<まじかる☆アンティーク>

2006・9・25

 「まじかる☆アンティーク」は、同名ゲームのコミック化作品で、Gファンタジーで2001年3月号から連載を開始し、2003年2月号まで約2年間連載されました。毎号連載ならば計24話になる計算ですが、実際には途中でページ数が少ない回をひとつの話にまとめたりしたため、19話(+コミックスの追加エピソード)で終わっています。毎回のページ数も安定しなかったこともあって(後述)、2年間も連載したにもかかわらず、コミックスはわずか2巻で完結しています。

 作者は、きたうみつな。彼は、かつて97年・98年に1本ずつGファンタジーで読み切りが掲載されたこともあるのですが、それ以後はアンソロジー以外では活動しておらず、この時期になってゲームのコミック化担当として抜擢されたのはかなり意外で、その実力は未知数の作家でした。わたしなどは、昔読み切りを掲載したことすら全く忘れていて、完全な新人作家だと思っていたくらいです。とはいえ、実際のマンガの出来は、連載ペースが安定しなかったことだけはかなりの不満でしたが、作画のレベルがかなり良く、内容的にもまずまず無難にこなしており、決して悪い仕事ではありませんでした。

 なお、このマンガの連載は、かの「エニックスお家騒動」に前後して行われており、当時のエニックスはかなり騒々しい環境でした。しかし、このマンガは、比較的騒動の影響の少ないGファンタジーでの連載だったため、ほとんど影響を受けずにマイペースで最後まで連載が続きました。当時は、Gファンタジーのみが静かな環境で、このような佳作が生まれる状態だったと思います。

 なお、同じくGファンタジーで2005年から始まった同作者による「To Heart2」のコミックは、この「まじかる☆アンティーク」を過去に連載した経緯を踏まえてのコミック化決定だったと思われます。


・様々な意味で意外な連載。
 先ほど、「この作者がコミック化担当に抜擢されたことが意外」と書きましたが、意外なのは作者だけではありません。そもそも、この「まじかる☆アンティーク」というゲームのコミックを、Gファンタジーで連載するという企画自体が、極めて意外な出来事でした。具体的には、

  1. そもそも、美少女ゲームのコミックをエニックス雑誌で連載することが珍しい(ほとんどない)こと。
  2. Gファンタジーという雑誌での連載も意外だったこと。
  3. 「まじかる☆アンティーク」というゲーム自体、コミック化するほどの大きな話題を呼ばなかったこと。
  4. ゲームの発売からかなり遅れて連載が決まったこと。
 が挙げられます。

 まず、エニックス系雑誌では、美少女系ゲーム(ギャルゲー・エロゲー)のコミック化が行われるのは非常に珍しいことです。ゲームコミック自体は多いのですが、女性読者も多い中性的な誌面作りを目指しているためか、美少女ゲームにはあまり縁がないのです。とりわけ、このマンガの連載開始以前には、そのようなマンガはほとんど見られませんでした。そのため、このマンガのエニックスでの連載決定は、かなりの意外な出来事として受け取られました。むしろ、この手のゲームならば、電撃系雑誌での連載の方が自然でしょう。

 エニックス系雑誌の中でも、Gファンタジーという掲載誌の選択も意外でした。Gファンタジーは、エニックスの中では比較的女性寄りの要素が強い雑誌で、しかもこのマンガの連載開始当時は、あの「最遊記」の連載真っ最中であり、それ目当ての女性読者が大幅に増えていた時代でした。そんな中で、むしろ男性向けとも言える、美少女ゲームのコミック化が行われるというのも、これまたかなり意外な出来事でした。

 数ある美少女ゲームの中でも、リーフの「まじかる☆アンティーク」をコミック化する、という選択も意外でした。リーフは定評のある大手メーカーですが、この「まじかる☆アンティーク」に関しては、同社のほかのヒット作ほどには大きな話題を呼ばなかったため、あえてこのゲームをコミック化するという決定が意外だったのです。
 そして、ゲームの発売からかなり遅れて連載の告知が行われたことも、その印象に拍車をかけています。具体的には、ゲーム発売から9カ月後という、ゲームコミックとしてはかなり遅いタイミングで連載が告知され、そのさらに1カ月後に連載開始となりました。

