<おとして↓アプリガール>

2008・6・9
一部改訂・画像追加2009・4・29

 「おとして↓アプリガール」は、ガンガンWINGで2008年5月号より始まった連載で、同誌の2008年に入ってからの4番目の新連載に当たります。ガンガンWINGは、2008年に入ってまた積極的な新連載攻勢を始めたようで、これが4カ月連続新連載の4番目の作品になりました。

 作者は望月菓子(もちづきかこ)で、同誌のマンガ賞である「天の翼賞」を受賞したWING出身の新人です。その受賞作は、「おぼっちゃま、ご指導します!」というタイトルの作品で、2007年5月号に掲載されており、この受賞作の掲載から1年という、比較的早い時期での連載デビューとなりました。それ以外に読み切りが掲載されておらず、まさにいきなりの連載昇格の感が強い起用でした。WINGでは、何回読み切りを載せても中々連載を獲得するまでには至らない新人も多いので、かなり恵まれた待遇であると言えます。

 しかし、肝心のこのマンガの内容は、ここ最近のWINGではほとんど見られなかった、露骨な萌えマンガとも言えるもので、素直に評価できるものではありませんでした。設定的にもありきたりの感が強く、他社のマンガでよく見られるようなありがちの作品にとどまっている感がありました。技量的にもまだまだのところがあり、ストーリー作りもぎこちなく、なにより絵があまりうまくありません。そのため、いまひとつ萌えることすらしづらいという、中途半端な作品になってしまいました。

 それにしても、WINGがこの時期になってここまで露骨な萌えマンガを投入するとは、あまりにも意外な決定でした。誌面の方向性と合っているかははなはだ疑問の感は否めず、しかもマンガの完成度も決して優れているとは言えませんでした。新連載1回目での巻頭カラー、2回目のセンターカラーなど大きな扱いが目立ちましたが、そこまでの作品なのかは疑問の残るところであり、末期のWINGにおいて禍根の残る作品になってしまったと思います。結局最後は2009年のWING休刊と共に最終回を迎え、他の人気作品が移籍して継続する中、あっさりと終わってしまいましたが、これは仕方のない結果だったと言えるでしょう。


・あまりにもステロタイプでありがちな萌えマンガ。
 作者の望月さんは、読み切りの「おぼっちゃま、ご指導します!」からして、萌え要素・エロ要素のかなり強い作品であったため、新連載であるこれも、告知当時から萌えマンガではないかと推測していました。そして、その予想は完全に当てはまり、しかも予想以上にステロタイプな萌えマンガになっていました。これは、他社の少年マンガ誌では珍しくないかもしれませんが、WINGの誌面ではひどく意外に映りました。

 どんなマンガかと言うと、田舎の島の高校に赴任してきた新人女性教師が、なぜか「アプリガール」なる人工知能を実体化した美少女たちの育成を担当させられることになり、しかも一クラスすべてが女の子ばかりで、悪戦苦闘しながら彼女たち全員の面倒を見ることになるというもの。アプリガールをダウンロード(実体化)させるには、何らかの条件が必要なようで、偶然その条件を満たすたびに、新しい女の子たちが登場する流れになっています。

 このような基本設定を見るだけで、いかにも他でも見られそうなありがちな美少女萌えマンガを思わせるもので、独創的な作品とは到底思えませんでした。 むしろ、どこかで聞いたようなマンガだとも思ってしまいます。具体的には、赤松健のAIとまとネギまを足したような設定のマンガだと思ってしまいますし、本当に影響を受けて作られていたとしても不思議ではない内容です。あるいは、同時期にサンデーで連載開始された「神のみぞ知るセカイ」の設定にも近いところがあり、しかもこちらの方はあからさまにマンガの完成度が低いため、ますますもって見劣りします。

 このようなマンガでは、まず初見の印象からしてぱっとしませんし、むしろあまりにもありがちな作品が登場したことで、がっかりした気持ちの方が大きいものでした。他にも多くの読者が、少なからずそう感じてしまったのではないでしょうか。唯一、主人公の教師も女性であり、美少女たちとの間で百合的な交流が見られるのは、他の少年マンガとは異なる要素かもしれませんが、これも単にさらなる萌え要素を追加しただけと思えるもので、決して斬新な内容を確立するまでには至っていないと思えるのです。


