<ドラゴンリバイブ/グレペリ>

2007・3・14


 「ドラゴンリバイブ」と「グレペリ」は、共に2003年に開始されたガンガンの連載作品です。開始時期は、「ドラゴンリバイブ」が2003年7月号、「グレペリ」が2003年8月号。共に、ガンガンが2003年中期に行った新連載攻勢の一作品であり、この新連載攻勢によって、のちのガンガンの方向性が定まった感もありました。その点で実はかなり重要な存在かもしれません。なお、これ以外の新連載攻勢の作品は、「スターオーシャン Till the End of Time」「女王騎士物語」「ヴァンパイア十字界」の3本で、合計で5本の作品が立て続けに連載を開始しています。そして、これらの連載の多くは、この当時からガンガン編集部が強烈に志向した「王道バトル系少年マンガ」「低年齢向け路線」を忠実に辿ったものとなっており、その点でひどく画一的なものとなっています(「ヴァンパイア十字界」だけは例外ですが)。

 さて、この「ドラゴンリバイブ」と「グレペリ」、実は内容的にはほとんど関係がありません。「ドラゴンリバイブ」は、王道バトル系を意識した少年マンガ、対して「グレペリ」は、SFの要素も入ったコメディ作品で、作品の方向性が異なり、もちろんストーリーも全く異なります。
 では、なぜこの2作品をまとめてここで記事にしようと思ったのか。実は、このふたつの作品の連載履歴が非常に似通っているのです。「ドラゴンリバイブ」は2003年7月号に連載が始まりましたが、人気の低迷からか早期に打ち切りとなり、2004年5月号で終了しました。一方で「グレペリ」は、「ドラゴンリバイブ」から一カ月遅れた2003年8月号から連載が始まりましたが、これまたさほどの人気を得られず、こちらは打ち切りなのか最初から短期での連載終了なのか判然としませんが、いずれにせよ早期に終了となり、2004年6月号にて、これまた「ドラゴンリバイブ」の終了から一カ月遅れてこちらも終了してしまいました。

 そう、このふたつの作品、連載時期が一カ月ずれているだけで、まったく同じ時期に連載を行い、どちらも早期に打ち切り(か短期の予定連載)で終了しているのです。これは、このふたつの作品が、共に成功しなかったせいでもあるのですが、実はそのことにも共通する理由があると思われるのです。ここでは、この2作品の連載経緯を辿ることで、この当時のガンガンの連載作品に顕著な特徴を見ていこうと思います。


・「ドラゴンリバイブ」と井田ヒロト。
 まず、先行して連載が開始された「ドラゴンリバイブ」。作者は井田ヒロトで、純粋なエニックス生え抜きの新人であり、連載の少し前に「Full Auto」という読み切りを残しています。この「Full Auto」、殺し合いのサバイバルゲームに興じる少年少女たちを描いた「バトルロワイヤル」系の作品で、そのシビアで意外性に富んだラストが印象に残る、かなり良作の読み切りでした。そのシビアな作風から、やや高年齢向けの、青年誌的な印象も受けた作品でした。

 絵柄も、ライト感覚の今時の少年マンガながら、一方でかなりのアクの強い泥臭さを感じる描写もあり、その点でも他のガンガン系少年マンガとは一線を画するものがあったように感じます。少年マンガ的なバトルシーンも描けるのですが、それだけにはとどまらない深い描写もある。特に、キャラクター(特に青年)の泥臭い心理を描くのが得意で、「Full Auto」でもそれが存分に活きていました。

 しかし、直後の初連載であるこの「ドラゴンリバイブ」は、ガンガン編集部によって王道少年マンガを描くことを求められたためか、打って変わって明るいノリを強烈に意識した少年マンガとなっており、その点にかなりの落差がありました。


・少年マンガとしては違和感の残る作品。
 しかし、この「ドラゴンリバイブ」については、編集部がとにかく王道少年マンガを描くことを求めたため、井田さん独特の青年誌的な深い描写と、少年マンガ的な明快で勢いのある作風とが噛み合わず、なんとももどかしい作品になってしまったようです。

