、一応はこれがオフィシャルに最も近いものかもしれません。

 しかし、「キミキス」コミックの中で、最も大きな注目と人気を集めたのは、白泉社『YOUNG ANIMAL』に連載された東雲太郎(しののめ たろう)によるコミック化作品で、これには「various heroines」というサブタイトルが付けられています。この東雲版の「キミキス」、やたらエロいとマンガ読者の間で大評判を呼び、一躍注目を集めます。「キミキス」のコミック作品の中では、これが他を完全に凌駕して圧倒的な大人気を獲得します。「キミキス」のコミックと言えば、まずほとんどの人がこれを思い浮かべるような状態です。

 そして、その東雲版「various heroines」とほぼ同時にパワードで連載が開始されたのが、黒井版の「lyrical contact」でした。しかし、この黒井版、東雲版に比べるとまったく知られることなく、極端に知名度の非常に低い状態に陥ってしまいました。掲載誌のパワードがあまりにもマイナーだったことが最大の理由ですが、作品の内容でも突出したところがなく、ひどく平凡な作風に終始したことも理由のひとつに数えられるでしょう。雑誌読者の人気もなかったのか、早々に打ち切りとなり、ようやくコミックス1巻を出しただけで完結してしまいます。もっとも、コミックスが出た後には、雑誌外の読者にはそれなりに評価されたようですが・・・。

 これ以外の「キミキス」作品としては、秋田書店『チャンピオンRED いちご』において、「キミキス 〜スウィートリップス〜」のタイトルで連載が開始されています。これは、パワードでの後発作品であるこの「after days」とほぼ同時期の開始であり、まだまだ「キミキス」コミック化の流れは続くようです。


・絵は確かにかわいいのだが・・・。
 さて、この「after days」の内容に移りますが、パワードの前作「lyrical contact」とは関係のない話になっています。「lyrical contact」では、原作ではメインヒロインである星乃結美(ほしの ゆうみ)が中心のストーリーでしたが、この「after days」は、原作では天才少女の二見瑛理子(ふたみ えりこ)が物語の中心となっています。瑛理子以外では、主人公の妹である菜々が出てくる程度で、それ以外のヒロインはほとんど出てこないストーリーになっています。かつ、これは「after days」というタイトルにも表れていますが、原作ゲームでは最後に主人公とヒロインが結ばれるのですが、このマンガ版ではその「結ばれて付き合うようになった後」のストーリーを描くコンセプトになっています。

 このように、原作とは直接の関係のないオリジナル色の強いストーリーで、かつ全4話と短い物語となっており、登場人物も比較的少なく、ごく小品的な印象の強い作品となっています。そのため、単独の作品としては、今ひとつ物足りない感は否めません。

 ただ、マンガの絵は中々にかわいらしいものとなっています。佳月玲茅さんの描くキャラクターは、どれも非常にかわいいもので、この作品の前に描かれた読み切りやアンソロジー収録作品でも、どれも素朴な絵で描かれるかわいい女の子がひとつの魅力となっていました。絵のレベルそのものは決して高いものではなく、新人らしくまだまだ未熟な点は目立つのですが、それでも丁寧に描かれたキャラクターの可愛らしい絵は、かなり好感の持てるものとなっています。

 しかし、確かに絵のかわいさはいい点ではありますが、これが「キミキス」のコミック化作品となると、今ひとつ原作の絵を再現していないところが気になります。これは、パワードの前作・黒井版「lyrical contact」もそうなのですが、とにかくパワードの「キミキス」作品は、原作のイメージを再現しているとは言い難いのです。この作品のメインヒロインである二見瑛理子は、原作ではクールな天才少女なイメージなのですが、この佳月さんの作画では、見た目だけなら単にかわいいイメージのキャラクターになっています。

 一方で東雲版の「various heroines」の方は、よく原作のイメージを再現しているので、ここでひどく大きな見劣りがしてしまいます。なぜ、まだ技量が不足の新人に、しかも原作のイメージとは異なる絵柄の作家に、ゲームコミックを描かせるのか。このあたりで、このコミック化企画そのものに、どうしても違和感が拭えないのです。


