<PAPUWA>

2002・12・16
全面的に改訂・画像追加2006・11・21
一部改訂・画像追加2008・11・8

 「PAPUWA」は、少年ガンガンで2002年4月号から始まった連載で、初期ガンガンの名作「南国少年パプワくん」の続編として開始されました。作者はもちろん柴田亜美で、ほぼ新人だった前作連載時とは異なり、今や大物作家となった感もあります。

 この連載は、あの「エニックスお家騒動」直後に始まった連載であり、騒動前後から路線を変更し、初期の頃の作風への回帰を目指していたガンガン編集部が、「かつての初期ガンガンを支えてきた作家の復活連載」として登用したものです。この当時は、この連載と同様に、初期の作家を復帰させる試みが何度も行われていました。中には成功せずに打ち切りになったものもいくつかありましたが、この「PAPUWA」は、さすがに数多くの連載をこなしてきた柴田亜美だけあって、かつて同様に安定したクオリティを維持しており、長期連載として雑誌に定着することに成功します。のちにかなり早い時期にアニメ化されたのも、「あの柴田亜美の作品」という点が認められたからだと思われます。

 しかし、安定した連載とはなっていたものの、かつての連載の復活という点からやや新鮮味に乏しく、雑誌内でも前面に押し出されて登場することは少なかったように感じました。連載は2008年2月号まで続く長期連載となりましたが、最後までかつてほどの存在感は得られずに終わったような気もします。そのあたりで、いまひとつ物足りなさの残る連載でした。


・「PAPUWA」登場の背景。
 今も述べたとおり、この「PAPUWA」の連載は、それまでの路線を変更し、かつての初期ガンガンの復活を目指す現ガンガン編集部が、その路線の一貫として、かつての初期作家の連載を復活させたという要素の強いものです。連載自体も、あの「エニックスお家騒動」からほどなくして始まっており、この時期の路線変更を象徴する出来事となっています。
 当時は、ほぼ同時期に、同じく初期ガンガンを支えた「ハーメルンのバイオリン弾き」の渡辺道明による新連載も始まっており、少し前にまで遡れば、同じく初期作家である増田晴彦や藤原カムイの新連載も始まっています。これら三氏の作品は、いずれも「王道少年マンガ」を強く意識した構成で、路線変更後のガンガン編集部の目指す作品作りが顕著に出た内容になっています。一方で、この「PAPUWA」は、どちらかと言えば作者独自の感性が強く出たシュールなギャグが中心で、王道少年マンガとはやや趣きが異なりますが、それでも「初期ガンガンのイメージを象徴する作品」ということで、あえて起用することになったと思われます。どちらも「初期ガンガンの作風を取り戻す」という方向性では共通しているのです。

 そのため、このマンガは、編集部からの要請によって連載が始まったという要素が強く、作者の柴田さんとしても、いきなりの連載復帰に戸惑った部分もあったかと推測されますが、さすがに数多くの連載をこなす大物作家だけあって、安定したレベルの連載を生み出すことに成功しています。同時期の渡辺道明や増田晴彦の連載が、早い時期に打ち切りになったのとは対照的であり、同じく長期連載化に成功する藤原カムイと並んで、かつての初期作家の復活組の中では「成功組」に入ったと考えられるでしょう。


・かつてのギャグとシリアスストーリーの折衷か。
 この「PAPUWA」は、前作にあたる「南国少年パプワくん」の最終回から直接続くストーリーとなっており、その点で完全な続編と言えます。いわゆるリメイクや番外編ではなく、正式な続編として始まった点は大いに評価できると思いますし、かつての前作からのファンとしても、前作の続きが読めるというのはありがたいことでしょう。メインキャラクターは一新され、前作では敵役のひとりだったリキッドが、かつてはパプワくんと並んで主役格だったシンタローに代わって、今回のメインキャラクターとなっています(のちの連載中期にシンタローもメインキャラクターに復帰しますが)。しかし、そのギャグのノリ、雰囲気は前作にかなり近く、基本的な作品の方向性は変わっていないと思われます。

