<ToHeart2 〜colorful note〜>

2006・1・31
一部改訂・画像追加2008・11・8

1巻表紙  「ToHeart2 〜colorful note〜」は、月刊Gファンタジーで2005年4月号から2008年5月号まで連載された作品で、同名のPS2ゲームである「ToHeart2」のコミック化作品です。この「ToHeart2」、メディアワークスの電撃大王の方でも同時期にコミック化されており、それとの差別化を図るためか、こちらの方には「colorful note」というサブタイトルが付いています。これは、あくまでふたつの作品を区別するためのものと思われ、原作にないサブタイトルが付いているからといって、例えば内容が原作から大きくアレンジされているとか、原作とは異なるサブストーリーであるとか、そういったことは一切ありません。むしろ、原作に非常に忠実な内容のコミカライズとなっています。

 コミック化担当作家は、きたうみつなで、この作品を連載する前に、同じくリーフ(アクアプラス)のPCゲームである「まじかる☆アンティーク」のコミック化も担当していました。今回Gファンタジーでコミック化が決まったのも、この「まじかる☆アンティーク」をかつて連載したことからのつながりであると思われます。かつての連載は、良作ではあったものの知名度的にはぱっとせず、さして話題を呼ぶことなく終了してしまいましたが、今回の「ToHeart2」は、さすがに原作の人気・知名度が圧倒的で、最初からかなりの注目と人気を集めることになりました。

 内容的にも前作より優れており、原作を忠実に再現した絵のレベルの高さと、これも原作に忠実ながら卒なく構成されたストーリーで、ひどく優れたゲームコミックになっています。電撃大王の方の連載と比べても見劣りせず、当初はあちらの方が話題が大きかったものの、連載を重ねるうちに原作の再現度の高さが評価され、次第に大きな支持を集めることになりました。

 しかし、連載が終盤に差し掛かった頃から、次第に連載ペースが怪しくなり、毎月の掲載ページ数が極端に少なくなってしまい、ひどく勢いが落ちてしまった感は否定できません。コミックスの発売も滞り、これも勢いの減速に拍車をかけてしまいました。途中までは非常に良かったので、最後で失速してしまったのが本当に惜しまれます。


・なぜ、ふたつもコミック化作品があるのか?
 ここで、誰しも疑問に思う点として「なぜ、わざわざふたつの雑誌でコミック化されているのか」という問題があります。最近では、このように複数雑誌でコミック化されるゲームは珍しくなく、美少女ゲームだとさらに顕著に見られますが、この当時はまだ珍しいケースでした。これは、(主に)Gファンタジーの過去にちょっとした事情があります。

 まず、「電撃大王」の方のコミック化ですが、そもそも「ToHeart2」のコミック化ならばこちらの方が本命です。元々電撃系(メディアワークス系)の雑誌は、美少女系作品に力を入れた誌面であり、美少女ゲームのコミック化も盛んです。そして、過去に「ToHeart2」の前作である「ToHeart」のコミック化も行われており、今回もコミック化されるならまず電撃系雑誌だろうと思われていました。そして、その予想通り今回も「ToHeart2」コミックの連載が「電撃大王」で始まったわけです。

 では、「Gファンタジー」の方はどうか? こちらの雑誌は、そもそも美少女系作品がそれほど盛んな誌面ではありません。この雑誌のみならず、出版社のスクエニ(エニックス)全体を通して見ても、かつては雑誌で美少女ゲームの連載が企画されることはほとんどありませんでした。