 以上のような事情から、この連載自体がかなりの異色であった感は否めず、当時のエニックス読者の間でも、かなりの話題や憶測を呼びました。当時は、「なぜ美少女ゲーム?」「なぜGファンで?」「なぜリーフ?」「なぜ今になってまじアン?」といった数々の疑問の声が聞かれました。


・うまくまとまった作画が光る。
 そんなわけで、連載前の経緯の説明が長くなってしまいましたが、実際に開始してからの内容はどうだったのか。
 まず、やはり作画が良かったのが光りました。
 とにかく原作キャラクターの再現度が高い。なんというか、作者自身のカラーはある程度残しつつ、それ以上にかなりの部分で原作の絵のイメージを再現しています。このあたりのバランスが良い。後発作品の「To Heart2」もそうで、こちらでもうまく作画を原作に合わせており、毎回ここまでうまく原作に合わせた絵を描く作家というのも珍しいような気がします(普通の作家なら、ある程度は原作を意識しつつも、自分の絵の方が強く出るのもなんですが)。

 それと、美少女ゲームらしく女の子がかわいく描けているだけでなく、サブの男性キャラクターもしっかりと描けているのも良い。こちらの方はかなり濃い目の作風で、むしろより存在感が際立っているように感じました。


・この原作ならばコミック化に適していたかも。
 そして、作画のみならず、原作ゲームのストーリーもうまく反映させたのも良かった点です。
 基本的なストーリーは、主人公の大学生である宮田健太郎が、実家である骨董屋「五月雨堂」を経営することになり、ひょんなことから出会った異世界の魔女・スフィーと共に、日々骨董屋を切り盛りするようになる、というものです。「骨董屋」というのはかなり異色の設定ですが、これは原作ゲームの方でも最大の特徴で、シミュレーションパートで骨董屋を経営するモードがあるのが大きな特徴でした。

 そして、コミック版では、そうした骨董屋の経営も絡めた日常のドタバタコメディが中心で、キャラクターごとの個々のストーリーにはさほど深入りしなかったのが、結果としてよく原作を再現することになりました。

 この手の美少女ゲームの場合、最初に共通のパートがあって、その後個々のヒロインのストーリーに入っていくのが基本的なスタイルで、コミック化にあたっても、それぞれのストーリーを辿っていくケースが多いものです。後発の「To Heart2」のコミック版などはまさにそうで、ひとりひとりのストーリーを順に追っています。しかし、このマンガの場合、そこまで個々のヒロインのストーリーを深く扱っておらず(ほとんどないキャラもいる)、あってもせいぜい1話で完結か、長くても2話程度。ヒロインの数自体が少ないこともあって、全体に占める分量はひどく少ないものです。
 それよりも、むしろ日常のドタバタコメディが中心で、原作のイベントを再現した、あるいはオリジナルの1話完結エピソードが最も多い。元々原作のゲームからして、さほど恋愛関連のイベントは多くなく、どちらかと言えばメルヘンチックで童話的なエピソードも多く、むしろ日常のささやかな幸せをテーマとした話が多いゲームです。その上、メインヒロインであるお子様魔女・スフィーの存在感が大きく、彼女を中心としたコメディが良くも悪くも中心となっている感も強い。このような原作ならば、コミック版のストーリーも、日常のほのぼのとした、それもメインヒロインであるスフィー中心のエピソードに集中するのも自然なところで、これが原作をうまく再現しています。

 そして、このような内容なら、Gファンタジーの連載でも悪くはないな、と思うようになりました。いかにも美少女ゲーム(ギャルゲー・エロゲー)然とした、ヒロインとの恋愛話のみが中心の内容でなくて良かった。意外にも、素直なドタバタコメディとして受け入れやすい連載となっていました。