 さて、前作である「南国少年パプワくん」は、そのシュールで過激なギャグが多くの読者の爆笑を誘い、一躍人気マンガとして雑誌の看板的な存在となりました。しかし、連載が後期に入ると、それまでの作風が一変、作中で鍵となる「秘石」を中心としたシリアスなストーリーとなり、大きく様相が変わりました。このどちらも面白いことには変わりませんが、しかし初期からの爆笑ギャグで入ったファンにはかなり戸惑いもあったようで、大きく評価が割れることにも繋がりました。

 しかし、続編であるこの「PAPUWA」は、その双方、ギャグとシリアスなストーリーが並行して進むようなスタイルとなっているようです。ギャグはかなり多く、基本はギャグマンガとして読ませつつ、前作ゆずりのストーリーも少しずつ進むようなスタイルとなっている。これが、前作からの最大の変更点でしょうか。
 そしてギャグ、ストーリー共に安定したレベルを保っており、毎回コンスタントな質を維持しています。さすがにかつての名作の続き物ということで、前作を最初に読んだときのような圧倒的な衝撃こそないものの、それでも柴田亜美のギャグ、生モノを取り入れたネタは相変わらず面白い。ストーリーも、前作の後半のようにシリアス一辺倒ではなく、ギャグと並行して少しずつ進むということで、前作ほどの違和感はないように思われます。この「ギャグとストーリーの並行」という今作のスタイルは、うまくいっているように見えます。


・しかし、突出した面白さが感じられないのも事実。
 ただ、これは連載開始当時から感じることですが、確かにこのマンガは、「安定したクオリティ」こそ感じられるものの、それ以上に圧倒的な牽引力には乏しかったようにも思います。毎回毎回きっちりと読めるギャグマンガに仕上がっていることは確かですが、それ以上に、「このマンガは絶対に読みたい」と思わせるような力はない。前作が雑誌の看板となったのとは対照的に、今作があくまで雑誌の中堅どころに落ち着いたことからも分かります。読者としても、このマンガを毎回是が非でも楽しみにしているという人は多くなかったのではないか。もちろん、柴田亜美のファンや熱心な読者ならば別ですが、それ以外の読者にとっては、あくまで「それなりに楽しめる連載」というレベルに留まっていたのではないでしょうか。
 その理由としては、まず、そもそもかつての作品の第二作ということで、かつてほどの新鮮味には乏しいということ。昔は爆笑できたギャグでも、今回はそれほどでもないレベルに留まっています。そして、ギャグ自体も、かつての生モノが全面に登場するシュールさが薄れ、いじられ系のアクの強いギャグが増えたこともあるでしょう。
 そして、ストーリー展開にもさほど惹かれるものがないのも、大きいかもしれません。前作ゆずりの、パプワ島や秘石を絡めた謎には一定の興味はあるものの、こちらもかつてほどの新鮮さには乏しい。全体的に前作ほどの圧倒的な勢い、面白さに乏しいのです。

 そして、連載が長引くにつれて、その傾向が顕著に感じられるようになってきました。確かにガンガンのラインナップの一角ではあるものの、表立って読者の話題になるようなことは少ない。元々、かつてあった作品の続編ということで、新鮮味に乏しいために大きな話題にならないのは仕方ないのですが、それでも連載が終盤に近づくにつれ、かつてよりさらに存在感が埋没してきたように思います。
 実際のところ、連載当時のガンガンで、この連載を積極的に読んでいる人は、さほど多くなかったように見えました。「鋼の錬金術師」や「ソウルイーター」が雑誌の表に出ている状態の中で、むしろあまり注目されず、熱心に読んでいない人も多いのではないか。「決して悪い連載ではないが、積極的に楽しみにして読んでいるわけでもない」そういう付き合い方をしている読者の方が、今では多いはずなのです。


