<すすめ!!ダイナマン>

2010・2・23

 「すすめ!!ダイナマン」は、少年ギャグ王で94年8月号から開始されたギャグ4コママンガで、好評を受けて少年ガンガンでも95年5月号から開始されました。エニックスでは、複数の雑誌で同時に連載を行う作家は数多くいましたが、このように同一の作品をギャグ王とガンガンで連載した、という作家はあまり多くありません。それだけギャグ王での人気が高く、中心雑誌であるガンガンでもやっていけるということで抜擢されたのでしょう。それだけ、当時の定番のギャグマンガとして、非常に安定した人気を獲得していました。
 のちに、ガンガンの連載は98年の月2回刊行時代の終了と同時に一足先に終了し、残ったギャグ王の連載も、98年末のギャグ王のリニューアルの際に終了しています。しかし、いずれの雑誌でも十分な長期連載を果たしたと言ってもよく、両雑誌で長らく読者を楽しませた良作であり続けました。

 作者は、池田匠。この連載の前に、エニックスで募集されたゲームコミックのマンガ賞で受賞し、その受賞作の面白さが認められ、その作品の設定をリニューアル、オリジナル作品としてギャグ王で連載デビューすることになりました。その受賞作の名前は「それいけボンバーマン」だったと記憶しています。つまり、このマンガは、元はボンバーマンのゲームコミックとして描かれて応募されたものだったのですが、それがオリジナルへとリニューアルされてひとつの連載作品となったという、非常に珍しい経緯を辿っています。ドラクエ4コマを始めとするゲームコミックから登場した新人で、のちにオリジナル作品を描くようになった人は、エニックスには数多くいますが、しかしこのような経緯を辿った作家はあまりいないでしょう。

 しかも、元はゲームコミックだったにもかかわらず、その原作の面影はほとんどなく、大変面白いオリジナルのギャグ4コマに仕上がっていました。連載中はギャグ王でもガンガンでも高い人気を博し、特にギャグ王においては、一時期テレビCMのキャラクターとして登場したことでも有名で、ギャグ王のひとつの顔的な作品ですらありました。ギャグ王が休刊してしまった今となっては、その面影は急速に薄れ、覚えている人も少なくなってしまったと思われますが、それでもこのマンガの、ギャグ王・ガンガンを長らく賑わせた優れた業績は忘れるべきではないでしょう。


・ギャグ王とガンガンの双方で人気を獲得。
 少年ギャグ王の創刊は94年の5月号です。当初からドラクエ4コマ出身の作家を中心に、ショートコミックや4コママンガでのギャグ・コメディ系の連載を多数取り揃え、特に創刊号の5月号では、実に20以上の連載が始まりました。この「すすめ!!ダイナマン」は、創刊から遅れて三カ月目のスタートということになりますが、それでも十分初期の連載のひとつに入ると言えるでしょう。しかも、これが当初から高い人気を集め、連載から一年を経たずしてガンガンの方でも連載が始まるという拡大を見せます。フットワークの軽い4コママンガならではのダブル掲載だったと言えるでしょう。

 しかも、それだけではありません。この時期、ガンガンでは「魔法陣グルグル」のアニメが大ヒットしていたのですが、この「グルグル」のアニメ内で、新創刊されたばかりのギャグ王のCMが流れていたのです。そこで、CMのキャラクターに抜擢されたのが、このダイナマン。わたしも当時グルグルはリアルタイムで視聴していましたが、その時のCMもうろ覚えながらかすかに覚えています。確か、ダイナマンが走りながら塀の向こうに爆弾を放り投げるような内容だったような・・・? とにもかくにも、テレビのCMのキャラクターに採用されるわけですから、相当な人気マンガだったことは間違いないでしょう。ただ、人気があるとはいえ、アニメ化もされていないこの「ダイナマン」がテレビに出てきたことは、やはり多くの読者にとって相当インパクトが強かったらしく、今でもこの当時の古参のギャグ王・ガンガン読者の間で、「グルグルでやってたギャグ王のCMにダイナマンが出てきたよね」と話題にのぼることがよくあります。この時期が、ギャグ王・ガンガン共に、ダイナマンの人気の絶頂期だったと見ていいでしょう。

 その後のダイナマンもコンスタントに連載は続き、ガンガンが96年に月2回刊行時代に入った後も、ほとんど休載はなく、ギャグ王の方の連載も合わせてよくやったと思います。ただ、月2回刊終了と同時にガンガンでの連載が終了したところを見ると、この時期の人気は沈滞気味でやや伸び悩んでいたのかもしれません。ほどなくしてギャグ王の方も、こちらは雑誌自体が末期的な不振に陥り、最後になっていちかばちかのリニューアルに出た時にこのダイナマンも終了させられます。そして、ほどなくしてギャグ王自体も休刊し、作者の池田匠さんもそのままエニックスでの登場はなくなってしまいました。