まじかる☆アンティーク・1巻表紙 しかし、かつて、ほぼ唯一の例外と言える連載がありました。かつてGファンタジーで2001年から約2年ほど連載された「まじかる☆アンティーク」です。
 このマンガ、割と女性寄りの誌面であったGファンタジーでの連載ということもあって(当時は「最遊記」の全盛期でした)、開始前の予告編の段階で様々な話題を呼びました。「なぜエロゲー?」「なぜリーフ?」「なぜよりによってまじアン?」と、疑問は尽きず、肝心のマンガの内容以前に妙なところで話題を集めてしまいました。(最後の「なぜよりによってまじアン?」という疑問ですが、これは、連載開始時点で原作ゲームの発売からかなりの期間(9カ月)が過ぎていたことと、そしてリーフのゲームの中でも大きな人気がなく、さして話題を呼ばなかった作品ということで、「なぜいまさらこのゲームなのか」という意味から来た疑問です。)

 そして、その連載を担当したのが、今回の「ToHeart2」と同じきたうみつなです。この方は、はるか昔、1997年に「21世紀マンガ大賞」で準大賞を受賞したことがあり、それも含めて当時2作ほど読み切りを残しています。しかし、受賞から連載までの期間があまりにも長すぎ、読み切りもさほど印象に残るものではなかったため、ほとんどの人はこの方の存在を知らなかったのではないかと思われます。なぜこの時になって、しかも「まじかる☆アンティーク」のコミック化の担当として抜擢されたのかは、非常な謎であり、意外な起用だったと思います。
 そんなこんなで、かなりの意外な連載であったこのマンガ。内容的にはそこそこよく出来たコメディでしたが、雑誌の中では取り立てて目立つ存在ではなく、さほど大きな話題にもならず、2年足らずの連載期間を経て終了してしまいました。


 しかし、これが実は今回の「ToHeart2」のコミック化に繋がっているのです。つまり、かつて「まじかる☆アンティーク」を連載した経緯から、今回のリーフ(アクアプラス)の新作である「ToHeart2」も連載したい、と、そういう運びになったのだと思われます。
 しかし、「ToHeart2」の連載ならば、かつて「ToHeart」を連載し、美少女系コミックでも定評のある「電撃大王」の方も本命です。「ToHeart2」の原作ゲームの開発元であるリーフ(アクアプラス)としては、この「電撃大王」と「Gファンタジー」と、その双方からの連載要請を断ることが出来ず、結局ふたつの雑誌の両方で連載という、当時のゲームコミックとしては珍しい形式を認めたのだと思われます。


・絵が素晴らしい。
 さて、前置きはこの程度にして、ここから内容について触れていきます。

 まず、このマンガの特筆して評価すべき点は、やはり絵柄でしょう。それもキャラクターの絵が素晴らしくよく描けています。ゲームのコミック化となると、やはり原作のビジュアル的なイメージをいかに再現するか、という点が非常に重要だと思うのですが、このマンガはその点が非常によく出来ています。とにかくキャラクターの再現度が驚くほど高い。原作ゲームの絵柄に非常に近いイメージを再現しつつ、かつ作者の個性もきちんと出ているというハイレベルなビジュアルで、ほぼパーフェクトの出来となっています。
 最初に話題となったのは↑上記の表紙イラストの出来の良さですが、もちろん肝心の本編の絵もよく出来ています。この業界には「一枚絵のイラストはよく描けているが、マンガの絵は数段落ちる」という作品が割とよく見られるのですが(出自がイラストレーターの描くマンガにはそのような例が多い)、このマンガについてはそんな心配は全くありません。きたうみさんは本職のマンガ家なので、マンガ本編でもイラスト同様の安定したクオリティの高さを維持しています。
このみとタマ姉委員長 るーこ主人公の貴明と悪友の雄二。雄二は原作より悪ガキっぽい?
 なお、この点で「電撃大王」連載のメディアワークス版は対照的な存在で、こちらの作者の御形屋さんの絵は、かなりデフォルメが効いた絵となっており、原作ゲームとは大きく印象が異なっています。この御形屋版の絵が悪いというわけではなく、これはこれでこの作者ならではのいい絵柄になっているのですが、しかし原作ゲームのイメージとはかなり離れているのも事実。原作に近いビジュアルを求める人には、こちらのきたうみ版の方がおすすめできると思います。