 とにかく明快な王道少年マンガを意識したからなのか、主人公にしろ他のキャラクターにしろ、皆が一様にハイテンションな行動を取り、口で掛け合いをしながら手足を動かしまくるような異様なノリの作風が目に付きます。バトルシーンにおいてもそれは顕著で、ここまでせわしないハイなノリに支配されたバトルシーンというのも、中々お目にかかれないでしょう。

 しかし、そういった爽快なノリの少年マンガ的要素を打ち出す一方で、どうも根底では井田さん独特の深い人間描写の方が目に付き、ハイテンションなノリとの間でかなりのギャップを感じざるを得ませんでした。主人公にしろヒロインにしろ、あるいは敵役の青年にしろ、内面にかなり暗い負の側面を抱えているようで、端々でどうしてもそれが目立ってしまうのです。また、単純に外見を見ても、ストレートに元気な少年少女といった感じの外見ではなく、むしろ少年より一回り上の「青年」に見えるキャラクターがかなり多い。このあたりでも、井田さんの青年誌寄りの作風を感じざるを得ません。「少年マンガ」を打ち出してはいるものの、実際には内面的にも外見的にも少年マンガ的でないキャラクターばかりで、そこにはかなりの違和感があります。ストレートに素直で明快な少年像を描いている、「女王騎士物語」や「666(サタン)」などガンガンの他の少年マンガとは、あまりに明確な落差がありました。

 そのためか、ハイテンションで明快なノリで少年マンガ的作風を打ち出そうとしても、そこにはどうしても無理を感じざるをえず、むしろわたしなどは、「作者は青年誌的な作風を志向しているのに、王道少年マンガであるがゆえに、無理に少年マンガ的な要素を採り込んでいる」と感じてしまいました。そのため、違和感ばかりがつのって話にのめりこむことも出来ず、最後まで作品を楽しむことが出来ませんでした。他の読者にも、この微妙な作風は受け入れ難かったようで、早期に打ち切りが決まり、1年弱という短い期間で早々と終了してしまいます。


・「グレペリ」とたくま朋正。
 次に、一カ月遅れで始まった「グレペリ」。作者はたくま朋正ですが、彼は元々エニックスの作家ではなく、主に電撃系で連載を重ねていた外部の作家です。しかし、この連載の少し前から、ガンガンパワードで何回か読み切りを載せるようになり、その頃からエニックスで活動し始めた節があります。その後、ほどなくしてこの「グレペリ」の連載を開始。この「グレペリ」と読み切り作品との作風がかなり似ており、読みきりの掲載自体が、のちの連載を踏まえての企画だった可能性もあります。

 そして、たくまさんは、電撃系という出自からも推察できるとおり、かなり高年齢のマニア向けの作品を描く作家です。具体的には、「SF」「メカ」そして「美少女」が最大の特徴で、電撃時代の連載である「TRAIN+TRAIN」「鉄コミュニケイション」は、すべてそれに該当します。アニメや小説と絡めたメディアミックス作品を手がけることが多いのも特徴です。

 しかし、このエニックスで描いた読み切り、そして連載の「グレペリ」は、作者の特徴であるSF的な要素こそあるものの、それ以上に低年齢向けの学園ホームコメディの要素が強く、その点で他の作品とはかなり印象が異なっています。なぜ、エニックスでこのような作品を描くことになったのか、そのあたりの経緯にはよく分からないところがあります。


・あまりにもありきたりな低年齢向けコメディ作品。
 そして、その「グレペリ」の、低年齢向けの作風はひどく目立つもので、これが当時のガンガン読者の間に相当な違和感を呼びました。一部に、「コロコロコミックの連載みたい」といった意見まであったほどで、これほどまでに低年齢向けの連載は、ガンガンでも初期の頃の一部作品にしか見ることは出来ないでしょう。

 ストーリーは、「グレモ」というかわいらしいマスコット的な宇宙人がやってきて、小学生の女の子と一緒に暮らすことになるというもの。成り行きで家に住むことになった宇宙人が巻き起こす騒動を描いた、典型的な押しかけ型コメディ作品で、似たような作品を挙げれば多数にのぼるでしょう。その点で、あまりにも平凡でありきたりな感は否めず、「一昔前のマンガ」だという印象も否定できませんでした。