 その後の池田さんの行方は、長い間知れなかったのですが、どうも2000年代に入ってからコロコロコミックの方で連載を持っていたようです。ギャグ王の休刊によって活躍の場を失ってしまったエニックス作家は数多く、他社へと掲載の場を移す人も幾人もいたのですが、彼もまたそのひとりだったと言えるでしょう。


・元々はゲームコミックだった?
 そして、冒頭でも既に書いたとおり、このマンガは、元は作者がゲームコミックのマンガ賞に応募して受賞した作品であり、それはあのハドソンの人気ゲーム「ボンバーマン」を原作にしたゲームコミックだったようです。エニックスは、ドラクエ4コマのヒット以来、雑誌でもゲームコミックを盛んに掲載するようになり、新人の発掘においてもこのようにゲームコミックを重視する方針を採っていました。

 しかし、それがこうしてオリジナルの作品としてリメイクされて連載化されたところを見ると、元からどうもゲームコミックでなくとも構わないネタで構成されていたようです。つまり、ボンバーマンという爆弾を使って敵を倒すゲームキャラが、気に入らない人や物に怒って爆弾を爆発させる。そういったネタが中心だったのではないか。それならば、ゲームコミックでなくとも構わない。むしろ、爆弾を使うオリジナルキャラクターによるギャグマンガにした方が、ずっとすっきりして面白い。そんな風に思われたのではないかと推測しています。

 それにしても、このようなマンガは本当に珍しい。ゲームコミックは、あくまでそのゲームのファンのために描かれるものが多く、オリジナルに転用できないものが多いはずなのですが、このボンバーマン→ダイナマンは可能だった。あるいは、オーソドックスなゲームファン・キャラクターファンのためのゲームコミックではなく、あくまでボンバーマンの設定だけで面白いギャグマンガに仕立てていた。数多いマンガ賞の投稿作品の中でも、こういった作品は少なかったのではないでしょうか。


・ヒーローらしからぬ小物ぶりが非常に笑える。
 さて、肝心の内容ですが、このマンガの主人公「ダイナマン」は、N88星雲にある「ボムボム星」という、幾多のヒーローを生み出してきた星から、地球に派遣されてきたヒーローということになっています。しかしこのダイナマン、実は相当な未熟者で、「平和な地球ならば未熟者としてはちょうどいいだろう」という理由で送られてきてしまいます。そして、その予想通りに、ヒーローらしい行為はほとんど行わず、自分の持つ爆弾の力で小さな欲望を満たす、小物ぶりを存分に見せることになってしまいます。

 何か気に入らないことがあればすぐに爆弾でぶっ飛ばし、それが相手が悪いならばまだマシと言えますが、どう考えても自分の方が悪いのに、ごまかすためだけに当たり構わず爆弾でぶっ飛ばす。あるいは、なんということもないことに驚いて、やはり爆弾でぶっ飛ばす。そんなどうしようもないダメダメなヒーローぶりが本当に面白い。
 UFOで地球に着いたばかりの時に、船内にゴキブリを発見し、怖がって自分の乗ってきたUFOを派手に爆発させることに始まり、トイレの水が流れずにうんこを見られることを嫌がってトイレを爆破したり、食堂でメニューと違う貧相な料理が出てきたことに腹を立てて爆破し、川の水を飲もうとして上流でおしっこをされたことに腹をたてて爆破する。こういう極めて俗っぽいしょうもない理由で爆弾を爆発させまくる、その毎回の爆破オチがダイナマンの定番であり、爆破される人や物の姿が何度見ても面白いのです。

 さらには、このダイナマン、とにかくスケベで、深夜に自動販売機でエロ本をこっそり買おうとして人に見つかって爆破したり、エロ本をゴミ袋に入れて捨てようとして見つかって爆破したり、「服がすけるメガネ」「モザイクが消せるメガネ」を騙されて何度も購入したり、スカートの中をのぞこうとしてとがめられて相手を爆破したり(これはどう考えてもダイナマンが悪い)、とにかくそういうネタも多い。毎回見開きで始まる作品の冒頭は、そういったエッチネタが来ることが多く、ダイナマンの俗っぽさ、小物ぶりを存分にアピールしています。

 同じくヒーローが出てくる庶民的な作品として、同じエニックスでくぼたまことのマンガがありますが(「GOGO!ぷりん帝国」「天体戦士サンレッド」)、こちらのキャラクターがいわゆる小市民的なイメージで、それも善良な小市民の怪人たちの姿が面白いのに対して(サンレッドのようにチンピラ的な素行の悪いヒーローもいますが、彼も次第に怪人たちと馴れ合うなど、根は悪い人間でなく描かれています)、このダイナマンの方は、小さな悪ならばむしろ進んでやってしまいかねない「小悪党」ぶりを発揮しているところが、ちょっと印象が異なります。このヒーローらしからぬ小物ぶりこそが、ダイナマンの大きな魅力ではないかと思います。


