<がんばらなくっチャ!>

2003・10・9
全面的にリライト2006・4・4

   「がんばらなくっチャ!」は、ガンガンWINGで2002年の12月号から連載が始まり、2006年2月号で連載終了するまで、約3年間ほど連載し続けた作品です。長期連載と見てよいでしょう。作者は新人の仲尾ひとみ

 このマンガが開始された時期は、ガンガンWINGは例の「ブレイド騒動」で受けた被害から立ち直っていない状態でした。騒動で主要な連載陣が根こそぎ抜けてしまい、騒動直後に穴埋めとして始まった連載も振るわず、人気のあるのは「まほらば」を中心にほんの数作品程度、という状態でした。しかし、この時期にいくつかの有望な新連載が表れ、ようやくWINGは新たな形をとって立ち直っていきます。具体的には、「dear」「瀬戸の花嫁」「機工魔術士」「ショショリカ」「天眷御伽草子」「BEHIND MASTER」などの作品群で、これらの連載がこの後長きに渡ってWINGの主要連載となり、雑誌を支えていくことになります。
 「がんばらなくっチャ!」もその時の新連載のひとつで、やはりこの後3年に渡ってWINGの主要連載として雑誌を支えていくことになります。しかし、上記の作品群の中ではやや劣る扱いを受けており、雑誌の表には中々出てこず、長く雑誌内の中堅作品に留まっていた感もありました。しかし、熱心な雑誌読者の間では、その特異な内容が注目を集め、WINGの名物マンガとして、「がんチャ」の愛称で親しまれました。


・一応は少女マンガ的なラブコメ、なのか・・・?
 マンガの内容としては、一応これはラブコメなんでしょうか。それも少女マンガ的なイメージの強いラブコメかもしれません。ただ、「少女マンガ」といっても雑誌の男性読者にも大いに人気があり、特に女性人気ばかりが目立つ作品ではありません(同じようなイメージのマンガとして「dear」があります)。肝心のストーリーは、一応、「主人公の悪魔っ娘チャームが、人間界に一人前の悪魔になるための試験を受けに来る」話なんですが、肝心の試験の話はあまりなく(おい)、実際には主人公の幼なじみで人間界に暮らすフニャフニャした男のゆん(悪魔名リフェリス)とのラブコメ話が中心で、それに多数の個性的なキャラクターが加わってドタバタ騒ぎを繰り広げる話になっています。

 しかし、これが単なる甘々なラブコメではないのです。実際にはかなりギャグ色の強い話でもあり、異様なノリで展開される過激なネタの数々がメインと言っても過言ではありません。


・体を張った過激なギャグ。
 まず、このマンガの素晴らしいのは、その過激なギャグです。ここまでヒロインが暴力的で人を殴りまくる(主に被害者はゆん)ラブコメはあまりないでしょう。ほとんどのキャラクターが色々な意味で体を張っています。
 このマンガの第13話で、チャームがゆんに「再会してから50回以上殴っている」と話すシーンがあるのですが、これを読んで実際にどれだけの回数殴っているかわざわざ数えた読者がいます。それによると、軽く50回をはるかに超えて殴りまくっていたそうで、そこまで暴力的なヒロインというのも素晴らしいと思います。
 連載も中盤になると、ついには格闘技にまで走り始め、チャームの得意技はサブミッション(関節技)とか、もう訳の分からない設定まで登場する有り様で、作者の悪ノリがどんどん暴走していった感があります。


・異常に個性的なキャラクターたち。
 しかし、過激なのは主人公のチャームだけではありません。このマンガでは脇を固めるキャラクターたちもすべて強烈です。
 このマンガのキャラクターは、基本的にすべて変人または変態だと見て差し支えないのですが、彼ら彼女らが繰り広げるドタバタ騒ぎがまたとてつもなく面白い。
 どのキャラクターを見ても一癖以上のものを持っていますが、その中でもあえて特に印象に残るキャラクターを挙げるならばどうでしょうか。まず、男性キャラでは、前述のように主人公の幼馴染の男の子で、徹底的にフニャフニャした男であるゆん、常に妙な行動を取りたがる人間の学校生徒である岡田あたりでしょうか。女性キャラでは、主人公と同じ悪魔の試験仲間で、夢魔(サキュバス)なのに女の子大好きで常に女の子を襲いたがるマナがかなり強烈です。これ以外のキャラクターでも、チャームの先生で万年ジャージ男であるぽちや、パンダ大好きのパッキン不良(?)蜜村(ミツさん)、マナの先生で男女問わずエロ欲望全開のマジョガリータなど、脇役キャラに至るまで強烈な個性の持ち主ばかりです。


・萌えとエロの果てしなき融合。
 そして、このマンガは萌えも素晴らしい。WINGの連載陣は、この当時から次第に萌えに傾倒していくのですが、このマンガも例外ではありません。そして、ただ単に萌えるだけでなく、とにかくやたらエロい(笑)。特に序盤から中盤にかけての作者の暴走ぶりが見事です。
 エロいと言っても、露骨にエロいシーンがそうあるわけではないんですが、明らかにエロを意識したカットはかなりたくさんあり、これがなんとも言えない。同じWINGのマンガで「機工魔術士」の方は割と露骨なお色気シーンが多いのですが、この「がんチャ」の方は、なんというかネタ的にエロいというか、エロとギャグを絡めた過激な展開が面白いというか、そんなところがあります。