・ストーリーもおざなりで面白いとは言えない。
 そして、肝心のストーリーもさほど面白いとは言えません。
 とにかく、女の子たちとエロ要素も交えたドタバタ騒ぎを繰り広げるシーンばかりが目立ち、それ以上の深い内容が薄れてしまっているようなのです。女の子たちの個性も、いかにもありがちというか、ギャルゲーなどで見られる不自然な個性をそのまま付けたかのようなキャラクターが多く、キャラの個性という点でも見劣りがします。

 加えて、露骨かつ無意味なパンチラや半裸などのエロ要素も目立ちますし、キャラ同士の百合的な絡みも見られ、これはこれまでのWINGの萌えマンガとは明らかに異なります。ここで、いわゆる「ゆる萌え」と呼んできた、中性的な作風で穏やかな雰囲気で萌えさせるマンガとは一線を画するのです。一応、一部の少年マンガ的な連載「機工魔術士」や「瀬戸の花嫁」などには、ある程度エロ・お色気シーンが見られましたが、それともまた異なるような気がします。作品の一部に萌え・エロがあるのではなく、最初から萌えメインでそれを見せるために作品が作られている。その点で明らかに違うのです。

 そんな内容で、いかにもな個性を持つ美少女キャラたちが、微妙なエロ要素や百合要素メインのドタバタ騒ぎを繰り広げる。これは素直に評価できない内容です。一応、主人公の新任女性教師(黒瀬潤)が、かつては誰とも交流できず勉強ばかりの寂しい学校生活を送っていたのが、ここで無邪気な女の子たちと触れ合って本来の楽しい学園生活を取り戻す、という感動的な(?)ストーリーが根底にはあるはずですが、それはあくまで一部の要素にとどまっているようで、決して強い印象を残すことは出来なかったようです。


・絵がうまくないのが最大の問題。
 そして、ストーリー以上に問題だと思えるのが、やはり作画のレベルになります。
 はっきりいって、まだまだ絵は下手だと言い切ってよいでしょう。キャラクターにしろ背景にしろ効果にしろ、全体的に絵のレベルが低く、見た目からして印象を大幅に落としています。

 この手の萌えマンガの場合、ある意味内容以上に絵のうまさの方が重要だと思えるところもあります。最低でも「かわいい美少女」が描けないと意味がないですし、それ以外の箇所でも全体的に綺麗で見映えのする絵の方が、読者を惹きつけやすいことは言うまでもないでしょう。しかし、このマンガは、残念ながらそこまでのレベルには達していないようなのです。

 このマンガの場合、女の子の絵はまだそれなりにかわいく描けているところもあります。しかし、それでもキャラクターの作画レベルはあまり高いとは言えず、線の少なく不安定な作画に終始しています。そして、キャラクター以外の全体的な作画レベルでも明らかに劣っており、さほど綺麗な画面を作り出せていません。背景が描けていないというより、キャラクター以外の絵があまりにも稚拙に見えます。そのため、ぱっと見た雰囲気だけでも大きく見劣りがしてしまうのです。

 はっきり言えば、この作画レベルでは、連載を任せられるかどうかギリギリのところで、WINGのほかの連載作品と比べても、明らかに見劣りがする状態になっています。特に、2008年に入ってからの他の新連載、特に「戦国ストレイズ」(七海慎吾)、「兄弟-BROTHERS-」(成瀬芳貴)のふたつが、非常に達者な作画を見せてくれていたのとは対照的で、WINGの連載としては極端に物足りないものとなっていました。

 ところで、この作者の読み切り「おぼっちゃま、ご指導します!」の時には、そこまでの作画レベルの低さは感じませんでした。こちらの方が、画面の描き込みがよく出来ていて、さほど作画で見劣りするような作品ではなかったと思います。しかし、どういうわけか、初連載作品であるこちらの方が、明らかに作画で劣っているようなのです。もしかすると、作者がまだ連載になれていないところもあったのかもしれません。


