<BAROQUE>

2001・11・10

 PSの同名ソフトのコミック化です。作者は「魔神転生」「女神異聞録ペルソナ」のコミック化の定評も高い上田信舟さん。この「BAROQUE」もかつて先生が手がけたゲームコミックと雰囲気が近いということでかなり期待していました。
 だがその一方で、この原作ゲーム自体はとにかくコミック化すること自体が非常に難しいジャンルで、反面かなりの不安もありました。この「BAROQUE」というゲーム、典型的なRogue Like Game(*注)で明確なストーリーラインなど無く、コミック化など不可能と思われていたのです。

(*注)Rogue Like Game
 むしろ「トルネコ」「シレン」タイプのゲームといった方が分かりやすいのかな。ランダムに設定される環境(大抵はダンジョン)内でランダムに与えられるリソースを駆使してゲームクリアを目指すタイプのゲームの総称です。80年に登場した「Rogue」がその元祖であるとされます。
 この「BAROQUE」というゲーム、システム的には「Rogue」そのまんまといった感じですが、むしろその異常な設定と世界観で話題を呼んだゲームでありました。

 しかし、いざ実際に連載が始まってみると、これが非常によくできていました。もともとゲームをプレイしていても把握することが難しいような難解な設定をきちんと消化しており、かつ原作には無いも同然だったストーリーラインを巧みに構築し、ゲームファンならずとも読めるひとつのダークファンタジー作品に昇華させています。

 「BAROQUE」はとにかくマニアックなマンガです。まずその異様ともいえる設定が目を引きます。「大熱波」「神経塔」「異形(いけい)」「天使銃」「人工感覚球」「創造維持神」これらのキーワードを聞いただけでその異常さが伝わってきます。すべてが歪んだ世界が舞台です。
 しかし、本当にマニアックなのはそのストーリーです。果たして、このストーリーを原作ゲームを知らずに理解できる人間がいるのでしょうか? 一つ一つの要素が何を意味しているのかわからないまま、謎のままで読み進めなければなりません。もし一回読んだだけでこのストーリーを完璧に理解できる人がいたら、その人の方が異常です。ストーリーそのものを自分の手で解釈しながら手探りで読んでいかなければならない。これほどマニアックなマンガはGファンタジーでは他にないでしょう。マニア向けの濃いマンガ雑誌ならこういったタイプのマンガもあるんでしょうが、基本的に読みやすいマンガが揃っているエニックス系雑誌ではかなり珍しいタイプです。

 そして、この異常な世界を再現する絵柄がまたいい。世界の退廃的な雰囲気を実によく再現しています。もともと上田さんの絵がやや暗いイメージの絵柄で、それが「BAROQUE」の暗い世界観にフィットしていたともいえます。このあたりは上田さんにこのゲームのコミック化を任せた企画が成功したといえるでしょう。もともと「上田さんならBAROQUEのイメージが崩れることはないだろうし、安心できる。」という前評判もありましたし、任せて本当に正解でした。


 と、いうわけでこのマンガは難しいといわれた「BAROQUE」のコミック化をほぼこれ以上ない形で成功させており、かつゲーム未プレイの読者に対してもひとつのダークファンタジーとして楽しめるという、かなりの労作であると思います。とはいえ、あまりにもマニアックすぎてストーリーも設定も難解で、だめな人には全然だめでしょうね。少なくとも単純な少年マンガでお手軽にカタルシスを求めるような人にはダメでしょう。非常にマニアックな、人を選ぶ作品であると言えます。


2002・2・1

<連載終了に当たって追記>
 最後まできちんと描き切った優秀な作品でした。すべての謎が最後できれいに解かれたのが好印象で、ストーリーは申し分の無い出来といえます。テーマ的にも見るべきところがありました。地味ながら名作といえるでしょう。


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