・原作を丁寧にコミック化。
 そしてもうひとつ、ストーリーの構成もよく出来ています。
 基本的には原作ゲームに忠実なストーリーで、マンガでも大きな流れは変わりません。しかし、個々のエピソードが丁寧に作りこまれていて、中には原作ゲームよりもさらにメリハリが効いたシーンとなっているところも多く、かなりの好印象です。楽しいドタバタのシーンと、のんびりまったりしたシーンがバランスよく盛り込まれており、楽しく読みすすめることが出来ます。原作ゲームと比べれば、明らかに短い構成でエピソードも絞られる内容ではあるのですが、それでも重要度の高いシーンは逐一押さえており、原作ゲームファンの満足度は高いのではないでしょうか。

 作者の前作「まじかる☆アンティーク」も同じようなイメージの作品だったのですが、後発の作品であるこちらの方が明らかにレベルが上がっているように思えます。また、前作ではとにかく連載のページ数が安定せず、毎回のページ数が少ないことが多くて盛り上がりに欠くことも多かったのですが、今作では(中盤までは)そのようなことはほとんどなく、安定したペースとなっていたのも評価が高い。

 ストーリーの流れとしては、まず原作もストーリーの中心となるキャラクターたちが序盤ではメインで登場し、その後各ヒロインごとの個別シナリオに入るというもので、比較的オーソドックスなコミック化と言えるかもしれません。特に、序盤の頃の賑やかに各キャラクターたちが登場してくるあたりがいきなり好印象で、ここで登場したメインヒロインのこのみ(柚原このみ)、そして最大のキャラ人気を誇るタマ姉(向坂環)と委員長(小牧愛佳)あたりの定番キャラクターは、このコミック版でも大きな人気を獲得することになりました。特に、きたうみさんの描く委員長・愛佳はとりわけ再現度が高く、非常にかわいらしく描けていると思います。

全員集合!

 ヒロイン個別のシナリオも完成度が高く、それも連載を重ねるにつれさらにレベルの上昇を感じました。特にるーこ(ルーシー・マリア・ミソラ)、花梨(笹森花梨)、由真(十波由真)、姫百合姉妹(瑠璃・珊瑚)のあたりのエピソードが面白く、特に3巻で収録された姫百合姉妹の話は、絵的にも内容的にも屈指の完成度を誇るものになっています。この連載中盤の頃がこの作品の全盛期だったかもしれません。

るーこ編 由真編 姫百合姉妹編


・エニックス的なゆるやかな空気が楽しめる。
 そしてもうひとつ重要なのが、このマンガが、原作が美少女ゲームでありながら、かつてのエニックスのマンガに特有の、ゆったりまったりとした居心地のいい雰囲気に浸って楽しむ要素を持ち合わせていることです。いや、そもそも原作ゲームの「ToHeart」シリーズ自体もこの要素が強いゲームではあるのですが、このGファンタジー連載のコミック版では、その点をさらにはっきりと打ち出している感があります。
満点の星花見in春休み
 そのため、美少女ゲームにさほど興味がない人、特に恋愛ものがダメだという人でもさほど抵抗無く読めるようになっています。そもそも、このマンガは恋愛の要素はさほど強くなく、日常のドタバタとほんのりまったりのシーンを楽しむことが中心であり、これはエニックスのマンガと原作ゲーム「ToHeart」シリーズに共通している要素なのです。その点において、原作ゲーム「ToHeart2」とエニックスのマンガは、割と親和性が強い作品同士だと言えるもので、その点でもGファンタジーでの連載は成功しています。


・しかし、終盤に入ってからの失速はいただけない。
 このように、ゲームコミックとして確かな面白さを持っていた本作ではあるのですが、連載の終盤に関しては、決していい経過を辿ったとは言えません。この時期になって、次第に連載ペースが乱れ始め、毎回の掲載ページ数が非常に少なくなる回が頻発するようになります。それまでは毎月25〜30ページの分量をコンスタントに維持していたのに、ここに来て半分以下のわずか10ページ程度の掲載が毎月のように続くことになります。