 キャラクター的には、主人公と同じ試験仲間で、妙にエロい体を持つ悪魔っ娘のリープ、そして何といってもツインテールの女装美少年である咲坂つかさの存在が非常に強烈です。
 特に、この「つかさ」というキャラクターは、男でありながら作品中で最萌えキャラの地位を確立し、前半のうちは男と知りながらも強引に迫る変態生徒である岡田に執拗に迫られ、中盤では今度は女好きの夢魔であるマナに精気を狙われるなど、徹底的な受けキャラとして描かれ、これがまたこのマンガの異常な内容を象徴する名物となってしまいました。今でこそ女装の美少年は萌えの定番となりつつありますが、2003年当時からこのようなキャラクターを平然と出してきた仲尾ひとみという作者はあなどれません(笑)。


・試験はおまけなのか。
 さて、このマンガの本編となるストーリーは、主人公が一人前の悪魔になるための試験のはずです。しかし、前述のように、このマンガでは肝心の試験の話はあまりなく、時折思い出したかのように登場する有り様で、本当に話を進めるつもりがあるのかと考えてしまいます。なんというか、このマンガの試験というのは、作者が話のネタに困ったときに場当たり的に出しているとしか思えず、そのあたりのいい加減さがまた読者の失笑を誘う結果となっています。

 試験の内容も極めてバカバカしいもので、なぜかヤモリを7匹つかまえろとか、魔力の測定のためになぜか背筋力測定をやるとか(しかもエロい)、とにかく笑える内容ばかりでした。


・もちろんシリアスなストーリーもある。
 以上のように、この「がんばらなくっチャ!」という作品は、要するに一種のバカマンガであり(笑)、WINGでは知る人ぞ知る名物マンガとして、コアなWING読者の間では相当に受けまくったマンガでもあるのですが、それでもこのマンガには真面目な側面も結構あるのです。

 ひとつにはチャームとゆん、つかさを中心とした恋愛模様であり、あるいは物語後半に繰り広げられる、ゆんとその兄弟を中心としたかなりシリアスな話です。そして最終巻では、後半のシリアスなエピソードが無事解決し、そして試験の方もようやく無事に終わり、主人公のチャームとそれを取り巻くキャラクターたちが、いよいよ新しい道に進んでいく、という流れで、寂しくもありながら今後の希望にも満ちたラストとなっていました。色々と暴走全開な内容で笑わせてくれたこのマンガでしたが、最後の最後では随分とすがすがしい終わり方で、読後感は決して悪くなかったですね。


・WINGでは決して表紙になれなかった不遇なマンガ。
 以上のように、作者の悪ノリの暴走がいい意味で面白さに結びつき、一方で真面目なストーリーもそれなりに読ませてくれた「がんチャ」でしたが、雑誌や単行本での扱いは決してよくありませんでした。

 まず、このマンガ、雑誌連載中に一度も表紙になったことがありません。どうもこのマンガは表紙になれないマンガとして扱われていたらしく、最後の最後までその扱いが変わることはありませんでした。やはりそのあまりに暴走した内容がいけなかったのでしょうか?(笑) これが短期連載や打ち切りになるような不人気連載ならば表紙になれなくても話は分かるのですが、このマンガのように「3年以上に渡る長期連載で、かなりの人気を得ていたにもかかわらず、一度も表紙に出させてもらえなかった」というのはかなりの不遇な扱いです。
 そして、単行本においては、2巻以降一度も「帯(おび)」がついたことがありません。「帯」というのは、その巻のセールスポイントをアピールする場として、単行本の盛り上がりには欠かせないものなので、これがないと随分と寂しくなります。「がんチャ」の場合、新連載の1巻だけは、当時のスクエニ新刊の1巻コミックスを集めて行われた「第1巻フェア」の一角として帯がついていたのですが、2巻以降は一度も帯がつかない状態での出版が進み、とうとう最終7巻までそのまま全く帯がつきませんでした。これもかなりの不遇な扱いです。

 実は、このような「表紙になれない」「単行本に帯がつかない」扱いのマンガは、大抵の場合その時点ですでに連載の勢いが落ちており、しばらくして打ち切りか最終回になるのが通例なのですが、この「がんチャ」の場合、そんな扱いにもかかわらず延々と連載が続き、WINGの一角でコンスタントに人気を維持し続けたわけで、これは中々に珍しいケースです。つまり、このマンガは、雑誌の表には決して出てこない目立たない存在でありながら、コアな雑誌読者の間で常に支持を集めており、密かに誌面の充実に貢献し続けた「縁の下の力持ち」的な存在ではなかったかと思われるのです。「まほらば」や「dear」がWINGの看板として知名度を集める一方で、このように3年もの間常に影で雑誌を支えてきた隠れた良作があったことを忘れるわけにはいかないでしょう。


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