 それと、ヒロインの女の子だけでなく、主人公やサブの男性キャラクターたちが目立っていたのもいい。主人公の宮田健太郎は、他の同系ゲームに比べると性格付けがはっきりしており(原作でも珍しく顔がはっきり出る)、それ以上にサブキャラクターとして出る男性キャラクターたちが面白い。骨董鑑定人の長瀬源之助が特にそうで、原作でもリーフお馴染みの長瀬一族の一員として、かなり目立ちおいしいところを取っているキャラクターなのですが、コミック版でもそのユーモラスな外見と行動はよく描かれています。下手なヒロインよりもはるかに目立っている存在かもしれません。


・エピソードごとの出来にはばらつきが激しい。
 とはいえ、手放しで褒められる出来のマンガでもありません。とにかく毎回の話ごとに出来不出来のばらつきが激しいマンガです。
 最大の問題は、毎回のページ数が安定しなかったことでしょう。また、そもそも基本となるページ数が少なめなのも難点です。具体的には、1回の連載で普通は20ページ程度、少ない場合には10ページ程度しかないこともありました。2年間の連載でコミックスがわずかに2巻しか出ていないのもそのためです。毎号20ページとは、月刊連載の仕事量としてはあまりに物足りないでしょう。月刊連載ならば、まず30ページ、最低でも25ページ程度はほしいところです。(後発の「To Heart2」ではこのあたり改善されていて、毎回コンスタントに25〜30ページ以上の量を確保しています。) まして、10ページ程度で1話完結というのでは、物足りないだけでなく、ひとつのエピソードとしての出来としても不満ですし、実際にそういった回はどれも面白くありませんでした。
 加えて、作画レベルが安定しないのも難点です。基本的にはよく出来た作画でありながら、なぜか「手抜き」としか思えないような雑な作画の箇所も多く、特に終盤の方がそういった箇所が増えるように思えるのも不満です。(これも、後発作品である「To Heart2」では大いに改善され、安定した作画になっています。)

 一方で、かなり面白いと思える話も散見されるので、やはり話ごとの良し悪しが激しい印象です。具体的には、序盤の第4話で、スフィーの妹のリアンが五月雨堂にやってくる話。この回は特に作画レベルがよく、話もドタバタ+しんみりのバランスが効いていた良作でした。あとは、全体を通して、作品最大の特徴である「骨董」をテーマにした回は、おしなべてどれも面白かったように思います。こういった話では、前述の長瀬源之助の個性的なキャラクターが活きていた点も大きい。ほとんどが原作のイベントから取り入れたエピソードでしたが、数少ないオリジナルエピソードである、高ビーなお嬢さまが運営する骨董屋のライバル店が出来る話(第11・12話)もかなりよくできていました。


・連載中の注目度は高くなかったが、悪い作品ではなかった。
 以上のように、けして手放しで褒められる出来でもないものの、中々に面白い話も多く、日常のほのぼのドタバタコメディ中心の内容も悪いものではなく、実は佳作レベルの作品に仕上がっていたと思います。
 しかし、このマンガの連載中は、雑誌での注目度はおしなべて低いもので、さほどの話題になることもなく、2年間の連載期間を静かに終えてしまいました。「まじかる☆アンティーク」からの繋がりを受けて始まった、後発の「To Heart2」コミックの方が、原作ファンを中心にかなりの人気を得て、雑誌内でも上位ランクの人気作として扱われているのとは対照的です。
 もっとも、これは至極当然かもしれません。連載ペースも作画レベルも、作者の後発作品である「To Heart2」の方がはるかに安定しているのに加えて、「まじかる☆アンティーク」と「To Heart2」では、原作ゲームの人気・知名度が違いすぎます。後者の方が高い注目を集めるのは当然と言えます。

 しかし、その「To Heart2」の連載に繋がっているという意味でも、前作である「まじかる☆アンティーク」の方も重要ではないかと思います。個人的には、毎回単発で賑やかにコメディを繰り広げていたこっちのマンガの方が好きだったりもします。Gファンタジーの中ではさほど注目度は高いものではなく、むしろ「原作が美少女ゲーム」ということで、当時は場違いの感すらありましたが、決して内容は悪いものではありませんでした。今、「To Heart2」の方のコミックが広く人気を集めている状態ならば、こちらの方も改めて評価されてもいいと思います。


「連載終了・移転作品」にもどります
トップにもどります