「666〜サタン〜」

2001・11・9
全面的に改訂2006・4・15
一部追記2008・1・6

 「666〜サタン〜」は、少年ガンガンで2001年9月号から連載を開始した作品で、いわゆる「王道少年マンガ」を強く意識した作品となっています。作者は岸本聖史。ガンガンの連載の中でもかなりの長期連載に当たると見てよいでしょう。


・鳴り物入りで始まった連載。
 このマンガは、スタートした当初の雑誌の扱いにかなり大きなものがあり、まさに鳴り物入りでスタートした感のある連載でした。なぜここまで編集部がこの作品を大きく取り上げたのか。その理由はふたつあります。

 まず第一の理由として、このマンガが当時の編集部の目指す「メジャー志向の王道少年マンガ」のひとつで、しかも最大の期待作だったからです。当時のガンガンは、あの「ブレイド騒動(エニックスお家騒動)」の真っ最中であり、当時すでに路線を変更していたガンガンの方向性に反発した雑誌の編集者と作家陣の多くが出版社を抜けており、残った編集者たちが、自分たちが新たに目指す「メジャー志向の王道少年マンガ中心の誌面」を作ろうとしていた最中でした。そんな中で、この「666〜サタン〜」は、その王道少年マンガをこれ以上ないほど強く意識した作品であり、雑誌の方向性を変える中心作品として、なんとしてでも強く推していきたい最大の期待作だったのです。

 そしてもうひとつの理由が、このマンガの作者である岸本聖史(きしもとせいし)が、週刊少年ジャンプで「NARUTO」を連載している岸本斉史の双子の弟であることです。知名度の非常に高い人気作家の弟がガンガンで連載、ということで大々的に宣伝したのです。実際、この岸本聖史の作風は、双子の兄である岸本斉史に酷似しており、確かに双子のマンガ家だと感じさせる作品に仕上がっています。


・期待に反する平凡な作風。
 このように、雑誌側で全面的に推し進めた新連載であった「666〜サタン〜」ですが、さて実際の内容はどうだったのか。

 実は、これがまるでぱっとしない作品だったのです。当初から極めて平凡で特徴のない作品で、まったく印象に残るマンガではありませんでした。
 肝心のストーリーですが、主人公で悪魔の力を身に宿した少年であるジオが、オーパーツと呼ばれる特殊な道具(武器)を手に、悪いオーパーツ使いを倒しつつ大きな目的に向かっていくというもので、熱血王道系バトル少年マンガをこれ以上ないほど志向した作品になっています。しかし、王道と言えば聞こえはいいものの、実際には極めて平凡でありきたりな内容に終始しており、まったくもって味気ない作品となっています。冒頭の、鉱山の列車につかまっていくシーンなどは、まさに「ラピュタ」そのままといったシーンで、この時点であまりにも印象は良くなかったのですが、それ以降もオリジナリティのある部分はほとんど感じられず、ずるずると平凡な展開が進んでいる状態です。

 特殊能力を持ったもの(この作品ではオーパーツ)同士のバトルという設定自体ありがちなものですし、ストーリー展開も安易で、それ以上にキャラクターの心理描写や思想面があまりにもありきたりで、まったく読みがいがありません。低年齢向けだと考えてもこの内容ではいまいちです。オーパーツやスピリッツ、悪魔といった特殊能力の設定もいまいち面白さが感じられません。というか、ジオが悪魔になった時の額(ひたい)の文字が、最初「Y6六」だったのが、いつの間にか「666」に変わっているのですが・・・このあたりどうでしょうか。

 さらに問題なのは、このマンガの中に、双子の兄の作品である「NARUTO」を酷似させる設定やストーリーが頻繁に見られることです。しかも、兄の作品である「NARUTO」がかなりの面白さを持っているのに対し、この「666〜サタン〜」の方は極めて平凡でつまらないために、単なる兄の作品の「劣った二番煎じ」にしか感じられません。また、「NARUTO」や兄の存在を抜きにしても、ジャンプ系によく見られるありがちな少年マンガの域を出ておらず、むしろそれらの中でもまったく印象に残らない凡作のひとつとなっている感があります。


・絵も平凡で拙い。
 内容だけではありません。絵的にもまるで見るところがなく、これまた兄である岸本斉史の作風に酷似しており、ひいては現在の少年ジャンプにありがちな少年マンガそのままの絵柄で、そこにオリジナリティはまるで感じられません。正直、このビジュアルでは、ありがちで平凡な印象以外読者に与えることは難しく、これではあえてこのマンガを手に取って読もうとする人も少ないのではないでしょうか。

 単にオリジナリティがないだけではなく、絵の画力自体も決して高くありません。時にかなり丁寧に描かれた人物描写もありますが、それらはごく一部であり、全体的には拙く読みづらい作画であり、仕上がりの汚さが目立ちます。決して綺麗な絵ではありません。できればもう少し時間をかけて丁寧に仕上げてほしいと思うのですが・・・。これでは読みづらさばかりが目立ち、読者によい印象を与えられません。
 しかも、もう既に数年以上の連載を重ね、単行本も10巻以上出ているにもかかわらず、さして目立った画力の向上が見られません。むしろ、作品を通して仕上がりの汚さが目立ち、読みづらい印象ばかりが続いている印象です。これでは、今から新しく読もうという新規読者もあまりいないでしょう。


・なぜこのマンガの連載が続いているのか。
 このように、この「666〜サタン〜」は、当初の雑誌編集部の期待に反して極めて平凡な作品でしかなく、凡作としか呼べないレベルの作品に留まっています。この程度の作品ならば、ある程度の期間ののちに打ち切りになるのもやむを得ないところでしょう。