 実は、これは作者の前作「まじかる☆アンティーク」では連載全体を通して見られ、作品の勢いに大きな影を落としていました。今回の連載では、序盤から中盤にかけてはそのようなことは一切なかったため、「今回の連載はいいな」と思って安心して見ていたのですが、それが終盤になって再発してしまったようなのです。作者の悪いくせとも思えるような遅筆ペースに陥り、それで作品の勢いは大幅に落ちてしまいました。

 加えて、肝心の内容も、全盛期だった中盤に比べれば若干劣るような気がします。幸いにも絵のレベルはさほど落ちていませんが、ストーリーの勢いはかなり失速した感があり、中でもこのマンガの最後に置かれたタマ姉とこのみのエピソードは、この作品で最も重要な二大ヒロインのエピソードなのですが、若干盛り上がりに欠けるところもあったように思いました。致命的に劣っているわけではないですが、おそらくは連載中盤のエピソードの方がもっと優れていたのではないかと。終盤の失速が惜しまれる作品と言えますね。

 そして、この終盤の失速が大きな原因なのか、コミックスが3巻を最後にして長らく出なくなってしまったのも悔やまれます。4巻は2007年夏発売予定となっていたにもかかわらず、結局連載中には出ず、連載終了後に最終巻の5巻と同時発売という形になりました。これが普通に連載中に出ていたなら、連載の勢いもまた変わったのではないかと思います。しかも、そのコミックスも延期で長らく発売されないなど、最後の最後で不安を残す終わり方になりました。


・「ToHeart2」関連作品の中では一押しだが・・・。
 以上のように、この「Gファンタジー・きたうみつな」版の「ToHeart2」は、絵的にも内容的にも原作に忠実で、かつ安定した高いクオリティを見せており、最近のスクエニ雑誌でのゲームコミックの中でも、極めて手堅い作品となっています。原作ゲームのファンはもちろん、エニックス系のマンガとも親和性が高く、こちらの読者にも幅広くオススメできる一品です。作者の前作である「まじかる☆アンティーク」より明らかに面白くなっており、今回はGファンタジーの連載の中でも遜色ない出来栄えとなっていました。

 しかも、このマンガは、当初「ToHeart2」関連商品の中では、さほど知名度が高くなく、そこから次第に支持を集めたという点に、評価すべきところがありました。「ToHeart2」のコミック版としては、当初は「電撃大王・御形屋版」の方が本命である印象が強く、さらに当時はTVアニメもかなりの話題を集めていて、それらの商品と比較すると、このGファンタジー版は傍流に近い感があり、原作のメインユーザーである美少女ゲームファンにはさほど知られていない印象もありました。これは、掲載誌のGファンタジーが、美少女ゲームとは比較的縁の遠い雑誌であることも強く影響していたと思います。

 しかし、このマンガは、やがてその完成度の高さから次第に人気を集め、やがてはこちらの方が高い支持を集めるまでになりました。電撃版のコミックと比較した場合、やはり原作のビジュアル的なイメージをより強く再現している点が評価が高く、そしてストーリー的にも遜色ありませんでした。そして、当時鳴り物入りで始まったTVアニメ版が、今ひとつの内容に加えて、作画レベルがまるで安定していなかったために明らかに評判が悪く、思ったほどの支持を得られなかったのと比較しても、明らかにこのコミック版の方が優れていました。総じて原作のイメージを最も良く再現しているのが、このGファンタジー版だと言えました。

 それだけ優秀な作品だったのだから、やはり終盤での連載ペースの乱れ、失速感が非常に惜しまれます。もちろん、これを差し引いても、スクエニでの手堅くまとまった良作ゲームコミックとして、やはり優れた評価を与えることができることに変わりありませんが、それでもこの終盤の失速がなければ、もっと最高に近い評価を与えることが出来たのに・・・と悔やまれます。


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