<モーツァルトは子守唄を歌わない>

2001・11・19

 原作付きながら、ステンシルではトップクラスの面白さを持つコミックです。個人的には非常に気に入りました。

 原作は同名タイトルのミステリー小説。かなり著名なタイトルなので、知っている方、あるいは実際に読まれた方も多いかと思います。
 19世紀初頭のウィーンで、音楽家モーツァルトの死をめぐって明るみに出た陰謀をベートーベンたちが追っていくというミステリー。実際の歴史でも謎とされるモーツァルトの死を題材にした推理ものです。

 まず何といっても絵がいいですね。19世紀のヨーロッパの雰囲気を余すことなく表現していて、このビジュアルにはとても惹かれます。わたしは基本的にストーリー派のまんが読みでして、絵からマンガに入ることはほとんどないんですが、これだけは例外でした。この重厚な雰囲気が実にいい。この絵がなかったらここまで評価しなかったと思います。また、この絵は一応少女マンガ的なところもありますが、基本的には誰でも受け入れられるタイプの絵だと思います。このあたり、普通の少女マンガ雑誌と違ってある程度男性のエニックスファンも意識したステンシルらしい連載といえるでしょう。(それに加えて原作の小説ファンのことも意識しているかも知れません。)

 まず絵に圧倒されましたが、ストーリーもそれに負けてはいません。もともと原作がベストセラーのミステリー小説というだけでストーリーの完成度は保証されているようなものですが、しかしただ原作が優れているだけでなく、コミック化のレベルも高いかと思われます。きっちりと月刊連載の形で安定させておいて、毎回見せ場があり、かつ次回への引きもいい。純粋に先が読みたいと思わせる構成力がある。原作の優秀さとコミック化のうまさが両方とも感じられる、実にいい作品だと思います。

 ただ、基本的にミステリーというだけあって、とっつきやすい作品ではありません。状況がかなり複雑で、トリックも頻繁に出てくるため、きちんと考えながら読まないとだめです。もちろんこれはすべてのミステリーに言えることですが、このマンガはビジュアルが華やかな一方で内容は本格ミステリーなので、きちんと読み込んでいかないとやや把握が難しい。原作を知らず、かつステンシルを途中から読み始めた人にはやや厳しい内容かも知れません。


 まあ、そういう方はやはり最初からコミックスで読むべきでしょう。面白さは確実に保証しますから、一度コミックで取り組むのもどうでしょうか。あるいはこのコミックを機会に、原作の小説に手を出してみるのも面白いかも。
 逆に原作を読まれた方には文句なくお勧めできます。19世紀ヨーロッパの雰囲気をここまで再現しているのが素晴らしい。原作ファンの鑑賞にも耐えうる、非常にいい作品だと思います。


2002・2・10追記

<連載終了にあたって追記>
 最後まで原作に忠実で、かつ綺麗にまとまった面白いマンガでした。原作もののコミックとしては最高の出来といってもいいでしょう。あえて欠点を挙げれば中盤〜後半の連載でやや絵が乱れがちだったことかな? しかしそんなことは些細な問題。全体的にとても完成度の高い名作だったと思います。


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