 ところが、実際にはこのマンガはもう4年以上も続いているのです。これはかなり意外で、むしろありえない話です。まだ人気があって売り上げがいいというのなら話は分かりますが、このマンガは人気も売り上げも相当に冷え込んでおり、単行本もさほど売れていない状況です。もちろん、アニメ化やドラマCD化の話などはまったくありませんし、新連載時を除いて単独で表紙になったことは一度もありませんし、グッズや全員サービスなどもほとんど出ていません。雑誌の中でも非常に人気の薄い状態で連載が続いているのです。なぜこれが打ち切りで終了しないのか。

 ひとつの理由として、あの「岸本斉史の弟」ということで特別扱いされている可能性があります。しかし、それだけで連載が続いているとも思えません。最大の理由は、やはり「現在のガンガンの、メジャー志向の王道少年マンガ路線」に見合う作品だからでしょう。ガンガンの編集部としては、自分たちの目指す「メジャーな一般向け少年誌」を達成するために必要な作品は、どうしても終わらせたくないものだと考えられるのです。

 しかし、これはあまりにも不可解な路線です。そもそも、なぜそこまで少年マンガにこだわる必要があるのかが分かりませんし、仮に少年マンガの連載がどうしてもほしいのだとしても、このような平凡な連載にこだわる必要もありません。この連載を早急に打ち切って、新しい連載を始めればいいだけのことです。平凡な古い連載を延々と続けるよりも、新しい連載を始める方が人気が出る可能性が高いと思いますし、そのほうが雑誌の活性化にも繋がります。しかし、今のガンガンではそのような試みがあまり見られず、むしろさして人気のない古い連載が延々と続いていることが多く、「666〜サタン〜」もその典型と言える作品となっています。


・青年編で果たして人気が上がるのか。
 しかし、連載が4年半を過ぎて、この作品は「青年編」へと突入し、作中の時が大きく経過し、少年だった主人公のジオをはじめ、多くのキャラクターが青年に成長するなど、かなりの変化が見られました。この大幅な刷新によって、いよいよ作品の人気が出るかもしれないとする意見が一部にあるようですが、果たしてどうでしょうか。
 結論から言えば、それはまずありえない話でしょう。ここまで4年以上も経ちながら、極めて低レベルの人気に終始している作品が、今になって大きな刷新を行ったところで、到底人気が上がるとは思えないのです。これまで大きな人気が見られない低空飛行の状態のまま、もう単行本が10巻以上も出ている状況で、今から刷新を行ったところで、作品が注目を集めて人気が上昇する可能性は極めて低いのではないでしょうか。そのような「テコ入れ」を行うならば、もっと早い時期に行うべきでしょうし、今更これで人気が上昇すると考えること自体非現実的であると言えます。


・昨今のガンガンを象徴する凡作。
 はっきりいってこの「666〜サタン〜」、これほどまでの長い連載が続いているにもかかわらず、まったくもって平凡で印象に残らない作品に終始しています。人気の上でもまったく低いレベルに留まっており、実際、このマンガが読者の話題に上っているのを見たことがありません。同じガンガンの少年マンガ系の作品でも、例えば「ソウルイーター」はかなりの人気を獲得していますし、「マテリアルパズル」も熱心な固定ファンが存在しています。「女王騎士物語」も、その特異な内容が話題に上ることがあります(笑)。しかし、この「666〜サタン〜」の場合、そのような人気も話題もまるで見られず、本当に誰が読んでいるのかすら想像できない状態です。今のガンガンでも最も存在感のないマンガではないでしょうか。

 しかし、このマンガは、ガンガンの歴史上でも相当な長期連載です。連載があまり長引かないガンガン系(エニックス系)では、5年近くも連載が続くにはかなりの人気が必要です。だが、この「666〜サタン〜」には、そのような人気はまるで見られないままでそこまで連載が続きました。今のガンガンでは、これよりも長い連載は、同時期に始まった「鋼の錬金術師」とかつての定番人気作品「ハレグゥ」のふたつのみ。しかし、この作品がそれほどの長い連載に値するものだとは思えません。

 しかし、今のガンガンでは、このような形の「さして面白くもなく、人気もないのに連載が延々と続く」という作品が頻発しており、雑誌の質を大きく落としています。「666〜サタン〜」はそのような作品の中でも最大の長期連載であり、その点でまさに今のガンガンの質の低下の象徴と言える作品になっています。このような古い平凡な作品が誌面の一角を占め続けるような誌面状況では、今後のガンガンにも期待できないのが正直なところです。


・最後までかくたる話題のないままで終了。
 そして、ようやく2008年1月号をもって連載終了しましたが、最後まで平凡な作品に終始し、最終回でも特に読者の間で話題にのぼることなく、そのまま終了してしまいました。作者の岸本さんは、すでに他出版社での仕事を獲得しているようで、その上でガンガンでさしたる人気を得られなかったことも加えて、ガンガンでの次回作は当面ないものだと推測されます。ここまで長い間連載を続けたにもかかわらず、後に続くさしたる成果を挙げることも出来なかったと言えます。

 確かに、ストーリーを最後まできっちりと進めて終わらせることも重要でしょう。しかし、この作品の場合、何年もかけてストーリーを完結させなければならないほど、面白い作品とはどうしても思えませんでした。むしろ、早いうちに見切りをつけて終了し、作者の次回作を打ち出した方が、その後によりよい作品を残せた確率は高かったように思えるのです。その方が、作者にとっても雑誌にとってもよい展開が期待できたのではないでしょうか。お家騒動後のガンガンは、とにかく「平凡な作品が延々と続く」事態に事欠きませんが、そんな方針では、決して幸福な展開を迎えることはないと思うのです。


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