 しかも、たくまさんは、作者本来の持ち味であるSFやメカの要素をふんだんに盛り込もうとしたため、それと作品の基本である低年齢向けコメディとの間に相当なギャップがありました。こちらでも「ドラゴンリバイブ」と同じことが言えるわけです。作品の中盤から、対立する宇宙人やメカが頻繁に登場するようになり、しかも作者の趣味なのか、まるでエヴァの内容をそのまま採り入れたようなキャラクターやメカまで登場し、低年齢向けのホームコメディとの間に著しいギャップがありました。

 元々、基本となる低年齢向けコメディも平凡すぎてさして面白くない上に、このような作者の趣味が露骨に出たマニアックな内容にも違和感ばかりがつのり、ほとんどの読者にはまるで相手にされませんでした。ガンガンの中心読者層から見れば、あまりに低年齢向けで小学生向けとも言える内容には興味がないでしょうし、中途半端にエヴァ的なSF、メカなどのモチーフを持ち出されても、やはり興味は湧かないでしょう。そのため、このマンガは当時のガンガン読者の間ではあまりにも印象が薄く、まったくもって話題に上ることはありませんでした。当時の読者でも、このマンガのことを覚えている人は多くないはずです。そして、打ち切りなのか最初から短期の予定だったのかよく分かりませんが、こちらも1年弱という短い期間で連載終了することとなります。


・編集者の強引な方針が作者を殺した。
 このふたつの作品に共通して言えるのは、「編集部が王道少年マンガや低年齢向け路線の作品を求めるあまり、作者本来の個性を殺している」という点です。

 まず、「ドラゴンリバイブ」の井田さんは、前述のとおり、青年誌的な作風を持つ作家です。そんな作者に明るいノリの王道少年マンガを描かせても、本来の個性が殺され、うまくはいかない。
 事実、この連載終了後の井田さんは、青年誌のヤングガンガンに活動の場を移し、そこで「戦線スパイクヒルズ」という連載を開始。こちらのほうは非常に面白い連載になっています。作者の持ち味である、青年キャラクターの深い内面描写が顕著に感じられる作品で、絵柄的にもまったく違和感がありません。やはり、青年誌という作者本来の活躍の場に落ち着くものなのだな、と思います。

 そして、「グレペリ」のたくまさんの方ですが、こちらはメカや美少女のような、高年齢向けのマニアックな作品を得意分野とする作家です。そんな作家に、低年齢向けのホームコメディなどを描かせても、まずうまくはいかない。
 この連載終了後のたくまさんは、エニックスを離れ、再び高年齢向けのマニア誌で連載を行うようになります。こちらの作家も、本来の活躍の場に戻ったと見てよいでしょう。現在では、角川書店のコンプエースで、あの「コードギアス」のコミック化作品を連載していますが、これももちろんSF、メカと美少女が売りの作品であり、やはり落ち着く場所に落ち着くものだなと思います。今思えば、作者の連載履歴の中で、この「グレペリ」だけが浮いている感すらあります。


 この時期のガンガンは、このような王道少年マンガ、及び低年齢向け路線の作品を極端に強く推し進めており、多くの新連載でそのような作風が強調されました。そして、そのために作者本来の個性、持ち味が殺され、作品も中途半端な出来で不成功に終わるケースが目立つようになりました。この2作品は、まさにその典型的な存在であり、まったく同時期に連載を開始し、まったく同じ連載期間を経て、まったく同時期に打ち切り(もしくは短期終了)となってしまったのも、決して偶然ではありません。不成功に終わる明らかな理由があったからこそ、まるで歩調を合わせるかのごとく、ふたつ揃って早々と終了してしまったのです。

 そして、ガンガンは、この後も長らくこのような少年マンガ路線・低年齢路線を推し進めていきますが、やはり決して成功作は多くなく、さほどレベルの高くない平凡な誌面に留まっています。そのような今のガンガンの端緒となった象徴的な出来事として、この「ドラゴンリバイブ」「グレペリ」の短期終了という事実は、非常に重要だと思われます。


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