<円盤皇女ワるきゅーレ>

2006・3・30
一部改訂2007・11・13

 「円盤皇女ワるきゅーレ」(ゆーふぉーぷりんせすワるきゅーレ)は、美少女系の作家として知られる介錯による、同名アニメ作品の一連の連動企画のコミック版に当たる作品です。少年ガンガンで2002年3月号より連載を開始し、2007年9月に終了しました。連載期間実に5年半、相当な長期連載と言える作品でしょう。内容的には、宇宙やSFの要素も絡めた美少女系のラブコメといったところでしょうか。

 この作品は、まず第一にアニメとの連動企画であり、その「コミック版」をガンガンで連載するという形になっています。当時、このようなメディアミックス的な一連の企画のひとつとして、コミック版の受け入れ先となる雑誌を「ワるきゅーレ」の企画スタッフが探していたらしく、それをガンガンの編集部が受け入れたというのが真相のようです。つまり、これはまず「アニメ」のワるきゅーレが先にあり、それに付随する形でコミック版が企画されたのであって、いわゆる「アニメ化作品」ではありません。時折、「これは最初はガンガン連載のマンガで、それがのちにTVアニメ化された」と思っている人がいるようですが、これは明らかな間違いです。もっとも、このコミック版は、本企画であるTVアニメ化より先に始まっているため、このような勘違いをする人がいるのも無理はないかも知れません(コミック版の連載開始が2002年2月、TVアニメの放映開始が2002年7月)。


・なぜこの企画を受け入れたのか。
 しかし、当時のガンガン編集部による、この「アニメ連動企画のコミック版」の受け入れは、今考えても非常に不可解な編集方針です。
 当時のガンガンは、前年の2001年に、あの「ブレイド騒動(エニックスお家騒動)」が起きており、大量の編集者と作家が抜けており、残った編集者たちが抜けた連載の穴を埋めるために、あるいは新しい路線の連載を採りいれるために、積極果敢な新連載攻勢を行っており、この「円盤皇女ワるきゅーレ」もその大量の新連載陣の中のひとつとなっています。

 しかし、当時のガンガン編集部は、むしろ積極的な「王道少年マンガ路線」を採り始めており、新連載攻勢の多くは「666(サタン)」や「B壱」「マテリアル・パズル」「PHANTOM;DEAD OR ALIVE」のような王道バトル系少年マンガで占められていました。あるいは、騒動時に抜けたゲームマンガの穴を埋めるために「スターオーシャンブルースフィア」や「スターオーシャン3」の連載もありました。それ以外に、当時の台頭してきた新人たちによる個性派の作品も一部にありました(「妖幻の血」「プラネットガーディアン」「ドームチルドレン」等)。
 しかし、この「円盤皇女ワるきゅーレ」は、このどれにも当てはまりません。なぜこの作品をわざわざ外部から受け入れたのか、その理由が判然としないのです。当時は、ガンガン編集部が、新連載攻勢の中でも特に「少年マンガ路線」を露骨に進め始めた時期でもあり、その少年マンガには全く当てはまらない「ワるきゅーレ」をなぜわざわざ外部から受け入れたのか、大いに疑問でした。

 あえて推測すれば、これは少年マンガ的な「ラブコメ」のひとつとして採用したと考えることもできます。当時のガンガンは、王道バトル系の少年マンガに加えて、メジャーな少年誌でよく見られる「ラブコメ」系少年マンガをも誌面に取り入れようとしていた節がありました。
 しかし、当時のガンガンでは、その「ラブコメ」に該当するオリジナルの新連載として「悪魔事典」「ながされて藍蘭島」の2作品が存在していました。加えて、ガンガンでの連載にはなりませんでしたが「これが私の御主人様」という作品もありました。これだけのラブコメ系新連載(候補)が存在していたわけですから、あえてそれ以上外部から同系のマンガを採りいれる必要はないとも言えますし、そう考えるとやはり「ワるきゅーレ」の受け入れは疑問でした。