・方條ゆとりの妹ということも効果は薄かった。
 そして、連載の途中で、作者の望月菓子さんが、実は同誌で「ひぐらしのなく頃に 綿流し編(目明し編)」を連載していた方條ゆとりさんの妹であることが明かされ、それをフィーチャーしたコミックスの特典が配布されたことがありました。この事実には確かに驚かされることがありましたが、しかし、だからといってこのマンガの評価が上がるわけでもなく、むしろ優秀だった姉の作品に比べて明らかに見劣りすることで、さらに連載に疑念を抱いてしまいました。

 このふたり、実の姉妹であり、かつ姉の方條さんの連載のアシスタントを望月さんが務めていたこともあり、実のところ絵柄がかなり似ています。これは、連載初期のころから指摘されていたことであり、姉妹であったことが明かされた時も、「なるほど」と思わずにはいられないところがありました。しかし、その絵の完成度には明らかに大きな違いがあり、どうにも望月さんの方の作画のつたなさばかりが目に付いてしまったのです。

 もちろん、作画だけでなく内容でも大きく見劣りします。方條さんの「ひぐらしのなく頃に 綿流し編(目明し編)」は、ゲームのコミック化作品ではあるものの、その完成度は非常に高いもので、原作ストーリーの再現度でも申し分ありませんでした。それと比較すれば、これほど劣るステロタイプな萌えマンガを、妹の方に連載させることに、どれだけの意味があったのか本当に疑問です。通例、このようなマンガ家同士のつながりは、うまく働けば相乗効果で双方の創作レベルや読者人気の上昇が期待できることもあるのですが、このケースではそのようなことはほとんどなく、まったくもって効果は薄かった(なかった)と思います。


・いくらなんでもこれはありえない連載だった。
 以上のように、この「おとして↓アプリガール」、決してレベルが高いとは言えない連載で、ここ最近のWINGの新連載の中では、大幅に見劣りがする作品となってしまっていました。萌えマンガとしてあまりにも平凡でありきたりな設定と、さほど読み応えのないストーリー、そしてなによりも決してうまいとは言えない作画レベルと、全体的にレベルの低さ、つたなさが目立つ作品になっているようです。はっきりいって、このマンガが誌面の一角を占めていることが恥ずかしかったくらいの作品で、当時のWINGの誌面レベルの大きな劣化を呼んだことは間違いないところでしょう。

 そして、何よりも問題なのは、これが今までのWINGの連載の方向性とは、明らかに異なっていたことです。この時まで、WINGでここまで露骨な萌えマンガが見られることは、一度もなかったと思います。いや、これまでのWINGも、萌えマンガと言えるマンガには事欠きませんでしたが(笑)、それでもその多くは、「ゆる萌え」と呼ばれる穏やかな雰囲気重視のマンガで、露骨な萌えやエロ要素は極力避けていたように思います。また、一部にエロ表現が見られるマンガはあっても、そればかりを狙ったようなマンガはほとんど見られませんでした。中には「D線上のアリス」という例外中の例外もありましたが、これは当然ながら読者の支持をまったく集めることはできませんでした。

 しかし、このマンガは、それらのマンガとは明らかに一線を画す、実にありがちなステロタイプの萌えマンガになっていますし、このようなマンガをWINGが連載決定した事自体が、個人的にはひどく大きな衝撃でした。なぜ、今になってこのようなマンガを連載することになったのか?
 理由を考えるに、どうも当時のWINGは、それまで長く続けてきた路線とは異なる連載を、積極的に採り入れようとしていたようなのです。ひとつには、2007年より続く王道ファンタジー路線。「ネクロマンシア」や「磨道」「イグナイト」などがそれに相当します。あるいは、ある程度女性読者を想定したと思えるマンガ。これは、2008年からの新連載である「戦国ストレイズ」や「兄弟-BROTHERS-」が相当するでしょう。

 そして、このような路線とはまた別に、新しいタイプのマンガとして、このような萌えマンガがあってもいいと考えたのかもしれません。しかし、さすがにこのようなマンガの存在は、少々考え物ですし、また、肝心の作品の完成度が高いとは言えないのもあまりにも厳しかった。このようなありがちで他誌でもよく見られる作品ならば、それらを超えるようなより高いレベルの作品が必要なはずです。しかし、この「おとして↓アプリガール」は、むしろ明らかに低いレベルの作品にとどまっていました。これは、末期のWINGにとって、最大の懸念となった連載であり、最終的には休刊へと向かう同誌の劣化を露骨に示していた作品だったと思います。


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