<Crimson-Shell>

2006・10・20

 「Crimson-Shell(クリムゾン・シェル)」は、Gファンタジーで2005年9月号から2006年2月号まで連載された短期連載作品です。最初から半年の連載期間で6話完結の予定だったらしく、単行本1巻できれいにまとめられています。作者は新鋭の望月淳

 しかし、このマンガは、連載開始当初から中々の注目を集め、Gファンタジーの新人作品としては久々にかなりの評価を得ました。ここ最近のGファンタジーは、定番の長期連載陣こそ安定しているものの、反面これといった新連載が少なく、少々誌面が停滞しているように感じられます。そんな中で、この「Crimson-Shell」は、数少ない新人の良作として、確かな存在感がありました。まだまだ新人らしく完全な作品とは言えませんでしたが、それ以上に作者の懸命な努力が感じられる「力作」であったと思います。

 そのためか、このマンガが早期に短期連載を終了した時にも、短期連載を知らなかった読者の間で(連載開始時に小さく告知されただけだったので、多くの読者がそのことを知らなかった)、このマンガの早すぎる終了を惜しむ声がかなり聞かれました。また、このマンガのエンディングが、その後に続くかのような含みを持たせた終わり方だったのも、さらに終了を惜しむ声を後押しする結果となりました。そして、連載再開を望む声ももちろんありましたが、直後に望月さんが別の連載を始めてしまったので、現時点では再開は難しい状況にあるかもしれません。この記事では、一応連載終了作品として扱っておきます。


・ストーリー上の工夫が光る。
 まず、このマンガは、何といっても凝ったストーリー展開が面白い。このマンガを評価する人のほとんどは、この二転三転する面白いストーリー展開をまず第一に評価しています。

 肝心の内容は、体内に「プルミエ」と呼ばれる薔薇の種を埋め込まれた主人公の少女・クローディアが、「紅薔薇」という組織の中核として、組織の仲間たちと共に「ビクティム」と呼ばれる化け物を退治するというくだりから始まります。これだけなら、よくある化け物退治ものとして、むしろありきたりの範疇に属する設定だと思います。が、しばらくしてストーリーは一転、組織の仲間の間に裏切り者が登場し、プルミエを狙ってクローディアが襲われることになります。
 その後は、実はその裏切り者は真の犯人ではなく、背後にさらなる陰謀、真の黒幕とも言える人物が次々と登場し、一体誰が真の裏切り者なのかを巡って、状況が二転三転します。わずか6話の短期連載でありながら、終了まで意外に意外を重ねるストーリー展開で読者を飽きさせませんでした。この極めてスピーディーかつ意外性に満ちたストーリー展開が、多くの読者に非常に好感を持って受け止められました。

 もっとも、実際には、わずかに6話という短い期間で終了させようとしたため、少々性急すぎる感は否めず、あるいは話を詰め込みすぎた感もあります。もし、これが長期連載の予定だったならば、もう少しゆっくりとしたペースで話が進んだのではないでしょうか。ラストでその後に続くような含みを持っている終わり方からも、元はもっとじっくりと進める予定の長い話だったのではないかと推測できます。
 しかし、この作品の場合、むしろここまでスピーディーかつコンパクトに6話にまとめたからこそ、その枠内できっちりと完結した印象もあります。確かに6話で終わるには惜しい話でしたが、それだけにその短期間の連載内で、新鋭の作家が全力で作品に投入した感が感じられ、ストーリーの面白さも凝縮されて、より強く印象に残ったように思えます。新人のデビュー作の短期連載としては、実にかなりの良作であったと言えるでしょう。



