<GOGO!ぷりん帝国>

2005・3・14
一部改訂・画像追加2007・4・29

 「GOGO!ぷりん帝国」は、ガンガン連載の異色のギャグマンガとして、かつて大人気を獲得した作品です。月2回刊時代の初期、96年に連載が始まり、2000年に惜しまれつつ連載を終了するまで、ガンガンの全盛期を横断して連載を続けたこのマンガは、まさにガンガン全盛時代を支えた傑作と言えます。作者のくぼたまことは、もともとは青年誌で活躍していた作家で、「仮面レンジャー田中」という異色のギャグマンガで、既にコアなマンガ読者の支持を集めていました。この「ぷりん帝国」も「仮面レンジャー田中」の方向性をそのまま引き継いだ作品であり、しかも前作よりも一般向けの内容になっており、幅広くマンガファンの支持を集めました。

 もともと青年誌の作家ということで、当時の少年ガンガンの中でも異彩を放っていた感のあるこのマンガですが、当時のエニックスでは、このような青年誌出身の作家を積極的に採用しており、その中からいがらしみきおのような成功者も出ていました。くぼたまこともそのような成功者のひとりに数えられるでしょう。

 しかし、2000年の連載終了時には、さほど(ほとんど)人気が落ちていないのに、なぜか打ち切りのような形で連載終了となり、それはかなり残念に思いました。なぜ人気が落ちていないのに終了となったのか、その理由が判然としません。推測するに、この「ぷりん帝国」の連載終了直後に、あの「エニックスお家騒動」につながる誌面改革が始まり、誌面の低年齢化路線が進められていってしまいます。そして、そのために、多少なりとも青年誌的作風で高年齢向けと言えた「ぷりん帝国」を外した可能性があります。そして、このしばらく後に、エニックスはあの伝説の青年誌「コミックバウンド」を創刊し、そちらの雑誌の方で、くぼたまことは、新作「気象戦隊ウェザースリー」の連載を開始します。この経緯を見るに、作者本来の活躍の場であった青年誌へと掲載場所を移すために、連載を終了させたのかもしれません。

 しかし、これは、今考えてもかなり不可解な連載終了であり、この後のガンガンが、強引な路線変更からのお家騒動でクオリティが完全に崩壊した、その先触れとなったような感すらありました。今思えば、この「ぷりん帝国」の終了は、ガンガン全盛期の終わりを告げる出来事だったようにも思えるのです。


・何と言っても「庶民派ギャグ」。
 くぼたまことと言えば、やはり「庶民的」とも言える独特のギャグが最大の売りです。「仮面レンジャー田中」では正義の変身ヒーロー、「ぷりん帝国」では悪の帝国に仕える怪人たちが主役ですが、彼らが派手な活躍を見せるその裏で、実は極めて庶民的・小市民的な生活を送っているという、そのギャップが最高に笑えるのです。
 そして、この「庶民派ギャグ」を中核に、様々なレベルの高いギャグがふんだんに盛り込まれています。キャラクターの個性を笑いに昇華させたギャグ、怪人たちの妙な行動を大真面目に描いて爆笑を誘うギャグなど、そのネタの豊富さには見るべきものがありました。ギャグマンガとしては一流の作品となっていたと見てよいでしょう。絵的にはさほどレベルは高くなく、いわば「ヘタウマ」系の作家とも言える絵ですが、それがまたこの庶民的な雰囲気をうまくかもし出していて、実に雰囲気のいいマンガになっています。

 さて、このように、「ぷりん帝国」のギャグは、様々なレベルの高いギャグネタで構成されており、しかもそのひとつひとつが他とうまく融合することで、全体として非常に高いレベルのギャグマンガになっています。以下では、それらのギャグを分類し、ひとつひとつ徹底的に解析していこうと思います。


(1)庶民派ギャグ。
 まず、なんといっても「ぷりん」と言えば「庶民派ギャグ」。ぷりん帝国の主役は、地球を狙う悪の帝国の怪人たちですが、彼らがその恐ろしげな外見とは正反対に、実に庶民的な生活を過ごしているところが最高に笑えるのです。
 日々家庭の問題や近所付き合いで悩み、涙ぐましい節約生活を送り、はた目にはどうでもよさそうなことで悩みまくる。この「庶民的・小市民的」な怪人の生活を見て、我々読者は大いに笑いまくるのです。
 さらに、これらのネタの中には、我々小市民的な読者が、日常で思わずやってしまうような行動も多数含まれており、そのようなギャグに触れた時の「あるある感」がまた爆笑を誘います。一人暮らしの怪人が、安アパートで貧乏自堕落な生活を送っているその描写などは、まさにその行動自体が最高のギャグと言えるでしょう。「あーー月末はやっぱ苦しーーわ」


