<東京魔人学園外法帖>

2002・8・5

 同名PSゲームのコミック化。作者は前作「剣風帖」から引き続き喜名朝飛氏。

 最近になってようやく原作ゲームをプレイできたので、ゲームとの比較も兼ねて考察してみます。

 コミック版の特徴として、ゲームのストーリーのベタ移植にはなっていない点が挙げられます。原作には無いエピソードが非常に多く、ゲームにあるエピソードも大幅なアレンジが加えてあるため、ストーリーラインはほぼオリジナル、と言っていいでしょう。
 そして、このストーリー展開にかなり工夫が凝らされており、ゲームをプレイした身としても感心させられるところが多く、作者の努力が感じられ好感が持てます。原作ゲームは、良くも悪くも「独立したエピソードの繰り返し」であり、これをそのまま移植すれば単発のエピソード集にしかなりえませんが、コミック版ではそうはなっておらず、連続したストーリーで先を読みたいと思わせる展開になっているのがよいです。
 特に原作にある2つの勢力(徳川側の組織と、それに対立する鬼道衆という組織)のその両方の視点を平等に描いているところがよい。原作ゲームでは、まずどちらかの視点で物語が進み、一連のエピソードが終了した時点で、今度はもう一方の視点で同じエピソードの別な部分が語られる、という構成になっていました。これはゲームとしては面白い試みですが、マンガにおいては視点が違うとはいえ同じ話を二回も読まされるのはナンセンスです。そこをこの作品では、双方のエピソードをうまく取り入れつつ、うまく双方の人物を絡ませて新しいストーリーを作り出している。従来の勧善懲悪ものと違い、敵側の物語まできちんと描かれている点が面白いです。

 ただ、これはゲームをプレイしたものとしては非常に嬉しい配慮ですが、コミックから読みはじめた読者にとってはややとっつきにくい印象があります。原作ゲームのエピソードはさほど凝ったものは多くなく、理解しやすいものが大半でした。しかし、コミック版では展開にかなりの工夫が凝らされている反面、ストーリーが少々複雑になった点は否めません。しかも対立する二つの組織の両方のキャラクターが一度に登場するため、登場人物自体がかなり多く、ゲーム未プレイの読者にはすべてを把握するのが難しいのではないでしょうか。まあ、それでも単行本を買って一度に読む分には問題ないでしょうが、雑誌連載についていくとなるとやや不安ではあります。

 もうひとつの不安材料として、絵の問題があります。喜名さんは昔から画力が今ひとつで、ストーリーは結構よく出来ているのに絵が足を引っ張ってきたような気がするんですが、今回もビジュアル面は今ひとつです。特にアクションシーンの演出がぱっとしない。人物の心理面での描写は割りとよく描けているために余計動きのあるシーンの不備が目立ってしまう。絵をぱっと見た印象でかなり見劣りがするのが相変わらず残念です。

 そしてこのあたりが原因なのか、WINGの中でも今ひとつ突出しない、中堅作品のひとつになっているのが個人的には残念です。物語自体の出来は非常にいいんですがね。


2003・10・29

<連載終了にあたって追記>
 全体的に見ればよかったのだが、唯一ラストの最終決戦があまりに展開が急すぎてまるで物足りなかった。今までと同じペースでじっくりと描いてほしかった。
 とはいえ、決して悪い連載ではない。前作「剣風帖」よりは明らかにこちらの方がよかったと思う。喜名先生、長い間お疲れ様でした。


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