・技術的には拙い部分も残っているが、それ以上に好印象の絵柄。
 そして、ストーリーなどの内容面だけでなく、絵的にも新人作家の全力の努力が感じられ、かなり好感が持てました。
 技術的にはまだぎこちないところがあり、アクションシーンなどにはやや見づらい点も残っているのですが、それでも新人の第一作としてはかなりの出来で、十分に合格点を与えられるものでした。黒のベタが要所要所でうまく効いていて、中々に鮮やかなイメージの作風です。黒と白のコントラストが印象的で、ゴシック調の世界観をうまく表現していると言えます。キャラクターの造形も、一部でやや安定感を欠く部分こそあったものの、全体的にはかなりうまくまとめていました。老若男女問わず多様なキャラクターをきっちりと描き分けられていた点も良い点でした。

 その一方で、ギャグやコメディシーンでのデフォルメされた表現も面白く、随所に織り込まれるコメディ部分が引き立っていました。総じて、シリアスな絵もデフォルメされた絵も、すべて卒なくまとめていた印象があり、かつ読みやすさも十分に配慮された絵柄で、新人のデビュー作としては十分なビジュアルレベルだったと思います。


・この萌えレベルの高さは一見の価値あり。
 しかし、このマンガの最大の魅力は、そんなものではありません。このマンガがかなりの読者人気を集めたのは、ひとえにキャラクターの魅力が大きいと思われます。
 どこかのサイトで、このマンガを評して、「いかにもエニックス(スクエニ)的なマンガ」と言っていた方がおられたのですが、これはまさにその通りです。このようなファンタジー的な設定で、かつ中性的なイメージの作風は、エニックスならではのものです。
 実際には、女性寄りのイメージの強いGファンタジーでの連載であり、内容面や表現面で少女マンガ的な部分も多い作風なのですが、しかし実際には男女共に読めるような作風でもあり、とにかくキャラクターが男女問わずやたら萌える。そのあたりが、Gファンタジーの読者の間の好みにもぴったりと当てはまり、連載当初から注目を集めたのです。

 具体的には、やはり主人公のクローディアに尽きますね。様々な点で萌えの固まりかと思えるようなキャラクターで、これが素晴らしい人気を獲得しました。個人的にも、絶対領域は素晴らしいとかツンデレは神とかそういう当たり前のことを再確認させてくれたキャラなのですよ。当時のGファンタジーでは、私的に「ぱにぽに」や「To Heart2」を差し置いて、最も萌えを楽しみにするマンガとなっていました。

 最近のGファンタジーは、ステンシルからの移籍作品の影響もあり、かつてより女性向けのイメージの作品が目立つようになっていると思えるのですが、そんな中で久々にかつてのエニックス(騒動以前)のような中性的なファンタジーマンガが登場したように思えます。


・Gファンタジーで久々に登場した期待の新人。
 そして、もちろんそのような点だけでなく、作品の全体的な完成度も良好であり、久々にGファンタジーで読める新人作品が登場したように思えます。正直、半年で終了したのが本当に惜しいマンガで、「これで本当に終わり?」という疑問の声が各所で聞かれました。

 しかし、その好評価に応える形で、このマンガの終了直後に、「Pandora Hearts」という作者の次の連載が早々と決定します。そして、これもまた「Crimson-Shell」と同等の良作であり、新人の作品でありながらも雑誌の前の方に掲載されることも珍しくない扱いで、今では完全にGファンタジーの連載陣に溶け込んだ印象があります。
 このところのGファンタジーは、どういうわけか新連載がかなり少なくなっており、優良な新人も中々登場せず、正直停滞した感は拭えませんでした。しかし、ここに来てようやく優秀な新人をひとり確保できたようです。これは久々の貴重な収穫でした。

 しかし、今の連載(「Pandora Hearts」)も確かに良作ですが、この「Crimson-Shell」を短期で終了させてしまったのは残念です。新人の第一作ということで、短期連載で様子を見るという計画だったのでしょうが、それがここまでの良作だったのだから、そのまま連載を続行させても良かったように考えられます。今の連載の終了後、一段落ついた後でもよいので、連載再開を切に希望したいところですね。


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