(2)キャラクターをネタにしたギャグ。
 「ぷりん帝国」と言えば、その個性的なキャラクターたちが目を引きます。彼らは、単に庶民的なだけでなく、それ自体が個性の固まりとも言える存在で、その笑える行動の数々がこれまた最高に笑えるのです。
 ぷりん帝国の最高権力者にして芋ようかん好きの子供じみたていおう、ていおうや無能な怪人たちに悩まされる日々を送る帝国参謀のジャバ、無能な怪人にしてお調子者でていおうをいじることが日課のセミ怪人(セミ)ゲブロス(ゲブ)、かつての名軍師にして、引退後は嫁にいびられる日々を送る(笑)長老バルゲン、そしてなんといっても庶民派を代表する怪人の隊長ベルムス・・・。これ以外にも多数の個性的な怪人が毎回のように登場し、彼らがその個性的すぎる行動で笑わせてくれる。これがまた「ぷりん帝国」の最大の魅力のひとつで、くぼたまこと作品の中でこの「ぷりん帝国」の人気が特に高いのも、このような個性的な怪人の魅力が大きかったためでしょう。

 特に、庶民的な怪人の隊長である「ベルムス」関連のネタは秀逸であり、くぼたまことの本領である庶民ネタに、ベルムス自身の強烈な個性が加わって、驚くほどレベルの高い爆笑ギャグに昇華されています。「コンビニ世代が!」という決めぜリフに象徴されるスーパーにおける買い物講座(笑)、「ベルムス巻き」という驚くべき庶民派手作り寿司の製作など、そのベルムス関連のネタはまさに珠玉のギャグのオンパレードだったと言えるでしょう。庶民派ギャグがベルムスという個性に出会い、さらに高いレベルのギャグが錬成される。これこそがギャグのアウフヘーベンであり、くぼたギャグ哲学の極地と言えます。


(3)会議ネタ。
 くぼたまこと作品と言えば、誰もが「庶民派」ギャグを筆頭に挙げる中で、「ぷりん帝国」にはもうひとつ、非常に重要なギャグのネタがあります。「会議ネタ」です。
 ぷりん帝国の重鎮たちが、帝国の会議室に集まって、様々な重要(?)議題を討議するわけですが、この本人達は真面目に討議しながら、はたから見るとあまりにもバカバカしいその内容が最高に笑えるのです。「ぷりん帝国」のほかのギャグと比較しても、その爆笑度は非常に高い。「コンビニの弁当は何を食べたら良いのか」「上握り寿司はどういう順番で食べたら良いのか」とかいった、実にどうでもよさそうな話題を真剣に討議するそのバカバカしさはなんとも言えません。
 数ある会議ネタの中で、特に笑えるのが、侵略先である地球人の行動を討議するネタでしょう。我々から見ればなんでもないことを、勘違いして解釈して真剣に討議するその姿は大爆笑の一言に尽きます。個人的には、「なぜGOひろみがみりんのCMに出ているのか」というネタが最高でした。実はこれが最初の会議ネタだったんですが、これがあまりにも面白かったために、以後この作品の評価が格段に上がりました。


・実は「会議ネタ」こそがぷりん帝国の真髄。
 そして、実は、この「会議ネタ」こそが「ぷりん帝国」で最も面白い、その真価とも言えるギャグではないかとわたしは考えています。
 くぼたまこと作品といえば、とにかく「庶民派」のイメージが強く、多くの人が庶民的なネタを求めて読んでいるわけですが、実は本当に面白いのはこの「会議ネタ」であり、その意味では、これこそがまさに「ぷりん帝国の真髄」なのです。
 そして、この「会議ネタ」は、のちのマンガにも継承され、「エクセルサーガ」や「ぱにぽに」などの作品でも同系のネタを散見することが出来ます。これらのマンガの会議ネタも最高に面白いことは確かですが、しかしその原点は間違いなく「ぷりん帝国」なのです。

 このように、当時のガンガンで一世を風靡したのみならず、のちの世にまで多大な影響を与えた「ぷりん帝国」、まさに傑作の一言に尽きると言えるでしょう。
 ちなみに、わたしは、くぼたまことの作品全部の中でも、やはりこの「ぷりん帝国」が最も面白いと考えます。ぷりんより前に連載された「仮面レンジャー田中」、のちに連載している「天体戦士サンレッド」は、いずれも青年誌の掲載であり、暴力的なネタが多く、人によってはかなりの抵抗、不快感を感じるのに対して、「ぷりん帝国」は掲載誌が少年誌ということで、そのようなネタがほとんどなく、誰もが抵抗なく読むことが出来ました。そして、少年誌掲載とはいえ、極端に低年齢向きの作品に陥ることもなく、幅広い世代の支持を集めました。当時のガンガンは、少年誌とは言え読者年齢層は高く、幅広い年齢層の読者が存在していましたが、「ぷりん帝国」がそのような誌面で連載出来たのは、非常な幸運だったと言えます。そして、同時に「ぷりん帝国」自身もまた、そのようなガンガンの幅広い読者層の確保に貢献したとも言えそうです。





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