・ストーリーは全体的にはそこそこだが、最終回は良かった。
 ストーリー面で見てみますと、付き合うようになったふたりがさらに仲を深めていくというエピソードが中心で、そこに主人公を溺愛する妹の菜々が、お邪魔虫的な役割で色々とちょっかいを出してくる、というような話になっています。また、今回はヒロインの二見瑛理子(ふたみさん)視点での物語で、彼女の目から主人公(相原)を見る形で話が進んでいきます。今回の主人公の相原は、なぜかやたら無邪気な天然さんとなっていて(笑)、まったく悪気のない明るいキャラクターとして描かれ、一方で二見さんの方が色々と悩んでいきますが、おおらかな相原にも助けられてなんとか仲を深めていくという話が多い。

 ただ、毎回のエピソードについては、プールに行くとか温泉旅行に行くとかの定番の展開で(高校生で温泉旅行は早すぎるような気もしますが)、いかにもお色気的なシーンも多く、まずまずこの手のラブコメならよくあるかなというところで、あまりこれといったものは多くありませんでした。この作者独特のかわいらしい絵柄で、二見さんの反応がかわいく描かれているのは良かったと思いますが・・・。

 しかし、そんな中で、連載4回目の最終回は良かったと思います。連載の最後でアメリカに留学する話が出てきた二見さんが、相原と別れなければならないことに悩みますが、相原の方は持ち前の明るさで気にしようとせず、あっさりと「自分もアメリカに行く」と言い、「結婚しよう」とまで宣言します。そして、その相原の明るさ・真摯さに引かれる形で、自分も大きな決断の一歩を進み、最後には結婚というエピローグにまで繋がります。このあたりの盛り上がりは心地よいもので、最後の最後は実にいい終わり方だったと思います。


・とはいえ、この企画自体は疑問。作者にはオリジナルを描かせてほしかった。
 しかし、全体としてみればまずまずの出来ではありましたが、やはり「キミキス」のゲームコミックとしては今ひとつといったところで、やはり新人の未熟さと、わずか4話で終了という中途半端な短さが目に付いてしまいました。最初からこの短い連載期間は決まっていたのか、それとも打ち切りだったのかはよく分かりませんが、いずれにせよひとつのゲームコミックとしては物足りない構成です。

 そして、このパワードの「キミキス」コミックは、前作の黒井版も合わせて、どちらも中途半端なコミック化に終始しています。2作とも、完全な新人にコミック化を任せており、その技量にはまだまだ未完成なところも多く、特に絵柄で原作のイメージを再現しているとは言えませんでした。他社の「キミキス」コミックと比べても一段劣る扱いになってしまったのも必然と言え、雑誌のマイナーさも手伝って、あまり多くの人に知られることなく推移しています。
 さらに、前作の黒井版は、当初から今ひとつ編集側に企画そのものへの熱心さが感じられず、しかも開始3話の段階であっさりと打ち切りが決まってしまい、あまりにも誠意のなさが目立つ展開に終始してしまいました。これは到底いただけません。
 そんな前作がある上で、今回もう一度「キミキス」のコミックを展開することにどれだけの意味があるのか、疑問が募ります。しかも、今回も担当は新人作家です。新人にゲームコミックを描かせて連載の実力をつけさせようという試みなのかもしれませんが、このような中途半端な企画では成果が出るかは不明です。

 それよりも、作者の佳月さんには、是非ともオリジナルの連載を描かせてほしかったところです。佳月さんは、かつて掲載された読み切りの出来がかなりよく、参加したアンソロジーでの執筆作品も中々に面白く、これからもオリジナルの作品が読みたいと思っていた作家でした。そんな人が、この「キミキス」のコミック化をさせられ、絵柄的にも合っていない原作ゲームの作画をさせられるのは、大いに疑問でありました。次回の登場があるならば、今度は是非ともオリジナルの連載を手がけてほしいと思います。


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