<ブレイド三国志(短期連載版)>

2006・9・15

 「ブレイド三国志」は、少年ガンガンで2006年7月号から始まった連載です。短期シリーズの連載で、10月号をもって全4回の連載で一旦終了しました。終了後に姉妹誌で外伝の掲載も行われるなど、これ以後も本連載化へ向けての動きがあるかもしれません。作者は、原作が真壁太陽で、作画を壱河柳乃助が担当しています。

 内容的には、典型的な「三国志もの」の少年マンガで、三国志の英雄が現代(近未来)によみがえってバトルを繰り広げるという、過去に他誌でも似たような設定の作品をいくつか見ることができるようなもので、決して新鮮味は高くありませんでした。そして、肝心の内容も、様々な点で欠点が目立ち、決して優れているとは言えない作品に留まった印象があります。 毎回のページ数は非常に多く、大型新連載として誌面で大々的に盛り上げたにもかかわらず、短期のシリーズ連載で早期に終了するなど、ちぐはくな感が否めない企画でもありました。


・「いまさら三国志か」という印象は拭えない。
 まず、このマンガの企画を最初に目にして、わたしは「いまさら三国志マンガか」と真剣に考え込んでしまいました。余に「三国志」と名の付く作品が溢れている現状で、今になって三国志の連載企画を立ち上げる理由が思いつかなかったのです。しかも、「三国志の英雄が現代(近未来)によみがえってバトルを繰り広げる」という設定の作品には、すでに「一騎当千」(コミックガムで連載中)という強力な前例があり、その点でもありきたりな感は否めませんでした。
 そして、実際に予告の絵を見て、さらにその印象が強くなりました。その絵を見る限りでは、これまた既存の作品で主人公の若者たちが学園でバトルを繰り広げるという「天上天下」(ウルトラジャンプで連載中)という、非常に強力な前例があり、二番煎じの印象がどうしても拭えませんでした。

 はっきりいってこのマンガ、ぱっと見た印象だけならば、「一騎当千+天上天下」にしか見えないようなマンガで、著しく新鮮味に欠ける感は否めず、連載前から全くといっていいほど期待できませんでした。なぜこのような平凡な企画を立てるのか、ガンガン編集部の真意を疑ったくらいです。そして、連載開始後の作品の内容も、予想に違わず決して面白いとは言い難いものでした。


・主人公の暴走行為で終了した第一話。
 まず、大々的に新連載が始まった第一話では、暴力団の御曹司にして横浜の暴走族のリーダーでもある主人公・轟蘭市郎が、仲間と共に暴走行為を行い、ほぼそれだけで一話が終了してしまいます。主人公の立ち位置を示す目的は果たしているのかもしれませんが、それだけではいかんとも物足りない。それ以外の箇所でも、まず物語の基本的な設定の説明に終始しています。──近未来の地球で、中国が世界の中心として君臨している時代背景、「武霊士(ブレイド)」と呼ばれる三国志の英雄の生まれ変わりの存在、主人公の父親がブレイドで、対立するブレイドたちに殺されてしまったこと──などの諸設定が軒並み提示され、ほぼそれだけで一話が費やされています。とにかく説明ばかりが多いという印象でした。

 個人的には、主人公が暴走族のリーダーという設定も、あまり好きではありません。暴走族という存在が、昨今特に嫌われていることは明白であり、今の少年マンガの主人公としてふさわしいかは疑問です。一昔前ならば、このような不良を主役にした「ヤンキー漫画」がかなりの人気を得ていましたが、最近はもうかつてほどの流行りでもないでしょう。このあたり、何か「一昔前の古びたマンガ」の印象を受けてしまいました。
 主人公以外の登場キャラクターも、いずれも過去の作品で見たことのあるような外見の者が多く、特に「天上天下」との類似性もかなりの部分で見られたため、ここでまた「一騎当千+天上天下」の印象を強く持ってしまいました。これらの点においても、新鮮味に欠けた印象は拭えないままでした。

 そして、一話の最後で、主人公が最初の敵にあっけなく殺されてしまうという展開も、これまた非常に安易なものに感じられてしまいました。「どうせこのあとで復活するんだろう」としか思えなかったからです。最後まで面白みの無い展開で、ストーリー面でも見るべきところのない初回連載であり、今後の連載に不安を感じるには十分でした。


・主人公の前世の「人生ダイジェスト」で終了した第二話。
 そして、その次の第二話では、予想通り主人公が復活するのですが(笑)、その復活する過程で、主人公の前世であるという三国志の英雄「孫策」の生き様が長く語られます。今回は、この「孫策の人生ダイジェスト」という内容が話の大半を占め、これまた主人公関連の設定の説明に終始してしまった感があります。
 人生ダイジェストの内容はそんなに悪いものではなく、割と過不足なくよく描けていたと思いますが、それだけで大増ページの一話のほとんどが費やされるというのは疑問です。連載マンガのストーリー構成としてははなはだ不満でした。わたし個人としても、三国志についてはすでに多くの知識があり、孫策についての基本知識もほとんど持っていたので、この人生ダイジェストは決して新鮮には楽しめませんでした。三国志を知らない読者には楽しめたのでしょうか。


・ブレイドの基本設定の説明だけで終了した第三話。
 そして、次の第三話では、ようやく最初の敵とのバトルが開始されますが、今度はそのブレイドバトル関連の設定が大量に登場し、その説明に終始することになります。とにかくこのマンガは設定と説明ばかりが多い。