・なぜこの作品はアニメ化したのか。
 それと、この作品は、連載開始してからかなり早い段階で、アニメ化したことも、少々不可解です。具体的には、連載開始が2002年4月号で、アニメ放映スタートが2003年9月。わずかに1年半しか経過していない時期です。これは月刊誌連載のアニメ化としては、特にエニックス系のマンガとしては、不可解なほどに早い。普通、こんなに早い段階では、原作の話数が溜まっていないはずなのです。

 このマンガの場合、連載が安定して面白かったのもアニメ化の理由でしょうが、それ以上に、「かつての名作の続編」「あの柴田亜美のマンガ」という要素が、アニメ化決定の大きな力になったのではないかと思われます。そして、どうもスクエニ側からも、このマンガのアニメ化への積極的な推進活動もあったように見受けられます。

 しかし、この「PAPUWA」のアニメ、全くといっていいほど話題になりませんでした。決定的に評判が悪いとは聞いていませんが、それ以前に、そもそもこのアニメに関する話題をほとんど耳にしませんでした。元々、かつての作品の続編ということで、新鮮味には乏しく、原作も安定したクオリティこそあれ、雑誌内で突出した存在感があるわけでもない。これでは、最初から注目を集めなかったのも当然でしょう。
 そして、このアニメの放映と全く同時期に、あの「鋼の錬金術師」のアニメが放映されたのも、注目を集めなかった大きな要因となりました。はっきりいって、これ以降のガンガンは「鋼」アニメ一色となり、一方で「PAPUWA」のアニメは、ほとんど顧みられないままで終了した感があります。正直、作者や作品のネームバリューだけでアニメ化しても意味はなかったのではないでしょうか。


・悪い連載ではないが、雑誌内での存在感は薄かった。
 もちろん、アニメが注目されずに終わったからといって、原作が悪いわけではなく、その後も安定した長期連載を維持し、無事完結を迎えました。
 しかし、長期連載として悪い作品ではないものの、雑誌内での存在感は大きいものではなく、多くの読者にとっては、さほど心待ちにするほどの連載でもなかったのではないかとも思われます。一般の読者にとっては、さほど目立つ大きい存在ではなかったのではないか。
 むしろ、「PAPUWA」の連載中にGファンタジーの方で始まった、作者のもうひとつの連載である「カミヨミ」の方が、作品に新鮮さがあり、面白いようにも感じられました。「カミヨミ」は、ほぼシリアスのみの伝奇ストーリーであり、「PAPUWA」との単純な比較は出来ませんが、それでも、作者の今までにないジャンルの連載であるこちらの方が、作品に強い新鮮さがあり、人気を集めたように思われます。「PAPUWA」の方が、熱心なファン以外にはさほど関心を持たれていないのに比べれば、こちらの方が恵まれているように思います。「PAPUWA」終了後もこの「カミヨミ」の連載は続き、その勢いも決して衰えていないところを見ても、やはりこちらの方に連載の比重が移ったように感じます。

 もちろん、柴田亜美の熱心なファン層にとっては、この「PAPUWA」も本当に人気がありました。ファン向けに作られた、スクエニの作家たちによるアンソロジー「偽PAPUWA」は、かなりの続巻を重ねましたし、「PAPUWA de DO本!!」なるファンブックも発売されました。作者のサイン会も、「PAPUWA」連載開始以後幾度となく行われてきましたが、これも毎回かなりの盛況のようでした。
 しかし、それ以外の大半の読者にとっては、それほど惹かれる力を持つ連載ではなかったかもしれません。この当時のガンガンのラインナップの一角としては、むしろ平凡な部類に属していた感もありました。実力派の作者の作品だけあって、決して悪い内容ではないが、手放しで良かったと言えるほどの域には達せなかったように思えるのです。


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