・「世の中のむかつく連中をぶっ飛ばす」というコンセプトも面白い。
 しかし、ダイナマンのヒーローらしからぬ行動を楽しむだけのマンガでもありません。ダイナマンがぶっ飛ばす人々の中には、日常でよくあるような、ちょっと腹の立つ、むかつくことをやるような連中が多く、彼らをダイナマンが爽快にぶっ飛ばすのを見るのが実に痛快なのです。いわば、「世の中のむかつく連中をぶっ飛ばす」というコンセプトのネタが数多く含まれ、「社会派」というほど真面目なマンガでもないけれども、それでも普段良く見かけがちなむかつく行動をする人々が描かれているのを見て、「あーこういう奴よくいるいる」と納得し、そして彼らがダイナマンにぶっ飛ばされるのを見て痛快な気分になる。そういう要素が多分に含まれているのです。

 その最たるものが、コミックスでは巻末に収録されている、「ダイナマン 世界平和向上委員会」というコーナーです。これは、読者の方々から世の中への怒りのハガキを募集して、作者がそれを4コママンガにするというもの。ここでは、日常でよく見かけるちょっとむかつく奴や、あるいはもっと大きく政治や社会面で不正を働く悪人たち、そういった連中をダイナマンが読者に代わって次々とぶっとばしていきます。これほど分かりやすいコンセプトのマンガもそうそうないでしょう。

 こういった要素があるがゆえに、このマンガは実は非常に幅広い読者にオススメできるマンガとなっています。ギャグ王やガンガンという、当時は低年齢層が中心の雑誌の連載で、実際に子供の読者も多かったけれども、実はそれ以上にずっと高年齢の大人の読者でも、世の中のちょっとむかつく連中をすっきり懲らしめるというコンセプトで、十分に楽しめるマンガになっているのです。この汎用性の高さこそが、ギャグ王とガンガンという2つの雑誌で長らく安定した人気を確保できた、最大の理由ではないでしょうか。


・今連載しても十分通用しそうな、誰もが楽しめる優良4コママンガ。
 以上のように、この「すすめ!!ダイナマン」、未熟なヒーロー・ダイナマンの、ことあるごとに私欲のために爆弾を使いまくる小物ぶりを見て存分に楽しみ、なおかつ「世の中のむかつく連中を爽快にぶっ飛ばす」という痛快なコンセプトも楽しい、誰もが楽しめる本当に面白いギャグ4コマになっています。かつてのエニックスは、ギャグマンガが面白いという定番の評価がありましたが、それにはこのような優良な4コママンガの存在は欠かせません。

 実際、連載中は、ギャグ王でもガンガンでも人気は本当に高かったのです。いや、当時は両誌ともに他にもっと人気の高い連載が多数存在していたため、このダイナマンばかりが雑誌の表に出ていたわけではありません。CMにも登場したギャグ王はまだしも、ガンガンではこのマンガが雑誌の表に出ることはほとんどなかったと思います。ページ数の少ない4コマということもあり、雑誌の片隅でいわば縁の下の力持ちのように雑誌を支えていた。積極的にこのマンガだけを求めて読む読者こそそう多くはなかったかもしれません。しかし、多くの読者が、ダイナマンが雑誌の片隅に載っているのを見かけて、気軽にページをめくって読んで大いに笑って楽しんだ。そんなマンガだったと思います。

 そうして長らく読者を楽しませたダイナマンでしたが、時代が過ぎて少々新鮮味が欠けてきたのか人気もやや停滞し、ガンガン、ついでギャグ王でも連載を終了する運びとなりました。ガンガンは月2回刊行から月刊に戻った際に、ギャグ王は休刊間際のリニューアル時に、それぞれ雑誌の変化を受けての終了という側面もありました。

 その後の池田匠さんは、もうエニックスでの活躍はまったく見られなくなってしまい、この「すすめ!ダイナマン」が彼のエニックスでの唯一の成功作となりました(94年に、一時期ガンガンで別のギャグマンガを2本ほど掲載していますが、これは短期で終了しています)。しかし、この「すすめ!ダイナマン」、今連載しても十分通用しそうな汎用性を持っていると思うのです。「世の中のむかつく奴らを爽快にぶっ飛ばす」という、子供から大人まで誰もが楽しめる4コママンガになっています。今のスクエニは、4コママンガでの良作を数多く輩出しており、ガンガンONLINEという4コマに力を入れたウェブ雑誌も存在しています。その中でこの「すすめ!ダイナマン」を今一度読める機会を作っても面白いのではないでしょうか。


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