 これは個人的な推測ですが、おそらくは、ガンガン編集部は、「アニメとの連動企画」という売れそうな企画を優先して受け入れたかったのではないでしょうか。コミックの連載と同時にTVアニメが放映されれば、それでコミックの方もかなりの売り上げが保証されますし、ビジネス的には大いに魅力です。
 しかも当時のガンガンは、ブレイド騒動後の混乱期の渦中であり、かつての混乱期以前の読者が多数離れていっており、なんとしてもある程度の新規読者を確保する必要性がありました。つまり、混乱期の雑誌を維持するためになりふりかまってはいられない状態にあったわけで、そんな中で「アニメとの連動企画でのコミック版連載」というおいしい話を積極的に受け入れたのだと思われるのです。
 しかも、前述のように、この作品は「ラブコメ」に該当する作品であり、その点ではガンガンの路線と一致しています。もちろん、当時のガンガンはオリジナルのラブコメ新連載も複数用意していたわけですが、しかしそれらがかならずしも全部成功するとは限らないわけで、とりあえず新連載のラインナップを増やしておくに越したことはないと考えたのではないでしょうか。

 以上、このような込み入った複数の事情から、「外部からの連動企画の受け入れ」という、当時のガンガンの方針からは大きく外れたような決定をもあえて採用したのだと考えられるのです。


・あまりにも平凡なラブコメ。
 このような不可解な経緯を辿ったことで、「なぜこのマンガがガンガンで連載されるのか」多くの読者が疑問に思ったまま連載が始まったわけですが、では肝心の内容はどうだったのか。

 基本的にこのマンガはドタバタ系のラブコメです。加えて、宇宙人や宇宙船が当たり前に存在するちょっと未来に舞台を置いた、SF的な設定も垣間見られるのが特徴です。地球人の高校生で宇宙人相手に銭湯を経営する主人公・時野和人と、宇宙からやってきた王家のお姫様である「ワルキューレ」、その子供バージョンであるトラブルメーカー「ワるきゅーレ」を中心に、主人公の周りを取り巻く女の子たちとドタバタのラブコメを繰り返しながら、時に宇宙の王家絡みのストーリーも進んでいくという流れになっています。

 しかし、これが必ずしも面白いものではありませんでした。むしろ、ラブコメ物としては平凡でこれといった特徴もなく、毎回同じようなドタバタの繰り返しで、読者の印象に残るようなマンガではなかったのです。
 もちろん、宇宙人や宇宙船、宇宙の王家のような独自のSF的な設定もあるにはあるのですが、実際には時折宇宙から新キャラクターの女の子がやってきてドタバタを繰り広げ、キャラクターの人数が増える程度で、大きなストーリーの流れに乏しく、SF要素を活かしきれているとは言えませんでした。
 それでも、最初のうちはまだ新キャラクターの登場もあり、そこそこ目新しい要素もあってそれなりの勢いもありましたが、長期連載になるにつれてそのような要素もなくなり、本当に日常のドタバタの繰り返しになってしまい、ますます面白さが薄れていった感があります。これが長期連載を続けるに値した作品なのかどうか、大いに疑問だったと言えるでしょう。


・画力自体はかなり高いのだが・・・。
 しかし、このマンガは絵に関しては中々よく描けています。作者である介錯さんの画力自体はかなり高いもので、細部に渡る描き込みはかなりのものがあります。決して美少女キャラクターだけがうまいのでなく、乗り物や背景の街、時折登場する壮大な宇宙の描写もかなりよく描けているのです。

 しかし、そこまで安定した画力がありながらも、このマンガに関してはさしたる魅力が感じられません。内容が完全なドタバタラブコメで、それ以上のものがないため、せっかくの高いビジュアル能力を有していても、それを感じるようなシーンがあまりないのです。むしろ、日常のラブコメでこの内容ならば、ここまでの細部に渡る描き込みは逆に邪魔で、かえって読みにくさを感じてしまいます。この内容ならむしろ「ながされて藍蘭島」のようなシンプルな絵柄の方がよいのではないか、とすら思ってしまいました。正直、これではせっかくの作者の画力が宝の持ち腐れというか、才能の無駄使いというか、とにかく作者の画力が作品の魅力に全く反映していないと感じてしまいました。


