<AQUA(アクア)>

2003・9・4

 6万年ぶりの火星大接近、ということで特別に更新してみました。

 このマンガは連載終了の形を採っていますが、実際には連載が続いています。コミックブレイドに掲載誌を移して「ARIA(アリア)」として連載が続いているのです。「AQUA」と「ARIA」はタイトルが違うだけで内容的には全く同じですので、このページは「ARIA」のレビューと考えても問題ありません。

 前置きが長くなりましたが、では肝心の作品内容について。
 作品の舞台は23世紀の火星。完全にテラフォーミング(地球化)され、青い水の惑星として生まれ変わった星で、地球のヴェネツィアをモデルに作られた街「ネオ・ヴェネツィア」が舞台です。今見える火星は赤いですが、「AQUA」の火星は青いです。
 主人公の水無灯里(みずなしあかり)は、地球から火星のネオ・ヴェネツィアにウンディーネ(=ゴンドラの漕ぎ手)になるためにやって来た女の子。彼女のウンディーネとしての成長物語と、そしてネオ・ヴェネツィアの美しく、ゆったりした世界の雰囲気を堪能することが作品のテーマです。

 まず、このマンガはなんといっても世界観が素晴らしい。水の都ネオ・ヴェネツイアの美しい光景を見ているだけで楽しい。まあこのサイトは画像が一切ないし、このように文章だけで語ってもあまり意味はない。是非実際に作品を見ていただきたい!
 そして、実際の(地球の)ヴェネツィアにある名所やイベントが積極的に採りいれられ、かつ23世紀の火星ということでSF的な光景もあり、その一方では幻想的なファンタジーを思わせる雰囲気もある。SFとファンタジーの世界観が巧みに融合した、なんとも居心地のいい雰囲気が感じられます。マンガに世界観を求めるマニアな読者には大変受けのいいマンガです(笑)。

 目で見る世界観だけではありません。このマンガのひとつのテーマとして「ゆっくり生きよう」という意識があり、それ故にこの作品全体に流れるのんびりとした雰囲気がまた素晴らしい。まさに癒し系のマンガ、ヒーリングコミックの真骨頂がここにあります。

 それに加えて、主人公灯里のウンディーネとしての成長が丁寧に描かれているのもいいです。作品のゆったりした雰囲気同様に、一歩一歩しっかりと成長していく灯里を見て、読者の方も成長した「気になる」のがよい(笑)。このマンガには特に起伏のあるストーリーはないんですが、このようにしっかりしたテーマが与えられているので作品に一本筋が通っています。

 そして天野さんだけあって女の子がとてもかわいい。とはいえ男性受けを狙ったマンガではなく、かといって女性向けとも言い切れない。このマンガは、元々は少女マンガ誌の「ステンシル」に連載されていたんですが、純粋な少女マンガ(=女性向けマンガ)ではなく、女性読者でも男性読者でも無理なく読める中性的なマンガです。このあたりはいかにもエニックスらしい作品といえるでしょう。


 天野さんの連載はかつての「浪漫倶楽部」「クレセントノイズ」も非常に面白く、はずれがないのですが、この「AQUA」はかつての連載とはまた違う方向性の作品ということで、さらに作者の評価を上げるいい連載となりました。エニックスのもはや短くはない歴史の中でも屈指の名作といえます。


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