 万物に宿る魂の力「TAO」を使ってブレイドバトルを行うこと、バトルでは「TAO」の力で「陣」を張って配下の兵士たち(?)を召喚して戦うこと、ただし陣の大きさはブレイドの周囲3メートル四方で、この戦闘空間を接触させて戦うこと、などの設定が矢継ぎ早に登場するだけ登場します。特に、最後の「陣」の設定はかなり不可解で、「3メートル四方」という設定にどれだけ意味があるのか本当に不明です。というか、「陣」が登場したときの絵のビジュアルからして、すでに3メートル以上の広さがあるような気がします(笑)。たった3メートル四方の空間に大規模な兵士軍団を呼び出して戦う、という設定そのものに、いきなり無理があるような気がするのです。


・何の話も始まらないうちに(連載が)終了した第四話。
 そして、次の最終話となる四話では、ついにバトルの決着がつき、主人公が最初の敵を撃破するのですが、この時のバトルシーンはいきなり壮大なものとなり、広い道を埋め尽くすほどの大規模な騎兵隊を双方が召喚し、力の限りぶつかり合うというものになりました。どうやら、前回の話で提示された、3メートル四方の陣で戦うという妙な設定は、いきなり大宇宙の彼方に吹っ飛んでしまったようです(笑)。

 いや、あえて弁護すれば、「兵士を召喚する空間は自由で、 3メートル四方の陣の中のみで攻撃・防御を行う」という設定なのかもしれませんが、ビジュアル的にはとてもそうだとは思えません。このような大規模な軍勢がぶつかり合う戦闘シーンで、「3メートル四方」などというとってつけたような設定は、もはや完全に無意味なのではないでしょうか。いくら子供向けに多少は破天荒な設定が許される少年マンガとはいえ、これほどまでに無意味な設定はあまり見たことがありません。

 そして、その最初の敵を撃破し、そのバトルで主人公がブレイドに目覚め、その使命を帯びて旅に出るという時点で、連載そのものが終了してしまいました。はっきりいってこのマンガ、最初のバトルで基本的な設定をひたすら説明し続けただけで、何の話も始まっていません。これだけ編集部が大々的に推し進めた大型新連載にもかかわらず、単にマンガの設定を説明するだけで連載が終わってしまっている。これではまるで話になっていません。


・作画担当にも問題あり。
 そして、内容だけでなく、作画とその担当者にも問題があります。
 原作担当の真壁太陽は、スクエニの作家ではありませんが、元々三国志や戦国時代に興味が強い作家であり、過去に三国志のマンガを自分でも描いた経歴があるなど、こちらはさほど問題のある人選ではないでしょう。

 問題なのは、作画担当の壱河柳乃助です。彼は、元からスクエニ系の作家であり、過去にガンガンでも連載を持っていました。しかし、彼の過去の作品は、描き込みの密度こそ優れているものの、反面かなり見づらい点が強く、作画には少々不満が残る作家でした。それが今回の連載では、その見づらさに拍車がかかってしまったようで、とにかく見づらさ、読みづらさが目立つ作風に終始してしまいました。

 それだけではありません。彼は、連載前に自身のブログで、「中国が嫌いだが頑張ります」という発言で物議を醸し、その点でもひどく不安な作家でもあるのです。「中国が嫌い」「それが作品に影響を与える」ということ自体、いまいち理解不能ですが、ようするに彼はネット右翼的な人種であり、自身のブログにもその手のサイトのリンクが並んでいる状態です。そのようなネット上の偏った言論に完全に洗脳されている作家では、勢いあまって作品作りにまで影響が出てしまうのもやむなしでしょうか。
 しかし、中国嫌い(嫌中)のあまりに、それが三国志マンガの執筆にまで影響を与えてしまうとは、あまりにも深刻です。そのような作家を人選した編集部にも、少々問題があったと言えるでしょう。


・これは史上稀に見る迷企画、本連載化はしないほうがよい。
 しかし、このマンガの場合、内容や作画以前に、編集部の企画自体に多大な問題があったと思われます。
 そもそも「三国志のマンガ」という時点で、あまりにもありきたりな感は否めませんし、基本的な設定まで「一騎当千」「天上天下」という既存の人気作を彷彿とさせるような状態では、最初から到底期待できる作品とは思えませんでした。

 そして、肝心の内容も、初回から設定の説明のみに終始する状態が続き、そのまま短期連載を終えてしまいました。ここまで大規模な大型新連載ならば、最初から本連載すべきだったと思いますし、それならば毎回少しずつ設定を出していく手法も採れたはずです。しかし、実際には、たった4回で終わる連載形式だったが故か、設定の説明を詰め込むだけ詰め込む内容に終始してしまいました。「編集部が大々的に推す大型新連載なのに、短期シリーズ連載でわずか4回で終了」というのは、あまりにもちぐはぐな企画であったと言わざるを得ません。

 そして、肝心のストーリーや作画の完成度も高いとは言えず、あまりいいところが見当たらない状態です。その上「作画担当がネット右翼」という、意味不明な不安要素まで抱えており(笑)、今後の連載継続は大いに不安です。今後も、ガンガンの増刊(ガンガンカスタム)で外伝が掲載され、人気次第では本連載化も意図しているようですが、はっきりいってこの内容では、本連載化はしないほうがよいでしょう。このところのガンガンの編集部主導の企画は、「王様の耳はオコノミミ」「コード・エイジ アーカイヴス」などもさほど成功しておらず、ましてこの「ブレイド三国志」は、それらよりもさらに劣る屈指の迷企画になってしまった感があります。昨今の編集部の企画能力が疑われる一作だったと言えます。


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