<コード・エイジ アーカイヴス>

2006・2・11

 少年ガンガンで2005年から連載を開始した、一種のSF作品です。しかし、このマンガは、スクウェア・エニックスの関連ゲームとの「連動作品」という趣きが強いマンガでもあり、実際にそれを最大の売りとしていました。ゲームマンガ(ゲームを原作としたマンガ)ではありませんが、ゲームと非常に近いつながりを持っているため、これもまた一種のゲームマンガと見ていいかもしれません。最初から1年ほどの連載と決まっていたようで、全13話、単行本3巻の分量で完結しています。


・スクエニ的「ワンソース・マルチユース」
 先ほども述べたとおり、このマンガは、一連のスクエニゲームとセットになってひとつの連動企画を形成しています。具体的には、このマンガ作品である「コード・エイジ・アーカイヴス」を皮切りに、PS2のアクションRPGである「コード・エイジ・コマンダーズ」、携帯配信のネット対戦ゲームである「コード・エイジ・ブロウルズ」の3つの作品でセットになってリリースされました。これらは「コード・エイジ」シリーズと称され、いずれもが同一の設定・世界観を持ち、それぞれのコンテンツでひとつの世界の違った側面、違ったストーリーを楽しめるという点が最大の売りとなっています。
 スクエニは、このような企画を「ポリモーフィック・コンテンツ」と名付け、従来の「メディアミックス」とは違い「最初から完成されたコンテンツを同時期に最適な形で配信する」ことが利点であるとアピールしています。

 しかし、これも一種の「メディアミックス」であることは変わりありません。より厳密に表現すれば、ビジネス用語で「ワンソース・マルチユース」と言います。これは、「コンテンツを次々と新しいプラットホームに移植していく」という戦略で、ワンソース・マルチユースと言えば格好いいですが、要するに「使い回し」に過ぎません。あくまでビジネス優先でひとつの有力コンテンツを使い回し、確実な利益を得ようとする戦略ですが、必ずしも成功するとは限りません。ブロッコリーのコンテンツビジネス(「でじこ」「ギャラクシーエンジェル」)がその最たる例ですが、必ずしも今のブロッコリーが優れた業績を挙げているわけではないことでもおわかりでしょう。

 数少ない成功例としては、バンダイ・角川書店らの企画による「.hack」(「ドットハック」)シリーズが挙げられます。一人プレイで擬似オンラインゲーム体験が出来るというのが最大の売りで、PS2ゲームを中心に、アニメDVD、コミック、小説などを連動でリリースし、全体で高い評価を得ました。

 この「コード・エイジ」シリーズも、「.hack」に近いものがあると言えるかもしれません。スクエニはメインがゲーム会社ですし、シリーズの中心となったのは、紛れも無くPS2ゲーム(「コマンダーズ」)であり、それにこのコミック版「アーカイヴス」が連動している点でも共通しています。「.hack」はかなりの成功を収めましたが、さて、この「コード・エイジ」はどうだったのでしょうか。とりわけ、他のシリーズに先駆けてガンガンで連載された「アーカイヴス」の出来はどうだったのか。


・「ゲームとビジュアルを統一した」ことが売りらしいが・・・。
 まず、このマンガのビジュアル面、すなわち絵柄の出来について見ていきましょう。
 この作品は、他のシリーズ作品、すなわちゲーム版と「ビジュアル設定を統一した」ことをひとつの売りとしていたようです。「マンガとゲームで違う」と言われないように 、それぞれの作品のキャラクターや建造物、世界のイメージを統一したのだと言います。そのための作業として、ゲーム版のスタッフと共同で企画し、ゲームのイメージをそのままマンガに取り込む技術を使っている、という触れ込みでした。

 しかし、実際のマンガのビジュアルはさほど見栄えのするものではありませんでした。確かにゲームと同じデザインなのかもしれませんが、肝心のマンガの絵としては平凡なレベルであり、特に「凄い」と感じるビジュアルではなかったのです。「ゲームのビジュアルイメージをそのまま取り込んでいる」と言われても、正直「だから何?」という感じでした。確かに一枚絵のイラスト(表紙ページなど)はかなり見栄えのするものもありますが、肝心のマンガ本編はさほどでもない。この程度の絵のレベルのマンガならいくらでもあります。むしろ、マンガの絵としてはおおざっぱな部分が目立ち、緻密に描き込んだ見栄えのするビジュアルという訳ではありませんでした(右の引用画像を参照してください)。スクエニのゲームは常にハイレベルのグラフィックを売りにしていますが、マンガまでそうとは行かなかったようです。