・アニメの方は面白いのか。
 しかし、このマンガはあくまで「アニメ連動企画のコミック版」であって、この企画はアニメが中心であると言えます。では、そのアニメの方の出来はどうなのか。
 実は、このアニメの方は中々の評価を受けているのです。ひどく高い評価というわけではないのですが、それなりの評価は確実に存在しており、少なくともコミック版よりは安定した人気を確保しています。第一期(1クール12話)の放映が終了後しばらくして、第二期(同じく1クール12話)が始まったことも一定の人気の証だと言えるでしょう。全く人気がないのに第二期が始まることは考えられませんからね。

 なぜアニメの方が評価が高いのか。アニメ版の方も基本的にはコミック版同様のドタバタ系のラブコメです。しかし、こちらは12話という短い放映期間ということで、話数が少ないために毎回のエピソードが厳選され、割と面白いものが多いのです。しかも、12話完結の短期放映であるがゆえに、ストーリーにも一定の流れがあり、毎回のように新キャラが登場するなど飽きることが少ないのです。SF的な描写もアニメの方がより顕著で、こちらの方がまだSF要素が楽しめる方でしょう。

 対してコミック版の方は、こちらは長期連載ですから、毎回ドタバタのラブコメを繰り返すだけでストーリー性が乏しく、しかも回を重ねるごとに毎回のエピソードにもマンネリ化が進んでさらに内容が希薄になり、さらに面白さが薄れてしまったのです。


・アニメとの連動だからこそ続いている。
 そして、実はこのマンガは、そのアニメの方の人気があるからこそ続いていた側面が強いのです。
 はっきりいって、マンガの方の内容は非常に平凡なラブコメで、これといった内容には乏しく、これだけで大きな人気を得て長期連載するような作品とは思えませんでした。そんなマンガが、ここまで長期連載しているのは、やはりアニメの方に人気があり、その連動効果でこのコミック版の売り上げも期待できるからに他なりません。実は、アニメの第一期が終了した後、わたしは、「もうアニメも終わったし、マンガの方はさして面白くないので、こちらも終わるだろう」と思っていました。しかし、そんな中でアニメ第二期の製作が決定してしまいます。今からアニメがもう一度始まるわけですから、そのコミック版をわざわざ終了するわけがありません。
 それ以後も、アニメ第三期(これはDVDのみ)が決まり、関連商品も出続けるなど、アニメ方面の発展に合わせて、このガンガン連載のコミック版も延々と連載してきたわけです。そしてコミックの単行本もアニメからのファン層に一定の売り上げがあるようで、これも連載が続いている大きな理由でした。売れているマンガの連載をわざわざ打ち切ることなど考えられないわけです。


・ガンガン読者にとって、このマンガの存在はどうなのか。
 しかし、ガンガンの一般読者にとっては、このマンガが極めて平凡な連載であることには変わりありませんでした。
 そもそもアニメ版に興味のない読者にとっては、これは平凡なラブコメ以外の何者でもありません。アニメに人気があり、アニメからのファンが単行本を買っているとしても、それでガンガンの連載が面白いわけではないのです。
 実際、このマンガがガンガンの読者の間で話題になっているのを見たことがありません。そもそも、これは外部からの受け入れ企画であって、元々の読者には興味の湧きづらい存在であり、内容的にもエニックス系のマンガとはかなりイメージが異なっているため、ますますもって雑誌内での存在感は薄かったのです。雑誌読者でこのマンガを積極的に読んでいる人は、決して多くないでのではないでしょうか。

 そして、その程度の決して面白いとは言えないマンガが、アニメとの連動の成果だけで5年半も延々と続いてきたのだから、雑誌読者としては決して印象はよくないはずです。このような平凡な作品が、延々と5年半も長期連載を続けてしまったという事実が、この時期のガンガンの決して面白いとは言えなかった誌面状況を、如実に表していたと言えるでしょう。


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