<魔神転生 THE TRUE REMEMBRANCE>

2003・8・27

 「女神異聞録ペルソナ」や「鳩の戦記」等のメガテンコミック、あるいは「栄光の手」「DAWN〜冷たい手」等のホラー系のコミックで実力を発揮している上田信舟さんの、あまり知られていない連載デビュー第一作。
 このマンガも「女神転生」シリーズを原作に持つゲームコミックで(*厳密には「魔神転生」は「女神転生」シリーズとは別扱いらしいですが)、しかもこれは「ゲームコミックの見本」といえるくらいよくできた秀作です。

 「女神転生」シリーズを扱ったコミックでは、エニックスよりもむしろアスキー(現エンターブレイン)の方が有名だと思うんですが、このアスキー発の一連のメガテンコミックがゲーム経験者向けでマニアックな印象が強いのに対して、上田さんのこの作品は明らかにゲームをプレイしていない(メガテンシリーズを知らない)一般読者を意識した構成になっています。
 そしてこのマンガのいいところは、連載序盤の内にゲームの設定を自然な形で読者に紹介していること。普通にストーリーを読み進めるだけで、メガテンシリーズの基本的な世界観・設定、シリーズの肝となる「悪魔」の特徴や「悪魔合体」の概念が自然に身に付くようになっています。この辺りが一般読者を意識したゲームコミックとして実によく出来ている。ゲームソフトの入門編としても薦められるいい作品です。

 そして、肝心の内容面でもオリジナルのエピソードが巧みに盛り込まれていて、ゲームを知っていたとしても独立した作品として十分楽しめるようになっています。
 原作ゲームである「魔神転生」はそれほど凝ったストーリー演出がなく、むしろ一昔前のファミコン時代を思わせるような素朴なゲームでした。それをストーリー重視のコミックにするにあたって、ゲームを補完するかのように大量のオリジナルエピソードが作られていて、しかもそのエピソードがどれも非常に面白い!
 特に連載序盤で、主人公と学校の友達たちとの関係を描いたエピソードが秀逸でした。なんていうか上田さんは10代の少年少女(特に学生)の微妙な心理を描くのがうまいですね。「鳩の戦記」とか「DAWN」とかの最近の連載もそうなんですが、この連載デビュー作でもその片鱗を窺い知ることができます。

 そして最後に、これほどオリジナル色が強い連載でありながら、肝心の部分ではきちんとゲーム原作のストーリーに忠実である。これも非常にありがたい。ラストのエンディングは完全にゲームそのままで、ゲームファンとしても納得。ゲームコミックとしてお手本ともいえる優等生作品です。

 唯一欠点らしい欠点といえるのが、今となっては絵が未熟に感じられること。10年近く前の連載第一作を今の作品と比較するのが間違っているんですが、やはり今の絵と比べるとやや拙く感じられます。
 ただ、絵の構図や画面の雰囲気の作りこみはよく出来ています。ダークで重厚な雰囲気・はっとさせる構図取りのうまさはこの当時から健在。戦闘シーンの見せ方もうまい。つまり、未熟なのはあくまで絵柄だけで、絵の構図や作品の雰囲気はこの当時からまるで変わらない。10年近く前から既に今と変わらないレベルにあったといえます。


 以上のようにこの「魔神転生」、作者の連載レビュー作でありながら大変よく出来ていて、今の上田さんのマンガと同等のレベルで楽しめる快作でした。Gファンタジーの初期において、ファイアーエムブレムやエルナサーガ、レヴァリアースと並んで雑誌の中核にあった作品なんですが、なぜかほとんど知られていない(今に伝えられていない)のが不思議なところです。


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