 実際、この作品をスクエニゲームと同レベルのビジュアルで売りたいのならば、それこそ全ページフルカラーですべてCGで描くような大規模な企画にするか、そこまで行かなくとも、最高レベルの絵が描けるマンガ家(スクエニ系で言えば藤原カムイ、結賀さとる、筒井哲也あたり)を用意をして全力で作画を担当させるか、それくらいの意気込みがあっても良かったかもしれません。考えて見れば、あの「ロトの紋章」などは、超実力派の作家である藤原カムイの画力によって大ヒットしたと言っても過言ではありません。この「アーカイヴス」には、そのようなレベルの高いビジュアルは最後まで見られず、ごく平凡な印象の作品に留まっています。

 いや、それどころか、むしろ劣っている点すらあります。このマンガが連載開始した際、「登場人物(特に主人公)の髪型がクドい」というまったくどうでもよさそうな理由で、多くの人が読むのをやめてしまいました(笑)。もちろん、これはマンガ版だけではなく、他の連動作品にも共通した設定なのですが、考えて見ると、このようなあまりにも一般受けしなさそうな奇抜なデザインで、コンテンツを大々的に広げようという企画自体にも問題があるような気がします。これならば、もっと売れそうな、それこそ萌え系のキャラクターデザインでも良かったのではないか(少なくとも「.hack」はそうでした)。どうもこの企画は、デザイナーたちの奇妙なデザインセンスが、思い切り足を引っ張っている印象がありますね。


・判然としないテーマとストーリー。
 このように、外面のビジュアルではまるでぱっとしませんでしたが、では肝心の内容面はどうだったのか。実は、こちらも釈然としない出来であり、やはり平凡な作品に留まっています。

 まず、何と言ってもテーマがはっきりしません。SF作品では、他のジャンル以上に確固たるテーマが重要だと思うのですが、この作品のそれはまるで判然としません。一体何が言いたいのかさっぱり分からない。このマンガのストーリーは、「崩壊した世界で、新しい遺伝子(コード)を求めて、手に入れたコードの力で進化しつつ闘いを重ねる」といったものですが、主人公たちが何を目指しているのか、結局何がやりたいのかさっぱり分からないため、まったく筋が通らず、面白いとは言えません。一応、最後のシーンでは、多くの人の想いをつなげるためと言っていますが、それだけです。ラストシーンも意味がよく分かりませんでした。これは一体何なのか。

 ストーリーもいまひとつの印象が否めません。むしろ、まるでぱっとしないままで一年の連載が終わったと見るべきでしょう。冒頭の世界の崩壊シーンはまだ今後の展開を予感させるものでしたが、実際に崩壊して以降の展開はまるで大したことはなく、何となく闘いを繰り返していくうちに終わってしまいました。最後の闘いなどは、最終回だと知るまではこれが最後の闘いとはとても思えず、単なる中ボス戦だと思っていたくらいで、いきなり終わってしまい盛り上がりも何もありませんでした。総じて「一定の決まりきったストーリーをなぞった」だけの印象が強く、そこに魅力は感じられませんでした。最初から連動企画ありきの「決まりきったコンテンツ」というイメージしか抱けなかったというのが正直なところです。


・駄作とまでは行かないが、明らかな凡作。というか、これ面白いのか?
 はっきりいってこのマンガ、絵的にも内容的にもまるでぱっとせず、極めて平凡な作品の印象に留まっています。ガンガンの最近のゲームマンガは、どれもぱっとしない凡作ばかりの印象ですが、これもそのひとつとなってしまったかもしれません。
 しかし、このマンガは「WARHEAD」という、連動企画全般を担当するクリエイター集団が製作に当たっていたらしいのですが、本当に彼らはこれを面白いと思って作っていたのでしょうか。本当にマンガの面白さを分かっていたのか、普段からどれだけマンガを読んでいるのか、非常に疑問です。
 ついでに言えば、他の連動作品、特に中心となっているPS2ゲーム「コマンダーズ」もまるで評価は芳しくなく、この「アーカイヴス」も凡作ぶりも合わせて、この企画全体も失敗だったと言ってよいでしょう。いや、そもそもこの企画自体、最初から「使い回し」感は否めないもので、過去の先例から見ても失敗する確率は高かったと言えるかもしれません。
 しかし、このような平凡な企画で、ガンガンのラインナップがひとつ凡作に終わったことは、雑誌読者としては大いに不満です。ただでさえ今のガンガンは平凡な感が否めない誌面で、ゲームマンガも凡作ばかりで、その上このようなおざなりな企画ではさらに雑誌の質は落ちてしまいます。それとも、ガンガンは単にスクエニのゲーム企画を載せるための誌面になってしまったのでしょうか。製作者たちが本当にマンガを理解していたかも疑問で、極めて不満の多い連載企画だったと思います。


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